現在の近鉄奈良線・橿原線は、大阪電気軌道が大阪線より先に開業させたもの。一方、l近鉄京都線は奈良電気鉄道が開業させたもので、近鉄に合併したのは戦後の1963年である。近鉄合併後は、奈良線・橿原線・京都線の車両が一体的に運用されている。
  
2021.12 信貴山下〜王寺間
戦前
 大阪電気軌道デボ1形
 1914年の大阪電気軌道創業時の車両、デボ14は、長い間近鉄あやめ池公園で保存されていたが、2005年から五位堂車庫に移されている。近鉄の保存車はほとんど無いため、貴重である。
  
2016.10 デボ14:五位堂車庫
 400・600系
 奈良線向けの車両で、戦前から戦後にかけて増備が続いたもの。1969年の奈良線昇圧に際し、400系は2両編成11本、600系は4両編成23本に改造・再編された。その後は主に生駒線・田原本線などで使用され、1989年に消滅している。
形式 登場時 昇圧後 両数  登場  消滅  備考
モ400形
ク300形
401-424
451-455
401-411
301-311
29 1928-44 1987.6
モ600、650形
ク500、550形
601-658
501-514
551-559
601-623、651-673
501-523、551-573
81 1935-50 1989.3
戦後の旧型車
 旧奈良電
 モ680形・690形は、1964年に改造されて京都線最初の有料特急車となった。1974年以降は名古屋線の一般車となり、1987年まで残っていた。
奈良電 近鉄 両数  登場  消滅  備考
デハボ1101-1103
クハボ701-703
モ671-672
ク571-574
7 1948.2-56 1969
デハボ1201-1202 モ681-682 2 1954.7 1987.8
デハボ1301-1302 モ455-456 2 1957.3 1969
デハボ1351-1353 モ691-693
(ク581-582)
3 1957.3 1987.8
 電動貨車
 モト75-78は、奈良線昇圧の際にモ430形の機器を流用して登場した、レール運搬用の電動貨車。今も2両が残っているが、機器は更新された。また、モワ87も同時期にモ430形を改造した救援車だったが、すでに消滅した。
2016.10 モト78:五位堂車庫
登場時 改番後 両数  登場  消滅  備考
モト51-54 モト75-78 4 1969 モ430形改造
モワ61 モワ87 1 1969 1985 モ430形改造
新性能車
 800・820系
 大阪線1450系の翌年に登場した、奈良線初のカルダン駆動車。車体は全鋼製18m級2扉の中形車で、マルーン塗装が採用された。800系は非貫通湘南型、片開き扉で3両編成(後に4両化)。820系は貫通タイプ、両開き扉の2両編成。ともに駆動はWN、制御は電動カム軸式(MMC)、制動は自動空気(AMA-RD)である。合わせて18両が伊賀線に転属し、2012年まで残っていた。

 1955   登場
 1969? 昇圧対応改造
 1984   820系14両の狭軌化改造、860系となる
 1988-  800系4両の狭軌化改造、880系となる
 1993   820系消滅
    
左:800系、右:820系  2005.1 もと820系:伊賀神戸駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ800形
ク710形
サ700形
801-812
711-716
701-706
24 1955.11-58.10 1992.7
モ820形
ク720形
821-828
721-728
16 1961.3-62.11 1993.12
 900系
 奈良線初の20m級大型車。車体は全鋼製の4扉両開き。駆動はWN、制御はバーニア(VMC)、制動は電磁直通(HSC-D)である。登場時は3両編成で、新生駒トンネル完成後に4両編成となった。昇圧、冷房化が行われ、2002年まで残っていた。

 1961.9.21 営業運転開始
 1969?  昇圧対応改造
 1988-89 車体更新、前面方向幕設置、冷房化改造
 2002   消滅
900系
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ900形
ク950形
901-912
951-956
18 1961.9-61.11 2002.8
957-962 6 1963.11
 8000系
 奈良・京都線の昇圧を見据えた、900系の改良型。車体は全鋼製の20m級4扉。駆動はWN、制御はバーニア(VMC)、制動は電磁直通(HSC-D)である。編成としての新造は1969年までだが、1980年に増結車が6両増備された。近鉄で最も車両数が多い形式となっている。

 1964   登場
 1974-  冷房化改造
 1983-  車体更新、前面方向幕設置
2019.1 大久保駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<M>8021-、8201-、8211-
<Mc>8031-
<Tc>8521-、8701-
<T>8711-
8021-8090F 200 1964.7-69.11
<M>8270- 6 1980.3
 8400・8600・8800系
 8000系はMc-Tcの2両が基本単位だったが、機器配置を見直して3両・4両を基本単位としたもの。新製冷房車は8600系、界磁位相制御を採用したものは8800系に区分された。いずれも広義の8000系に含まれる。8600系以降は、新製時に前面方向幕が付けられている。

 1969   登場
 1978-85 8400系冷房化改造、前面方向幕設置
 1986-99 車体更新
 1992-93 8400系の田原本線ワンマン化改造(7本)
    
