魯智深 人気ナンバー1.の人
浪花節だよ魯智深は
人物データ 梁山泊での役職・歩軍頭領 俗名・魯達 渾名・花和尚(刺青坊主) 出身地・渭州 外見・身長八尺、丸顔、耳は大きく鼻は真っ直ぐ口は四角、頬にむじな髭 元の職業・僧侶、その前は渭州経略府の守備隊下士官 得意な武器・六十二斤の禅丈、戒刀 特技・拳法、腕力、大酒を飲む 性格・豪放快活 家族・なし 仲良し・林冲、史進、武松、楊志、曹正、張青、孫二娘 略歴・渭州経略府の守備隊の下士官だったが、悪辣な肉屋の関西鎮を拳固三つで殴り殺し逃亡、五台山にて出家。智真上人より、魯智深の法名を賜る。しかし、酒を飲み暴れること度々、五台山を追放され、開封の大相国寺へ。寺領の大根畑の番人となる。林冲と知り合い、その受難を助けたため、高キュウ(にんべんに求)に睨まれ開封を出奔。孟州十字坡にて、孫二娘に毒酒を飲まされあわや挽肉になりかける。張青、孫二娘のすすめで、青州二竜山へ。楊志、曹正と計り二竜山を制圧、山を乗っ取り山賊となる。二竜山にはその後、武松、施恩、張青、孫二娘が加わる。梁山泊に敗れ青州に落ちて来た呼延灼と戦うも、手ごわいと見て梁山泊に救援を求め、桃花山、白虎山とともに梁山泊に合流する。 最期・方臘討伐凱旋の途中、杭州六和寺にて入寂。

「水滸伝」というと、まず魯智深をあげる人が多いようだ。魯智深こそが、「水滸伝」の好漢人気ナンバーワンといっていい。(街頭で聞いたら多分一番。「水滸伝」知らないって人が一番なんだろうが)
さて、人気の秘密は何か。ちょっと分析してみよう。
@出番が早い 出番が早いというのは、それだけインパクトにつながる。また、林冲が出奔するあたりで「水滸伝」に挫折する人も多い。そんな人たちでも、魯智深の名は脳裏に刻まれる。宋江を知らなくても魯智深なら知ってる人が多いということだろう。
A僧衣が目立つ 目立つねえ。「水滸伝」の好漢は元軍人が多いから、鎧兜はホント目立たない。道服、行者はいるが、仏教僧は魯智深ただ一人。清水28人衆でも法印大五郎が目立つのと同じ理由だ。
B特異な容姿 僧衣に加え、容姿である。丸顔、耳は大きく鼻は真っ直ぐ口は四角、頬にむじお髭。こんなの俺でも似顔絵描ける。わかりやすい顔だから、誰でもすぐ覚えられる。
Cおもしろキャラ と言っていいんだかどうだかわからんが、かなりひょうきん者に描かれている。史進、林冲、武松、パートナーが男前だから、三枚目ぶりが際立つのか。五台山での酒売りとのやりとりとか、桃花山での山賊退治、十字坡で孫二娘で簡単にしびれ薬を盛られたり、まぁ、単独でも、そこそこひょうきんぶりを見せてくれている。容姿からしてひょうきん者だよな。 
D豪快無敵の好漢 「水滸伝」の好漢らしい性格か。並みの軍人さんたちにはない(魯智深も元は軍人さんだが)、いかにも無頼漢な面白さだろう。無頼漢でも武松や劉唐が多少でも思慮分別があるのに対し、魯智深と李逵は別物という感じがある。と言って、李逵ほど目茶苦茶でないところが、またいいのかもしれない。ほどほどの目茶苦茶はある意味でお茶目ってことか。
Eその成長 はじめ文盲だった魯智深が最後には字が読めるようになっている。きっと二竜山で暇な時に楊志にでも習ったのか。他にも、ただの無頼漢だった魯智深が二竜山の頭領として登場すると、結構策略家になっている。なんにせよ、梁山泊の好漢の中で、数少ない成長していったキャラだ。
F最期の見事さ 死に方の綺麗さでは、やっぱ魯智深だろう。格好よさでは張順に負けるが。
まぁ、色々あるが、ようは「水滸伝」らしさがあるのだろう。色を好まず酒を好み、義理に厚く、問題の解決は拳骨。ってことは、なんだ、日本人も中国人も、ようは浪花節が好きってことか。

武松 山東気質な人
作家の腕がなるあのシーン
人物データ 梁山泊での役職・歩軍頭領 通称・武二郎 渾名・行者(行者に扮して逃亡、以来行者姿で過ごした) 出身地・山東清河県 外見・身長八尺、身体凛々、容貌堂々 元の職業・無法者(陽穀県で一時、守備隊の下士官を務める) 得意な武器・戒刀 特技・拳法、腕力、大酒 性格・豪放なところと生真面目さが混在、兄想い、酒を飲むと大胆、切れると爆発 家族・兄(武大、潘金蓮に毒殺される) 仲良し・宋江、魯智深、施恩、張青、孫二娘、孔明、孔亮 略歴・清河県で喧嘩をし逃亡、滄州の柴進の屋敷で宋江と会う。兄の武大を探し旅の途中、景陽岡で虎を素手で退治する。その功で陽穀県の守備隊の下士官に抜擢され、さらに陽穀県紫石街に住む兄の武大と再会する。ところが、武松が知事の使者として開封へ行っているうち、兄嫁の潘金蓮が情夫の西門慶と計り武大を毒殺。ことの次第を知った武松は、潘金蓮と西門慶を殺す。兄の仇とはいえ殺人を犯した罪は重く、孟州へ流罪となる。道中、十字坡で張青、孫二娘の夫婦と知り合い、孟州では牢役人の息子、施恩の世話になる。施恩のため、蒋門神という悪党をやっつけたため、正規軍の張豪方の恨みを買い、罠に掛けられる。切れた武松は護送役人や刺客を斬り、張豪方や蒋門神が酒を飲んでいる鴛鴦楼に乗り込み、一家の者を皆殺しにする。張青、孫二娘のすすめで、行者姿に身を変え二竜山へ。道中、宋江とも再会。二竜山にて、魯智深と合流。以来、僧侶と行者の荒くれコンビで暴れまわる。 最期・方臘戦で包天師の投げた刀で左腕を失う。凱旋の途中、杭州六和寺に留まり、寺男として、魯智深、林冲の菩提を弔う。

