ギリシャ中南部には、アテナイと覇権を争ったスパルタを始め、コリント、テーベ、プラタイアなど多くのポリスが存在した。ペルシャ戦争後、ギリシャの盟主となったアテナイに対し、これらのポリスはペロポネソス同盟を組んで対抗し、アテナイを敗北に追い込む。その後はスパルタ、続いてテーベが盟主となるが、フィリッポス2世およびアレキサンダー率いるマケドニアに敗れ、ポリスの時代が終わりとなった。

 BC8世紀頃 スパルタでリクルゴスによる「憲法」成立
 BC776年頃 第1回オリンピック開催
 BC546年  スパルタを中心にペロポネソス同盟成立
 BC490〜449年 ペルシャ戦争
 BC431〜404年 アテナイとスパルタの間でペロポネソス戦争
 BC338年  カイロネイアの戦い、マケドニアに敗れる


中央ギリシャ地方
 デルフィの聖域(世界遺産) 
 オリンピアとならぶ古代ギリシャの聖地。太陽神アポロンを祀り、デルフィの神託を授かる地として知られた。現在の神殿は紀元前370年頃のものになる。
 最初の訪問は1997年。旅の途中で体調を崩したのでオリンピア行きはあきらめたが、デルフィはアテネから日帰り可能だったので、片道3時間強バスに乗って訪れた。ギリシャ遺跡は雑然とした所が多いが、ここは斜面に段々畑のように並んでいる。入口を入って左の方へ登って行く道沿いは、各ポリスの奉納品を収めた宝庫の跡で、折り返した所にあるアテネ人の宝庫だけが復元されている。
1997.7 遺跡入り口より
上の方にアポロン神殿の柱が見える
1997.7 アテネ人の宝庫
 22年ぶりの訪問時は、冬の間に降った雨のおかげで草花に覆われて、別の場所のようだった。ただ、まだギリシャの観光シーズンではないはずなのに、観光客が多かった。
2019.5 シフノス人の宝庫 2019.5 アテネ人のストア
上はアポロン神殿の柱
 アテネ人の宝庫の前を右に登り、再び左に折り返した所がアポロン神殿、そしてその上が劇場で、ここがデルフィの核心部。最初に訪問した時は、劇場で賛美歌を歌っているグループがいて、幻想的な気分になった。草花に覆われた2度目の風景も、違う良さがある。ただ、劇場と、そのさらに上にある競技場は、2度目の訪問時は立ち入り禁止になっていた。
1997.7 アポロン神殿  1997.7 劇場
2019.5 アポロン神殿 2019.5 劇場
2019.5 アポロン神殿 正面 2019.5 競技場
 アテナ・プロナイアの神域は、アポロン神殿があるエリアから10分程歩く。円型のトロスが絵になる所で、聖域の雰囲気がいちばん感じられる。アポロン神殿は観光客がとても多いが、ここは来る人が少ないようで、静かなところもよい。
 1997.7  アテナ・プロナイアの神域全景
2019.5 トロス 2019.5 アテネ・プロナイアの古神殿
 デルフィ全盛期には、数多くのポリスが競って奉納品を捧げた。発掘された出土物が博物館で展示されている。また、面白いのは「オンファロス」で、デルフィが世界の「へそ」だったことを示すものである。
2019.5 ナクソス人のスフィンクス 2019.5 オンファロス
 ☆世界遺産「デルフィの古代遺跡」 1987年登録
ペロポネソス半島
 オリンピア(世界遺産)
 古代オリンピックが最初に開催されたのは、紀元前776年と言われる。紀元前5世紀には、全ギリシャのポリスから選手が集まる大規模なものとなった。ゼウス神殿をはじめ、多くの建物がつくられたのもこの頃である。ローマ時代となってもオリンピアの競技会は続けられたが、キリスト教の時代になると異教の祭典とみなされ、392年に禁止となっている。
 遺跡の入口を入ると、まず右手にギムナジオン、続いてパレストラがある。どちらもヘレニズム時代(紀元前1〜3世紀)に追加されたもので、選手の合同練習が行われたようである。
2019.5 ギムナジオン(体育練習場)  2019.5 パレストラ(闘技場)
 パレストラの奥にあるのが、フェイディアスの仕事場。フェイディアスは、紀元前5世紀の彫刻家で、ゼウス神殿の巨大なゼウス像もここで製作されたと言われる。ここだけ建物の壁が残っているが、これは後の時代に教会になっていたためらしい。
 2019.5 フェイディアスの仕事場 
 遺跡の南端にあるのが、レオニデオンとブレウテリオン。どちらも紀元前4〜5世紀の、オリンピア全盛期に建てられた。残っているものが少なく、昔の姿をイメージしにくい。
 2019.5 レオニデオン(宿泊所) 2019.5 ブレウテリオン(評議会場) 
 遺跡の中央に戻って、ゼウス神殿。古代オリンピックは最高神ゼウスに捧げる大祭だったので、この神殿がオリンピアで最も聖なる場所である。紀元前470年頃に建造され、中には高さ13.5mの巨大なゼウス像があった。ゼウス像は失われてしまったが、破風を飾っていた彫刻の一部が博物館で展示されている。
 
