北陸鉄道は、戦時中に石川県内のほとんどの交通事業者を統合して誕生したもの。さらにそのルーツも含めると、13社にも及ぶ。しかし1970～80年代にほとんどの路線が廃止となり、存続しているのは石川線、浅野川線の2路線のみとなった。
2022.4　蚊爪～粟ヶ崎間
戦前
　旧石川鉄道、金名鉄道、能美電気鉄道
　石川鉄道は現在の石川線の前身で、合併後は旧金名鉄道、能美電気鉄道の路線と合わせて石川総線と呼ばれていた。石川鉄道開業時は電化されていないのでSL牽引だったと思われるが、詳細がわからない。1921年には電車が登場している。一方、金名線は戦後まで非電化だったため、SLと気動車が使用されていた。戦前製の電車は、電気機関車に転身したものもあるが、1970年代には消滅する。しかし1927年製の機関車ED201だけは、今も現役で残っている。
2018.2　ED201：鶴来検車区
種類 形式（戦前） 形式 両数  前歴 登場 消滅 備考
SL 金名1､2､4 3 不明 ？
DC 金名キハ1-3 3 1931 ？
PC 金名ハ1等 4 ？ ？
EC 石川デ1
金沢デ54		 モハ581 2 新造 1915 1956
金沢デホ56 モハ3051→クハ1101 1 新造 1923 ？
金沢
デホニ101		 モハ1501-04
→モハ3711-12		 4 新造 1925 ？
金沢ハフ20 サハ801
(コハフ3001)		 1 国鉄キハ40308 ? 1953
金沢ハフ30 サハ301-02 2 新造 1933 ？
能美デ1 モハ541-43
（EB121-123）		 3 新造 1925 1959
能美デ8 モハ621
（EB131→ED231)		 1 不明 1930 ？
能美デホ301 モハ1201 1 新造 1937 ？
EL 金沢ED1 ED201 1 新造 1927
　旧浅野川電気鉄道
　浅野川電気鉄道時代の車両のうち、デハ1・2は戦後に金石線や小松線へ転出して長く使用されていた。
種類 形式（戦前） 形式 両数  前歴 登場 消滅 備考
EC 浅野川デ10 モハ571-573 3 新造 1925 1967
浅野川フ1-2 サハ221､211 2 新造 1925 1965
浅野川ハフ21 サハ201 1 国鉄ロ321 1939 1951
浅野川デハ1 モハ1301 1 新造 1924 1968?
浅野川デハ2 モハ1601 1 新造 1927 1968?
戦後～1970年代
　払下げ車等
　もと伊那電の買収国電モハ19形や、名古屋市の市内電車、遠州鉄道の車体流用車など雑多な車両が導入されていた。石川総線には早い段階で新造車が投入されたため、浅野川線で使用されたものが多い。1968年までに消滅したものと思われる。
種類 番号 両数  前歴 登場 消滅 備考
EC サハ601-606 6 名古屋市 ？ 1962 石川・金石・浅野川
モハ851-852 2 国鉄モハ19 1954 1962 浅野川
モハ3101-02 2 国鉄モハ19 1955 ？ 浅野川→石川
モハ3151-52 2 国鉄モハ19 1955 1968 石川
モハ3571 1 遠鉄モハ13 1961 ？ 金石→浅野川→加南
クハ1601-03 3 遠鉄クハ51 1962 ？ 浅野川→金石・加南
クハ1651-52 2 国鉄キサハ04 1961 ？ 浅野川
　3000・5000形
　戦後の新造車の導入は早く、1949年にモハ3000形が登場し、1962年まで似たタイプの車両が製造された。新製配置された路線はさまざまで、その後も配置転換が多いため、非常にわかりにくい。最後まで残っていたモハ3752は2007年に廃車となっている。モハ3761が能美線廃線跡に近い能美市立博物館、モハ3751が加南線廃線跡に近い大聖寺流し舟の乗り場、モハ3752がいすみポッポの丘で保存されている。
   
2016.10　モハ3761：能美市立博物館 2017.4　モハ3752：いすみポッポの丘 
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ3000 3001-05 5 新造 1949 1986.6 石川→金石→小松
モハ5000
（モハ3750)		 5001-02
3751-52		 2 新造 1952.3 2007.10 加南→石川
モハ5100
（モハ3760）
（クハ1301)		 5101-03
3761-62
1301		 3 新造 1951.10 2006.11 石川→2両浅野川
サハ1000
(モハ3730)		 1001-02
3731-32		 2 新造 1956 1996.3 石川
サハ2000
（クハ1210）		 2001-02
1211-12		 2 新造 1956.5-57.1 1996.12 石川→浅野川
モハ3200 3201 1 新造 1957.8 1996.12 加南→石川→浅野川
クハ1000 1001 1 新造 1957.7 1996.12 加南→石川→浅野川
モハ3010 3011 1 新造 1958.12 1996.12 石川→金石→浅野川
モハ3300 3301 1 新造 1958.12 1998.8 金石→加南→浅野川
モハ3500 3501 1 新造 1961.8 1996.12 浅野川
モハ3550 3551 1 新造 1962.7 1996.12 浅野川
　6000形 　
　加南線向けに製造された、カルダン駆動の急行用クロスシート車。クモハ6000は「くたに号」、クモハ6010は「しらさぎ号」という愛称で、しらさぎ号は日本初のオールアルミ車という画期的なものであった。加南線の廃止により大井川鉄道へ譲渡されたが、クモハ6010は故郷に戻って山中温泉道の駅で保存されている。　
   