「水滸伝」中半の主人公。
山東省の講談では武松が一番の人気だという。
地元贔屓、「水滸伝」も高校野球もたいして変わりはしないってことか。
それはともかく、ドラマチックな武松物語、虎を素手で倒すインパクトのあるシーンはじめ、確かに魅力的だ。
そして、武松も市民であるということもあげられる。武大殺しを役所に訴えて裁いてもらおうと思ったり…、魯智深や李逵なら、その場で西門慶は首と胴がつながってない、「金瓶梅」は生まれなかった。虎退治して任官して、兄とも再会し、それまで無頼の徒だった武松が市民としてのささやかな幸福を願ったのだ。「水滸伝」っぽくないが、そんな武松が、潘金蓮や西門慶、蒋門神らのために落草せずにはならない切なさが、武松の話のテーマなのだろう。そして、最後の置き土産に、プッツンした武松は鴛鴦楼の惨殺をやってくれるのである。
そうしたストーリーの終焉が、魯智深が杭州六和寺で入寂した後の行動につながるのである。

それとなんだ、もう一つはやっぱり、潘金蓮との件かな。あんまり色っぽい場面のない「水滸伝」で、数少ないドキドキシーンの連続だ。「水滸伝」でも結構濃厚に書かれてるが、のちの人の書く「水滸伝物語」だと、ウヒャウヒャのシーンで、作者もここんとこは楽しんで書いてるだろうな、というのがよくわかる。作家なんていうのは結構すけべえ、というか古今の物語の題材といったら、やはり色と欲であろう。柴田錬三郎「我ら梁山泊の好漢」なんか、ホントね柴錬先生らしい濃厚なスケベさがイキイキした文章だし、杉本苑子の「悲華水滸伝」だと、これでもかという塩梅に孟道州での玉蘭との話まで加わっちゃう。
ちなみに、山東の講釈師の方に聞いた話によれば、武松の物語で一番難しいのは王婆なのだそうだ。婆といってもおばあさんではない、妖艶な色香を残した年増女、性技を極め尽くした仲人婆なれど女の部分を残して演じなければならないのだそうだ。ちょっと余談だが。

董平 風流な人
目立たないんじゃないよ、奥ゆかしいの
人物データ 梁山泊での役職・馬軍五虎将 渾名・双鎗将(所持している武器) 出身地・河東上党郡 外見・風流武者 元の職業・東平府の守備隊長 得意な武器・二本の鎗を自在に操る 特技・宗教、哲学などの学問に通じ、管弦などの楽器も巧みに弾く 性格・武人の豪胆さと風流人の心を持つ 家族・はじめ独身、のちに東平府の知事の娘を略奪し妻とする 仲良し・張清、馬麟、楽和 略歴・東平府の守備隊長の任にある時、梁山泊に攻められ戦う。董平は上司である知事の娘を嫁にと望んでいたが、知事は言葉では調子をあわせているが、その実婚姻には反対だった。そんなしこりがあり、梁山泊に捕らわれ軍門に下った後は、いの一番に東平府に攻め込み、知事の娘を略奪した。 最期・方臘討伐、独松関の戦いで討ち死に。
登場が遅いからイマイチ印象が薄いが、五虎将の一人ってことは梁山泊の主戦の要だ。
でも悲しいかな、目立たないね。同じく最後に登場の張清が、田虎討伐でラブストーリーの主人公になれちゃうのに(実は董平だって略奪婚で派手なんだが、そんなことはすっかり忘れられている)。もっとも、張清には、石投げの派手さで負けてるよな。
戦闘以外で董平の活躍する場面が唯一ある。宴会だ。馬麟が笛を吹き、楽和が歌う。その時、董平はかたわらでひっそりと琴を奏でるのである。この奥ゆかしさが、風流人、董平の魅力でもあろう。

張清 ラブリーな人
石を投げれば美少女に当たる…なわけない
人物データ 梁山泊での役職・馬軍八虎騎 渾名・没羽箭(羽根のない矢、つぶて投げが得意ゆえ) 出身地・彰徳府 外見・狼の腰と猿の腕、彪の体 元の職業・東昌府の守備隊長 得意な武器・つぶて投げ、鎗 特技・つぶて投げは百発百中 性格・ロマンチスト…なんじやないか 家族・はじめ独身、田虎討伐のおり、瓊英を娶る。 仲良し・董平、キョウ(龍の下に共)旺、丁得孫、安道全、皇甫端 略歴・近衛兵から、東昌府の守備隊長に任官。攻めて来る梁山泊を得意のつぶて投げで苦しめるも、結局捕らわれ軍門に下る。田虎討伐では、美少女戦士、瓊英とのラブロマンスあり。 最期・方臘討伐、独松関の戦いで討ち死に。

