北海道・北東北の縄文遺跡群

 15000年前から2400年前までの、約13000年にわたる縄文時代の遺跡群。北海道・北東北の遺跡のみが選ばれた理由として、津軽海峡を挟んだ1つの文化圏だったこと、農耕が始まる弥生時代より前に、狩猟や採集等を基盤とした定住生活をし大規模集落が形成されたこと、縄文時代の草創期から晩期まで全ての時代の遺跡が揃っていることがあげられている。2021年に世界文化遺産として登録された。登録された資産は17件。他に、登録を目指していたものの保存状態の悪さが指摘された2資産が関連遺産となっている。
 
 
2022.9 三内丸山遺跡
草創期
 1.大平山元遺跡
 青森県の外ヶ浜町(旧蟹田町)にあり、世界でも最古級となる、15000年前の土器が発掘された遺跡。16500年前のものという説もある。当時の遺構は発見されていないので、遺跡というよりは土器等の出土地ということになる。
 
早期
 2.垣ノ島遺跡  
 北海道の函館市(旧南茅部町)にある、縄文早期の9000年前から後期3000年前までの、6000年にわたる集落跡が発掘された遺跡。農耕が無い時代に、6000年もの間定住していたというのは、世界的にも例が無いと考えられている。
 ここでは、定時のガイドツアーに時間を合わせられなかったので自由に見学していたら、ガイドさんが話しかけてきて、そのままガイドをしてもらえた。丘状遺構は、何百年にもわたって土器などを積み重ねたものが盛り土のようになったもの。盛り土に挟まれた低いところは、運動場のようである。また竪穴建物跡は、穴の部分だけ草がなく、はっきりわかるようになっていた。
 
2022.9 丘状遺構 2022.9 竪穴建物跡
 遺跡には、函館市縄文文化交流センターが併設されている。ここの目玉は「カックウ」と呼ばれる中空土偶で、北海道唯一の国宝でもある。これは、垣ノ島遺跡ではないが、近くにある著保内遺跡から出土している。また、垣ノ島遺跡から数多く見つかったのは足形付土板で、幼いうちに亡くなった子供の形見のようなものと考えられている。
 
 
2022.9 中空土偶「カックウ」  2022.9 足形付土板
 (関連)長七谷地貝塚
 青森県八戸市にある、8000年前の貝塚などの遺跡。工業団地に隣接し保存状態がよくないということで、関連遺産となっている。
 
前期
 3.北小金貝塚
 北海道の伊達市にある、7000年前から5000年前にかけての貝塚などの遺跡。貝塚は5ヶ所発見されており、竪穴建物などの集落跡も見つかっている。また、世界最古といわれる刀が出土している。
 
 4.田小屋野貝塚
 青森県のつがる市(旧木造町)にある、6000年前から4000年前にかけての貝塚などの遺跡。今は津軽平野に面した丘の上にあるが、当時は津軽平野がすべて古十三湖と呼ばれる海だった。発掘場所はすべて埋め戻されているので、縄文時代のものを見ることはできない。市街地にある縄文住居展示資料館「カルコ」に、出土品の一部が展示されている。
 
2022.9 発掘地 2022.9 田小屋野貝塚の出土品
 5.二ツ森貝塚
 青森県の七戸町にある、5500年前から4000年前にかけての貝塚などの遺跡。近くにある小川原湖は、当時は海の入り江だった。竪穴建物跡も多く見つかっており、大規模集落だったと考えられている。
 
中期
 6.三内丸山遺跡
 青森市内にある、5900年前から4200年前にかけての大規模集落跡。三内丸山遺跡のシンボルとなっている大型堀立柱建物や、長さ32mもの大型竪穴建物跡が見つかっている。なお、ここでは1990年代に県営野球場の建設工事が始まったが、縄文時代最大級の遺跡であることがわかったため工事が中止され、遺跡破壊の危機を免れている。
 初訪問は2004年。この時は見学者が少なく、ゆったりと見てまわれた。多くの建物が復元されていて、縄文時代の雰囲気をイメージし易くなっていた。
 
2004.7 大型掘立柱建物 2004.7 竪穴建物
 2度目の訪問は2022年。世界遺産登録後だったので見学者が多かったが、定時ガイドツアーなども充実していて、説明を聞きながら見学することができた。6本柱が印象的な大型堀立柱建物は、本来の位置とは違う所に復元されており、本来の柱跡は想像以上に大きいものだった。
 
2022.9 復元された竪穴建物、堀立柱建物 2022.9 大型堀立柱建物の柱跡
 三内丸山遺跡は出土品が非常に多く、重要文化財だけでも2000点程度ある。ここの土偶は、平たい板状土偶が多い。
 
2022.9 板状土偶
 7.大船遺跡
 北海道の函館市(旧南茅部町)にある、5500年前から4000年前にかけての遺跡。海を望む段丘上に、100棟以上の竪穴建物、100ヶ所以上の土坑墓が見つかっている。竪穴建物は、他より深く掘られたものが多い。いくつかの建物が復元されている。
 
