弘南線は、国鉄のルートから外れた平賀地域へのアクセス路線として建設されたもの。戦後まもなく電化された。大鰐線は弘南電気鉄道として開業したもので、数少ない戦後に誕生した地方鉄道である。この他に、国鉄からの転換路線である黒石線があったが、1998年に廃止されている。
2017.6 7000形:松木平-津軽大沢間
戦前
 戦前の弘南鉄道は、僅か10km程度のミニ路線であった。開業時の車両はSL2両、客車3両などで、1932年からはガソリンカーも導入されていたようである。  
 
戦後〜1960年代
 昇圧前の車両
 電化時に最初に導入されたのは、南海からの譲受車など。その後も弘南鉄道生え抜きの電車は無く、国鉄払下げ車が多かった。電気機関車のうちED301は、唯一の新造車であるが、これも自社発注ではなく三井鉱山が注文したもののようである。
 
種類 番号 両数  前歴 登場 消滅 備考
EC デニホ10 1 南海デニホ10 1949 1961?
デホ11 1 南海デホ11 1950 1961?
デニホ51 1 南海デニホ51 1951 1961?
モハ21→2220 1 国鉄モハニ101 1952 1961?
モハ2230 1 秩父クハ30 1955 1961?
モハ2250-53 4 国鉄モハ12形 1959 1988.11
クハ1160-61 2 西武クハ1161-62 1951 1961?
クハ1263-64 2 ホロハフ1-2 1954 1961?
クハ1271-72 2 国鉄サハニ79形 1958 1989.12
クハ1281-83 3 国鉄クハニ72形等 1959 1978?
EL ED1-2→202 1 駿豆1-2 1948 1961?
ED301 1 新造 1950 2004.3
 昇圧後の車両
 昇圧によって南海の電車は姿を消し、西武と国鉄の車両を導入した。また、ED333は1923年の武蔵野鉄道電化時に製造されたもので、車齢90年を超えたが今も車籍を残している。
 
2017.6 ED333:平賀駅
 形式 番号 両数 前歴 登場  消滅  備考
EC モハ2231-33 3 西武モハ233等 1961.10-62.3 1988.12
クハ1266-67 2 西武クハ1159-60 1964.6 1999.6
モハ1120-22 3 国鉄クモハ11形 1967.6-71.10 1999.6
クハ1610-14 5 国鉄クハ16形等 1967.6-74.5 1999.6
EL ED333 1 西武13 1961.10
弘南電気鉄道の車両
 弘南電気鉄道は、開業時から電化されていた。生え抜きの電車は無く、秩父鉄道からの譲受車や国鉄払下げ車が使用されていた。弘南鉄道との合併後は、弘南線の車両が転属して置き換えられている。
種類 番号 両数  前歴 登場 消滅 備考
EC モハ101-103 3 秩父デハ17-19 1951 1976.1
モハ105 1 秩父デハ14 1953.11 1989.12
モハ106-107 2 秩父デハ51-52 1962-66 1977
モハ108 1 京急デハ400形 1968.2 1989.12
クハニ201-203 3 国鉄サハ19形 1951 1975
クハ201 1 小田急クハ1459 1970.8 1981.12
1970年代
 1970年代の譲受車  
 1970年に、弘南電気鉄道が弘南鉄道へ譲渡されると、旧弘南電気鉄道の車両の置き換えが始まる。1975年から81年にかけて、東急3000系列の車両を22両譲り受け、おもに弘南線に投入。弘南線の旧型車は大鰐線に転属した。この時代の電車は、7000系などに置き換えられ、1999年に消滅している。またED221は、信濃鉄道が1926年に導入したもので、国鉄から西武鉄道、近江鉄道、一畑電鉄と渡り歩いて今も大鰐線で活躍している。
 