「水滸伝」の百二十回本、田虎討伐でのハッピーラブストーリーの主人公。
田虎討伐の激戦の中、張清が病で戦線離脱する。あれ、石投げ兄ちゃん、案外体弱いのか、と思っていたら。正月の祝いの席で李逵の不思議な夢の話を聞いた張清、医者の安道全を見てニッコリ笑う。な、何? こいつら。
で、つまるところ、張清は夢の中で、瓊英という美少女に石投げの秘術を教えた。で、教えたついでに、この美少女に一目惚れしちゃったんだと。で、戦線離脱の病は実のところ恋の病。なんか頼りない好漢やが、恋の病も安道全のカウンセリングで全快。恋の病をちょいちょいと治した安道全は凄い、という話はともかく。瓊英は田虎軍の美少女戦士なのだが、実は田虎は親の仇。張清と計った瓊英は無事仇討ちを果たし、宋江軍は勝利を収める。そして、めでたく、張清と瓊英は結ばれるというのがこの恋物語の顛末。
東昌府の戦闘で梁山泊を苦しめた石投げの秘術が、美少女のハートに見事命中、ってな話だ。
東昌府の戦闘の後も、高キュウ(ニンベンに求)との戦いや遼討伐でも石投げの術で大活躍の張清、そして、田虎討伐では美少女と主役の座を射止めたわけだが、さてさて、次の王慶戦になると、石投げで大活躍は瓊英チャンのほうで張清の影は薄い。ここの夫婦って、結構カカア天下だったりして…。

楊志 運の悪い人
楊志の災いは家柄にあり
人物データ 梁山泊での役職・馬軍八虎騎 渾名・青面獣(青面の獣) 出身地・関西 外見・身長七尺五寸、顔に大きな青痣、赤髭 元の職業・軍人(花石綱の輸送) 得意な武器・鎗、刀など色々 特技・武挙合格 性格・生真面目 家族・なし 仲良し・林冲、魯智深、曹正、索超 略歴・代々武官の家柄。関西で武挙に合格、殿司制使となり花石綱の輸送の任に就く。しかし、黄河で舟が横転、やむなく出奔する。再度仕官を望み、高官に賄賂を配り開封へ赴くも、高キュウ(にんべんに求)に門前払いを食う。路銀を使いはたし困り果て、代々伝わる銘刀を売ろうとするが、牛二というならず者に因縁をつけられ、誤って殺してしまう。大名府北京に流罪になるが、行政官梁中書に見出され、武術大会で腕前を披露。梁中書が宰相に贈る生辰綱の輸送隊長となるが、今度はその生辰綱を晁蓋らに強奪される。あまりのことに自殺しようとするが死に切れず、青州まで歩き、魯智深、曹正と知り合い、ともに二竜山を乗っ取り山賊となる。桃花山、白虎山とともに梁山泊に合流。 最期・方臘討伐、丹徒県にて病いに倒れ逗留。丹徒県にて死す。
楊志が生辰綱強奪チームとの再会の場面。昔のことはさらりと水に流した楊志って、やっぱり人格者なんだろうか。
略歴にある通り、武官の家柄に生まれた楊志、結局その家柄にふりまわされてたんだろうな。林冲に梁山泊入りを誘われたの断り、大名府北京で梁中書に抜擢された時も再起に必死になる。その努力の結果が、晁蓋らによって水泡となったのだ。
殺しても飽き足らない、が本音だろうが、楊志も二竜山で魯智深らと過ごすうちに色々もまれて変わったのだろう。
さて、梁山泊での楊志だが、林冲と互角の腕、二竜山ではナンバーツーだったものの、あんまり活躍はしない。野球でいえば中継ぎ投手みたいな感じで、きっちり仕事するが目立たない。そして最期は、病気で戦線離脱し、知らないうちに死んでる。宋江らの凱旋で楊志の死を知った時は、あーいたの、な、なんで知らないうちに死んでるの、と思った。悪運にふりまわされても、大名府北京、生辰綱は主役で目立ってたからいいが、物語の人物としても影が薄いというのは不運としかいいようがない。
楊志の不運は、あまりに立派過ぎた家柄にこだわり過ぎたことと、顔の痣のコンプレックスにあったんだろうな。

徐寧 技能の人
不良親戚には要注意
人物データ 梁山泊での役職・馬軍八虎騎 渾名・金鎗手(所持している武器) 出身地・開封 外見・身長六尺五寸、かっぷくよく、丸くて白い顔、三本の黒髭 元の職業・開封の鎗術師範 得意な武器・金の鎗、鈎鎌鎗 特技・鈎鎌鎗の術(連環馬を唯一破る秘術) 性格・生真面目 家族・妻、息子(徐晟、「水滸後伝」で活躍)、従兄弟(湯隆) 仲良し・林冲、花栄 略歴・先祖代々の軍人。開封にて鎗師範を務める。呼延灼軍に苦戦する梁山泊が、湯隆のすすめで、徐寧を罠に掛け入山させる。 最期・方臘討伐、杭州の戦いで毒矢に当り死す。

とんでもない親戚を持ってしまったものだ。
梁山泊は呼延灼軍の連環馬に苦戦、これを破るには徐寧が知る鈎鎌鎗がなければならない。
梁山泊にいた徐寧の従兄弟の湯隆がそう進言したものだから、呉用の作で、湯隆、時遷、楽和が動く。かくて真面目な武官だった徐寧も梁山泊に落草。梁山泊は呼延灼軍を破り、めでたしめでたしとなる。
梁山泊に下った軍人には、無実の罪で追われてやむなく入山した林冲、義のため宋江と行動をともにした花栄、戦さに敗れ捕らわれて寝返った呼延灼、関勝らもいるが、徐寧の場合は例外中の例外だ。しかし、呼延灼の時にも述べた通り、徐寧もまた根っからの軍人、軍人としての正義のために戦うのであれば、上司は宋江でも高キュウでも大差はないということか。

さて、方臘との戦いで討ち死にした徐寧には徐晟という息子がいた。「水滸後伝」では、呼延灼に助けられた徐晟は、呼延灼の息子、呼延トと義兄弟になり、最後は呼延灼の娘と結婚する。鈎鎌鎗で徐寧に煮え湯を飲まされた呼延灼もなかなかの人格者、いや、梁山泊では同じ軍人同士、案外仲良しさんだったようだ。

