31系
 1927年に登場した、国鉄最初の鋼製客車。車体長は一部を除いて17mで、構造は木造客車とあまり変わっていなかった。3年間で、3等座席車677両、2等座席車146両、2等寝台車66両などが製造されている。新製車としては以下の形式がある。
  3等座席車:オハ31形、オハフ30形
  2等座席車:オロ30形、オロ31形
  2・3等合造座席車:オロハ30形
  2等寝台車:マロネ37形、マロネフ37形
  1等寝台車:マイネ37形、マイネフ37形
  食堂車  :スシ37形
  3等・荷物合造車:オハニ30形
  荷物車  :スニ30形、カニ37形
  郵便車  :スユ30形
  郵便荷物車:スユニ30形

 国鉄の営業車は1972年頃までにすべて廃車となった。事業用に改造されたものは長く使用され、1両はJR東日本に引き継がれて1990年まで残存していた。営業用車は1両のみで、荷物車・事業用車が4両保存されている。
○スニ30-8
 初の鋼製荷物車として登場したもので、スエ30に改造されていた。スニ30に復元して、碓氷峠鉄道文化むらで展示されている。ダブルルーフなど31系の特徴がよくわかる。

○スニ30-95
 スニ30-8と同じく、スエ30に改造されていたものを復元した。佐久間レールパークで保存され、今はリニア・鉄道館に移設されている。
2016.5 スニ30-8 碓氷峠鉄道文化むら  2015.11 スニ30-95:リニア・鉄道館
○スエ30-41
 オハニ30を改造した救援車で、31系の旅客車の雰囲気を残す貴重な車両。三笠鉄道記念館で保存されている。
2016.7 スエ30-41:三笠鉄道記念館
32系
 1929年に登場した、20m級の鋼製客車。台枠も魚腹から長形に変わって近代的になった。当初は二重屋根だったが、1932年頃から丸屋根となっている。1942年までの間に、3等座席車1344両、2等座席車178両などが製造されている。新製車としては以下の形式がある。
  3等座席車:スハ32形、スハ33形、オハ34形、スハフ32形
  2等座席車:スロ32形、スロ33形、スロ34形、オロ35形、スロフ30形、スロフ31形、オロフ32形
  2・3等合造座席車:スロハ31形、スロハフ30形
  1・2等合造座席車:スイロフ30形
  1等展望車:スイテ38形、スイテ39形、スイテ48形、スイテ49形
  3等寝台車:スハネ30形、スハネ31形
  2等寝台車:マロネ37形、マロネ38形、マロネフ37形
  1等寝台車:マイネ38形、マイネフ38形
  1・2等寝台車:マイロネフ37形、スイロネフ38形
  1等寝台2等車:マイネロ37形
  2等寝台2等車:マロネロ37形
  食堂車  :スシ37形、マロシ37形、スロシ38形
  3等・荷物合造車:スハニ31形
  3等・郵便合造車:スハユ30形
  荷物車  :マニ31形
  郵便車  :マユ31形、マユ32形、マユ33形
  郵便荷物車:マユニ31形

 1980年頃までにはほとんどの車両が廃車となったが、スハフ32がJR東日本、展望車のマイテ49がJR西日本でイベント列車用に残されている。動態保存車を除くと、営業用車が4両、事業用車が2両保存されている。
 
2018.10 スハフ32:酒田駅
○マイテ39-11
 2両しか現存していない展望車の1つ。青梅鉄道公園で保存されていたもので、現在は鉄道博物館に移設されている。

○マイテ49-2
 現存するもう1つの展望車で、1961年に廃車となったが、1987年に車籍が復活した。今も車籍が残っており、イベント等で展示されている。
2015.12 マイテ39-11:鉄道博物館 2017.11 マイテ49-2:網干総合車両所
○マロネフ59-1、スハシ38-102
 1962年の交通科学博物館開館時から展示されていたもので、現在は京都鉄道博物館に移設されている。
 
2016.6 マロネフ59-1(旧マイロネフ38)
:京都鉄道博物館
2016.6 スハシ38-102:京都鉄道博物館 
○スハフ32-2146
 32系座席車は2両しか現存していないが、そのうちの1両。C57とともに小金井公園で保存されている。
 