1990.3 クハ3670形:黒石駅  2017.6 ED221:津軽大沢駅
種類 番号 両数 前歴 登場  消滅  備考
EC モハ2025-26 2 松尾鉱業クモハ201-02 1971.6 1989.12
モハ110 1 上田モハ5361 1973.7 1980.5
サハ1700 1 国鉄サハ17形 1971.7 1991.3
モハ3403-04 2 東急デハ3403-04 1975.12 1999.6
モハ3601等 8 東急デハ3601等 1975.12-80.10 1999.6
クハ3672等 3 東急クハ3672等 1980.9-81.9 1999.6
クハ3773等 9 東急クハ3773等 1975.12-81.9 1999.6
EL ED221 1 一畑デ211等 1974.11
1980年代以降
 キハ22形・キハ2100形  
 1984年の国鉄黒石線転換とともに、国鉄のキハ22形を3両譲り受けた。1995年には、このうち2両を小坂鉄道からの譲受車に置き換えたが、1988年の黒石線廃止によってすべて消滅している。
1990.8 キハ22形:黒石駅
 形式 番号 両数 前歴 登場  消滅  備考
キハ22形 2210、20、30 3 国鉄キハ22形 1984.9 1998.4
キハ2100形 2105、07 2 小坂キハ2105、07 1995.6 1998.4
 6000系  
 東急6000系を譲り受けたもので、大鰐線初のカルダン駆動車。車体はステンレス製の18m級3扉両開き。正面に赤帯が追加された。4両編成2本のうち、先頭車の4両のみで2両編成2本を組み、中間車は営業することなく倉庫等で使用されている。2006年に定期運用を離脱し、2014年に実質的に引退。しかしその後も6007-08編成は車籍を残したまま静態保存されている。
 
2017.6 津軽大沢駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ6000形 6005-06 4 東急6000系 1988.10 2014.11
6007-08 1989.11  
 7000系
 東急7000系を譲り受けた、オールステンレス車。デハ7000形は大鰐線向けで、6000系と同時に入線した。その他は弘南線向けで、デハ7010・20形は東急時代からの先頭車だが、デハ7100・7150形は中間車に非貫通の運転台を取り付けている。車体は18m級の3扉両開き。すべて2両編成である。当初はすべて赤帯だったようだが、後に弘南線は青帯、大鰐線は赤帯が基本となった。2008年以降は、弘南線・大鰐線ともに定期営業車は7000系に統一。さまざまな特別塗装車も登場している。2020年現在、冷房化は行われていない。

  2013.8 旧弘南カラー登場(7039-7040)
  2014.5 南海カラー登場(7037-7038)
  2017.5 水間鉄道カラー登場(7033-7034)
  2018.11 福島交通・北陸鉄道カラー登場(7154-7101)
 
2017.6 7000形南海カラー:松木平駅 2015.10 左:7010形、右:7100形 黒石駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デハ7000形 7031-34、37-40 8 東急7000系 1988.10
デハ7010形
デハ7020形
7011-13
7021-23
6 東急7000系 1989.11-90.12
デハ7100形
デハ7150形
7101-05
7151-55
10 東急7000系 1989.11-90.12
 1521形
 南海電鉄から譲り受けたもので、弘南鉄道唯一の20m級4扉車。弘南線に6両、大鰐線に2両が配属された。6000系・7000系より後に吊掛け駆動車を導入するというのも不思議であったが、活躍の期間は短く2008年に消滅している。
モハ1521形
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ1521形 1522-25、27、30 6 南海モハ1521形 1995.7 2008.8
クハ3901形 3902、04 2 南海クハ3901形 1995.7 2008.8
形式別車両数
種類 形式 1935 1960 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 旧弘南鉄道 12 18 17 16 4 4
旧弘南電気 7 10 3 3
モハ20等 3 3 3
3000形 20 22 18 11
6000系 4 4 4 4 4 2 2
7000系 14 24 22 22 22 22 22
1521形 8 7
DC キハ1 1
キハ22形 3 3
キハ2100形 2
PC ホハ1等 3
SL C251,252 2
EL ED202 1
ED301 1 1 1 1 1 1 1
ED333 1 1 1 1 1 1 1 1 1
ED221 1 1 1 1 1 1 1 1 1
年表

 ○弘南
  1926.3.27 弘南鉄道設立
  1927.9.7  弘前〜津軽尾上間11.3km開業(蒸気1067mm)
  1948.7.1  全線600V電化
  1950.7.1  弘前〜弘南黒石間17.0km全通(現在は16.8km)
  1954.4.1  全線750Vに昇圧
  1961.9.1  全線1500Vに昇圧

 ○弘南電気
  1949.7.25 弘南電気鉄道設立
  1952.1.26 大鰐〜中央弘前間13.9km開業

 ○合併後
  1970.10.1 弘南電気鉄道が弘南鉄道に譲渡される
  1984.7.1  貨物営業廃止
  1984.11.1 国鉄黒石線川部〜黒石間6.2kmを譲り受ける
  1998.4.1  黒石線廃止

弘南鉄道