紀元前から現在のエチオピアに栄えたアクスム王国に代わって表れたのがザグウェ王朝で、1137年に成立したといわれる。その後11代続いた王のうち、何といってもこの王朝を有名にしているのがラリベラ王だ。100年にわたって十字軍が防衛してきたキリスト教の聖地エルサレムがイスラム勢力によって陥落する中、ラリベラ王は第2のエルサレムとしてラリベラの岩窟教会群を建設したのである。王朝は1270年、イクノ・アムラクによって滅ぼされるが、ラリベラは現在まで聖地としてエチオピア人の信仰を集め続けている。

アムハラ州
 ラリベラの岩窟教会群(世界遺産) 
 第1教会群  
 ラリベラは見どころが多いので、2日間に分けて観光した(とはいっても初日の観光スタートは15時頃であったが)。最初は第1教会群である。
 入り口を入ると、ラリベラ教会群最大の聖救世主(メドハネ・アレム)教会が見えてくる。高さは12mもあるが、建てたのではなく岩をくりぬいたもので、屋根の高さが周りの地面の高さなのである。なお、空を覆う立派な屋根は、雨から保護するためユネスコの手で最近設置されたものらしい。
 教会の中も見学できるが、靴を脱がなければならない。ガイドブックには教会内はダニ・ノミの巣窟になっていると書いてあるので、靴下の上にビニールを被せてさらに靴下を履き、虫よけをたっぷりかけるという完全防備で入ったが、以前より改善されたのか虫がわくほど不潔には見えなかった。
2011.5 聖救世主教会 2011.5 聖救世主教会 内部
 教会を出て狭い通路を抜けると、広場の中央に聖マリア(ベト・マリアム)教会、両脇の壁に聖十字架(マスカル)教会と聖処女(デナギル)教会がある。中でも聖マリア教会は、人類の発祥と終末を象徴する壁画が描かれた柱(布が巻かれて絵は見られない)がおかれ、天井も壁画に埋め尽くされて見ごたえがある。フラッシュ撮影は禁止だが、この旅の直前に買ったソニーのコンデジが暗い所に恐ろしいほど強く、肉眼よりはるかに明るい写真を撮ることができた。
2011.5 聖マリア教会 2011.5 聖マリア教会 内部
     
 2011.5 聖マリア教会  2011.5 聖十字架教会 2011.5 聖処女教会 
 教会の中では、祭司に十字架を見せてもらえる。とくに左の十字架はラリベラ十字架と呼ばれ、1997年に一度盗まれたらしい。
     
 2011.5 聖救世主教会  2011.5 聖十字架教会 2011.5 聖処女教会 
 4つの教会の見学を終えると、細い通路を少し歩く。次に出てくるのは聖ミカエル教会と聖ゴルゴダ教会で、外から見ると1つだが中で2つに分かれている。聖ゴルゴダ教会はラリベラ王の墓があるため女性入室禁止だが、中に入らなくても見えてしまうほど狭い部屋だった。
     
 2011.5 聖ミカエル教会  2011.5 聖ミカエル教会 2011.5 聖ゴルゴダ教会 
 聖ギオルギス教会  
 ラリベラ最大の見どころ、聖ギオルギス教会は第1教会群から歩いて数分で、少しずつ十字架型の岩が見えてくるのでわくわくする。十字架は幅12m、奥行12m、高さ12mで、上から見ても下から見ても美しく迫力がある。屋根や柵がないのもいい。
2011.5 聖ギオルギス教会
2011.5 聖ギオルギス教会 2011.5 聖ギオルギス教会 内部
 アシェトンの岩窟教会  
 翌朝はアシェトンに向かう。ここは4000m近い山の頂上で、車道はないため徒歩か馬で行くことになる。通常のツアーでは訪れないので、特別注文である。
 朝7時に出発し、街をぬけていく。礼拝の時間なのか、第1教会群に向かう人の列が見える。郊外に出ると尾根道で、はるか遠くに目的地が見えていた。
2011.5 ヨルダン川から見る第1教会群 2011.5 アシェトン山(左奥)
 途中1回の休憩をはさんで9:45に山頂到着。絶壁の横を掘った聖ミカエル教会と、山頂を上から掘った聖マリア教会がある。内部は飾り気がない素朴なものだが、十字架や聖書などを見せてもらえた。もちろん山頂からの景色も最高で、自分の足で訪れた教会はエチオピアの旅の中でもいちばん印象深いところとなった。ただ、空気の薄さと、もともと体調が悪かったこともあって、帰りはバテバテだった。
2011.5 アシェトンの聖ミカエル教会 2011.5 アシェトンの聖マリア教会
     
 2011.5 聖ミカエル教会  2011.5 聖マリア教会 2011.5 聖マリア教会 
 第2教会群  
 2日目の午後は第2教会群を見学する。最初の聖ガブリエル教会と聖ラファエル教会は外から見ると1つで、かつてラリベラ王の宮殿だったといわれる。脇の塀は「天国への道」と呼ばれたいたようだが、両側は20mの断崖で落ちたら終わりである。
 そしてここから次の聖マルコリウス教会までは、地上の道のほかに「地獄の道」と呼ばれる地下道がある。通ってもいいとのことだったので、当然地下道を選んだ。中は経験したことがないほどの真の暗闇で、方向感覚も失うほどだった。
2011.5 聖ガブリエル・ラファエル教会 2011.5 天国への道
 第2グループの最後は聖エマニュエル教会と聖アバ・リバノス教会で、一見似た構造だが、聖エマニュエル教会は上から掘り下げたもの、聖アバ・リバノス教会は横から掘ったものである。岩窟教会は窓の形にも意味があって、聖エマニュエル教会の中段の窓はアクスムの十字架、下段の窓はギリシャ十字架である。
2011.5 聖エマニュエル教会 2011.5 聖アバ・リバノス教会
 第2教会群でも、中に入るといろいろなものが見られる。カメラを向けるとポーズをとる祭司も多く、なかなかフレンドリーである。
     
 2011.5 聖ラファエル教会  2011.5 聖マルコリウス教会 2011.5 聖アバ・リバノス教会 
オロミア州
 アディ・マリアム教会  
 アディス・アベバの郊外、ティヤに向かう途中にあった岩窟教会。ガイドはラリベラと同じ時代のものだと言っていたが、なぜラリベラから遠く離れた地にあるのか、納得のいく説明はなかった。ガイドブックにも載っていない謎の教会だが、外から見ると丘にしか見えなくておもしろい。
2011.5 アディ・マリアム教会 2011.5 アディ・マリアム教会

ザグウェ王朝