2010.8　6010形：山中温泉道の駅  6000形
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
クモハ6000形 6001､6051 2 新造 1962.7 1971.7
クモハ6010形 6011､6061 2 新造 1963.7 1971.11
　3700形 　
　いずれも名鉄から譲り受けたもので、石川総線に配置された。モハ3770・クハ1720形は名鉄3300形の車体のみを流用している。1990年の7000系登場によりすべて廃車となった。　
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ3700 3701-04 4 名鉄モ707-10 1964 1987.4
モハ3770 3771-73 3 名鉄モ3300形 1967.6 1990.12
クハ1720 1721-24 4 名鉄モ3300形 1967.6 1990.12
モハ3740 3741-44 4 名鉄モ903-06 1978.12 1990.12
　機関車 　
　戦後の北陸鉄道では、電気機関車が1両だけ製造されている。貨物廃止後も除雪用に残っていたが、2010年に廃車となった。若桜鉄道の隼駅で保存されている。
2017.6　ED301：若桜鉄道隼駅
種類 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
EL ED301 1 新造 1954.10 2010.4
DL DL1 1 新造 1966 2007.10
DL31 1 国鉄 1978 2007.10
　軌道線 　
　1967年に廃止となった金沢市内軌道も、北陸鉄道が営業していた。市内線唯一の生き残りである2022は、市内線廃止後に名鉄岐阜市内線のモ562となり、さらに1989年に福井鉄道に譲渡されて2006年まで使用されていた。伏木貨物ヤードで保管されているが、かなり無残な状態である。
2017.7　もと市内軌道2022：伏木貨物ヤード
1980年代以降
　7000系 　
　石川線の旧型車を置き換えるため、東急7000系を譲り受けたもの。7000形は非冷房車、7100形は冷房車で、7200形は中間車に運転台を新設しているため非貫通の特異な外観である。
 
2005.5　7000形：加賀一の宮駅
2016.10　7100形：鶴来駅 2016.10　7200形：鶴来駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ7000形
クハ7010形		 7001
7011		 2 東急7000系 1990.7
モハ7100形
クハ7110形		 7101-02
7111-12		 4 〃 1990.7
モハ7200形
クハ7210形		 7201-02
7211-12		 4 〃 1990.7
　8000系 　
　浅野川線の旧型車を置き換えるため、京王3000系を譲り受けたもので、これによって浅野川線の旧型車は消滅した。8800番台は片開き扉、8900番台は両開き扉である。　
 
2005.5　内灘駅
 
 2016.10　8800番台：七ツ屋駅 2022.4　8800番台：蚊爪～粟ヶ崎間
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ8800形
モハ8810形
モハ8900形
モハ8910形		 8801-02､
8811-12
8901-03
8911-13		 10 京王3000系 1996.12-98.10
　7700系 　
　石川線に最後まで残っていた旧型車を置き換えるため、京王3000系を譲り受けたもの。浅野川線の8000系とほぼ同じである。これによって北陸鉄道オリジナルの電車は消滅した。
2016.10　鶴来駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ7000形
クハ7710形		 7701
7711		 2 京王3000系 2006.12
　03系 　
　浅野川線の8000系を置換えるために、東京メトロ日比谷線の03系を譲り受けたもの。帯色はオレンジに変更されている。2020年12月に営業運転を開始した。
2022.4　蚊爪～粟ヶ崎間
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ03-100形
クハ03-200形		 129､130
､139		 6 メトロ03系 2020.12-22.3
形式別車両数
種類 形式 1940 1954 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 旧石川 7 6
旧能美 5 5
旧浅野川 8 7
旧金石 14 7
旧小松 3 3
旧温泉 18 14 5 2 2 2 1
合併後旧型 10 30 32 27 23 14 3 3
7000系 10 10 10 10 10 10
7700系 2 2 2
8000系 10 10 10 10 10
DC 旧金名 3
SL 旧金名 3
EL 旧石川 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
合併後 1 3 1 1 1 1 1 1 1
DL DL1形 1 2 2 2 2 2 2
年表

　○石川電気・金沢電気
　　1915.6.22　石川電気鉄道：新野々市（現・西金沢）～鶴来間開業（762mm・蒸気）
　　1915.6.30　石川鉄道と改称
　　1919.2.2　　金沢電気軌道：金沢市内線開業
　　1921.8.1　　新野々市～鶴来間1067mm改軌、600V電化
　　1922.10.1　金沢電気軌道：野町～新野々市間開業（1067mm・電気）
　　1923.5.1　　金沢電気軌道が石川鉄道を買収
　　1941.8.1　　北陸合同電気が金沢電気軌道を合併
　　1942.3.26　北陸鉄道が北陸合同電気から分離

　○浅野川電気
　　1925.5.10　浅野川電気鉄道：七ツ屋～新須崎間5.1km開業
　　1929.7.14　浅野川電気鉄道：金沢駅前～粟ヶ崎海岸間全通

　○合併後
　　1943.10.13　北陸鉄道と金名鉄道、能登鉄道等が合併して北陸鉄道(2代)設立
　　1945.10.1　北陸鉄道が浅野川電気鉄道を合併
　　1967.2.11　金沢市内線廃止
　　1971.7.11　加南線廃止
　　1971.9.1　　金石線廃止
　　1972.6.25　能登線廃止
　　1974.7.8　　浅野川線：内灘～粟ヶ崎海岸間1.3km廃止
　　1976.4.1　　石川線の貨物輸送廃止
　　1980.9.14　 能美線廃止
　　1984.12.12　金名線休止（87.4.29廃止）
　　1986.6.1　　小松線廃止
　　1996.12.19　浅野川線を600Vから1500Vに昇圧
　　2009.11.1　 石川線：鶴来～加賀一の宮間2.1km廃止

北陸鉄道