索超 先鋒な人
やっぱこの人も盛り上げ役
人物データ 梁山泊での役職・馬軍八虎騎 渾名・急先鋒(まっさきに突撃する将軍) 出身地・河北大名府北京 外見・身長七尺、かっぷく堂々、丸顔、耳が大きい、唇厚く口四角、無精髭 元の職業・大名府北京の守備隊長 得意な武器・大マサカリ 性格・気が短く、竹を割ったような性格 家族・? 仲良し・楊志 略歴・大名府北京で守備隊長を務める。武術大会で楊志と互角の腕を披露。梁山泊が北京を攻めたおりは、先陣を務め奮戦。単身宋江の本陣へ突撃を掛けるが落とし穴に落ち捕らわれ軍門に下る。 最期・方臘討伐、杭州の戦いで北門を攻めるが、石宝の流星鎚で頭を割られ死す。
気が短いというのは欠点なのだろうか。
索超と秦明を見る限り、絶対に欠点だと、私は思う。何度、突撃して落とし穴に落ちれば気が済むんだろう。まぁ、秦明にしろ、索超にしろ、戦闘の盛り上げ役としてはいなくてはならない大事な人なのだ。あの大鉞は確かに目立ってる。

載宗 走る人
水滸伝の時代にも情報戦が勝敗を決める
人物データ 梁山泊での役職・情報主任 通称・載院長 渾名・神行保(韋駄天) 出身地・江州 外見・痩せて長く清く秀でた身丈。 元の職業・江州の牢役人 特技・一日八百里走る神行保の術を使う 性格・面倒見がいい親分肌。 家族・なし 仲良し・宋江、呉用、李逵、張順、楊林 略歴・江州で牢役人の任に就いている時、宋江が流罪になってやって来たので親交を結ぶ。宋江が反逆の詩を読み捕らわれた。その処断を仰ぐ書状を神行歩で運ぶ途中、梁山泊に捕らわれ、呉用の作戦で贋手紙を江州へ届ける。呉用の作戦は失敗、黄文炳という者に贋手紙を見破られ、宋江ともども処刑さけるところを梁山泊一党が刑場を襲撃、助けられる。以後、梁山泊に加わり、得意の神行歩を使い中国全土を走り回り情報収集に務める。 最期・泰山へ登る。

情報主任。
現代の戦争はいわゆる情報戦が勝敗を決めるんだそうだが、宋代の「水滸伝」の世界でも、情報戦が重要であったことは載宗の活躍をみればわかる。
載宗は決してただのパシリではないのだ。
最初の王倫の頃からすでに、梁山泊は麓に朱貴に居酒屋をやらせて、旅人から情報を仕入れていたようだ。
神行歩を使うスーパーマンの載宗が入山してからは、情報室が強化される。居酒屋も四店に増えた。楊林とか、ちょっと使える元泥棒が載宗の手足となり、時遷や楽和が入山してからは、さらに情報室の役割は重要になってくる。
載宗が偉いのは情報収集力に加えて、分析力もあったことか。だてに牢役人やってたわけではない。
って、なんで彼は牢役人なんてやってたんだろう。宋政府だって、神行歩が使える男をもっと重要な情報関連のポジションに就ければいいものを。やはり、載宗は梁山泊にて、はじめて本来の力を発揮できたということか。

劉唐 無法な人
人を見る目のある無法者
人物データ 梁山泊での役職・歩軍頭領 渾名・赤髪鬼(赤い髪の鬼) 出身地・東路州 外見・赤銅色のでかい顔、鬢に赤あざ、あざの上には赤茶の毛、体は黒くて大きい 元の職業・無法者 得意な武器・朴刀 性格・短気、豪胆 家族・なし 仲良し・呉用、阮三兄弟、雷横 略歴・東路州出身のならず者。生辰綱輸送の噂を聞きつけ、強奪の企てを義人として知られる晁蓋に持ちかける。生辰綱強奪事件が露見したので、晁蓋らとともに梁山泊へ入山。 最期・方臘討伐、杭州の戦いで候潮門を攻めるが城門の伏兵の槍に倒れる。
梁山泊には、官軍からの転向組や市民が落草する者があまたいるが、劉唐のような根っからの無法者も多くいる。
劉唐という男はなかなか人を見る目がある。晁蓋に生辰綱強奪を持ちかけるあたり、まず普通の神経ではない、劉唐の無法者としての動物的な感の冴えを感じる。だって、晁蓋がいくら人に知られた豪傑だからって、名主さんだよ。晁家村の村長だ。先祖代々の村を預かる良民なのだ。それが生辰綱強奪なんて大それた悪事に普通はのらない。のらなきゃお話にならないのだが、普通はのらないものである。晁蓋が強奪の話にのる、という確信がなければ、晁蓋のもとを訪ねない。晁蓋が普通の名主なら、その場で縛られて役所に突き出されても仕方がないのだ。
では、もし劉唐が晁蓋を訪ねなければどうなっていただろう。ちょっとシミュレーションしてみよう。
劉唐が十人ばかり無法者を集めて生辰綱輸送部隊を襲撃したら…。まず、楊志に全員叩き斬られていただろう。
つぎに、周辺の山賊を頼っていたら。二竜山に行ったとしたら、多分、魯智深のように門前払いだろう。
桃花山の李忠なら。用心深くてセコイ李忠は、まず劉唐の話にはのらなかったろう。というか、劉唐に生辰綱を襲わせ、それを横取りくらいのことは考えたかもしれない。
最後は梁山泊の王倫を頼っていたら。王倫も多分動かない。いや、林冲に行かせたかもしれないが、輸送隊長が楊志と知ったら、林冲はおそらく引き返して来たであろう。そして、林冲と王倫と対立は激化、この時点では林冲は王倫に抹殺されていたかもしれない。
というわけで、劉唐は晁蓋を頼ったがために、生辰綱強奪は成功。梁山泊は七人の強者を加えて、王倫を廃して勢力を強化した。そして、生辰綱をまんまと盗まれた楊志はふたたび地位を捨てて落草するはめにとなったのである。めでたしめでたし。