2016.11 スハフ32-2146:小金井公園
○スエ32-1
 マユニ31を改造した救援車で、1986年に廃車となった。三笠鉄道記念館で展示されている。

○オエ61-309
 経歴は複雑で、オロ35形を改造したマニ36-2004を、さらに救援車として改造したものである。小樽市総合博物館で保存されている。
2016.7 スエ32-1:三笠鉄道記念館 2017.9 オエ61-309:小樽市総合博物館
35系
 32系の改良型で、側窓が広げられたほか、車体の軽量化が図られている。1939年に登場し、戦後の1950年までの間に3等座席車2067両、2等座席車145両などが製造された。新製車としては以下の形式がある。
  3等座席車:オハ35形、オハフ33形、スハ42形、スハフ41形
  2等座席車:オロ36形、オロ40形、オロ41形、オロフ33形
  2・3等合造車:スロハ32形
  1等展望車:スイテ37形
  1等寝台車:マイネ40形
  食堂車  :マシ38形
  3等・荷物合造車:スハニ32形
  3等・郵便合造車:スハユ31形
  荷物車  :マニ32形、マニ34形
  郵便車  :マユ34形、オユ36形

 国鉄時代にほとんどの車両が廃車となったが、オハフ33がJR東日本に1両、JR西日本に2両引き継がれた。このうちJR東日本の1両がJR北海道に譲渡され、今も車籍を残している。また、津軽鉄道、大井川鉄道に譲渡された車両も、まだ現役である。動態保存車を除くと、保存車は10両程度である。
○オハフ33-488
 関門海峡めかり駅前で、カフェ・休憩室として利用されている。

○オハフ33-1568
 富内線の富内駅跡で、ライダーハウスとして利用されている。
 
2016.8 オハフ33-488:関門海峡めかり駅前   2016.7 オハフ33-1568:富内駅
○スハ42-2047
 川崎市の生田緑地で保存されている。

○オハ36-125、オハフ33-364
 オハ36形は、スハ42形を更新修繕したもの。オハフ33-364とともに、小樽市総合博物館で保存されている。
2016.4 スハ42-.2047:生田緑地 2017.9 オハ36-125:小樽市総合博物館
○マイネ40-11
 戦後初めての一等寝台車で、オヤ41に改造されていたもの。マイネ40に復元されて碓氷峠鉄道文化むらで保存されている。
 
2016.5 マイネ40-11:碓氷峠鉄道文化むら
43系
 35系の改良型で、外観におけるいちばんの違いは切妻構造になったことである。1951年に登場した。1955年までの間に、3等座席車1198両や特急向け客車49両が製造された。新製車としては、以下の形式がある。
  3等座席車:スハ43形、オハ46形、オハ47形、スハフ42形、オハフ45形、オハフ46形
  3等座席車・北海道仕様:スハ45形、スハフ44形
  3等座席車・特急向け :スハ44形、スハフ43形
  2等座席車:スロ51形、スロ52形、スロ53形、スロ54形
  3等・荷物合造車:スハニ35形
  2等寝台車:スロネ30形
  1等寝台車:マイネ41形
  食堂車  :マシ35形、カシ36形
  郵便車  :オユ40形、スユ41形、スユ42形、スユ43形

 ほとんどが国鉄時代に廃車となったが、20両程度がJRに引き継がれ、SLニセコやトロッコファミリー号などのイベント列車に使用された。2020年現在、JR北海道に4両、JR東日本に5両の9両まで数を減らしている。このうちJR北海道の3両は長期休車中。残る1両は1999年に復籍したスハシ44形で、「SL冬の湿原号」に連結されている。
 
1990.8 スハフ44:ニセコ駅  2023.1 スハシ44:釧路駅
 JR東日本の5両は、高崎エリアでSL牽引などによるイベント列車として運用されている。
 
2016.5 スハフ42:高崎問屋町付近 
○スハフ42-502
 相生線の北見相生駅跡で保存されている。

○スハフ42-507
 岩内線の幌似駅跡で保存されている。ホームも残されている。
2009.10 スハフ42-502:北見相生駅跡 2011.7 スハフ42-507:幌似駅跡
○スハフ44-25
 船の科学館で保存されていたもので、真岡市のSLキューロク館に移設されている。
 
2023.10 スハフ44-25:SLキューロク館
○スハ45-14
 小樽市総合博物館で保存されている。

○スハ45-17
 湧網線の計呂地駅跡で保存されている。
2017.9 スハ45-14:小樽市総合博物館 2015.9 スハ45-17:計呂地駅跡
○オハフ46-501
 胆振線の六郷駅跡で保存されている。 

○オハ47-508
 湧網線の卯原内駅跡で保存されている。茶色が明る過ぎて違和感がある。
2011.7 オハフ46-501:六郷駅跡  2015.9 オハ47-508(スハ43改造車):卯原内駅跡
70系
 終戦直後の1946年から1949年にかけて、客車不足を補うため、戦災車を車体更新により復旧して登場した形式。あくまで応急措置という位置づけだったため、1954年には旅客車が消滅、荷物車・郵便車に改造されたものも1969年までに消滅している。救援車スエ78は2007年までJR東日本で存続していた。

