イギリスの鉄道  
 インターシティ125  
 イギリスは鉄道発祥の地であるが、近代化が遅れていて、今でも非電化の路線が多い。その非電化路線で、最高速度125マイル(約200km/h)の高速鉄道として1976年に登場したのがインターシティ125である。両端にディーゼル機関車、中間に客車という編成で、登場時はディーゼル動力として世界最高速度であった。イギリス国鉄は1990年代に民営化されるが、IC125の名は受け継がれている。
1997.10 イギリス国鉄時代のIC125 2012.9 イーストコースト社のIC125
:ロンドン・キングスクロス駅
 イギリス国鉄  
 終戦直後の1948年、イギリスでは4大鉄道会社を国有化してイギリス国鉄が成立した。しかしサッチャー政権による公営サービス民営化の方針により、1994年から97年にかけて民営化され、列車運行がフランチャイズ化されている。
1997.10 ロンドン・ワーテルロー駅 1997.10 ロンドン・ヴィクトリア駅
 ロンドンでは、鉄道会社がそれぞれターミナル駅を設けたため、方面別に駅が分かれている。ヴィクトリア駅は1860年の開業で、大陸への玄関口であった時代の雰囲気が残っている。またスコットランドへ向かうキングスクロス駅の主要部分も1852年の完成で、荘厳な雰囲気が感じられる。
1997.10 ロンドン・ヴィクトリア駅 1992.7 ロンドン・キングスクロス駅
 サウスウエスト・トレインズ 
 民営化によって登場した鉄道会社の1つで、おもにワーテルロー駅からサウザンプトン、ソールズベリーなどの西南部方面への列車を運行している。
2012.9 クラス159:ロンドン・ワーテルロー駅 2012.9 クラス450:ロンドン・ワーテルロー駅
 イーストコースト社 
 イギリスの大動脈の1つ、東海岸本線は、民営化後にナショナル・エクスプレス・イーストコーストが運営していたが、2009年からイーストコースト社の運営になった。しかしこれも6年ほどで、2015年からはヴァージン・トレインズ・イーストコーストに代わっている。
2012.9 ニューキャッスル駅 2012.9 ニューキャッスル駅
 地下鉄 
 ロンドンの地下鉄は、1863年に開業した世界最古の地下鉄。当初は地下鉄なのに蒸気機関車牽引という驚くべきものだったが、1890年に電気機関車、1898年に電車へと置き換わっていった。現在は12路線400km以上のネットワークである。多くはチューブとも呼ばれる架線がない構造で、トンネル断面が小さい。設備も古く薄暗いので圧迫感があった。 
1992.7 ロンドン地下鉄 1997.10 ロンドン地下鉄
1997.10 ロンドン地下鉄 1997.10 ドックランド線
フランスの鉄道  
 TGV 
 フランスを代表する高速鉄道TGV。1981年にパリ〜リヨン間で営業運転を開始した。登場時の車両はTGV-PSEで、オレンジの車体が印象的である。大平洋線向けのTGV-A、北線向けのTGV-Rも、塗装は違うが外観は似ている。地中海線向けのTGV-Dでは、2階建てを採用し、TGVは大幅にモデルチェンジをすることになった。日本とは違って、両端の2両を動力車、中間を客車とするシステムである。 
  TGV-PSE:1981年登場、10両編成、最高速度260km/h(開業時)、南東線向け
  TGV-A :1989年登場、12両編成、最高速度300km/h、大西洋線向け
  TGV-R :1993年登場、10両編成、最高速度320km/h、北線向け
  TGV-D :1996年登場、10両編成、最高速度320km/h、地中海線向け
  TGV-POS:2007年登場、10両編成、最高速度320km/h、東線向け
1992.9 TGV-PSE:パリ・リヨン駅 1994.2 TGV-R(手前):パリ・リヨン駅
2012.9 TGV-D:フィゲラス駅
 フランス国鉄(SNCF) 
 フランス国鉄は、戦前の1938年に5社を統合して国有化することにより誕生した。1957年にはジャックマン(BB9200型など)、1964年にはダンスール(BB8500型、BB17000型など)が登場しているが、何といってもフランス国鉄を代表するものはゲンコツと呼ばれた独特の車両群である。1964にCC40100型が登場したのに始まり、CC21000型、BB7200型などが20年以上にわたって製造されている。
1997.10 BB17000 1998.1 BB7200
1997.12 サンマロ駅 2012.9 オランジュ駅
 パリも、ロンドンと同じように、方面によってターミナルが異なる。サンラザール駅は1837年の開業で、パリで最も古い駅である。
1997.10 パリ・サンラザール駅
 2012年に南仏を訪れると、ローカル輸送は大きく変わっていて、どこへ行っても近代的な車両が走っていた。ただ、1〜2時間の遅れは当たり前という状況だった。
2012.9 オランジュ駅 2012.9 ヴィエンヌ駅
 地下鉄 
 パリの地下鉄は、1900年の開業。現在は14路線で200km以上になる。けっこう古い車両というイメージだが、下の写真は新しい車両である。
 リヨンはフランス第3の都市だが、地下鉄は1978年の開業と比較的新しい。 
1997.10 パリ地下鉄 2012.9 リヨン地下鉄
 トラム 
