Thinking!

2004-04-14
誰の仕事なのか?

by peace_student

イラクで武装勢力により拘束された日本人3人の中の18歳の男の子は、イギリスで「平和学」を学ぼうと準備をしていたそうだ。きっとブラッドフォードのことを考えていたに違いない。彼が「平和学」に興味を持っているということが報道されるようになり、このサイトのアクセス件数が増えた。

ブラッドフォードに在籍中の日本人学生のウェブサイトにも、様々なコメントが発表されている。僕としては、政治的、思想的な色合いを付けたくないという思いから、特に何も言及はしてこなかった。しかし、日本のメディアによる報道で、彼らの家族への嫌がらせが横行しているという事実に、一言だけ言いたいことがある。それは、“彼らがイラクへ行ったのは「自己責任」だ”と言って嫌がらせをする卑劣な人々への反論。

“自己責任だから拘束されて仕方がない”というロジックは否定する。そもそも、日常におけるあらゆる個人の行動は、自己責任である。そんな当たり前のことを偉そうに言うべきではない。そして、そんな批判は問題の本質ではないだろう。

僕が主張したいのは、世の中には、誰もやりたくない仕事や誰にでも出来ない仕事があることだ。

銃弾の飛び交う戦場で生きる人々を日本に伝えようと取材することが出来る人が世の中にどれだけいるのか。一人でイラクへ行き、ストリートチルドレンの世話を出来る人が世の中にどれだけいるのか。劣化ウラン弾の危険性を研究し、無知な大衆に情報を提供し、イラクの子供たちのために絵本を作ってあげようとする人が世の中にどれだけいるのか。

誰もが出来る仕事ではない。それを志して、行動に移せる人がどれだけいるのか。「自己責任」と言う人がいるが、そんな人がどれだけ自分の人生にリスクを負って、他人の為に行動出来ているというのか。誰も興味も持たず、行動も移さずにいることで、忘れ去れようとしている人々が世界にはいる。そんな人たちのために、銃弾の飛び交わない、モノに溢れた日本を出て、戦場に向かう人間がいる。それが国や組織の命令ではなく、個人の自由意志で決定したことであるなら、その崇高な行動のために苦しい思いをしている人に対して「自己責任」という的外れな批判をすることは、卑怯である。

そもそも、イラク(特にサマワ)は「非戦闘地域」ではなかったのか。治安は安定していると発表していた日本政府の「責任」はどうなるのか。

拘束された3人へ批判を行う人間は、何様のつもりなのだろうか。匿名で悲しむ家族を更に絶望へ追いやる行為は、3人を拘束している武装集団よりも卑劣だ。

結局、この一連の嫌がらせは、日本人にとって「ボランティア活動」や「人道援助活動」等の意義・重要性が全く理解されていないことを示しているのだ。

世の中には誰かがやらないといけない仕事がある。イラクの平和と安定は誰が実現するのか。そして、それは誰の仕事なのか。国連?アメリカ?自衛隊?ボランティア?イラク人?いったい誰の仕事なのか。それを僕たちは考えなければならないだろう。

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