屋根が無い貨車の総称。一般的な無蓋車(ト)のほか、長物車(チ)、コンテナ車(コ)、大物車(シ)、車運車(ク)、土運車(リ)があった。
無蓋車
 「ト」級
 「ト」級は10t積みの無蓋車で、1914年に15t積みの「トム」級が登場するまでは無蓋車の標準だった。国鉄の10t積み無蓋車は残っていないが、瀬戸電(現名鉄)のものが貨物鉄道博物館で保存されている。
  
2018.6 名鉄ト246:貨物鉄道博物館
 トラ45000形
 「トラ」級は17t積み無蓋車で、1927年に登場。大きく分けて、車体を長くして長尺の荷物を積む「長トラ」と、長さを短くしてバラ積み等の容積を増した「コトラ」の系等がある。「コトラ」は1956年に登場したトラ35000形に始まり、改良型のトラ40000形、妻面等を鋼板にした半鋼製トラ45000形と続く。トラ45000形は45両がJRに引継がれ、2020年現在、配給物資輸送などの運用が残っている。また、JR四国では「しまんトロッコ」に改造された車両が残る。
  
2023.10 「しまんトロッコ」:宇和島駅
 トラ55000形
 トラ45000形に続く「コトラ」系の無蓋車。初めての全鋼製で、それまでより1t多い18t積みとなった。JRに引継がれることなく引退している。
  
2017.9 トラ57964:小樽市総合博物館
 トラ70000形
 長尺の荷物に対応した「長トラ」系は、戦前のトラ1形、トラ6000形、戦後のトラ30000形などが代表形式。トラ70000形は「長トラ」の最終形で、全鋼製となった。晩年はトロッコ車両に改造されたものもある。JR貨物に引継がれたものは2003年に運用終了。JR九州のトロッコ車両が最後まで残ったが、2018年に消滅した。島原鉄道を経て門司港レトロ観光線に移ったトロッコ車両は、現役で活躍している。
 
2017.1 トラ75013・74778:韮崎市中央公園
   形式 番号 両数  登場  消滅  備考
10t ト20000形 20000-27376 7377 1933-40 1970
15t トム1形 1- 2026 1914-17 1971
トム5000形 5000- 5188 1917-23 1970
トム16000形 16000- 1772 1924-26 1962  
  トム19000形 19000- 4001 1938-40 1970  
  トム11000形 11000- 1721 1940 1970  
トム50000形 50000- 6790 1940-43 1977
トム60000形 60000-60599 600 1956 1985
17t トラ1形 1-3400 3400 1927-31 1969
トラ4000形 4000-4749 750 1938-41 1970
トラ5000形 5000- 150 1941 1953
トラ6000形 6000- 6122 1941-54 1983
トラ20000形 20000-20299 300 1943 1956
トラ25000形 25000-25499 500 1957-58 1985
トラ30000形 30000-32199 2200 1955-57 1984
トラ35000形 35000-37657 2658 1956-59 1985
トラ40000形 40000-43269 3270 1960-61 1985
トラ45000形 45000-53183 8184 1960-63
  トラ70000形 70000-75099 5100 1967-69 2018  
18t トラ55000形 55000-58239 3205 1962-66 1986
30t トキ900形 900- 8209 1943-46 1959
35t トキ10形 10-159 150 1943 1970
トキ15000形 15000-20616 5617 1948-57 1986
トキ25000形 25000-29499 4500 1966-74
緩急車 トムフ1形 101-400 300 1943 1953
長物車
 チ1000形
 1957年に登場した、10t積みの小型長物車。レール輸送時の遊車などに使用された。2021年5月に、最後まで残ったJR東日本の1両が除籍。これは小湊鉄道へ譲渡されている。
  
2022.10 小湊鉄道上総山田駅
 チキ5200形
 コンテナ車のコキ10000形を改造した、レール輸送専用の長物車。188両登場し、JR各社に引継がれた。2021年3月に、JR北海道とJR東日本の運用が終了し、残るはJR西日本となっている。また、JR東日本所属車のうち2両は小湊鉄道へ譲渡された。
  
2022.10 小湊鉄道上総山田駅
 チキ5500形
 コンテナ車のコキ5500形を改造した、ロングレール輸送専用の長物車で、愛称は「ロンチキ」。138両登場し、JR各社に引継がれた。2022年2月にJR東日本の運用が終了し、残るはJR西日本とJR九州になっている。
  