2019.5 ゼウス神殿   2019.5 ゼウス神殿の破風彫刻
 ゼウス神殿の前には勝利の女神「ニケ」の像があった台座が復元されている。ニケの像も発掘され、博物館で展示されている。
  2019.5 ニケの像の台座  2019.5 ニケの像
 ゼウス神殿の東、アーチの入口をくぐると、いよいよオリンピック競技が開催されたスタジアム。トラックの長さは200m近くあり、観客席は2万人を収容したといわれる。手前にはスタートラインがあるが、なんかわざとらしい気がする。
 2019.5 スタジアム入口 2019.5 スタジアム 
 遺跡の北側にあるのが、ゼウスの妻ヘラを祀ったヘラ神殿。紀元前7世紀に建てられ、オリンピアで最も古い。近代オリンピックの採火式は、まさにこの神殿の前で行われている。また、ヘラ神殿の北東には、ローマ時代にニンパイオンが建てられていた。
 2019.5 ヘラ神殿 2019.5 ニンパイオン(給水施設)
 遺跡の入口に戻る途中に、マケドニア王フィリッポス2世が戦勝記念として建てたフェリペイオンがある。最近まで台座だけだったようだが、円形の柱の一部が復元されたので、写真映えする。
 2019.5 フェリペイオン 
 ☆世界遺産「オリンピアの考古遺跡」 1989年登録
 バッサイ(世界遺産)
 オリンピアから車で1時間ほど、1160mの山の頂上付近に、アテネのパルテノン神殿と同じ建築家イクティノスが紀元前420年頃に建てた神殿がある。これがアポロ・エピクリオス神殿で、祀られているのは医療の神である。ドールア式、イオニア式、コリント式の3つの要素が混在していることが特徴なのだが、保存のために屋根が付けられ、補修のための足場も組まれていて、よくわからなかった。
 2019.5 アポロ・エピクリオス神殿 
 ☆世界遺産「バッサイのアポロ・エピクリオス神殿」 1986年登録
 スパルタ
 「スパルタ教育」で知られるスパルタは、アテネに匹敵する有力ポリスだったが、文化・芸術に関心が無かったため見所になるような遺構は何も残っていない。それでも遺跡を見ておこうと思ったのだが、訪れる人はほとんどいないからと、勝手にプログラムから外されていた。何とか交渉してミストラ観光後に向かったが、すでに営業時間終了後。柵の隙間から何かの土台のようなものを見ただけで終わった。
 2019.5 スパルタ遺跡 
 コリントス
 コリントスは、ペロポネソス半島の根元、コリントス地峡に面しており、古代ギリシャの時代にはアテネ・スパルタにも劣らない勢力のポリスがあった。マケドニアに敗れた後、ギリシャで成立したコリントス同盟の盟主で、ヘレニズム時代はギリシャの中心となる。BC146年にローマ帝国に破壊されるが、、すぐにローマ風の街が再建され、アカイア属州の州都として再び発展した。
 今も残る遺跡のほとんどはローマ時代のものだが、中央でいちばん目立っているのは、アポロン神殿。BC6世紀に建てられたもので、アテネのパルテノン神殿やデルフィのアポロン神殿より古い。古代ギリシャの柱の様式として、コリントスが由来のコリント式というのがあるが、アポロン神殿の柱はコリント式ではなく装飾の少ないドーリア式である。 
2019.5 アポロン神殿
 アポロン神殿の南には、ローマ時代のアゴラが広がる。原形をとどめているものが少ないので、後で写真を見てもどこがどこだかわからなくなってしまった。
2019.5 アゴラ 2019.5 南ストア
 遺跡の出口に続くレカイオン通りは、立派な石畳の道。通りの両側には、ピレーネの泉と呼ばれるローマ時代の貯水場や、浴場、公会堂などが建ち並んでいた。
2019.5 ピレーネの泉 2019.5 レカイオン通り
 駐車場をはさんで、遺跡エリアの反対側にローマ時代の劇場とオデオンが残っている。とは言っても、地震で倒壊したのか、ほとんど原形がわからず、僅かにオデオンの座席の一部と思われるものだけ発見できた。
2019.5 オデオン(音楽堂)
 エピダウロス(世界遺産)
 エピダウロスは、医療の神アスクレピオスが生まれた地とされ、治癒を求める人が集まる信仰の聖地となっていった。そして、ただ祈るだけれなく、劇場や音楽堂、スタジアム、浴場などが建てられており、古代のテーマパークのようである。
 現在、エピダウロスを有名にしているのは古代劇場。1万4千人を収容できる規模で、保存状態がいいため今もオペラやコンサートが開催されている。
 2019.5 劇場 
 エピダウロスの中心は、劇場より北側のエリアなのだが、アスクレピオス神殿をはじめ、ほとんど原形をとどめているものがない。劇場以外はほとんど話題にならない理由がわかる気がした。
 2019.5 ギムナジオン 2019.5 アスクレピオス神殿
 2019.5 アバトン 2019.5 スタジアム
 ☆世界遺産「アスクレピオスの聖地エピダウロス」 1988年登録

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