李逵 トラブルな人
もう無茶苦茶でござりますな
人物データ 梁山泊での役職・歩軍頭領 渾名・黒旋風(黒いつむじ風)、鉄牛(子供の頃、二頭の牛を角を持ってぶん投げた) 出身地・沂水県 外見・黒い体は熊のごとく、皮は厚く牛のごとく、赤き目、鉄の刷けような髪 元の職業・無法者(登場時は、江州で牢番の下働き) 得意な武器・二丁の鉞 性格・酒癖が悪い、天真爛漫、人殺し大好き、軽はずみでひょうきん者、親孝行、宋江を限りなく敬愛し、彼のためなら命もいらない 家族・母(沂水県の峠道で虎に食べられる)、兄(李達) 仲良し・宋江、呉用、載宗、燕青、鮑旭、李袞、項充、樊瑞、湯隆 略歴・沂水県に生まれるが、人を殺して出奔。恩赦があるが帰郷せず、江州で牢城の下役となる。載宗に可愛がられ、宋江が流されて来た後、親交を結ぶ。宋江、載宗が処刑されそうになった時、二丁の鉞をふりまわし刑場に乱入、梁山泊一党とともに二人を助け、共に梁山泊に加わる。沂水県に母を迎えに行き血の雨を降らせ、その後も度々トラブルを起こすも、どこか憎めない男なのである。 最期・潤州司令官に任官するも、宋江に毒を盛られ、「あの世でも兄貴にお仕えする」と笑いながら死んでゆく。
李逵については、正直なんと言っていいかわからんのですよ。
トラブルを起こすおかし味というのは確かにあります。ドラマの盛り上げ役としてはなくてはならない人物でしょうね。
でも、あんたやり過ぎちゃいまんねん、と言いたいようなことばかり(そこが「水滸伝」のおもしろ味なのですが)。戦闘では、敵味方の区別なき殺戮マシーンと化す。最初の江州での宋江、載宗救出の場面での群集を殺しまくるシーンにはじまり、三打祝家での同盟軍の雇家荘殴り込みといい、殺しっぷりの異常さにはちょっと驚きを隠せません。滄州での朱仝とのこと(これは呉用の作戦ではあったものの)、薊州で羅真人を斬ったことなども、そういうことを普通はするか(李逵に普通を求めちゃいかんのだが)という思いがします。鮑旭が入山後はリーダーとしての自覚が出来たのか、いや、燕青が睨みをきかせているかはしらんが、ちょっとは戦闘での無茶は減ったものの、李逵の行動は笑い事じゃすまされません。
天殺星だから仕方ないが、李逵が無闇に人を殺すと、今の時代、殺人の肯定とか、公序良俗に反するとか言って発禁本にでもなりかねないからね。
李逵にとって殺人は悪でない。ものごとの解決には拳骨が一番。わかりやすいと言えばわかりやすい。親孝行で一本気だから、そういう意味ではいい奴なのかもしれないが。
李逵の信念の一つは、宋江を限りなく敬愛していることだ。それも、有名人の宋江が最初に会った時に優しくしてくれた、お金を貸してくれた、やはり自分の敬愛する載宗と仲良しだった、そんなことが理由である。つまり第一印象がよかったから、もう宋江様々になっちゃった。単純な奴だ。実際、梁山泊ではよく反目している。宋江と李逵は。李逵はよく宋江に怒鳴られるし、へそをまげて山を降りちゃったりもしている。でも根本のところでは、絶対に宋江を裏切らないのが李逵なのだ。「水滸伝」のラストシーンの一つ、李逵が宋江の毒杯を黙って飲む場面はやはり感動的だ。この場面があっての「水滸伝」だと思う。
そうね、唯一、李逵が宋江を殺そうとした場面がある。牛頭山の山賊が宋江の名を騙り村を襲い娘をさらった時だ。疑いはすぐに晴れ、李逵は大恥をかき宋江に詫びるが、たとえ宋江であっても悪事は許さない李逵の一本気な性格か。いや、宋江が村の可愛い娘チャンをさらったと聞いて、ホモセクシャル的な愛情で宋江を慕っている李逵が焼餅を焼いたという人もいる。そう言えば、三打祝家の時も、李逵は宋江が扈三娘に優しくしたことに対してあきらかに焼餅を焼いている。うーん、ますますなんて言ってよいのかわからん。