○スエ78-5
 現存する唯一の70系。小樽市総合博物館で保存されている。
2017.9 スエ78-5:小樽市総合博物館
60系
 戦後間もない1949年から、木造車を鋼体化改造することで登場した形式。2500両以上が改造されている。43系とともに、戦後の普通客車の代表として活躍していた。ほとんどが国鉄時代に廃車となり、和田岬線向けに通勤車化改造された7両のみがJRに引き継がれたが、1990年に廃車となっている。この他、オハニ63を改造してオハニ36となった車両が、JR東日本でイベント用として残っている。保存車は少なく、営業用車は6両、事業用車3両である。
 
1989.8 オハ64:和田岬駅(2両目)  2018.10 オハニ36:酒田駅
○オハユニ61-107
 最後は五能線で使用され、1987年に廃車となった3等・郵便・荷物の合造車。碓氷峠鉄道文化むらで保存されている。

○スユニ60-218
 改造名目で登場した郵便・荷物合造車。上砂川支線の上砂川駅跡で保存されている。
2016.5 オハユニ61-107:碓氷峠鉄道文化むら 2011.7 スユニ60-218:上砂川駅跡
○ふれあい
 スロ81系は、60系客車を改造したお座敷列車。6両が1986年に水戸へ転入し、「ふれあい」という愛称になった。最後の旧型客車によるジョイフルトレインだったが、1990年7月に廃車となっている。
ふれあい
10系
 それまでの客車とは全く異なる設計で、大幅な軽量化を達成した形式。1955年に登場し、特急・急行など幅広く使用された。1965年までの間に、3等座席車304両、3等寝台車502両などが製造された。
  3等座席車:ナハ10形、ナハ11形、ナハフ10形、ナハフ11形
  2等座席車:ナロ10形
  3等寝台車:ナハネ10形、ナハネ11形、オハネ17形、ナハネフ11形
  2等寝台車:オロネ10形
  2・3等合造寝台車:ナロハネ10形
  食堂車  :オシ16形、オシ17形
  郵便車  :オユ10形、オユ11形、オユ12形、スユ13形、オユ14形、スユ15形、スユ16形
  荷物車  :カニ38形

 1982年11月に急行から撤退、1985年3月には営業終了となっている。戦後の代表的な客車でありながら、保存車は10両程度にとどまる。
○ナハフ11-1
 10系の座席車としては唯一の保存車。碓氷峠鉄道文化むらで展示されている。

○オハネ12-29
 最後は夜行普通列車「ながさき」で使用されたもの。碓氷峠鉄道文化むらで保存されている。
2016.5 ナハフ11-1:碓氷峠鉄道文化むら  2016.5 オハネ12-29:碓氷峠鉄道文化むら
○オシ17-2055
 10系の食堂車だが、オヤ17に改造されていたもの。オシ17に外観のみ復元されて碓氷峠鉄道文化むらで保存されている。

○オロネ10-27
 2等寝台車で、リニア・鉄道館で保存されている。
2016.5 オシ17-2055:碓氷峠鉄道文化むら 2015.11 オロネ10-27:リニア・鉄道館
○オユ10-2565
 10系の郵便車で、72両が製造された。能登中島駅で1両、中央郵政研修所で1両が保存されている。
2017.7 オユ10-2565:能登中島駅
特殊用途
 建築限界測定車
○オヤ31-31
 オシ33を改造した建築限界測定車。矢羽根がついた独特な姿から、オイラン車と呼ばれていた。JR西日本に引き継がれ、JR北海道のオヤ31-32とともに今も車籍を残している。

○オヤ31-12
 スハ32を改造した建築限界測定車。JR東海に引き継がれていたが、1995年に廃車となった。その後は佐久間レールパークで保存され、今はリニア・鉄道館で展示されている。
2017.11 オヤ31-31:網干総合車両所 2015.11 オヤ31-12:リニア・鉄道館
 現金輸送車
○マニ30-2012
 マニ30形は紙幣を運ぶための現金輸送車で、車両の存在も秘密として扱われていたといわれる。戦後間もなく6両が製造され、1978〜79年に新造車6両に置き換えられた。マニ30-2012は最後に製造されたもので、50系客車に構造は似ている。小樽市総合博物館で保存されている。
2017.9 マニ30-2012:小樽市総合博物館
旧型客車