アフリカから中近東にかけて、おもに砂漠地帯に、有史以前の岩絵が残されている。描かれたのは今から2000〜1000年前といわれ、時代によって描かれるものも変わってきているようである。今日では辺境と呼ばれるような所ばかりに、古代の芸術作品が存在するのか、不思議である。

アルジェリア
 タッシリ・ナジェール(世界遺産)
 タッシリ・ナジェールはアルジェリアの南東に広がる高地で、リビアのアカクスとともに古代の岩絵で知られる。岩絵は古いものでは紀元前1万年前にさかのぼり、そのころはキリンや象がいる緑の台地だったというから驚きである。岩絵の多くは車では行かれない台地の上にあり、数泊かけたキャンプでないと見られないため、今回はジャネットの街から4WDで行かれる所だけをまわった。それでも、岩絵のポイントが何箇所もあり、はっきりそれとわかるものが多かったので思っていたより楽しめた。しかしここの見所はなんといっても砂漠そのもので、どこまでも砂と岩の世界が続き、行く手をふさぐような砂丘を4WDが越えられず大苦戦するなど、砂漠が生きていることを実感できた。
2006.4 ジャネット近郊
2006.4 ジャネット近郊の岩絵 2006.4 ジャネット近郊の牛の線刻画
 ☆世界遺産「タッシリ・ナジェール」 1982年登録
リビア
紀元前12000年頃から紀元前数百年前にかけて描かれた。写真は残念ながらトリポリの博物館にあるコピーで、本物は砂漠の中を数日走らないと見ることができない。
 アカクス山中の岩画  
2003.9 トリポリ博物館にて
ヨルダン
 ワディ・ラム(世界遺産)  
 ヨルダン南部にある岩と砂漠の世界で、映画「アラビアのロレンス」の舞台として知られる。ナバテア人の岩絵が残されていて、複合遺産となっている。トラックの荷台のような所に乗って走り回ったが、砂漠ドライブはこの時が初めての体験だったので、砂漠の魅力に取りつかれたところである。紅い砂がとても印象的で、車を降りると着ている物まで紅くなっていた。
1998.9
 ☆世界遺産「ワディ・ラム保護区」 2011年登録
アゼルバイジャン
 ゴブスタンの岩絵(世界遺産)  
 バクー近郊の、カスピ海を見下ろす丘の上にある。ここの岩絵も今から1万年以上前に描かれ始めたといわれる。今では乾いた大地だが、当時はカスピ海の海岸線も近く、緑に覆われていたらしい。
 ここはタッシリ・ナジェールなどに比べて、岩絵の密度が濃い。少し歩くごとに新たな岩絵が次々と現れ、1時間ほどの観光でかなり多くの絵を見ることができた。描かれているものも、動物、人、船などさまざまである。
2011.8 ゴブスタンの岩絵 2011.8 ゴブスタンの岩絵
 ☆世界遺産「ゴブスタンの岩絵の文化的景観」 2007年登録
ナミビア
 トゥウォイフェルフォンテン(世界遺産) 
 通称「ブッシュマン」と呼ばれるサン族が残した岩絵で、ナミビア初の世界遺産。とても狭い範囲に多くの絵が集中している。ライオン、キリンなどの野生動物が多く、オットセイやペンギンまで描かれている。
2018.5 尾が人の手のような「ライオンマン」 2018.5 右がオットセイと言われる
 ☆世界遺産「トゥウォイフェルフォンテン」 2007年登録

岩絵の時代