Update: 2004-06-04

エッセー(Essay)

エッセー(小論文)は、科目により課される成績評価になるものです。科目にもより異なりますが、最大1500単語、2000単語、4000単語程度のエッセーを書くことになります。

イギリスの大学では、このエッセーは厳格なものとされています。何が厳格かというと、それは「ちゃんとした論文」でなければならないのです。日本の大学ではそこまで要求する場合は少なく、こちらに来る日本人の殆どは戸惑います。

「ちゃんとした論文」とは何かというと、「引用」をしなければならないということです。エッセーとは、多くの文献を読み、それらを基に書いていきます。どれだけ多くの文献を読み、どれだけ自分のエッセーに根拠を与えられるかが大切となります。

このようなエッセーを書くには、論文を書くための基礎的なテクニックが必要となってきます。特に、論文本文中での引用部分の提示とBibliographyと呼ばれる文末或いは脚注での文献資料の提示です。

引用方法は、学術的に認められている形式でなければなりません。引用方法には二つの形式があります。ひとつは、Harvard System。もうひとつは、Numeric Systemです。詳しい説明は省略しますが、このどちらかのシステム(形式)に基づいて書かなくてはなりません。

もし、資料から引用したアイデアや言葉を、引用したことを示さずに自分のエッセーに書くと、それは盗作(Plagiarism)となります。こちらの大学では、これは犯罪的な扱い(実際、犯罪ですが)となり、書いたエッセーそのものが無効となります。生徒向けの冊子には、このような引用についての注意がクドイように書いてあります。また、チューターにエッセーのフィードバックをしてもらうときも、しばしば引用と自分のアイデアを明確にするように指導を受けます。

もちろん、引用だけではなく、エッセー全体の構成や使用用語、表現、批判的な分析が出来ているかなども評価対象となります。提出したエッセーは、教授やチューターにより読まれ評価が行われるようです。参考:引用についてのインストラクション

ちなみに、エッセーを提出すると、その場でサインをして、レシート(受取証)をもらいます。ここまで厳格になっています。

このようなことから、一夜漬けでエッセーを書くことは不可能です。ちゃんと取り組みましょう。


僕のエッセー

'Is Arms Trade immoral?'
科目:Introduction to Peace Studies: Ethics of Peace and War (IPS)

要約:「武器取引」は倫理に反するのか?という問いへの回答。特に近年問題となっている「小型武器」の取引について、様々なレベルからのそれへの規制を検討し、さらに、それにより引き起こされる諸問題への考察。そして、グローバルガバナンスの観点からの小型武器取引の分析を行う。

評価:65 (Upper Second Class=2:1)

講評:「A knowledgeable and intelligent answer. Toward the end you may be talking too many extra issues- but you succeed in bringing it together at the end. I agree that the question of the morality of the arms trade is part of wider issues of human security + global governance. (博識で知的な回答である。最後の方で余計な問題を取り上げ過ぎているように思うが、最後にはそれらを上手くまとめている。私は、武器取引の倫理性が人間の安全保障とグローバルガバナンスの広い問題の一部であるという(あなたの)論点に賛成する」。 (by Oliver Ramsbotham)

感想:前期に提出した唯一のエッセー。「倫理性」についての問いであるので、一見思想的なアプローチを要求しているかのように思うが、敢えて「現実的」な観点から取り組んだ。「回答」と言うことで、YES或いはNOの答えを要求しているようにも思うが、本小論文ではそのような真正面からのアプローチは行わなかった。あくまでも現実における人々の小型武器問題への取り組みと捉え方を考察して、結論を書きあげた。65の評価は、予想以上に良いものであった。執筆には3ヶ月もの時間があり、わずか1500単語というものなので、要点を絞って書き上げることが出来たと思う。

 

"What are the important elements of peace-building processes in post conflict situations? Comment especially on the roles of NGOs"
科目:Conflict Resolution in International Society (CRIS)