2022.9 竪穴建物跡
 8.御所野遺跡
 岩手県の一戸町にある、4500年前から4000年前にかけての遺跡。狭い河岸段丘の上にあり、珍しい土屋根建物が見つかっている。周囲の森などを含めた縄文時代の環境保全が行われている。
 
後期
 9.入江貝塚
 15.高砂貝塚
 どちらも、北海道の洞爺湖町にある、5500年前から2800年前にかけての貝塚などの遺跡。噴火湾を見下ろす高台にある。時代はほぼ同じであるが、入江貝塚は縄文時代後期、高砂貝塚は晩期の出土品が多い。
 
 10.小牧野遺跡
 青森市にある、4000年前の遺跡。陸奥湾や八甲田山を臨む台地の上にある。ここは、国内最大級となる、直径55mの環状列石があることで知られている。
 遺跡は未舗装の道を進んだ先にあり、見学者はほとんどなく、貸切のようだった。環状列石は三重になっており、中央には比較的大きな石が立つ。そして興味深いのは、ただ石が並べてあるのではなく、組石と呼ばれる石の集合がいくつもあることである。どんな思いが込められているのか、想像するだけでも楽しい。
2022.9 環状列石全景 2022.9 中央帯
2022.9 組石 2022.9 組石
 11.伊勢堂岱遺跡
 秋田県北秋田市(旧鷹巣町)にある、4000年前から3700年前にかけての遺跡。ここには4つの環状列石が並んでいる。
 12.大湯環状列石
 秋田県鹿角市にある、4000年前から3500年前にかけての遺跡。ここの中心は、最大径52mの万座環状列石と、最大径44mの野中堂環状列石。どちらも共同墓地と考えられている。
 初訪問は2011年。もう少し大きい石を想像していたので、少し拍子抜けだった。列石がある所だけ土がむき出しになっているのも、雰囲気を損ねている。
2011.10 万座環状列石
 2度目の訪問は2022年。列石のまわりの地面は草に覆われて、前回より雰囲気が良くなった。列石はいくつもの組石で構成されているが、石が多すぎてよくわからない。日時計状組石だけは、万座、野中堂のどちらもよく残っている。
2022.9 万座環状列石 2022.9 万座環状列石
2022.9 日時計状組石 2022.9 五本柱建物跡
2022.9 野中堂環状列石 2022.9 日時計状組石
 大湯環状列石の出土品で有名なのが、「どばんちゃん」という愛称の土板。口が1つ、目が2つ、そして胴の部分には3つ、4つ、5つの穴があり、数字を覚えるためだったと考えられている。また、この時代の土器は装飾突起が付いて複雑になっている。
2022.9 土板 2022.9 装飾突起をもつ土器
 (関連)鷲ノ木遺跡
 北海道の森町にある、4000年前の遺跡。ここには北海道最大級の環状列石がある。ちょうど高速道路のルート上にあたり、遺跡を保存するため、高速道路は遺跡の真下をトンネルで通過する構造となった。しかし遺跡から高速道路が丸見えで、縄文時代の環境が損なわれたということで関連資産の位置づけとなっている。
 ここは自由見学はできず、森町のガイドツアーに参加する必要がある。訪問時は、発掘調査のためあちこちに土嚢があって、残念な景色。それでも、環状列石が2列に並ぶ様子はよくわかった。
2022.9 環状列石全景 2022.9 2列の環状列石
晩期
 13.キウス周堤墓群
 北海道の千歳市にある、3200年前の集団墓。8基の墓があり、大きいものは直径80m程度もある。また、周囲は5mほどの高さに盛られている。
 14.大森勝山遺跡
 青森県弘前市にある、3000年前の遺跡。中心となるのは環状列石と大型竪穴建物で、環状列石は数少ない縄文時代晩期ものである。
 ここも、ボランティアガイドの説明を聞きながら見学。環状列石はすべて埋め戻され、石のレプリカしか見ることができない。それでも、2〜3年前はレプリカすら無かったようなので、雰囲気がわかるだけでも良かった。岩木山が目の前というロケーションも良い。
 
2022.9 環状列石(レプリカ)、背後は岩木山 2022.9 大型竪穴建物跡 
 16.亀ヶ岡石器時代遺跡
 青森県のつがる市(旧木造町)にある、3000年前から2400年前にかけての遺跡。江戸時代から数多くの土器などが出土しており、縄文晩期を代表するものとして、亀ヶ岡文化と呼ばれる。最も有名なのは遮光器土偶で、同様のものが東北地方をはじめ広い範囲で見つかっている。
 遺跡がある丘は、田小屋野貝塚がある丘の隣で、徒歩5分ほど。遺跡はすべて埋め戻されていて、見学といっても案内板を見るだけである。「しゃこちゃん」と呼ばれる最も有名な遮光器土偶の本物は、東京国立博物館にあるが、木造の市街地にある縄文住居展示資料館「カルコ」でレプリカをミツ頃ができる。
 
2022.9 土坑墓群の跡 2022.9 遮光器土偶(レプリカ) 
 17.是川石器時代遺跡
 青森県八戸市にある、4000年前から2400年前にかけての遺跡。とくに、縄文時代晩期の土器などが多く出土しており、亀ヶ岡文化の影響を受けている。