英語

最も重要な能力はもちろん「英語力」です。留学中の全ての基礎になるものが「英語力」であると言えます。ここでは、「英語」についてのあれこれを説明します。

プレ・セッショナル・コース(Pre-Sessional Course)

まず、初めにブラッドフォード大学で外国語として英語を勉強できる「プレ・セッショナル・コース(Pre-Sessional Course)」について説明します。

このコースは、主に英語が外国語ではない大学院入学者を対象とした、専門コースが始まる直前の夏に数週間開講されるコースです。主に中国、台湾、日本などのアジア系留学生がその履修者となっているのが現状です。IVSPの学生でも受講は可能です。

このコースでは、論文の書き方(文献の書き方・探し方、引用の仕方など)からプレゼンテーションのトレーニングなどです。また、図書館の使い方などのインストラクションもあります。授業の期間は、毎年異なるようで、2週間から10週間までと様々です。

私は、2003年の夏に6週間のコースを受けました。その経験から主観的な感想を言うと、“英語は上手くならない”です。このように思うには、いくつかの理由があります。

第一に、私が既に論文の書き方を知っていた、からです。事前に日本国内で英語による論文の書き方を習い、何度も英語でエッセーを書くという経験をしていたからです。また、これまでに習ったことのない人にとっても、数週間でエッセーがラクラクに書けるようになることは不可能です。

第二に、必ずしも授業の内容が自分の専門と関係があるわけではない、ことです。このコースに参加する人の専門がバラバラであり、専門が同じ生徒同士にグループ分けが行われません。なので、誰にでも当てはまる一般的な「学習方法」を習うに留まります。

第三に、このコースを受ける生徒の英語力が低い、ということ。このコースを受ける生徒は、受講を条件に入学許可を受けている場合(Conditional Coffer=条件付入学許可)が多いです(日本人の場合、この条件付入学許可を理由に受講している人はいないようです)。このような環境から、実際に専門のコース(講義やセミナー)での英語とのギャップが大きいと言えます。また、このコースに参加中は、自分の英語に自信を持つ(安心する)ようになるかもしれませんが、実際に専門のコースが始まれば、それが間違いであったことに気づきます。

このような分析から、このコースによって英語力を上げようと思うのは間違っていると言えます。しかし、このコースに参加することの意義があることも指摘できます。

それは、「現地の生活に慣れる」ことが出来ます。やはり、海外で生活するということは様々な「違い」に直面することになります。このような観点からすると、このコースに参加している間にブラッドフォードでの生活のリズムを作ることができると言えます。

結論からすると、このコースに参加する「目的」は、これまで準備してきた英語力の“おさらい”と“現地に慣れること”です。このコースで自分の英語力を大幅に上げることを期待するのは大きな間違いです。

学期中の英語コース

9月から専門コースが始まった後も、留学生を対象とした英語の授業を受けることができます。これは、事前にレベルチェックテストを受けることにより、授業が割り振られます。希望者が任意で参加します。ちなみに、私はこの授業を受けていないので、ここでの説明はこの辺にしておきます。何か情報が入りましたら、記述したいと思います。

実際に必要とされる英語力とは?

外国語を勉強する時は、「読む」、「書く」、「話す」、「聞く」の四つの能力を伸ばす必要があります。留学中は、自習のためには「読む」、試験や課題のためには「書く」、セミナーに参加するには「話す」、そして講義に出るには「聞く」ことが必要になります。

敢えてこれらの各能力の優先順位を付けるならば、「読む」・「書く」>「話す」・「聞く」ではないでしょうか。これには2つの理由があります。

第一に、普段の生活の殆どが「読む」作業であることです。大学のシステムから、「自習」が「学ぶ」ことの基本となっています。ですので、より多くの資料を早く、正確に読むことが要求されます。「読む」ことによって得た知識は、講義の内容理解を助け、セミナーで発言する際のアイデアとなり、最終的には試験や課題へと反映されます。

第二に、最終的な学習の成果を反映するものは「試験」と「エッセー」です。全ては、「書く」ことにより、自分の理解や考えを表明することになります。例え、頭の中で理解していても、それを表現することが出来なければ、意味のないことです。

このようなことから、「読む」・「書く」の比重が高いことが言えます。

しかし、もちろん「話す」・「聞く」も重要な能力であり、毎回のセミナーや講義で「満足したい」或いは「消化不良になりたくない」と思うのであれば、これらの能力も伸ばす必要があると思います。特に、日本人は「話す」という能力が著しく弱いと言えます。例え単語や文法を知っていて、知識があったとしても、それを表現(発言)することが出来ないというのが典型です。“言いたいことがあるけど、言えない…”。これが現実です。特にアカデミックな内容の場合には顕著です。

留学するまでの準備

「留学」する目的は人それぞれだと思います。ある人は「留学したいから留学する」でしょうし、ある人は「学びたいことがあるから留学する」かもしれません。どのような理由にしろ、実際に現地に来て直面する「言葉の壁」はとても大きなものだと思います。帰国子女や留学経験者でない限り、一般の日本人の英語力は「大学で勉強する」に足りるものではないことは現実です。留学斡旋業社などが提供する「留学体験」などには、“留学生活がとても楽しかった”などの記述が良く見受けられますが、彼らが実際に現地でどれほどの英語力で、どれほど大学で専門を「勉強できた」のかは不明です。本当に現地で専門を「学ぶ」というのであれば、高度な英語力が必要とされることは明白です。

留学するまでに、日本国内で英語力を上げることは十分可能であると思います。特に、アカデミックな英語力を勉強する語学学校は沢山あります。そのような環境で、みっちりとトレーニングを受ければ、現地の大学で通用するレベルの英語力を身につけることは可能です。

また、留学を目指すと、まず思い浮かぶのが「語学試験(IELTS/TOEFL)」などだと思います。これらのスコアーを上げることが留学の条件であることから、それが全てであると思い込んでいる人も多いでしょう。しかし、それはあくまでも「試験」であって、その対策は「点数を上げる」ことしか目的にしていません。実際に、自分の英語力を以って「勉強をする」という行為に結びつかないのが現実です。

仮に、語学試験のスコアーが条件をクリアーしたとしても安心はできません。特に、条件となっているスコアーぴったしの場合は、それでは不十分だと言えます。なぜなら、それは「最低条件」であるからです。

また、「言葉(英語)は道具である」ということを認識する必要があります。語学試験の点数が高くても、それは何の自慢にもなりませんし、それが留学生活を保障するものでもありません。必要なのは、「英語を使って“勉強する”こと」です。高度な英語力が必要とされると同時に、高度な「学習能力」も必要とされます。なぜなら、私たちが目指しているのは「大学」という学問の世界だからです。

結論を言うと、日本で準備の出来ることはすべて行い、留学前に相当の英語力と「学習能力」を身に付けるべきです。英語が苦手だからと言って、大学は私たちを区別しません。ネイティブの学生と同じように扱われ、同じカリキュラムで授業を受けます。このような認識の元に準備をして、現地に来れば、本当に「勉強」が出来ると思います。現実はとても厳しいです。留学前にどれだけ準備出来たかによって、留学を通して「得られるもの」は変わってくるでしょう。