鉄道のルートから外れた、旧山陽道の井原、矢掛などの街へのアクセス鉄道として大正時代に開業した軽便鉄道。国鉄井原線が建設されるのにともない、井原線に路盤を提供するため1967年に矢掛線と神辺線が廃止、残る井原線も4年後に廃止となっている。しかし井原線の方は工事が半分以上完了しているにもかかわらず国鉄赤字問題のあおりで工事凍結、第三セクターに移管されて1999年にようやく開業している。

  1913.11.17 井原笠岡軽便鉄道笠岡〜井原間開業
  1915.11.26 井笠鉄道と改称
  1921.10.25 北川〜矢掛間開業
  1922.4.9   両備検便鉄道高屋〜神辺間開業
  1925.2.7   井笠鉄道井原〜高屋間開業により接続
  1933.9.1   高屋〜神辺間が神高鉄道となる
  1940.1.1   井笠鉄道が神高鉄道を合併
  1967.4.1   井原〜神辺、北川〜矢掛間廃止
  1971.4.1   全線廃止
  1941 1949 1955 1960 1965 1970
 輸送人員(千人/日) 3.9 6.1 4.3 6.3 5.5 2.2
 輸送密度(千人/日) 1.0 1.4 1.0 1.4 1.4 1.0
 貨物輸送量(万t/年) 3.4 2.1 1.2 1.4 1.0 0.1
営業係数 61 101 100 98 119 2.33
廃線跡
 本線・神辺線(笠岡-井原-神辺31.3km)
 左の写真は路線があった場所ではないが、橋の下に車両が保存されている。大井村を過ぎたあたりは未舗装の道となっていて、鉄道時代の面影をとてもよく残している。
2009.11 笠岡駅付近@ 2009.11 大井村〜小平井間A
 左の写真は何気なく撮ったものだが、後で右の建物がかつての駅舎だと知った。新山は駅跡がそのまま鉄道記念館となっていて、井笠鉄道でもっとも有名なコッペル製1号機関車などが保存されている。保存場所はかなり狭く、もう少し待遇をよくしてもいいのではと思ってしまう。
2009.11 小平井駅跡B 2009.11 新山駅跡C
2009.11 新山駅跡C 2009.11 新山駅跡C
 井原駅はバスターミナルとなっていて、広い構内の雰囲気が何となく残っている。
 右の写真の奥に見える高架橋が新たに開業した井原鉄道で、神辺線の廃線跡はその高架橋に合流していく。神辺線と矢掛線の路盤の多くは井原鉄道が使用している。
2009.11 井原駅跡D 2009.11 井原〜出部間E
 矢掛線(北川-矢掛5.8km)
 矢掛線の終点、矢掛駅は現在の井原鉄道の駅からは離れている。2004年に矢掛の街を歩いた時にもここまで足を伸ばしたが、街の中心から離れた驚くほど寂しい所で驚いた。現役時代の写真を見ると、駅舎の雰囲気はまったく同じで、バスの位置の少し奥に列車が停まっている。廃線跡はすぐ井原鉄道の高架橋に呑み込まれた。
2009.11 矢掛駅跡G 2009.11 川面〜矢掛間F
奥は井原鉄道の高架橋
 
車両
 在籍したSLは延べ10両だが、そのうち5両は短期間の使用で、主力となったのは1-3号と6-7号の2形式。DCは、単車11両、ボギー車が9両あった。保存車が多いことが特徴である。
種類 番号 両数 特徴  登場 消滅 備考
SL 1-3 3 Bタンク 1913 1955
4 1 Cタンク 1918 1930
5 1 Bタンク 1920 1933
6-7 2 Cタンク 1922 1955
8 1 Cタンク 1948 1949 もと国鉄
9 1 Bタンク 1948 1949 もと釜石製鉄所
10 1 Cタンク 1947 1949
DC ジ1-3、5 4 単車 1927 1958
ジ6 1 7258mm単車 1929 1964
ホジ7-9 3 9914mm 1931 1971
ジ10-11 2 7258mm単車 1933 1962 もと三幡
ホジ12 1 8577mm 1936 1967
ジ13 1 単車 1939 1953 もと下津井
ジ14-16 3 8136mm単車 1931 1971 神高鉄道より引継ぎ
  ホジ1-3 3 11700mm 1955 1971
ホジ101-102 2 11700mm 1961 1971
PC ホハ1-14 14 ボギー車 1913-25 1971
ハ15-18 4 単車 1931-53 1969 ジ1-3、ジ13改造
  ホハ18-19 2 ボギー車 1925 1969 神高鉄道より引継ぎ
 1-3号
 井笠鉄道開業時のSLで、1913年コッペル製。1955年に休車となるまで、40年以上活躍した。3両とも保存されており、池田動物園の保存車には「3」という番号が付いているが、2号と入れ替わっていると言われている。
2009.11 1号:井笠鉄道記念館 2019.1 2号:池田動物園
 ホジ7形
 DCは、ジ6まで単車が導入されていたため、ホジ7形が最初のボギー車。戦時中は客車になっていたが、戦後ふたたびDCとなり、廃線まで活躍した。ホジ9が笠岡駅近くの高架下で保存されている。
2009.11 ホジ9:笠岡交通公園
 ホジ1形
 戦後になって最初のDCで、12m近い大型車。ほぼ同タイプのホジ100形と合わせて5両導入され、廃線まで活躍した。ホジ3は、廃線後に下津井電鉄へ譲渡され、架線撤去に使用されるはずだったが、結局使用されずに下津井駅跡で保存されている。訪問時は塗り替えの途中だったのか、前後で塗装が異なっていた。
2016.12 ホジ3:下津井駅跡
 ホハ1形
 1913年の開業時に導入された、木造ボギー車。少しずつ形態を変えながら増備され、計14両となった。多くは廃線まで生き残り、そのうち10両が全国各地で保存されているようである。
2009.11 ホハ1:井笠鉄道記念館

井笠鉄道