交通不便だった秩父地方と日本鉄道(高崎線)を結ぶ目的で建設されたもの。開業時は上武鉄道という名であったが、戦後の同名の会社とは関係ない。また、羽生〜熊谷間は1921年に北武鉄道として開業し、僅か1年で秩父鉄道に合併している。当初から旅客だけでなくセメントなどの貨物輸送の比重が高く、今も貨物輸送を行う数少ない私鉄の1つであるが、2020年に貨物輸送が廃止されることとなった。
戦前〜終戦直後
 上武鉄道の開業時は、1両のSLと5両の客車、そして貨車だけで始まった。路線の延伸とともに、SLは6両、客車は23両まで増備されるが、1922年に電化されたことにより1923年までにすべて消滅している。
 電化当初の車両は、デハ10形などの15m級木造電車で、大きさや機器等がほぼ統一されていた。これらの多くは戦後に鋼体化されてデハ100形となっている。唯一の半鋼車デハ50形は1966年まで残り、弘前電気鉄道に譲渡されてモハ106・107となった。戦後の払い下げ車も4両あり、これも鋼体化の種車となっている。また、電気機関車のデキ1形は1994年まで生き残っていた。デキ1は三峰口駅横の車両公園で保存されていたが、2019年に解体されている。デキ3・4も熊谷市内の運送会社で保存されている。
   
2016.2 デキ1:三峰口駅  2023.3 デキ3・4:熊谷市内
種類 形式 両数  前歴 登場 消滅 備考
SL 1-6 6 新造 1901 1923
PC 23 新造 1901 1923
EC デハ10-19 10 新造 1921 1953
クハ11-12 2 新造 1925 1953
クハニ21-24 4 新造 1922 1952
クハユニ31-32
(デハユニ41)
2 新造 1922 1953
デハ51-52 2 新造 1942 1966
EL デキ1-7 7 新造 1922 1994.11
戦後〜1960年代
 ED38形
 ルーツは、阪和電気鉄道が1930年に製造したロコ1000形で、国鉄に買収されてED38形となっていた。4両の仲間のうち2両が秩父鉄道、1両が大井川鉄道に譲渡されたが、大井川鉄道のものも秩父鉄道に再譲渡されて3両が集結した。1988年までに全車廃車となり、1号機が三峰口駅横の車両公園で保存されていたが、2019年に解体されている。
 
2016.2 ED381:三峰口駅 
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
ED38形 381-383 3 国鉄ED38
大井川ED105
1960
1967
1988.12
 デキ100形
 101-106は新造車で、101のみ全長が少し短く、側窓の数が少ない。一方、107-108は松尾鉱業からの譲受車で、101とほぼ同型である。登場から60年以上経ち、数を減らしているが今も現役である。
 
2017.11 デキ105:広瀬河原基地 2017.11 デキ108:武川駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デキ100形 101-108 8 新造
松尾鉱業ED501
1951-56
1973
 デキ200形
 1963年に登場したもので、前照灯が2灯になった。3両のうち2両は、2000年に三岐鉄道へ譲渡されている。残った201はパレオエクスプレスの回送用となり、塗装は何度も変わっている。
   
2017.11 広瀬河原基地 2022.4 熊谷駅 
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デキ200形 201-203 3 新造 1963.9
 デキ300・500形
 1967年から80年にかけて、合わせて10両が製造された、貨物輸送の主力機。デキ300形はライトが白熱灯であったが、後にシールドビーム化されたためデキ500形との見分けがほとんどできなくなった。505は2010年から茶色塗装、また502は2016年から黄色塗装になっている。
 
