BVB (Bex-Villars-Bretaye)

2006.4.10 UPDATE

Bexと書いてベーと読みます。
 僕がベーから出ているBVBを訪ねたのは1991年5月のことです。

 当初の旅の計画ではフランス語圏スイス南西部の街Aigle(エグル)から出ている私鉄3A、つ
まりASD、AL、AOMCを一通り乗ってみるつもりでした。しかし、どういう訳かALは運休中で代
行バスが走っている状況でした。僕はエグルの駅前広場に3社の私鉄電車が並ぶ情景を楽し
みにしていたので残念でした。
 というような事情でALには乗れず、空いた時間で近くのBVBを訪ねた次第です。

 1991年の中欧の春は天候不順で、連日の曇天と小雨、小雪。ベーの駅に降りたその日も重
たい曇り空でした。
 国鉄SBBの駅前広場へ出ると、既にBVBの正面一枚窓の赤い電車が客待ちをしていまし
た。正面の表情が何となく珍妙で、僕は何故か妖怪の「カラ傘」を連想しました。
 この電車BDeh4/4 20型、実際に見ると割合大柄でスマートな印象です。



 車内を見れば運転台は仕切りのない開放型。下り側の出入口と客室の間が荷物室になって
いて自転車が載っていました。
 12:37、10人ほどの客を乗せて中間のヴィラー(Villar)行き電車は発車しました。
 国鉄ベー駅は町外れにある殺風景なところです。電車は駅前からまっすぐに伸びる道路の
傍らをダーッと走り出します。やがて中層の石造りの建物が集まるベーの町が見えてきます。
ショーウインドウが並ぶ目抜き通りの路面に最徐行で入って行きます。あるところでは小型自
動車2台分程度の道幅しかなく、しかも道はカーブしているという具合です。けっして小型でない
この電車が、こんなところを通ってよいのだろうかという印象でした。

 電停を発車すると街は尽きて山が近くなります。
 やがて車庫があるべヴュー(Bevieux)です。構内には美しく手入れをされた電車が並んでい
ます。




左のBDeh4/4 20型はラック式で終点まで運行される。1941年製。現在は更新を受けている。
右のCe2/3 15型はラック非対応で路面区間専用。1945年製。3軸車で中間軸は遊軸である。正面の開閉式窓がユ
ニークだが現在は更新されてしまった。

 べヴューを発車すると線路は路肩から外れラックレールによる登坂が始まります。ラック方式
はアプトです。勾配は150‰を超えると思われるきついものでした。



 やがて右手の沢に水力発電所が見えます。建物にBVBという字が読めたので鉄道直営の発
電所でしょう。風格を感じさせる建物であるとともに、こんな小さな鉄道でも発電所を備えるとい
う奥の深さを実感しました。
 Fontannaz-Seulazという小さな駅を出ると更に勾配がきつくなったようです。このあたりが最
急勾配200‰だと思われます。車窓の向こうを斜めになった杉木立がゆっくり流れ、ラックの噛
み合う音が響いてきます。
 Gryonのあたりからは再び平坦な併用軌道になります。
 運転席は進行方向に対してやや右に寄っていて、その左側には2人程度が腰を下ろせる座
席が長手方向についています。ベーからこの座席に座っている小父さんは運転士と顔馴染み
なのか、ずっと話しっぱなしです。そして運転士の手にはタバコが煙を上げているあたりは、ス
イスといってもフランス語圏へ来ると律儀なドイツ語圏とは大分違うものだな、と実感しました。
 13:22、ヴィラーへ到着しました。この電車はここまでです。


1907年製のCe2/2 8

 駅の周囲には大きなリゾートホテルやリゾートマンションが目につきます。
 この駅の構内配線はデルタ線を形成しています。駅本屋の前には骨董級の8号単車が郵便
貨車を従えて止まっています。
 僕は終点へ向かうので乗換えです。 
 13:30発のコル・ド・ブルタユ(Col-de-Bretaye)行き電車はデルタ線の一辺に停まっていまし
た。閑散期のためここから先は1日4往復だけの運行です。
 定刻にベーから乗ったのと同型の電車は無蓋貨車を推進して発車です。客は僕と地元の小
母さんの2人だけ。今度の運転士は紳士的な人物です。



 電車は170‰の勾配をグイグイ上って行きます。
 そのうちに霧が出てきました。
 ヴィラーを出て20分、電車は終点のブルタユ(標高1806m)へ到着しました。



 周辺はスキー場だけです。
 冬のシーズンはこの電車がリフト代わりになるのかもしれません。5月になっているのに地面
はまだ一面雪に覆われています。
 人影はなく、することもないので折り返しの電車に乗車し、車庫に寄りながら山を下りました。
 


 ベーに戻って国鉄駅の待合室から窓越しにBVBの電車が見えました。
 スイス狭軌私鉄の書籍「Schmalspurparadies Schweitz」を読むとBVBの解説に「もっとも興味
深いスイス狭軌私鉄のひとつである」とあり、今日こうして乗車をし、そのことがよく分かりまし
た。

BVBのデータ
軌間:1000mm
電気方式:直流700v
路線長:17.088km
最急勾配:200‰
ラック方式:Abt
隋道箇所:1
橋梁箇所:9

LINKS:BVBはエグル(Aigle)の3私鉄(ASD、AL、AOMC)と共にTPCグループの一員


国鉄駅からの貨物受渡しに活躍するBVBの2軸凸電(Te2/2 41)
ボンネットの切込みが特徴。

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