近鉄は、生駒ケーブル、西信貴ケーブル、東信貴ケーブルという3つの鋼索線を営業していた。生駒ケーブルのルーツは1918年に開業した生駒鋼索鉄道で、日本で最初に開業したケーブルカーである。また、西信貴ケーブルのルーツは信貴山電鉄、東信貴ケーブルのルーツは信貴生駒電気鉄道である。東信貴ケーブルは1983年に廃止し、2路線が残っている。
生駒鋼索線
 生駒鋼索線には、宝山寺1号線・2号線と山上線の3路線がある。宝山寺1号線と2号線は、2つの路線が並行して整備されており、多客期以外は一方のみが営業している。宝山寺線の延長は0.9km、高低差146m、最急勾配227‰。山上線の延長は1.1km、高低差322m、最急勾配333‰。いずれも、ケーブルカーとしては珍しい踏切がある。
 コ1形
 宝山寺1号線の車両で、開業時の木造車両を1928年に車体更新したもの。定員115名、全長10.5mで、愛称は「いのり」と「めぐみ」。国内最古の車両として活躍していたが、2000年に営業を終えた。「いのり」は、現存する最も古いケーブルカーの車両として、生駒山麓公園で保存されている。
  
2018.7 コ1形「いのり」:生駒山麓公園
 コ3形・コ5形
 コ3形は宝山寺2号線の車両で、愛称は「すずらん」「白樺」。コ5形は山上線の車両で、愛称は「こぐま」「はくちょう」。車体はほぼ同型だが、長さはコ3形10.8mに対しコ5形は12.8mあった。2000年にコ5形はコ1形とともに引退。コ3形は1953年の運行再開時から変わっておらず、現役最古のケーブルカー車両となっている。
 
2018.7 コ3形「すずらん」  2018.7 コ3形「白樺」 
 コ11形
 2000年に登場した、宝山寺1号線の車両で、愛称は「ブル」と「ミケ」。派手な装飾が施されている。定員128名、全長11.7mである。
 
2009.11 コ11形「ブル」 2018.7 コ11形「ミケ」
 コ15形
 コ11形と同時に登場した山上線の車両で、愛称は「ドレミ」と「スイート」。こちらも派手な装飾が施されている。定員128名、全長13.6mである。
  
2009.11 コ15形「ドレミ」
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
コ1形 1、2 2 1928 2000 宝山寺1号線
コ3形 3、4 2 1953 宝山寺2号線
コ5形 5、6 2 1944? 2000 山上線
コ11形 11、12 2 2000 宝山寺1号線
コ15形 15、16 2 2000 山上線
西信貴鋼索線
 近鉄信貴線の信貴山口と、高安山を結ぶ。戦前は高安山から信貴山朝護孫子寺まで平坦線があったが、戦後は道路となっている。ケーブルカーの延長は1.3km、高低差354m、最急勾配480‰である。
 コ7形
 現在の車両はコ7形「ずいうん」「しょううん」で、1957年の運行再開時から変わっていない。定員170名、全長13.8m。2009年に、寅のイメージキャラクターのイラスト車となった。2021年には、1987年までの復刻塗装に変更されている。
  
2010.3 コ7形「しょううん」
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
コ7形 7、8 2 1957
東信貴鋼索線
 コ9形
 車両は、1933年製のコ9形が廃止時まで使用されていた。コ9は、信貴山下駅前で保存されている。
  
2023.12 コ9形:信貴山下駅前
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
コ9形 9、10 2 1933 1983.9
年表

  1918.8.29 生駒鋼索鉄道 宝山寺線開業
  1922.1.25 大阪電気軌道が生駒鋼索鉄道を合併
  1922.5.16 信貴生駒電気鉄道 鋼索線開業(のちの東信貴ケーブル)
  1926.12.30 大阪電気軌道 宝山寺2号線開業
  1929.3.27 大阪電気軌道 山上線開業
  1930.12.15 信貴山電鉄 鋼索線開業(のちの西信貴ケーブル)
  1931.10.29 信貴山電鉄が信貴山急行電鉄と改称
  1941.3.15 大阪電気軌道が合併により関西急行電鉄となる
  1944.1.7  信急鋼索線休止
  1944.2.11 生駒ケーブル山上線休止
  1944.4.1  信貴山急行電鉄が関西急行電鉄に合併
  1944.6.1  関西急行電鉄が合併により近畿日本鉄道となる
  1944.7   生駒ケーブル宝山寺2号線休止
  1945.8.1  生駒ケーブル山上線運行再開
  1953.4.1  生駒ケーブル宝山寺2号線運行再開
  1957.3.21 信急鋼索線運行再開
  1964.10.1 信貴生駒電鉄が近畿日本鉄道に合併
  1983.9.1  東信貴ケーブル廃止

近畿日本鉄道 鋼索線