重光煤礦の情景 


台北近郊の山間は古くより炭鉱が点在し、そこに敷かれるトロッコや機関車たちは日本の鉄
道趣味誌でもたびたび紹介されてきた。平溪線の沿線にも炭鉱が散在し、十分站を下車し基
隆河の対岸にあったのがご紹介する重光煤礦である。
 
 普段僕はトロッコの類に接する機会がなく、その魅力を知らないでいた。
 1991年頃のある日、友人が重光煤礦で撮影した写真やビデオ映像を見る機会があり、いつ
かチャンスがあれば一度訪ねてみたいと考えるようになった。
 しかし、実際には日々の生活に追われ、重光訪問の夢は叶わずに年月だけが過ぎていっ
た。そしてその後、「重光は近いうちに閉山らしい」との噂に接し、もう現物を見ることはないだ
ろうと諦めていた。
 そう思っていた矢先、「重光はまだ動いていますよ」との情報を得、この機会を逃してはいけ
ないと一念発起、1996年の年末台湾へ旅立ったのである。

撮影  1996年12月26日

撮影機材
     モノクロ Nikon F3 50mmF2.0 24mmF2.8
     カラー  Nikon-mini 28mm F3.5

※この撮影の約半年後、重光煤礦はついに閉山し、山の歴史に終止符を打った。

重光煤礦操業中
まだインターネットの情報など無い頃なので、「まだ操業しているらしい」という噂だけが頼りであった。
日は雨が止んだばかりの暗い空の下、友人が書いてくれた手書きの地図を頼りに歩いて行った。
かつては炭鉱から十分站までトロッコ列車が石炭を運搬していたが、すでに道路が整備されてトラック輸送に代わり、道端には廃線の軌道が残るだけであった。小高い山に囲まれた寂しいその道を20分ばかり進むと急に視界が開け、川を挟んだ向かいの山腹に重光煤礦が姿を現した。
見れば、操業中であることを示すように煙が立ち昇り、インクラインで鉱車が上下しているではないか。
「よかった!動いていた!」
写真は下流側にある第1坑。

第1坑
ガソリンロコと犬
この時、重光煤礦は下流側の第1坑と上流側の第2坑で石炭を掘削していた。
写真は第1坑の軌道。ガソリンエンジンの機関車が頻繁に往復し、鉱車の列を牽引していた。
選炭場のインクラインの下が軌道の運行拠点で、数本の側線や休憩所がある。
機関車が小休止のためにエンジンを止めると周辺は静寂に包まれる。
見れば機関車の前でレールを枕に犬たちが昼寝をしている。(TMS1997-5)

鉱車を牽いてやって来た
木陰の向こうからガソリンエンジンの音が聞こえ、ガソリン機関車が姿を現す。
速度が遅いので目の前を通り過ぎるまで何枚も撮影ができた。
運転しているのは笠を頭にのせたおばさん達だ。

坑口のインクライン
こちらは坑口から鉱車を引き上げるインクライン。
画面左手に坑口がある。

巻上装置の下を行くトロッコ
インクラインの巻上装置の下に本線が敷かれていた。
すでに閉山か噂されていたとはいえ、列車は頻繁に往復し、実に活気があった。

インクラインより引上線を望む
坑口のインクライン脇から眺めた構図。
鉱車はインクラインから画面右手の落石防止の屋根をくぐって、画面中央の引上線へ。
そこで編成が仕立てられ、機関車に牽引されて画面左の線を進み選炭場へ行く。

列車が過ぎると長閑な雰囲気に
なぜか一帯には犬が多く、日本から訪れるファンから「重光犬」と称されたりした。
私のような外来者を威嚇することもなく、至っておとなしかった。

作業場を縫うように進む 1
短い軌道ではあったが、線路脇には作業場や建屋などが散在していた。
廃トランスと作業場の間を抜けていくところ。

作業場を縫うように進む 2
職員が植えたものだろうか。
12月というのに赤い花をつけた低木が軌道脇に植わっていた。
こうして眺めると、線路の曲がり具合といい、車輛がいなくてもなかなか刺激的な情景である。

次の鉱車がやって来た
空の鉱車を牽いて目の前を過ぎていく。
速度があまりに遅いので、走れば追い抜くことが可能であった。

第2坑
上部軌道のインクライン 1
写真は第2坑、つまり上部軌道。
画面の足元に坑口がある。
画面奥の巻上機で鉱車が引き上げられ、転轍を切り替え画面右手に導かれる。

上部軌道のインクライン 2
画面背後が坑口。
坑口から引き上げられた鉱車は、右手へ進み側線で編成が仕立てられる。

側線で待機のガソリン機関車
左が坑口。
ここの側線で編成が組まれ、ガソリン機関車で右手の積出施設へ。
画面奥を左より右へ沢が流れている。鉱車の止まっている向こうは沢に架かる木橋、ティンバートレッスルだ。橋を渡るとズリ捨場がある。

いざ出発!
側線で編成に仕立てられた鉱車がガソリン機関車に牽引されて出発。
この先の終端がトラックに積み込む施設なっている。

終端付近に到着
機関車に牽引された鉱車が終端付近に到着。
ここで軌道は数本の側線に別れ、編成は適宜分割される。
それにしても機関車の図体に比べて連結用鎖のなんとゴツイこと。(TMS1997-5)

積込施設
編成を解かれた鉱車は、おばさんたちの手押しで積込施設へと進む。
鉱車はこのドラムの中で転地逆転し、トラックへ積み替えられる。




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