15〜16世紀に誕生したインカ帝国は標高2000m〜4000mといった高地に栄えたが、ペルーの山岳地域は紀元前の時代から高度な文化がいくつも生まれている。紀元前800年〜200年頃に栄えたチャビン・デ・ワンタルが代表的なものであるが、クントゥル・ワシやカハマルカ盆地のワカロマなどはさらに古い時代から存在したとみられている。

ペルー・アンカシュ州
 チャビン・デ・ワンタル(世界遺産) 
 紀元前1000年頃から、アンデスの山岳地域にいくつもの年が築かれたが、中でももっとも立派なものがチャビン・デ・ワンタルといわれる。標高3150mの高地にあり、海岸部から行くとブランカ山群を越えなければたどり着けないので、古代都市があるとは信じがたいロケーションである。ここは古代の祭祀センターと考えられており、文化的にはクントゥル・ワシなど他の遺跡とつながりがある。
 この遺跡は、標高3000mを越えるワラスの街を起点に、バスで4時間かけて標高4516mのカワチ峠を越えていかなければならない。景色は見事であるが、酸素がうすいのと連日の大移動で体力的にいちばんきつい所だった。まず遺跡をまわりこむように進むと、方形広場の向こうに新神殿と旧神殿がならんでいる。海岸地方の崩れかけた泥レンガの遺跡を見慣れた後だったので、石造の遺跡はとても立派なものに見えた。この2つの神殿の間には、珍しい円形半地下式神殿もあった。
2009.9 新神殿 2009.9
2009.9 円形半地下式広場 2009.9 方形広場
 円型の神殿の奥に、この遺跡の最大の特徴である地下道の入り口があった。まずはランソン像を見に地下道に入ったが、狭く1人ずつしか像に近づけない。ランソン像とはこの遺跡の主神体で、地下道の十字路に位置し、石に人なのか動物なのかわからない模様が刻まれているものである。ガラス越しの見学だが、不思議な姿を十分見ることができた。別の入り口からも地下道に入ったが、迷路のようで全体はよくわからなかった。また、新神殿の裏には壁に1つだけ石の頭が残っている。もともとは相当な数があったようで、博物館には人とも動物ともつかないものが多数展示してあった。
2009.9 石の頭 2009.9 ランソン像 2009.9 博物館にて
 ☆世界遺産「チャビンの考古遺跡」  1985年登録
ペルー・カハマルカ州
 クントゥル・ワシ
 チャビンとほぼ同時代の遺跡で、この時期は他にもワカロマやパコパンパなど山岳地域に多くの神殿が築かれている。これらの神殿は、長期にわたって何度も拡張あるいは改築されているため、異なる時代の遺跡が積み重なっていてとてもわかりにくい。クントゥル・ワシは東京大学の調査団が3度にわたって発掘したため、日本で紹介されることもあるようだが、発掘後に主要な部分がほとんど埋め戻されてしまった。第1テラスから大階段、方形広場までは残っていたが、その奥にあるはずの中央基壇や、ミイラとともに多くの副葬品が出土したいくつかの墓、そして少し新しい時代の円形広場などは、どこにあったのかすらわからない。かなりの想像力が必要な遺跡だった。数少ない見所の1つが石柱の模様だが、置いてあるのはレプリカで、叩くとはりぼてのような音がした。
2009.9 第1テラスの階段と石柱 2009.9 第1テラス
2009.9 方形広場
この奥の何もない所から中央基壇やいくつもの墓が発掘されている
2009.9 石柱のレプリカ
 オトゥスコ遺跡  
 カハマルカ盆地にある墓地跡で、時代はよくわからなかったが、おそらく紀元後だいぶたってからのものだと思われる。
2009.9
ペルー・プーノ州
 シユスタニ遺跡  
 10世紀前後に栄えたチュウラホン文化の遺跡。クスコからチチカカ湖に向かう途中通りがかった所だが、残っているものはほとんどなかった。
 
2000.5 チュルパ(石塔の墓)  2000.5

プレ・インカ文明−山岳地域