史進 アイドルな人
縛られても絵になる九紋龍
人物データ 梁山泊での役職・馬軍八虎騎 渾名・九紋龍(九匹の龍、九枚鱗の龍など、刺青が渾名)、史大郎(史家の長男) 出身地・華陰県史家村 外見・全身龍の刺青、銀の皿のような顔(男前ということか) 元の職業・史家村の名主の若旦那 得意な武器・三尖両刀、棒 特技・男っぷりがいいことか 性格・お坊ちゃん育ちで世間知らず、ナルシスト 家族・父(宋太公、死去) 仲良し・魯智深、李忠、朱武、陳達、楊春、穆弘 略歴・華陰県史家村の名主の若旦那で、武芸道楽が昂じて背中に九紋龍の刺青を入れる。元八十万禁軍武芸師範の王進に武芸の手ほどきを受ける。父の死後、少華山の山賊と対立。陳達を打ち負かすが、やがて少華山の山賊たちと親交を結ぶ。そのことが官に知れ、史家村を捨てて出奔。渭州で魯達(のちの魯智深)と会う。魯達が関西鎮を殴り殺したたため、逃亡。道中、路銀を使い果たし、山東で強盗に落ちぶれたところ、魯智深と再会、二人で瓦罐寺の悪党を退治。その後、少華山を頼る。画家の王義親子を助け、華陰県の知事と対立していたところ、梁山泊一党に助けられ、梁山泊に合流。 最期・方臘討伐、c嶺関にて、ホウ万春の矢に倒れる。
登場からまずカッコいい。
もろ肌脱ぎの背中に汗をしたたらせ武芸の稽古に励む若者、その背中には九紋龍の刺青。「水滸伝」はまずこの若者の登場で女性ファンを釘付けにする。
ところがなんだろうね、格好よく登場した史進は二回目で消えて、次は丸顔でむじな髭の魯智深が主役、まぁ、いいや、このオヤジもなんかひょうきんで面白いからと読みすすめると、今度は武ばった軍人さんの林師範に主役が代わる。林冲は真面目な愛妻家で、これが理不尽な権力者のために不幸のどん底に落とされて、このへんまでは女性ファンも読んでて楽しいが、次は根暗の顔痣男、そして、ならず者がぞろぞろ出て来て、ここらへんで女性ファンが離れてゆくのが「水滸伝」なんだろうな。
なんにせよ、史進、格好よくてお坊ちゃん。こういうキャラクターがいなくちゃ物語は面白くありません。
しかし、ホント、お坊ちゃん。金離れがいいのはよいが、あり金使い果たして強盗に、普通はなるか?
東平府攻めでは、なじみの女郎に手玉に取られて、あっさり縛られちゃう。背中の九紋龍が泣きますぜ。って、そういうのもまた女性ファンの心をくすぐるんだろうね。もう、史進チャンは私が守って上げなきゃ、みたいな。あと、九紋龍に縄目が食い込み、苦悶の表情を浮かべるいい男っていうのに、ちょっとサディストっぽい気分が刺激されて、またまた女性ファンの人気急上昇。まぁ、いい男はどんなポーズでも絵になるってことでしょうか。
梁山泊にもアイドル系がいたというお話。

穆弘 若様な人
江州騒乱の前線基地提供
人物データ 梁山泊での役職・馬軍八虎騎 渾名・没遮攬(怒らせたら手がつけられない男) 出身地・掲陽鎮 外見・銀盆のような顔、体は丸い大男、頭は丸く、目と眉は細い 元の職業・掲陽鎮の名主の若旦那 得意な武器・朴刀 性格・怒ると誰も止められない、弟想い 家族・父(穆太公)、弟(穆春) 仲良し・李俊、童威、童猛、張横、李立、薛永、史進 略歴・掲陽鎮の名主の若旦那で、李俊、張横らと親交を結ぶ。流罪になった宋江と知り合う。宋江が江州で死刑になるところを、李俊らとともに助けに行き、ともに梁山泊に加わる。 最期・方臘討伐の途中、杭州にて流行病に倒れる。
パラサイト兄弟だね。
いや、金持ちの若旦那は他にもいる。史進、孔兄弟、親の権力を利用しているという点では施恩とか。でも、なんか穆弘、穆春の兄弟は、活躍の場面がほとんどないのに、若旦那ぶりばかりが強調されてるように思われる。
なんにせよ、江州で処刑されかかった宋江を助けた梁山泊一党が、李俊らとともにまず落ち着く場所が掲陽鎮の穆太公の屋敷だ。そしてここが無為軍攻撃の前線基地となる。基地提供という重要な役割を担う、穆弘は…、穆一家はなくてはならない存在といえよう。
家柄、財産、環境というのもまた、その人の重要なキャラクターであると思う。

雷横 下積みの人
凸凹コンビの凹です
人物データ 梁山泊での役職・歩軍頭領 渾名・挿翅虎〔羽根のある虎) 出身地・ウン城県 外見・身長七尺五寸、顔は赤銅色で髭は左右にはね上がっている 元の職業・捕物役人、その前は、鍛冶屋、米搗き、牛殺しなど職を転々 得意な武器・朴刀 特技・二三丈の幅の川をジャンプして跳び越える 性格・意固地だが義理に篤い 家族・母 仲良し・宋江、朱仝、劉唐 略歴・ウン城県の貧乏人の家に生まれ、職を転々とするうち博打と喧嘩を覚え、ならず者と付き合う。腕を見込まれ、捕物役人となり、朱仝とコンビを組んで、晁蓋、宋江の逃亡を幇助。母親を愚弄した旅芸人の白秋英を殴り殺すが、これが知事の妾で、あわや死刑になるところを朱仝により逃がされ、梁山泊を頼る。 最期・方臘討伐、徳清県の戦いで、司行方に討たれる。
朱仝とのコンビはなんとも対称的である。
雷横だって七尺五寸も身長があるのに、朱仝がもっとでかいから凸凹コンビの印象がある。何より、朱仝が金持ちの家の子なのに対し、雷横は貧乏人の家の子。職を転々としているという苦労人で、そのへんの対象ぶりが際立つ。
若様と苦労人と例えるとどっちも偉そうだが、金持ちと貧乏とか、上品と下品とか、わけると、ちょっと雷横が可哀想でもあるな。実際に、朱仝は戦闘以外ではたいして活躍してないのに対し、職を転々とした苦労人の雷横は、武器製造の補助とか、随時色々なところに借り出される。重宝な存在だ。
朱仝と雷横、捕物役人時代は同僚なのに、すこぶる仲が悪い。ともに義侠心あふれ、晁蓋や宋江を逃がしたいという目的は同じなのに、あいつは気が利かないとか、堅物だとか勝手に思い込んで、お互いに騙しあってる。そこんところが、おかしみであるのだけれどね。
急に仲良くなるのは、朱仝が雷横の危難を助け逃がした時から。ために朱仝はとても嫌な思いをするはめになるのだが、梁山泊ではコンビで大活躍。雷横の死後、「水滸後伝」でも朱仝は雷横の老母の面倒を見ているのだから、人間関係なんて、ちょっとしたことで変わるものなのだろう。

