南米最大の帝国を築いたインカ帝国の前身は、13世紀頃に誕生したクスコ王国である。1438年に即位したパチャクテクは、軍事力とインカ道を始めとする技術力によって周辺の国々を次々と制圧し、大帝国へと導いた。1493年にはチムー帝国を滅ぼして、南米の覇権を確立した。しかし1532年、スペインから来たピサロ率いる僅か168人の兵士は、皇帝の後継争いを利用してあっさりインカ帝国を滅亡してしまう。その後、インカの人々は山奥の謎の要塞ビルカバンバに立て籠もって抵抗を続けたが、1572年に陥落、インカの文化はスペイン人によって完全に消し去られていった。

ペルー・クスコ州
 クスコ  
 かつてインカ帝国の首都であったが、スペイン人によって完全に破壊され、インカ時代の石の上に新たな街が築かれた。ところどころにインカの石組みが僅かに残されている。
 中でも最も有名なのが12角の石。複雑な形の石組が、カミソリの歯も通さないほど見事に接合されている。同じ形の石を使っていないので、よく組み合わせたものだと感心してしまう。 
  2000.5 インカの石組み
 サクサイワマン遺跡  
 クスコをスペイン人に奪われたインカ軍が抵抗のために立てこもった要塞。大きな岩がゴロゴロしているだけであるが、ここからクスコの眺めがよかった。
  2000.5 要塞跡 2000.5
 クスコ周辺の遺跡  
 サクサイワマンから歩いて行かれるほどの距離に、小さな遺跡が点在している。とくに聖なる泉が湧くタンボマチャイは興味深い所だった。
  2000.5 ケンコー 2000.5 プカ・プカーラ
  2000.5 タンボマチャイ
 オリャンタイタンボ遺跡(世界遺産) 
 ペルー高原地帯の初日は、高山病対策で標高の高いクスコを避けて谷底にあるオリャンタイタンボ泊となった。ここには段々畑のような遺跡がある。6枚の岩を並べた不思議な建造物もあるが、何の目的でつくられたかわかっていない。
 2014年、いわゆる「インカ道」が世界遺産に登録された。このオリャンタイタンボも、登録物件の1つとなっている。
  2000.5 遺跡全景 2000.5 6枚の岩
 ☆世界遺産「カバック・ナン アンデスの道」 2014年登録
 マチュピチュ遺跡(世界遺産) 
 マチュピチュはアマゾン川の支流、ウルバンバ川に沿った険しい山の上にあり、1911年ハイラム・ビンガムによって初めて発見された。伝説の都市ビルカバンバではないか、あるいは宗教センターか、などさまざまな説があったが、いまだにいつ何の目的で空中都市が築かれたか謎のままである。
 オリャンタイタンボから登山電車に乗って、マチュピチュ遺跡の麓の街アグアスカリエンテスへ。山奥に向かうようだが、実は川を下っていく。電車は1時間半ほどで9時半に到着、すぐにバスに乗り換えてハイラム・ビンガムロードを登っていくと、少しずつ遺跡が見えてきた。初めて目の前に遺跡が現れたときの感動は、何にもかえがたいものである。
2000.5  2000.5 農地管理小屋とワイナピチュ山
  遺跡に入ると、まずは全景が見える展望台へ。夢にまで見た風景が目の前にある。ワイナピチュをバックにした遺跡は、どこを見ても絵になる素晴らしいところで、何も言うことはない。あまりに有名な遺跡ではあるが、やはり印象度No.1である。
  
  2000.5 遺跡全景
2000.5 インティワタナ 2000.5 貴族の居住区
 すぐに遺跡の真ん中に向かうかと思ったら、まずは外堀からという感じでインカ道やアンネデスへ先に行った。アンネデスは他の遺跡にもあるが、規模、美しさともここがいちばんである。
2000.5 インカ橋 2000.5 アンネデス(段段畑)とマチュピチュ山
 昼食を食べた後、いよいよ遺跡の核心部へ。上から見ると同じ形の部屋が並んでいるように見えるが、1つ1つに特徴があっていくら見ても飽きない。雲が出てきてしまったが、ワイナピチュは見えていて、ちょうどいい背景になった。1日目は16時までたっぷり6時間の観光。マチュピチュはクスコから日帰りのツアーも多いが、アグアスカリエンテスで1泊しないとまったく時間が足りないと思う。
2000.5 太陽の神殿、インティワタナ  2000.5 主神殿
2000.5 3つの窓の神殿 2000.5 インティワタナの日時計
 2日目は、それぞれ好きな時間に遺跡に登って上で集合となる。早朝に出発してワイナピチュに登るかどうかだいぶ迷ったが、遺跡の中でゆっくりすることを選んでしまった。今思うとこれが唯一悔やまれる。
 集合した後は、前日とは別のインカ道をインティプンクまで歩く。とても景色のいい道で、はるか遠くに遺跡とハイラム・ビンガムロードが見えて気持ちいい。
2000.5 インカ道
道の先にマチュピチュ遺跡
2000.5 インティプンク
2000.5 インティプンクより
遺跡全景とハイラム・ビンガムロード
 遺跡に戻ると少しだけフリータイム。前日ゆっくり見られなかったところをもう一度みてまわった。15時の登山電車でクスコに戻るので、13時20分、下りのバスに乗車。たっぷり遺跡を楽しんだ、大満足の2日間だった。
2000.5 太陽の神殿 2000.5 コンドルの神殿
 ☆世界遺産「マチュピチュの歴史保護区」 1983年登録

インカ文明