偶蹄目の中でもウシ科の動物は多く、140種もいる。その多くはアンテロープあるいはレイヨウと総称される仲間で、見かけはシカと似ているが角が枝分かれしないことがウシ科の特徴らしい。亜科の分類は確定していないようだが、ここでは7つに分けた。ウシ亜科の中にウシ族、ブッシュバック族、ニルガイ族が、ブルーバック亜科の中にハーテビースト族とブルーバック族が、ブラックバック亜科の中にブラックバック族、クリップスプリンガー族、ローヤルアンテロープ族がそれぞれ含まれている。
 アンテロープの写真が増えたので、ウシ科だけページを独立している。

 
ウシ亜科
 アフリカスイギュウ
 英語でバッファローと言った方がイメージに合うかもしれない。アフリカのサハラ砂漠以南に広く分布している。
 アフリカ最初の朝、ロッジから水場を見ていると、丘の方から湧いて出るように次から次へと大群が現れてきたので、驚きと喜びでカメラをかかえて走り回ってしまった。チョベのボートサファリでは間近で息遣いも聞こえてきそうだった。 
  2007.8 ジンバブエ、ヴィクトリアフォールズ
2007.8 ボツワナ、チョベ 2007.8 ボツワナ、チョベ 
 2度目となるケニア・タンザニアのサファリでも、訪れた国立公園のほとんどで見かけた。近くにいても逃げようとしないので、じっくり観察できる。背中にサギが乗っているのも面白い。 
2013.4 タンザニア、セレンゲティ 2013.4 タンザニア、ンゴロンゴロ
 アジアスイギュウ
 インドとその周辺に生息しているが、アフリカスイギュウと違って、ほとんどは家畜化されているようである。沖縄では観光用だったが、ネパールの険しい地形の中では生活に欠かせないものとなっていた。 
2004.1 ネパール、ポカラ 2005.6 竹富島 
 クドゥ
 クズーとも言い、アフリカの東部から南部にかけて生息している。アンテロープの中で最も背が高く、角が長い。チョベでよく見られたアンテロープの1つである。
 波打つ角とたてがみのような毛が特徴的だったが、メスはどちらも無いので他と見分けにくかった。 
2007.8 ボツワナ、チョベ  2007.8 ジンバブエ、ヴィクトリアフォールズ
 ブッシュバック  
 クドゥと同じ仲間で、アフリカのサハラ砂漠以南に広く分布している。これも角はオスだけである。
 数は多いはずだが、まだ一度しか見ていない。サファリでなく滝見物の遊歩道で見たので飼われているのかと思ったが、人に慣れているのかもしれない。まだ角が短いので若いと思われる。 
  2007.8 ジンバブエ、ヴィクトリアフォールズ
 エランド  
 アンテロープの仲間では最も大きい。タンザニアで2回見たが、なぜか2回ともひたすら走っていた。 
 2013.4 タンザニア、セレンゲティ
インパラ亜科
 インパラ
 アフリカの東部から南部にかけて生息し、オスのみが角を持つ。体のツートンカラーと、尻の黒い筋が特徴。ブルーバックの仲間に分類されていたが、今ではインパラのみで独立した亜科となっている。
 チョベでいちばんよく見た動物の1つだが、オスは遠くからしか見られなかった。 
 2007.8 ボツワナ、チョベ 2007.8 ボツワナ、チョベ
 タンザニアでも、1頭のオスがハーレムをつくっている所を何度も見かけた。右の写真は、「小」の字のようなお尻の筋がよくわかる。
 
  2013.4 タンザニア、マニヤラ湖 2013.4 タンザニア、セレンゲティ 
 ナミビアのインパラは、カオグロインパラ、またはアンゴラインパラと呼ばれる亜種である。その名の通り、顔の中央が黒くなっている。
 