2017.6 8400系:東寺駅 2018.1 8600系:今里駅
  
2019.11 8800系:大和西大寺駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<M>8401-
<Mc>8409-
<Tc>8301-、8351-
<T>8355
8401-8417F 55 1969.3-72.9
<M>8601-
<Mc>8603-
<Tc>8101-、8151-
<T>8153-
8601-8622F 86 1973.7-79.3
<Tc>8901-
<M>8801-
8802-04F(偶) 8 1980.3
 920・1010系
 600系の機器を流用し、8400系と同じ車体を新造した吊り掛け駆動車。3両編成5本が製造された。1982年に冷房化され、同時に駆動はWN、制御は界磁位相となっている。1987年から89年にかけて、全車名古屋線に転属し1010系に改番した。

 1972   登場
 1982.2-11 カルダン駆動化、冷房化改造
 1987.7-89.11 名古屋線転属、1010系となる
  
2015.11 1010系:蟹江駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>921-
<M>922-
<Tc>971-
921-929F(奇) 15 1972.6-72.9 1989.11 全車→1010系
<Mc>1011-
<Tc>1111-
<M>1061-
1011-15F 15 1987.7-89.11 もと920系
チョッパ制御車
 3000系
 京都市営地下鉄に直通する試作車として開発されたもので、近鉄唯一のオールステンレス車、かつ唯一の電機子チョッパ制御車。車体は20m級の4扉。駆動はWN、制動は近鉄初採用の電気指令式(MBS)である。ただし、在来車との併結のため、1991年に制動が電磁直通式に変更された。
 地下鉄直通用車両だったが、1988年の直通運転開始時には3200系が投入され、3000系が地下鉄に乗り入れることは無かった。高価だった電機子チョッパ制御も、量産車に採用されることはなかった。2012年に引退し、先頭車のカットボディが高安車庫で保存されている。

 1979.3  営業運転開始
 1991   電磁直通ブレーキに変更
 2012.2  休車
   
2016.10 ク3501:高安車庫
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Tc>3501-
<M>3001-
3501F 4 1979.2 2012.6
 8810・9000・9200系
 界磁チョッパ制御を採用したもので、1400・1200・2050系の奈良・京都線向けということになる。車体は全鋼製の20m級4扉。駆動はWN、制動は電磁直通である。
 8810系は4両編成、9000系は2両、9200系は3両だったが、後に9200系も4両化されている。なお、9200系の増備された中間車のみアルミニウム合金製車体である。

 1981   登場
 2000-07 車体更新
 2003.10-06.12 9000系名古屋線転属(全車)
 2006.6-07.1 9200系大阪線転属(3本)
 
2019.1 8810系:大久保駅 2019.1 9200系:大和八木駅
   
2019.7 9000系:海山道駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Tc>8901-
<M>8801-
8911-8925F(奇) 32 1981.3-84.10
<Mc>9001-
<Tc>9101-
9001-9008F 16 1983.3-84.10
<Mc>9202-
<M>9201-
<Tc>9301-
9201-9207F(奇)  12 1983.3-83.9    
<T>9351- 4 1991.1-91.2 
VVVFインバータ制御車
 3200系
 京都市営地下鉄への乗り入れのために登場したもので、6両編成7本。車体は近鉄で初めて本格採用されたアルミニウム合金製の20m級4扉。制御も初めて本格採用されたVVVFインバータ(GTO素子)で、駆動はWN、制動は電気指令式である。

 1986   登場
 1987.11 6両編成化
 1988.8.28 地下鉄乗入れ開始
 2007.1-09.2 車体更新
   
2023.3 大久保駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Tc>3721-、3101-
<M>3201-、3401-、3801-
<T>3301-
3701-3707F 42 1986.1-88.12
 7000・7020系
 地下鉄中央線に乗り入れるための車両で、近鉄唯一の第三軌条方式。車体は全鋼製の18m級4扉。駆動はWN、制御はVVVFインバータ(GTO素子)、制動は電気指令式(HRDA)である。7020系は近鉄けいはんな線開業時の増備車で、機器は「シリーズ21」と同じものになっている。

 1986.10.1 近鉄東大阪線開業により営業運転開始登場
 2004-06 7000系車体更新
    
2018.7 7000系:生駒駅 2017.8 7020系:大阪港駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Tc>7101-、7601-
<M>7201-、7401-、7501-
<T>7301-
7101-7108、7110F 54 1986.7-89.3
<Tc>7121-、7621-
<M>7221-、7421-、7521-
<T>7321-
7121-7124F 24 2004.9-05.2
 1020系
 VVVFインバータ制御の一般車で、1233系の4両編成仕様にあたる。近鉄のVVVF車は、大阪・名古屋線と奈良・京都線が共通仕様になっているが、1020系は奈良・京都線のみで運用されている。車体はアルミニウム合金製の20m級4扉。駆動はWN、制動は電磁直通(HSC-R)である。
 1026F以降は1026系とも呼ばれる。また、生駒線向けのワンマン化改造により、1020系は全車1021系に、また1026系の内4本が1031系となった。

 1991  登場
 2004  生駒線向けのワンマン化(1021系5本、1031系4本)