李俊 王様な人
水軍頭領は「水滸後伝」の主役
人物データ 梁山泊での役職・水軍頭領 渾名・混江龍(揚子江を泳ぐ龍) 出身地・盧州 外見・身長八尺、眉太く、目が大きい 元の職業・船頭の親分 得意な武器・霜鉾 特技・泳ぎ、操舵、統率力 性格・親分肌でロマンチスト 家族・なし 仲良し・童威、童猛、張横、張順、穆弘、穆春、李立、宋江、阮三兄弟、薛永、楽和 略歴・潯陽江で、船頭や塩の密売人を束ねていた。穆兄弟、張横、李立と親交。流刑地に向かう宋江と会い、義兄弟となる。宋江が死刑になるところを、張兄弟、穆兄弟らと助けに行き、梁山泊一党と合流。梁山泊では水軍を束ねる。 最期・方臘討伐の後、童威、童猛とともにシャムに渡る。
宋江同様(と言うと怒る人いる?)カリスマ性のある人である。
掲陽鎮でも、穆兄弟や童兄弟、張兄弟から親分として慕われているし、さて、梁山泊でも、前からいる阮兄弟を置いて水軍のトップの座につく。年齢とか経験値とか色々な要件があるのだろうが、天性のカリスマ性というのが、やはり李俊にはあるのだろう。
梁山泊で水軍を率いて度々活躍の李俊だが、なんと言っても最後、宋江に別れを告げ、童威、童猛とともにシャムへ渡った、という一行をもとに作られた「水滸後伝」へとつづく発想の面白さには舌を巻く。「水滸後伝」の作者のオタッキーぶりに拍手だ。そして、ここでも李俊のカリスマ性は際立ち、シャムの奸臣や日本軍をやっつけて、最後はシャムの王様になったという、めでたしめでたし。

阮小二 兄貴な人
石碣村の荒神様
人物データ 梁山泊での役職・水軍頭領 渾名・立地太歳(荒神様) 出身地・済州石碣村 外見・くぼみ眼、両眉は立ち、大きな口、黄色の胸毛 元の職業・漁師 得意な武器・叉 特技・操舵、泳ぎ 性格・三兄弟の中では冷静沈着 家族・母、妻、弟(小五、小七)、他に姉と妹がいるらしい 仲良し・呉用、劉唐、李俊、張兄弟、孟康 略歴・石碣村で漁師をしていたが、呉用に誘われ、生辰綱強奪に加わる。以後、呉用らと行動をともにする。梁山泊では、水軍として活躍 最期・方臘討伐、烏龍嶺攻め、長江の戦いで罠に掛かり捕らわれそうになるところを自害。
梁山泊になくてはならない水軍の要。三兄弟の長男。
この三兄弟って、似ているようで違う。そこが「水滸伝」の面白いところでもある。
小二は、長兄らしく案外どっしり構えている。唯一の妻帯者であり、水軍のリーダーの趣がある。もっとも、超軽いノリの三兄弟の中では、という話で、梁山泊水軍に李俊が来て、水軍として統率されてからのほうが、リーダーの枷がとれてか、案外のびのびと活躍している。
時に、よく聞かれるのは、なんで長男が「小二」、次男が「小五」、三男が「小七」と、二五七で進むのかという謎である。なんでも小二の上に一人姉がいて(仮に女一としよう)、小二は長男だけど二番目、以下、小二と小五の間には、女三、女四がいる、という塩梅だそうだ。聞いた話なので、ホントかどうかは知らないが。

張横 強盗船頭な人
弟コンプレックスの兄の悲哀
人物データ 梁山泊での役職・水軍頭領 渾名・船火児(船乗り) 出身地・小孤山 外見・身長七尺、眼は三角、黄髭赤髪 元の職業・船頭 得意な武器・板刀 特技・操舵 性格・弟想い、やや短慮 家族・弟(張順) 仲良し・李俊、童威、童猛、穆弘、穆春、李立、阮三兄弟 略歴・潯陽江で弟の張順と強盗船頭をしていたが、張順が江州へ行ってしまってからは泣かず飛ばず。そこへ金を持っていそうな流刑人、川の中に舟を出し殺そうとしたところ、李俊らに止められる。流刑人は山東で名高い好漢の宋江だった。宋江が死刑になるとの知らせを張順がもたらし、李俊らとともに助けに行き梁山泊に合流。最期・方臘討伐、杭州にて張順の死を知り、放心状態となり、そのまま病で死す。
弟の張順の陰に隠れて目立たない存在だ。
張順がなんとなく陽なのに対し、張横は陰。張順は活動的で、張横は保守的。物語「水滸伝」の中での役割が張順のほうが多いだけで、そんなことはない、という人もいるかもしれないが。いや、張横はもの凄い保守的な性格で、活動的な弟へのコンプレックスのようなものを随所に感じる。
弟は強盗船頭稼業を嫌って江州へ。弟は魚屋で成功し、兄貴は相変わらずの強盗稼業。しかも、弟がいなくなって以来、とんと落ちぶれの身。自分を変えることの出来ない男の悲哀とでもいうか。
張横が一番輝いた瞬間がある。「水滸伝」には描かれていないシーンだ。宋江を助けようと、張順が掲陽鎮へ走る。今日も張横は潯陽江にもやった舟で昼寝の最中、そこへ飛び込んで来た張順、「兄貴、力を貸してくれ。宋押司が大変だ」。弟が頼って来てくれた。どうしようもない兄貴を頼って、江州からはるばる来てくれた。張横は嬉しかったに違いない。その日一日、張横はあちこち走り回った。穆太公の屋敷へ、次に潯陽江を李俊や童兄弟を探し回り、掲陽嶺の李立にもつなぎをとり…。そして、一同を説得した。「宋押司を助けに江州へくり出そう」。勿論、宋江と義兄弟の李俊や、宋江に世話になった薛永は何をさておいても江州へ駆けつけるつもりだ。李俊の子分の童兄弟や李立も従う。そして、張横も勿論一行に加わり江州へ向かうのだが、張横の気持ちは、宋江を助けようという気持ちよりも、頼って来た弟のためにではなかったと思われる。弟のために、命をかけて戦うことが、張横をふるい立たせ梁山泊への道を歩かせた、そんな話はいかがか。
かつては、去る弟、残る兄として袂を分かれた兄弟が、今度はともに梁山泊へのぼる。しかし、張順は度々手柄を立てるが、張横は水軍の一員というだけで、目立つ活躍はない。関勝との戦いで功をあせった張横の気持ちがよくわかる。
最後が悲しいね。涌金門で死んだ張順の魂が、弟の死を知らない張横に乗り移り、張横は敵の将軍を捕らえて手柄を立てる。しかし、弟の死を知った張横はそのまま倒れ、病にかかり死んでしまう。二人の兄弟の絆がなんとも痛ましくも哀しい物語である。