2018.5 ナミビア、エトーシャ
ブルーバック亜科
 オグロヌー  
 アフリカの神話では、「神様のアイデアが尽きて、牛のツノと山羊のヒゲと馬のしっぽをつなぎ合わせて作った」と言われる可哀そうな扱いだが、セレンゲティを代表する動物でもある。6月頃、100万頭と言われる大集団がケニアのマサイマラへ北上し、冬には戻ってくるという大移動をするのである。
 GWはまだ移動の季節ではないが、セレンゲティのゲート付近に、見渡す限りのヌーが集結していた。一列になって歩いている姿も見たので、大移動の準備が始まっているのかもしれない。名前のとおり「ぬ〜」という力が抜けるような鳴き声だが、これだけ数が多いと恐ろしさを感じる。 
  2013.4 タンザニア、セレンゲティ
2013.4 タンザニア、ンゴロンゴロ  2013.4 タンザニア、ンゴロンゴロ
 ハーテビースト
 アフリカのサハラ砂漠以南とモロッコに広く生息。ただ、亜種が多いのと見分けるポイントが少ないので、何回見たかはっきりしない。たぶんセレンゲティでしか見ていないと思う。 
  2013.4 タンザニア、セレンゲティ
 トピ
 ハーテビーストの仲間だが、体の色や顔は馬としか思えない。見つけてもじっとしていて、顔を動かす程度であった。 
2013.4 タンザニア、セレンゲティ  2013.4 タンザニア、セレンゲティ
 ボンテボック
 1930年代に17頭まで減少し、絶滅の危機にあったが、南アフリカ政府の保護の取り組みが実って3000頭まで回復した。頭とお尻の鮮やかな白が特徴。
 ウェストコーストはお花畑を見に行ったが、天気が悪く花はあまり開いていない。その代わり動物が走り回っていサファリのようだった。ただ、ボンテボックのような珍しい動物がいるとは思えないので、完全な野生ではないのかもしれない。 
  2007.9 南アフリカ、ウェストコースト
 オリックス
 ゲムズボックとも言われ、南アフリカとナミビアの国境付近のみに生息する。オリックスの仲間のアラビアオリックスやシロオリックスは、野生のものが絶滅してしまった。真っ直ぐに伸びた角が特徴である。
 ナマクアランドの初日、花よりも先に見かけたもので、特徴的な顔と角がよくわかった。望遠で撮ったので大きく見えるが、実際にはかなり遠かったのが残念である。 
  2007.8 南アフリカ、ナマクアランド
ブラックバック亜科
 トムソンガゼル  グランツガゼル
 ガゼルはケニア・タンザニアで最もよく見た動物の1つだが、トムソンとグランツの2種が混ざっている。トムソンの方が体の黒い線がはっきりしており、グランツはお尻の白い部分が大きいというが、それだけでは見分けにくい。トムソンの方が大きい集団をつくっているような気がする。  
  2013.5 ケニア、アンボセリ 2013.4 タンザニア、セレンゲティ
 ゲレヌク  
 ジェレヌクとも言い、長い首が特徴。立ち上がって高い所の葉や実を食べる。角があるのはオスだけである。開けた所には出てこないので、移動中に2回見つけただけである。  
  2013.5 ケニア、アンボセリ  2013.5 ケニア、アンボセリ
 スプリングボック  
   アフリカ南部の代表的なアンテロープで、足が速いことからラグビーチームの名前にもなっているらしい。南アフリカではほとんど見られなかったが、エトーシャで大集団に遭遇した。エトーシャで最も多く見た動物である。 
2018.5 ナミビア、エトーシャ 
2018.5 ナミビア、エトーシャ  2007.9 南アフリカ、ウェストコースト
 ディクディク  ドルカスガゼル
 もっとも小さいアンテロープで、茂みの中にいるのでなかなか見られない。アンボセリのゲート手前で初めて見たが、臆病者のようであっという間に逃げられてしまった。何種類かあるが、これはキルクディクディだと思われる。  ここは動物園だが、ガゼルはオリの中ではないので野生だったのかもしれない。ただ小型で遠くにいたのであまり観察できなかった。
  2013.5 ケニア、アンボセリ 2002.9 チュニジア、トズール
リードバック亜科
 リードバック
 角が前の方を向いているのが見分けるポイントのようだが、似たものが多いので難しい。アフリカゾウやカバが集まる水辺に、なぜか1頭だけいて、足がすくんだように動かなかった。  
2013.4 タンザニア、セレンゲティ
 ウォーターバック  
 その名のとおり水辺によくいるアンテロープで、ドリルのような角が特徴。運よくメスをめぐってオス同士が戦うところを見たが、メスにその気が無いらしくどちらもカップルになれなかったようである。  
  2007.8 ボツワナ、チョベ 2007.8 ボツワナ、チョベ
 リーチュエ(レッドリーチュエ)
 リーチュエの亜種で、チョベ周辺のみに生息するという貴重な動物。見かけたのはメスだけの群れだったので角を見ていない。
2007.8 ボツワナ、チョベ
 
ヤギ亜科
 ヤギ
 野生の山羊パサンが家畜されたものと言われ、ヒツジより歴史は古い。下の写真はヤギのマーケットの様子である。
  2013.4 タンザニア、アルーシャ付近
 ヒツジ
 野生の羊ムフロンが、古代メソポタミアで家畜化されたと言われている。ニュージランドでは人よりも羊が多いというだけあって、見渡す限り羊が散らばっていた。  
 2001.1 ニュージランド、ワナカ付近 2001.1 ニュージランド、ワナカ付近
 ニホンカモシカ  
 カモシカは、ヤギ亜科の中ではヤギやヒツジと違ってジャコウウシの仲間に分類される。よくカモシカのような足と形容されるが、カモシカはずんぐりしており、他のアンテロープと混同されたらしい。ニホンカモシカは日本の固有種で、国の特別天然記念物にも指定されている。
 この時はトンネルの見学に行ったのだが、出口付近にいたカモシカばかり写真に撮ってしまった。  
  2006.10 富山、第1魚津トンネル

哺乳類 鯨偶蹄目-ウシ亜目 ウシ科