エチオピア帝国は、1270年にザグウェ朝を滅ぼしたイクノ・アムラクのソロモン朝から、1975年にハイレ・セラシエ皇帝が軍事クーデターによって失脚するまでの歴代王朝の総称である。内乱やイタリアによる占領時代もあるが、アフリカで唯一、独立を守り続けた国でもある。
 長い帝国の歴史の中で、最盛期の1つが17〜18世紀のゴンダール時代である。ファシリダス帝がゴンダールに遷都して城を築き、6代100年以上にわたって続く。
  ファシリダス帝(1632〜1667年)
  ヨハンネスT世(1667〜1682年)
  イヤス帝(1682〜1706年)
  ダビド王(1706〜1721年:前半は混乱の時代か?)
  バックハフ帝(1721〜1730年)
  メントゥワブ帝(イヤスU世?)(1730〜1755年)
 この後も皇帝の名はあるが、名目だけの戦国時代に突入し、再びエチオピアが統一されるのは19世紀半ばのテオドロシスU世の時代となる。

アムハラ州 ゴンダール
 ゴンダール地域のファジル・ゲビ(世界遺産)
 ファジル・ゲビはゴンダールの中心にある丘で、6つの城などが残っている。ヨーロッパ中世の城に似た雰囲気で、不思議の城とも呼ばれているが、キリスト教国なのでヨーロッパとの親交は深かったのだろう。この遺跡は、高台にあるゴハ・ホテルからも見えた。
 城門をくぐると、まずファシリダス帝の宮殿とヨハンネスT世の図書館が見えてくる。しかし気をとられたのは図書館の前の人だかりで、2組が結婚式の記念撮影をしていた。この時期は結婚式シーズンなのか、旅行中ほとんど毎日結婚式を見ることになった。
 ファシリダス帝の宮殿は、はじめ鍵がかかっていたが、鍵を持った人が現れて入ることができた。しかし殺風景な部屋ばかりで、内部は印象に残っていない。バルコニーのある正面外観がいちばんおもしろいが、ゆっくり見ずに過ぎてしまった。
2011.5 ファシリダス帝の宮殿 2011.5 ヨハンネスT世の図書館
 イヤス帝の宮殿はすぐ隣にあり、ここも内部が見学できる。第2次大戦中に、ここを占領していたイタリアに対してイギリスが空爆したため、形が崩れているが、アーチ状の天井などが修復されていた。
2011.5 イヤス帝の宮殿 2011.5 イヤス帝の宮殿 天井
 少し奥へ進んだところで振り返ると、イヤス帝の宮殿とファシリダス帝の宮殿が並んで見える。その右はヨハンネスT世の図書館、さらに右には法廷・事務所も見えていて、主要な建物を一度に見られるポイントである。さらに奥にも、2つの宮殿をはじめ様々な建物があるが、案内板も全体地図もないのでわからない建物が多くなってしまった。
2011.5 左:イヤス帝の宮殿
中央:ファシリダス帝の宮殿
法廷・事務所
2011.5 ダビド王の音楽の間 2011.5 城壁の一部?
2011.5 バックハフ帝の宮殿 2011.5 メントゥワブ帝の宮殿
 デブレ・ベルハン・セラシー教会 
 17世紀にイヤス帝によって建立されたもので、ゴンダール時代唯一オリジナルのまま残っている教会である。ここもちょうど結婚式がおこなわれていて、観光の前に結婚式見学になった。
 外観も素朴でいい雰囲気だが、見どころは内部である。とくに天井すべてが天使の顔になっていて、大勢に見つめられているような不思議な感覚になった。
2011.5 デブレ・ベルハン・セラシー教会 2011.5 教会前の結婚式
2011.5 デブレ・ベルハン・セラシー教会内部 2011.5 デブレ・ベルハン・セラシー教会内部
 クスカム教会  
 ここはガイドブックに説明がないので、行くまでは単なる教会の1つかと思ったが、山の上の要塞跡として見どころになっているようである。といっても訪れる人は少ないようで、管理人を探す間しばらく待たされた。小さな博物館もあったが、電気は無く、縄に火をつけて見学した。
2011.5 クスカム教会の要塞跡 2011.5 クスカム教会の要塞跡
 ファシリダス帝のプール   ファラシャ村
 プールといっても洗礼を受けるための儀式の場であり、今でもティムカット祭の会場となっている。祭りの時期以外は水がぬかれていて雰囲気が出ないが、建物も立派である。   ゴンダールの郊外には、かつてファラシャが多く住んでいた。ファラシャは黒いユダヤ人とも呼ばれ、3000年も前からこの地で独自の文化を守ってきたといわれるが、1985〜91年の移住政策でイスラエルに移ってしまった。今ではファラシャと関係ない人が土産を売っているだけで、土産には興味がないので3分で観光が終わった。
2011.5 ファシリダス帝のプール 2011.5 ファラシャ村のシナゴーグ跡
アムハラ州 バハルダール
 ゼギ半島  
 ゴンダールの南には、青ナイルの源流、タナ湖がひろがる。その島や半島には、13〜17世紀にかけて数多くの教会が建てられているのである。交通不便なことが幸いして、多くの教会が戦乱にも巻き込まれず現在まで残っている。
 一般的な観光コースはゼギ半島にある2つの教会で、陸路ではなくバハルダールから船で向かう。片道1時間以上と思ったより遠く、さらに船を降りてからも山の上の方まで15分ほど歩いた。外観は円形の平屋で、少し大きい民家という感じだが、中には驚くほど色鮮やかな絵がある。さらに20分ほど歩いてもう1つの教会まで行くと、ほとんど構造は同じだが古い聖書などを見せてもらうことができた。
2011.5 ウラ・キダネ・ミレット教会 2011.5 ウラ・キダネ・ミレット教会内部
2011.5 マリアム教会 2011.5 マリアム教会の聖書

エチオピア帝国 -ゴンダール時代