2022.12 京都総合車両所
 チキ6000形
 戦前に製造されたチキを置換えるため、余剰となっていたコンテナ車のコキ5000形を改造したもの。レール輸送や、操重車の控車などに使用されている。
   
2023.10 御坊駅 2023.4 遠賀川駅
 
2017.9 チキ6141:小樽市総合博物館(左の控車) 
   形式 番号 両数  登場  消滅  備考
10t チ1形 1- 451 1959
  チ1000形 1000-1199 200 1957-62 2021.5 改造
15t チム1形 1-15 15 1922-26 1950
18t チラ1形 1-24 24 1913 1950
20t チサ100形 100-599 500 1924-27 1975
25t チキ1形 1-249 249 1914-15 1984
  チキ300形 300- 446 1919-27 1968
  チキ800形 800-825 26 1937 1969  
35t チキ1000形 1000-1199 200 1929-30 1983  
チキ1500形 1500-2417 918 1934-43 1983  
チキ3000形 3000- 632 1943-45 1986
チキ4000形 4000- 165 1943-45 1986
チキ7000形 7000- 150 1975
チキ5200形 5200-5387 188 1979-81 改造
チキ5500形 5500- 138 1974-81 改造
チキ6000形 6000- 422 1977-81 改造 
チキ100形 1-5 5 1989 改造
コンテナ車
 コキ50000形
 国鉄によるコンテナ輸送は、1931年から行われていたが、最初のコンテナ専用貨車は1959年に登場したコキ5000形である。1966年には、最高速度100km/hの高速貨物向けコキ10000形が登場した。コキ50000形は、その汎用タイプで、従来の10ftコンテナに加えて12ftコンテナ、20ftコンテナも積載できる。JR発足後も主力車として活躍し、2018年に運用を終えている。トップナンバーが鉄道博物館で保存されている。
  
2015.12 コキ50000:鉄道博物館
 コキ100系列
 JR発足後の1987年に登場したコンテナ車。仕様等の違いにより、コキ100-107と110の9形式がある。30年にわたって製造されている。
   
2022.11 コキ104形:西国分寺駅 2022.10 コキ107形:新小岩駅 
 コキ200形
 タンク車による輸送をコンテナ車に置換えるために登場したもの。24tのタンクコンテナを2個積むことができるコンテナ車。
  
2022.11 西浦和駅
   形式 番号 両数  登場  消滅  備考
19t コラ1形 1- 55 1962 1983
34t コキ5000形 5000-5056 57 1959
コキ5500形 5500-8939 2875 1962-70
コキ10000形 10000- 456 1966-69 1996
37t コキ50000形 50000- 3276 1971-76 2018
41t コキ1000形 1000-1069 70 1968-69 1986
コキ100系列 1987-
48t コキ200形 154 2000-05
緩急車 コキフ10000形 10000- 59 1966 1996?  
コキフ50000形 50000- 350 1971-76 1989  
大物車
 シキ160形
 大物車は、その名のとおり大型の貨物を積載するもの。多くが1両のみの製造で、私有車も多かった。シキ160形は富士電機の私有車で、川崎工場・千葉工場から変圧器を輸送するためのもの。貨物鉄道博物館で保存されている。
  
2018.6 シキ160:貨物鉄道博物館
   形式 番号 両数  登場  消滅  備考
低床式 シキ40形 40- 42 1929-45 1982
シキ70形 70- 16 1959-66 1986
シキ100形 100 1 1940 1994
シキ115形 115 2 1961-64 1986
シキ500形 500 1 1960 1993
シキ550形 550-561 12 1961-66
低床+吊掛 シキ140形 140 1 1954 1984
シキ170形 170 1 1955 2003
シキ300形 300 1 1958 1992
低床+落込 シキ195形 195 1 1962 2001
シキ850形 850 1 1976
低床+吊掛+落込 シキ120形 120 1 1952 1986
シキ290形 290-291 2 1960 2004
吊掛式 シキ160形 160 1 1955 2002
シキ280形 280 1 1958  
シキ370形 370 1 1961 2003
シキ600形 600 1 1960 2002
シキ610形 610- 5 1962
シキ700形 700 1 1961 1982  
吊掛+落込 シキ670形 670 1 1971 2005
シキ800形 800- 3 1973-96  
落込式 シキ80形 80-86 7 1936-42 1986
  シキ90形 90-93 4 1960 1986  
  シキ190形 190 1 1960 1990  

無蓋貨車