 ストラスブールは、路面電車が一度廃止されたが、1994年にLRTとして復活した。合わせて実施された交通規制などの大規模な都市政策、そして近未来的な車体から、世界最先端のLRTとも言われている。スピード、乗り心地などどれをとっても路面電車の域を超えていた。
 パリも、路面電車は消滅していたが、1992年に1号線が開業した。現在は4号線まで開業している。 
1997.10 ストラスブール 1997.10 パリ・トラム1号線
 リヨンのトラムの復活は新しく、2001年である。アルストム製のインパクト十分な車両で、国鉄駅と空港などを結んでいる。 
2012.9 リヨン
 登山電車 
 アルプス地域には登山電車が走っている。モンタンヴェールは景色のいい観光鉄道のはずだが、天気があまり良くなかったのと大混雑でほとんど印象に残っていない。
1999.7 フランス国鉄狭軌線
:シャモニ・モンブラン駅
1992.9 シャモニ・モンタンヴェール鉄道
ドイツの鉄道  
 ICE 
 フランスのTGVから遅れること10年。ドイツの高速鉄道ICEは1991年に開業した。営業最高速度は280km/hであるが、試験走行では世界初の400km/hを記録している。最初に登場したICE1は両端が動力車であったが、ICE2では片側を運転台付の客車として短編成での運行を可能とし、ICE3では動力分散方式を採用した。振り子式やディーゼル車などさまざまなバリエーションが登場している。ドイツは鉄道が高密度、高頻度で運転されていて、日本以外ではいちばん便利ではないかと思う。
  ICE1 :1991年登場、14両編成(両端動力車)、最高速度280km/h
  ICE2 :1997年登場、8両編成(片側動力車)、最高速度280km/h
  ICE3 :2000年登場、8両編成(分散動力)、最高速度320km/h
  ICE-T:1999年登場、5・7両編成(分散動力)、最高速度230km/h、振り子式
  ICE-TD:2001年登場、4両編成(ディーゼル)、最高速度200km/h、振り子式
1992.8 ICE1:フランクフルト中央駅
 ドイツ連邦鉄道(DB) 
 旧西ドイツでは、戦後の1949年にドイツ連邦鉄道が発足した。そして翌1950年から、流線形のE10型(のちのDB110型)の大量生産が始まり、鉄道の戦後復興を果たす。ドイツで最も有名なDB103型が登場したのは1969年で、インターシティ等の先頭にたって活躍していた。なお、東西ドイツ統合後の1994年には、東ドイツのドイツ国営鉄道と統合してドイツ鉄道となっている。
1997.10 DB110 1997.10 DB110:カールスルーエ(右はLRT)
1997.10 DB103
 地下鉄 
 シュツットガルトでは、路面電車を改軌した上で地下化し、地下鉄にするという手法がとられている。最初の地下化は1966年で、すでに15路線のネットワークができてきている。
1997.10 シュツットガルト
 トラム 
 ドイツはLRTの先進国の1つであるが、中でも最も有名なのはカールスルーエであろう。トラムが鉄道線に乗り入れるトラム・トレインという方式を1992年に始め、150kmもの区間を走る列車もある。市の中心部ではトランジットモールになっているのもいい。
1997.10 カールスルーエ  1998.1 フランクフルト
 シュツットガルトでは、地下鉄のところで述べたように路面電車を地下鉄に転換してきており、すでに路面電車の区間は少ない。
 
1997.10 シュツットガルト 1997.10 シュツットガルト
オランダの鉄道  
 アムステルダム中央駅は1889年に建てられたもので、東京駅のモデルになったことで知られる。工事中なのが残念だった。  
1992.8 アムステルダム中央駅 1992.8 アムステルダム中央駅
スイスの鉄道  
 スイス連邦鉄道(SBB) 
 スイスでは、1902年に主要路線が公営化され、スイス連邦鉄道が設立された。しかし私鉄のまま残ったところも多く、今でも多彩な鉄道会社がある。スイス連邦鉄道を代表する車両は1952年に登場したAe6/6型で、1972年にはこれを勾配区間向けにしたRe6/6型も登場している。
1999.7 Ae6/6型:チューリヒ中央駅 1999.7 ブリーク駅
 登山鉄道 
 今まで乗った鉄道のなかで、いちばん楽しかったのは文句無くツェルマットにあるゴルナーグラート鉄道だろう。マッターホルンを眺めながらどんどん高度をあげていくワクワク感は何とも言えず、2度の訪問で計3回も乗ってしまった。  
1992.9 ゴルナーグラート鉄道
1999.7 マルティニ・シャトラール鉄道
:マルティニ駅
1992.9 マルティニ・シャトラール鉄道
:La Chatelard-Frontiere駅
 ユングフラウ・ヨッホまでは、ベルナーオーバアーラント鉄道、ヴェンゲンアルプ鉄道、ユングフラウ鉄道の3つの登山電車を乗り継いで行く。標高3454mのヨーロッパ最高所の駅で、1912年にはすでに開通していたというから驚きである。
1992.9 ベルナーオーバーラント鉄道
:グリンデルワルド駅
 トラム 
 チューリヒは、大都市でありながら路面電車の廃止を免れた。現在も13系統70kmの路線網を維持している。  
1999.7 チューリヒ

西ヨーロッパの鉄道