旧型電気機関車-1

EC40・ED40
 碓氷峠は、国鉄の最急勾配区間であり、アプト式が採用されていた。しかしそれでもSLによる牽引では問題が多く、1912年に早くも電化される。この時に輸入された機関車がEC40で、国鉄最初の電気機関車となった。続いて登場したED40は、初の国産電気機関車である。廃車後、一部の車両はアプト式の装置を外して私鉄で活躍している。EC40、ED40の各1両が保存されている。
○EC40-1
 京福電鉄のテキ511に改造されていたもの。1964年に登場時の10000形に復元され、軽井沢駅舎記念館で保存されている。
○ED40-10
 東武鉄道に譲渡されていたもので、1968年にED40-10に復元され、大宮総合車両センターで長い間保管されていた。現在は鉄道博物館で展示されている。
   
2017.2 EC40-1:軽井沢駅舎記念館 2015.12 ED40-10:鉄道博物館 
 形式 旧形式 両数  前歴  登場  消滅  備考
EC40 10000形 12 新製 1911 1936.4 譲渡:京福電鉄(4両)
ED40 10020形 14 1919.6-23.2 1952.9 譲渡:東武鉄道(2両)
   駿豆鉄道(3両)
   南海電鉄(2両)
ED41-ED42
 碓氷峠向けアプト式機関車の改良型で、まずED41を2両輸入し、それをコピーして国産機ED42が量産されている。ED42は、1963年のアプト式廃止まで活躍した。ED41は全車解体されたが、ED42は2両の保存車がある。
○ED42-1
 1963年の廃車後も横川で保管されていたもので、1987年に一度動態復元された。その後も横川で保管され、現在は碓氷峠鉄道文化むらで展示されている。通常は屋内にあるが、ごく希に屋外展示されている。
   
2016.5 ED42-1:碓氷峠鉄道文化むら 2021.10 ED42-1:碓氷峠鉄道文化むら
○ED42-2
 軽井沢駅から徒歩10分ほどの軽井沢東部小学校で保存されている。公道から見える場所にあるが、近づくことはできなかった。
 
 2017.2 ED42-2:軽井沢東部小学校
 形式 旧形式 両数  前歴  登場  消滅  備考
ED41 10040形 2 新製 1926.12-27.1 1951.12
ED42 .28 1934.3-46.1 1963.11
ED10〜ED14
 いずれも、1925年の東海道本線の国府津までの電化に際し導入された輸入機関車。さまざまなメーカーから2〜4両ずつ輸入されている。戦後、多くの車両は西武鉄道や近江鉄道に譲渡された。
○ED11-2
 アメリカのゼネラル・エレクトリック社製で、廃車後も浜松工場で1976年まで使用された。その後は佐久間レールパークで保存され、現在はリニア・鉄道館で展示されている。
 
2015.11 ED11-2:リニア:鉄道館
○ED10-2
 アメリカのウエスティングハウス社製で、1960年に西武鉄道に譲渡されてE71となった。1986年に廃車となった後、国鉄時代の外観に戻されて横瀬基地で保管されている。車両基地公開イベントの際に見ることができる。

○ED14-4
 アメリカのゼネラル・エレクトリック社製で、4両の仲間がすべて近江鉄道に譲渡された。2004年に2両が廃車となったが、4両とも現存している。ED14-4のみ国鉄時代の茶色に戻されている。
   
2015.11 ED10-2:西武鉄道横瀬基地  2016.6 ED14-4:近江鉄道ミュージアム
 形式 旧形式 両数  前歴  登場  消滅  備考
ED10 1000形 2 新製 1922.12 1960.5 譲渡:西武(1両)
ED11 1010形 2 1923.3-9 1960.5 譲渡:西武(1両)
ED12 1020形 2 1923.12 1949.3 譲渡:西武(全車)
ED13 1030形 2 1924.10 1950.1 改造:ED17
ED14 1060形 4 1926.3 1966.2 譲渡:近江(全車)
ED50〜ED57
 ED10〜14とともに、東海道本線電化に前後して輸入された電気機関車群。このうちED50〜52はED13とともにイギリスの同じメーカーから輸入され、デッカーと呼ばれた。多くの車両は、中央線などへ転用する際に歯車比を変更してED17〜19、23〜24に改番されている。ほとんどが改造されたこともあり、保存車は無い。
 
