チアパス州を流れるウスマシンタ川は、マヤ世界で最も重要な川と言える。ヤシュチラン、ボナンパック、そしてグアテマラ側のピエドラス・ネグラス、ドスピラス、セイバルなどの諸都市は、みなこの川の周辺で栄えた。芸術の都と呼ばれるパレンケも、ウスマシンタ川がつくった平原に位置している。 |
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メキシコ・チアパス州 | |
パレンケ遺跡(世界遺産) | |
パレンケは、カラクムル、ティカル、コパンと並ぶマヤの強国であったが、全盛期は少しはやく7世紀前半である。パカル王は611年カラクムルに敗れて衰えていた都市を再建し、華麗な宮殿を建設した。しかし711年にトニナーに敗北し、勢力が衰えていったようである。ここは1996年と2017年の2回訪れている。 パレンケ遺跡に入ると、最初に見えてくるのが碑銘の神殿。ここの地下から発見されたパカル王の墓は、20世紀最大の考古学的発見の1つといわれる。最初に訪れたときは、神殿の上から地下にもぐってパカル王の墓を見ることができたのだが、2度目では神殿に登ることすらできなくなっていた。その代り、メキシコシティの国立考古学博物館にこの墓の実物大の再現模型がつくられている。 |
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1996.12 碑銘の神殿 | 1996.12 パカル王の墓 |
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2017.9 碑銘の神殿と神殿13・12 | |
宮殿は、パレンケ遺跡の中心にあり、大きな基壇の上に塔をはじめ多くの建物が組み合わさって、日本のお城に雰囲気が似ている。マヤではここにしかない珍しい構造の遺跡である。最初に訪れたときは、メリダから夜行バスで移動して朝8時頃遺跡に到着したので、ちょうど朝陽を浴びて輝いていた。マヤで最も印象に残っている風景だ。なお、2度目の訪問では、絶好の展望台だった碑銘の神殿に登れず、やや魅力がダウンしていた。 | |
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1996.12 宮殿(碑銘の神殿より) | 1996.12 宮殿内部 |
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1996.12 宮殿(北の神殿群より) | |
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2017.9 宮殿(十字の神殿より) | 2017.9 宮殿内部のレリーフ |
宮殿の東側、丘を登っていった所が、十字のグループである。ここにある3つの神殿は、7世紀末にカン・パラム2世が建てたと言われている。十字という名が付いているのは、神殿のレリーフに十字架のモチーフが刻まれているからだが、もちろんキリスト教は伝わっていない。神殿を大きく見せるために、大きな屋根飾りを付けていることがよくわかる。パレンケの神殿は1つ1つが特徴的あり、いくら見ていても飽きない。 | |
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1996.12 太陽の神殿 | |
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2017.9 十字の神殿 | 2017.9 葉の十字の神殿 |
最後に北側のエリアへ。ここには伯爵の神殿や北の神殿群などがある。観光客が多いパレンケ遺跡だが、このエリアだけはほとんど無人だった。 | |
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1996.12 北の神殿群 | |
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2017.9 伯爵の神殿 | 2017.9 球戯場 |
☆世界遺産「古代都市パレンケと国立公園 」 1987年登録 | |
ヤシュチラン遺跡 | |
ヤシュチランは、ウスマシンタ川沿いに築かれた都市で、川の対岸はグアテマラである。ヤシュチランの全盛期は8世紀、イツァムナーフ・バラム2世の時代で、今残る建物の多くもこの時代のものである。陸路は無く、近くの街コロサルから30分ほどボートに乗ってようやくたどり着く。 遺跡の入口にあるのは建造物19で、道を完全に塞いでいて建物の中を通らないと先に進めない。しかも内部は迷路のように入り組んでいてしかも真っ暗。防御のための城塞代わりだったことがわかる。 |
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2017.9 建造物19 | 2017.9 建造物19の内側 |
建造物19を通り抜けると、グラン・プラザと呼ばれる広場に出る。木が邪魔をして見通しがきかないが、奥行きは相当ある。両側に多くの建物があって、石碑やまぐさ石の彫刻もよく残っていた。 | |
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2017.9 グラン・プラザ | 2017.9 建造物21 |
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2017.9 | 2017.9 |
グラン・プラザの中ほどから、急な階段を登って大アクロポリスへ。ここに、ヤシチュラン遺跡で最大級の建造物33がある。屋根飾りのついた立派なもので、階段から見上げると、ピラミッドの上に建つ神殿のイメージが感じられた。 | |
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2017.9 大アクロポリスに登る階段 奥に見えるのが建造物33 |
2017.9 建造物33 |
通常の観光は大アクロポリスまでのようだが、自由時間を利用してさらに奥へ。山道を15分ほど登ったところに、南の神殿群がある。観光客が誰もいない丘の上に、予想以上に立派な遺跡があって、ヤシュチランでいちばん印象に残った。 | |
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2017.9 建造物40 | 2017.9 左から建造物41・40・39 |
ボナンパック遺跡 | |
ボナンパック遺跡は、直線距離ではヤシュチランから25kmほどだが、ボートでコロサルの街へ行き、バスでラカンドンの集落まで移動して、さらにバンに乗り換えなければならない。遺跡に着いたのは15時を過ぎていた。なお、この日の13時過ぎにメキシコ中部地震があったのだが、震源から遠く離れていたので揺れに気付かなかった。 ここは遺跡の規模は小さいが、マヤで最も保存状態のいい壁画がある。壁画の部屋は3つあり、どれも天井まで絵で埋め尽くされていた。最近修復されたようで、驚くほどはっきりとした絵である。フラッシュを使わなければ写真を撮り放題なのもありがたい。 |
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2017.9 アクロポリス | 2017.9 石碑のレリーフ |
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2017.9 第1室の壁画 | 2017.9 第3室の壁画 |
マヤ文明 -チアパス