阮小五 まんなかの人
石碣村の乱暴者
人物データ 梁山泊での役職・水軍頭領 渾名・短命二郎(まわりの人間を短命にする次男坊) 出身地・済州石碣村 外見・鉄棒のような腕、眼は銅鈴のよう、眉に殺気、胸に青黒い刺青あり 元の職業・漁師 得意な武器・叉 特技・操舵、泳ぎ、拳法 性格・気性が荒い 家族・母、兄(小二)、弟(小七)、他姉と妹がいるらしい 仲良し・呉用、劉唐、李俊、張兄弟 略歴・石碣村で兄、弟と漁師をしていたが、呉用に誘われ、生辰綱強奪に加わる。以後、呉用らと行動をともにする。 最期・方臘討伐、清渓の戦いで敵城内潜入中、婁丞相に殺される。
三兄弟の中の暴れん坊。
渾名がなんたって凄い。最初、「短命二郎」って渾名見て、縁起の悪い渾名だな、と思ったけど、そうじゃない。「まわりの人間を短命にする…」だからね。
目立つ存在ではないが、小二と小七の間で睨みをきかせている、こいつの存在意味は大きいぞ。 

張順 泳ぐ人
国芳描く「水滸伝」の好漢
人物データ 梁山泊での役職・水軍頭領 渾名・浪裏白跳(波の上を駆ける白い魚) 出身地・小孤山 外見・身長六尺五寸、三筋の髭、白い体 元の職業・魚屋の元締 得意な武器・蓼葉刀 特技・泳ぎ(水の中で七日七晩過ごすことが出来る) 性格・一本気 家族・兄(張横) 仲良し・宋江、李逵、載宗、李俊、童威、童猛、安道全、王定六 略歴・兄、張横と潯陽江で強盗船頭をしていたが、いつまでも強盗などしていられないと、江州へ。魚売りから、腕と度胸と商才で魚問屋の元締にのし上がる。流罪になった宋江と親交。宋江が死刑になるのを、潯陽江へ走り、張横、李俊らの力を借り救出に向かう。伊後、梁山泊と合流。 最期・方臘討伐、杭州の戦い、涌金門を単独で破ろうと試みる敵に発見され、矢玉を嵐のように浴び死す。
七日七晩水の中で過ごすことが出来る(?)河童みたいな男。
なんたって、水中戦では李逵を沈めちまうし、官軍の精鋭部隊も張順一人に全滅させられちゃう。
水練の達人であることが際立つが、結構こまめに走り回ってもいる。活躍は、安道全を呼びに建康府へ行く話か。案の定、長江で強盗船頭に捕まり、川に放り込まれるのだが、強盗船頭は馬鹿だね。河童を川に放り込んでもどうなるものでもない。らくらく岸に泳ぎ着いた張順、川のほとりの居酒屋、王定六の着物を借りて城内へ。強盗船頭叩き殺して、安道全を連れて行くという。なかなかの活躍ぶりである。
そして、最期が杭州湧金門での壮絶な討ち死にだ。歌川国芳の浮世絵、水門破りがその勇姿を今日に伝えてくれている。

阮小七 末っ子な人
石碣村のやんちゃ閻魔
人物データ 梁山泊での役職・水軍頭領 渾名・活閻羅(生きている地獄の使者) 出身地・済州石碣村 外見・顔にできものあり、体に烏黒の点、淡黄の髭 元の職業・漁師 得意な武器・叉 特技・操舵、泳ぎ 性格・お茶目で気が利く 家族・母、兄(小二、小五)、姉がいるらしい 仲良し・呉用、劉唐、李俊、張兄弟、李逵 略歴・石碣村で兄らと漁師。呉用に誘われ、生辰綱強奪し、梁山泊へ。最期・蓋天軍の司令官に任官するが、王稟と趙譚の恨みを買い諫言を受け官位を剥奪される。石碣村へ戻り、漁師となり、老母に孝養を尽くした。
三兄弟の末っ子。
末っ子でやんちゃ小僧だが、三兄弟は全員やんちゃだから、案外目立たない。一番おもしろいのが、官が招安のために降された酒を飲んじまって、どぶろくをつめといたところか。
三兄弟の中で唯一生き残り、晩年は漁師として石碣村で暮らしたというが、「水滸後伝」では、兄貴や好漢たちと酒を酌み交わしに梁山泊の跡へおもむいたのを謀反の嫌疑を掛けられ、捕り方皆殺しにして出奔という、のっけから派手なことをしてくれます。やっぱそうとうのやんちゃ小僧ね。




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