ED51
 形式 旧形式 両数  前歴  登場  消滅  備考
ED50 1040形 17 新製 1923.7-24.9 1938.9 改造:ED17
ED51 6000形 3 1925.5 1950.3 改造:ED17
ED52 6000形 6 1924.3-11 1943.10 改造:ED17・ED18
ED53 6010形 6 1926.9-11 1941.7 改造:ED19
ED54 7000形 2 1926.3 1948.11
ED56 1 1927.1 1939 改造:ED23
ED57 2 1928.5 1944.3 改造:ED24
ED15・ED16
 輸入機関車を参考にして製造された国産電気機関車。ED16は量産され、中央線・上越線などで使用された。ED15のトップナンバーが日立製作所で保管されているほか、ED16は2両の保存機がある。
 
ED16:1982年頃
○ED16-1
 中央線・青梅線などで使用されたもので、1981年の廃車後、青梅鉄道公園で保存されている。

○ED16-15
 上越線・中央線などで使用されたもので、1979年の廃車後、山梨県の若草町役場(現・南アルプス市)で保存されている。上屋はあるが、かなり色褪せている。
   
2017.6 ED16-1:青梅鉄道公園 2017.1 ED16-15:南アルプス市若草支所 
 形式 旧形式 両数  前歴  登場  消滅  備考
ED15 1070形 3 新製 1926.3 1960.2
ED16 18 1931.4-8 1983.12
ED17
 東海道本線向けの輸入機関車を、勾配の多い中央線に転用するため、歯車比を変更した改造車。デッカーと呼ばれた28両のうち、ED18となった4両を除く24両が改造対象となり、さらにED18となったもののうち3両も後に編入されている。中央線の後は仙山線、飯田線などで活躍した。
○ED17-1
 ED17唯一の保存機で、ED50から改造されたもの。1970年の廃車後は甲府市の舞鶴城址公園で保存されていた。現在は再整備のうえ鉄道博物館で展示されている。
 
2015.12 ED17-1:鉄道博物館
 形式 番号 両数  前歴  登場  消滅  備考
ED17 1-17 17 ED50 1931.8-38.9 1972.7 改造:ED18(2両)
19-21 3 ED18 1950.7-12
22-23 2 ED52 1943.10
24-26  3 ED51 1943-50.3
27-28 2 ED13 1949.12-50.1
ED18
 初代のED18は、ED17と同様に歯車比を変更した改造車。機器の違いからED18と区分されたが、後に4両のうち3両がED17に編入されている。
 2代目のED18は、軸重軽減のために1軸を追加するという改造を施したもので、初代ED18のうち1両とED17の2両が対象となった。飯田線で長く使用され、1977年までに一度消滅したが、1両が復活して2009年まで車籍を有していた。
○ED18-2
 ED18唯一の保存機で、1977年の廃車後も浜松工場内の入替に使用されていたが、1992年に車籍復活した。そして飯田線のトロッコファミリー号等を牽引するが、2005年に故障により引退。現在はリニア・鉄道館で展示されている。
2015.11 ED18-2:リニア:鉄道館
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
ED18 3-6 4 ED52 1931-32 1954.3 改造:ED17(3両)
 ED18(2代目)(1両)
1-3(2代目) 3 ED17
ED18
1954.3-55.2 2009.3
ED19・23・24
 ED19は、ED53を仙山線に転用するため、耐寒耐雪化や山岳線区用の改造を施したもの。最後はED17・ED18とともに飯田線で使用された。1976年までに廃車となったが、1両が保存されている。ED23・ED24も、それぞれED56・ED57を改造したものであるが、廃車時期が早く保存車は無い。
○ED19-1
 ED19唯一の保存機で、1937年にED53-3を改造したもの。1976年の廃車後、伊那松島駅から徒歩10分ほどの、蓑輪町郷土資料館で保存されている。野天であるが美しく整備されている。
2017.1 ED19-1:箕輪町郷土資料館
 形式 番号 両数  前歴  登場  消滅  備考
ED19 1-6 6 ED53 1937.8-41.7 1976.8
ED23 1 1 ED56 1939 1960.5
ED24 1-2 2 ED57 1944.3 1960.2
EB10
 1926年に製造された蓄電池機関車AB10に、パンタグラフを設置して電気機関車としたもの。国鉄唯一の2軸電気機関車である。王子から分岐していた須賀貨物支線で使用され、1971年の須賀支線廃止により機関車も役割を終えた。
○EB10-1
 引退した1972年から、府中市にある郷土の森で保存されている。屋根が設置され、塗装も定期的に行われているようである。
 