要約:「NGO」の戦後社会における「平和構築」での役割の重要な要素を論じる。旧ユーゴスラビア連邦のクロアチア共和国をケーススタディーに、国際NGO、現地NGO、ドナーとの関係を考察し、多角的な面からの「NGO」の可能性と限界を論じる。戦後社会におけるNGOは、国際社会の関心の低下とともに急速にその影響を財政的、技術的側面で影響を受ける。ゆえに、戦後社会の平和構築におけるNGOの役割において、国際NGO、現地NGO、そしてドナーとのパートナー関係およびコーディネーションが重要な要素となる。国際NGOと現地NGOの比較優位な利点を生かした、平和構築が戦後社会では求められる。

評価:62 (Upper Second Class=2:1)

講評:「A comprehensive discussion of the strengths and weaknesses of NGOs in peacebuilding, supported by a good bibliography. You have obviously read widely on the topic. You could have paid more attention to the first part of the question - identifying the key elements of a peacebuilding process. Had you done so, you would have had a clearer framework for discussing the specific roles of NGOs. Nevertheless, some good work here.(良い文献資料により裏打ちされた平和構築におけるNGOの長所と短所の包括的な議論である。このトピックに関して、あなたは明らかに広く(文献資料を)読んでいる。あなたはもっと質問の最初の部分−平和構築の過程の重要な要素−に注意を払うべきであった。もしそれができていれば、NGOの独自の役割を論じるためのさらに明確な枠組みが持てただろう。とは言うものの、これはなかなかの研究である。(by Rhys Kelly & Karen Abi-Ezzi)」

感想:参考文献リストにおいて、クロアチアをテーマとするものが多く、自分自身ボランティア活動で関わってきたということから、このテーマを選らんだ。現地NGOのスタッフからの生の情報と学術的な情報とをミックスさせ、現状に沿った現実的な論点を指摘するように心がけた。しかし、講評で指摘されるように、エッセークエスチョン(テーマ)に対しては、完璧に答え切れていない。62と言う評価は、平均以上ということであり、講評からもそれなりの評価を推測できる。独自に選んだテーマであったとしたら、十分な内容であると思う。しかし、指定されたテーマに完全に答えらていない以上、内容としては不十分である。要因としては、4000単語という長い論文であったため、常に意識はしていたが、執筆中に問われている質問の趣旨から若干離れてしまったことだろう。講評にもあるように、その点をしっかりと抑えれて、かつ議論と結論をそれに着陸させることが出来れば、さらに良い論文となったに違いない。今回の結果は、自分の現在の能力を示したものと言える。

'Discribe some common barriers to effective intercultural communication, and suggest the way that those may be overcome.'
科目:Culture and Conflict Resoution (CCR)

要約:異文化コミュニケーションにおける「不安」と「不確実性」を人々の感情に生み出す原因を示し、それを克服するための方法を文化的および言語的観点から提言する。

評価:52 (Lower Second Class=2:2)

講評:「This is a reasonable attempt at the question. You highlight a number of relevant barriers to communication and offer some suggestions for how these might be overcome. The essay includes relevant bibliography. However, the essay is nor properly *** and the analysis is rather weak throughout. Some things to work on」。 (by Rhys Kelly)

感想:後期に提出した2本のエッセーのうちの一本。様々なテーマがあるなかで、資料を読むうちに興味の沸いた「異文化コミュニケーション」について書いた。講評からは、論理が弱いとの指摘を受けた。52という評価は、「平均(Lower Second)」の範囲ではあるが、60以上を期待していたので残念だった。指摘から推測できることは、異文化コミュニケーションにおける「対立」を克服するための手段の立証が論理的に弱かったことと「信念的」になり過ぎたことかもしれない。CRISのエッセーとは違い、予備知識や経験等が少なかったため、その論理の弱さに気づきにくかったかもしれない。講評は、概して厳しいと言える。