2016.2 デキ300形:寄居駅  2016.2 デキ500形:寄居付近
 
2017.11 デキ500形:武川駅 2017.11 デキ500形:永田駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デキ300形 301-303 3 新造 1967.10
デキ500形 501-507 7 新造 1973.4-80.9
 デハ100形  
 木造車の鋼体化などにより登場した18m級の半鋼製車。31両のうち10両は新造車であるが、基本的に大きさや機器等をすべて統一している。戦後の主力で、1963〜66年には近代化改造も行われ、1988年まで使用されていた。デハ107とクハニ29が、三峰口駅横の車両公園で保存されていたが、2019年に解体されている。
2016.2 デハ107:三峰口駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ100形 101-113 13 デハ10形等 1950.10-53.3 1988.9
クハニ20形 21-30 10 クハニ20形(旧)等 1951.4-54.2 1988.9
クハ60形 61-67 7 クハ30形等 1951-53.10 1988.2
クハユ31形 31 1 クハユ31形(旧) 1953.4 1973
 300系・500系
 300系は、秩父鉄道初のカルダン駆動の新性能車で、20m級の急行用クロスシート。流行していた湘南型デザインが採用されている。当初はMc車のみの2両編成だったが、1966年にT車が増備されて3両編成になった。500系は300系に似たスタイルのロングシート車で、Mc-Tcの2両編成。両形式ともに片開き2扉だった。1992年10月に300系のさよなら運転が行われ、運用を終了した。
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ300形
サハ350形
301-304
351-352
6 新造 1959-66 1997.3
デハ500形
クハ600形
501-509
601-609
18 新造 1962-67 1992.3
1970年代以降
 800系
 小田急1800系を譲り受けたもので、元は国鉄63系である。新性能車300系の登場より20年も後に、吊り掛け駆動車が入線したことになる。20m級4扉で、Mc-Tcの2両編成11本を譲り受けたが、そのうち2両は部品取りとなった。1990年に1000系に置き換えられて全車廃車となっている。
左:800系、右:300系
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ800形
クハ850形
801-810
851-860
20 小田急1800系 1979.11-81.10 1990.3
 1000系
 800系の置き換え用に、国鉄101系を譲り受けたもの。Mc-M-Tcの3両編成12本が導入された。これによって秩父鉄道の旧型車が消滅している。1994年に冷房化改造、1999年にワンマン化改造が行われ、20年以上使用されたが、2014年3月にさよなら運転を行って引退した。晩年はオレンジ、カナリア、ウグイス、スカイブルーの国鉄リバイバルカラーや秩父鉄道旧塗装車も登場してカラフルだった。
1000形 左から国鉄オレンジ、国鉄ウグイス、秩父鉄道新塗装、秩父鉄道旧塗装
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ1000形
デハ1100形
クハ1200形
1001-12
1101-12
1201-12
36 国鉄101系 1986.4-89.12 2014.3
 2000系
 500系の置き換え用に、東急7000系を譲り受けたもの。デハ100形以来の18m級で、4両固定編成になっていた。冷房化が難しかったことから、8年ほどで全車廃車となった。
1992.11 長瀞付近
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ2000形
デハ2100形
デハ2200形
デハ2300形
2001-04
2101-04
2201-04
2301-04
16 東急7000系 1991.11-12 2000.2
 3000系
 急行用の300系を置き換えるために、JRの165系を譲り受けたもの。Mc-M-Tcの3両編成3本で、前面デザインを変更するなどの改造を施されている。2006年にさよなら運転を行って引退した。
3000形
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ3000形
デハ3100形
クハ3200形
3001-03
3101-03
3201-03
9 JR165系 1992.3-10 2006
 5000系
 2000.系が非冷房であったことから、冷房車に置きかえるために都営6000系を譲り受けたもの。Mc-M-Tcの3両編成4本が登場している。
2005.5 寄居駅 2016.2 寄居駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ5000形
デハ5100形
クハ5200形
5001-04
5101-04
5201-04
12 都営6000系 1999.11-12
 6000系
 3000.系を置き換えるために、西武の新101系を譲り受けたもの。本来は通勤車だが、急行用とするためクロスシートに改造されている。中間M車に運転台を移設して、Mc-M-Tcの3両編成としている。
2016.2 三峰口駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ6000形
デハ6100形
クハ6200形
6001-03
6101-03
6201-03
9 西武新101系 2006.3-10
 7000系
 1000.系を置き換えるために、東急8500系を譲り受けたもの。Mc-T-Mcの3両編成2本のみであるが、7001編成は東急時代の先頭車がそのまま使用されているのに対し、7002編成は中間車を先頭車化改造しており、貫通型に見せかけた非貫通車である。
 