    
2023.12 1021系:信貴山下駅  2019.10 1026系:河内永和駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>1021-
<Tc>1121-
<M>1071-、1096-
<T>1171-、1196-
1021-1025F 66 1991.11-91.12
1026-1035F 1993.9-98.8
シリーズ21
 3220系
 21世紀の汎用車として開発された、シリーズ21と呼ばれる車両のトップバッター。京都市営地下鉄への乗り入れに対応している。車体はアルミニウム合金製の20m級4扉で、シリーズ21の中では唯一前面が非対称。駆動はWN、制御はVVVFインバータ(IGBT素子)、制動は電気指令式(KEBS)である。

 2000.3 営業運転開始
   
2019.1 東寺駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Tc>3721-、3121-
<M>3221-、3621-、3821-
<T>3521-
3721-3723F 18 1999.11-00.3
 9020・9820系
 シリーズ21のロングシート一般車で、9020系は2両編成、9820系は6両編成。車体はアルミニウム合金製の20m級4扉。駆動はWN、制御はVVVFインバータ(IGBT素子)、制動は電気指令式(KEBS)である。阪神電鉄への乗り入れに対応しており、基本的には奈良・京都線系統で運用されているが、9051Fのみ大阪線に配属されている。
     
2018.1 9020系:今里駅  2022.10 9820系:河内永和駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>9021-
<Tc>9121-
9021-9039、9051F 40 2000.4-08.7
<Tc>9721-、9321-
<M>9421-、9621-、9821-
<T>9521-
9721-9730F 60 2001.11-08.8
形式別車両数
種類 形式 1943 1964 1975 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
戦前 大軌400・600形 44 110
  奈良電 30 42 7 4
戦後 400・600系 110 8 3
800・820系 40 40 38 30 18
新性能 900系 18 24 24 24 24 24 24
920・1010系 15 15 15 15 15 15 15 15 12 12
8000系 211 206 206 206 206 126 68 44 34 34
8400系 55 55 55 55 55 55 51 49 45 45
  8600系 48 86 86 86 86 86 86 86 86 86
  8800系 8 8 8 8 8 8 8 8 8
チョッパ 8810系 32 32 32 32 32 32 32 32
  9000・9200系 28 28 32 32 32 32 32 32
VVVF 1020系 30 66 64 64 64 64
9020・9820系 40 100 100 100 100 100
地下鉄 3000系 4 4 4 4 4 4 4
  3200系 42 42 42 42 42 42 42
  3220系 18 18 18 18 18
  7000・7020系 54 54 54 78 78 78 78
事業用 モト75形 4 4 4 2 2 2 2 2 2 2
  モワ87形 1 1
年表
 ○大阪電気軌道
  1914.4.30 (現・奈良線):上本町〜奈良(仮)間開業
  1914.7.8  奈良(現・近鉄奈良)まで延伸
  1921.1.1  天理軽便鉄道を合併(762mm・蒸気)
  1921.4.1  畝傍線(現・橿原線):西大寺〜郡山間開業
  1922.4.1  天理線:平端〜天理間改軌・電化、新法隆寺〜平端間は法隆寺線に分離
  1923.3.21 畝傍線:西大寺〜橿原神宮前間全通
  1941.3.15 参宮急行電鉄と合併し、関西急行鉄道となる
  1942.10.1 大阪線、奈良線等を軌道から鉄道に変更
  1944.6.1  南海電気鉄道と合併し近畿日本鉄道となる

 ○天理軽便鉄道
  1915.2.7  新法隆寺〜天理間開業
  1921.1.1  大阪電気軌道に合併

 ○奈良電気鉄道
  1928.11.3 桃山御陵前〜西大寺間開業
  1928.11.15 京都〜西大寺間全通
  1963.10.1 近畿日本鉄道に合併
 ○信貴生駒電気鉄道
  1922.5.16 王寺〜山下(現・信貴山下)間開業
  1925.11.6 信貴生駒電鉄に路線譲渡
  1927.4.1  王寺〜生駒間全通
  1961.10.1 大和鉄道を合併
  1964.10.1 近畿日本鉄道に合併

 ○大和鉄道
  1918.4.26 新王寺〜田原本(現・西田原本)間開業
  1928.5.1  新王寺〜桜井間全通
  1944.1.11 田原本〜桜井間休止(1958.12.27廃止)
  1948.6.15 新王寺〜田原本間1435mmに改軌
  1961.10.1 信貴生駒電鉄に合併

 ○近畿日本鉄道
  1944.6.1  関西急行鉄道と南海電気鉄道が合併し近畿日本鉄道となる 
  1963.10.1 奈良電気鉄道を合併
  1964.10.1 信貴生駒電鉄を合併
  1969.9.21 京都線・生駒線:1500Vに昇圧
  1970.3.15 難波線:近鉄難波〜上本町間開業
  1986.10.  東大阪線(現・けいはんな線):長田〜生駒間10.2km開業
  1988.8.28 京都線と京都市営地下鉄との直通運転開始
  2006.3.27 けいはんな線:生駒〜学研奈良登美ヶ丘間開業

近畿日本鉄道 奈良・京都線