2016.11 EB10-1:府中市郷土の森
 形式 旧形式 両数  前歴  登場  消滅  備考
EB10 10形 2 AB10 1932.4 1972.2
買収機関車
 戦前の鉄道国有化に伴って、そこで使用されていた機関車も買収された。ほとんどの車両は1960年前後に地方鉄道等へ譲渡されており、現存する車両も少なくない。
 譲渡車
○ED28-2
 もと豊川鉄道で、1959年の廃車後、遠州鉄道に譲渡された。現在も車籍を有し、工事列車の牽引に使用されているようである。通常は遠州西ヶ崎駅の側線に留置されている。

○ED31-4
 もと伊那電気鉄道で、1956年の廃車後、近江鉄道に譲渡された。6両あるED31のうち3両が直接近江鉄道へ、2両は西武鉄道を経由して近江鉄道へ移ったため、5両が揃っている。今も5両とも現存し、3と4は車籍を有するが、もう動くことはないようである。
   
2016.8 ED28-2:遠州鉄道遠州西ヶ崎駅 2016.6 ED31-4:近江鉄道ミュージアム
○ED22-3
 もと信濃鉄道で、1956年の廃車後、西武鉄道に譲渡された。1960年に松本電鉄に移り、2005年に除籍されたが新村駅構内で保存されている。ホームからもよく見える。

○ED29-1
 もと豊川鉄道で、1959年に岳南鉄道に譲渡された。予備機として長く車籍を有していたが、2015年に除籍されている。岳南富士岡駅構内で留置されている。
   
2016.7 ED22-3:松本電鉄新村駅 2016.6 ED29-1:岳南鉄道岳南富士岡駅
○ED36-1
 もと青梅電気鉄道で、1960年の廃車後、2両そろって西武鉄道に譲渡されE43となった。1987年に廃車となった後も、横瀬基地で保管され、車両基地公開イベントの際に見ることができる。

○ED38-1
 もと阪和電気鉄道で、南海電鉄と合併後に国有化された。1960年の廃車後、秩父鉄道に譲渡されている。1988年に除籍されたが、三峰口駅構内で保存されており、ホームからも見えている。
   
2015.11 ED36-1:西武鉄道横瀬基地 2016.2 ED38-1:秩父鉄道三峰口駅
 形式 買収元 両数  登場  消滅  備考
ED20 富士身延鉄道 4 1927 1959.3
ED21 富士身延鉄道 3 1928 1973.2
ED22 信濃鉄道 3 1926 1956.2 譲渡:西武、三岐鉄道
ED25 宇部鉄道 1 1937 1960.5 譲渡:上田交通
ED26 富山地方鉄道 1 1924 1960.5 譲渡:越後交通
ED27 宮城電気鉄道 2 1924 1960.7
ED28 豊川鉄道
鳳来寺鉄道
2 1925 1959.3 譲渡:近江鉄道、遠州鉄道
ED29 豊川鉄道 1 1926 1959.3 譲渡:岳南鉄道
ED30→ED25 豊川鉄道 3 1944 1963.2 譲渡:伊豆急行
ED31 伊那電気鉄道 6 1923 1956.9 譲渡:西武(2両)、近江鉄道(3両)、上信電鉄(1両)
ED32 伊那電気鉄道 1 1926 1960.5 譲渡:岳南鉄道
ED33→ED26 伊那電気鉄道 2 1929 1973.2
ED34→ED27 南武鉄道 4 1928-29 1973
ED35→ED28 宮城電気鉄道 1 1942 1962.2 譲渡:京福電鉄
ED36 青梅電気鉄道 2 1926 1960.2 譲渡:西武
ED37→ED29 奥多摩電気鉄道 1 1944 1963.11
ED38 南海電鉄 4 1930-44 1959.12 譲渡:秩父鉄道