2017.4 7001編成:桜沢-寄居間  2017.11 7002編成:武川駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ7000形
サハ7100形
デハ7200形
7001-02
7101-02
7201-02
6 東急8500系 2009.3
 7500・7800系
 7000.系に続く増備車だが、こちらは東急8090系を譲り受けた。7500系は3両編成、7800系は秩父鉄道では珍しい2両編成である。7800系の中には中間車を先頭車化改造したものがあり、デザインが異なっている。
2017.4 7500系:桜沢-寄居間 2023.3 7500系ジオパークラッピング
:ソシオ流通センター〜熊谷間
 
2017.11 7800系:熊谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ7500形
デハ7600形
クハ7700形
7501-07
7601-07
7701-07
21 東急8090系 2010.3-12.11
デハ7800形
クハ7900形
7801-04
7901-04
8 東急8090系 2013.3-14.3
SL列車
 蒸気機関車
 国鉄のC58形で、埼玉県の吹上小学校で保存されていたもの。1987年に車籍復活のうえ譲り受けた。パレオエクスプレスを牽引している。
 
2003.4
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
C58形 363 1 国鉄C58形 1987.12
 客車
 パレオエクスプレスは、当初はJRが所有する旧型客車を使用していたが、2000年にJRから12系客車を譲り受けて自社の車両となった。塗装はオリジナルのものとなっている。
2017.4 桜沢-寄居間
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
スハフ12形 101-102 2 JRスハフ12形 2000.3
オハ12形 111-112 2 JRオハ12形 2000.3
形式別車両数
種類 形式 1920 1930 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 木造車 18
100形 31 30 24 20
300形 4 6 6 6 6 6
500形 18 18 18 18 18
800系 16 20
1000系 36 36 36 36 27
2000系 16
3000系 9 9 9
5000系 12 12 12 9 9
6000系 9 9 9
7000系 6 6 6
7500系
・7800系
3 29 29
EL デキ1形 7 7 7 5 2 1
デキ100形 6 6 8 8 8 8 8 8 6 6 6
デキ200形 3 3 3 3 3 3 3 1 1 1 1
デキ300形 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3
デキ500形 7 7 7 7 7 7 7 7 7
ED38形 2 3 2 1
DL DD200形 2 2      
SL 戦前 6 1 1 1 1 1 1 1
C58形 1 1 1 1 1 1 1
PC 戦前 23 4 4 4 4 4
12系 4 4 4 4 4
年表

  1899.11.8 上武鉄道設立
  1901.10.7 熊谷〜寄居間18.8km開業
  1916.2.15 秩父鉄道と改称
  1917.9.27 本線が熊谷〜影森間48.8kmとなる
  1918.9.16 影森〜武甲間貨物支線開業
  1921.4.1  北武鉄道羽生〜行田間8.2km開業
  1922.1.20-5.20 秩父鉄道電化(1200V)
  1922.8.1  北武鉄道行田〜熊谷間6.6km開業し秩父鉄道と接続
  1922.9.18 北武鉄道が秩父鉄道に合併
  1930.3.15 秩父本線羽生〜三峰口間73.4km全通(現在は71.7km)
  1952.2.1  1200Vから1500Vに昇圧
  1979.10.1 三ヶ尻線武川〜熊谷貨物ターミナル間7.6km開業
  1984.2.1  武甲線廃止
  2020.9   貨物輸送廃止(予定)

秩父鉄道