マヤ文明は、紀元前10世紀頃には成立していたと考えられている。古典期と呼ばれる3世紀頃になると、メキシコからグアテマラ・ホンジュラスにかけてのジャングルに、大小さまざまな都市が急速に発展した。その中でも、現在のグアテマラにあるティカルとカンペチェ州のカラクムルが、マヤ世界の覇権を争って死闘を繰り広げたのである。ジャングルのマヤ文明は7〜8世紀に全盛期を迎えるが、8世紀後半に突然衰退してほとんどの街が放棄されており、大いなる謎となっている。

メキシコ・カンペチェ州
 カラクムル遺跡(世界遺産)
 6世紀に急速に拡大したカラクムルは、562年にマヤ世界の盟主ティカルを征服し、覇権を握る。そして611年にはパレンケを攻撃し、631年にはナランホを征服して、カラクムルの黄金時代は100年以上続く。しかし、695年に再興したティカルに敗北を喫し、その後は覇権を取り戻すことなく9世紀に消滅している。なお、カラクムルの遺跡は1931年に発見された新しいもので、30平方キロメートルにも及ぶ広大なものである。
 カラクムルは、周辺の熱帯保護林を含めた複合遺産である。道路が未舗装なので大型バスからバンに乗り換え、1時間半も走ってようやく遺跡の入口に着く。遺跡の中心部は、さらに30分ほど歩いた所である。最初に見たのはアクロポリスと呼ばれるエリアで、多くの建物があるが発掘が進んでおらず見られるものは少ない。ここにある建造物]Vから建造物Uが見えると聞いていたが、どうやら屋根によじ登らないと見られないようであった。
2017.9 球戯場 2017.9 建造物]W
 続いて中央広場へ移動。北側にある建造物Zに登ると、今度こそ正面に建造物Uが見えた。カラクムルで最も高い45mのピラミッドだが、二層構造になっているので、下から見ると上の段は見えない。建造物Zからであれば上の段まで見えるが、逆に下の段の下半分は木に隠れてしまっている。なお、ここから建造物Tも見えるが、横を向いているのでわかりにくい。
  2017.9 建造物Z 2017.9 建造物Zから見た建造物U
 建造物Uは、小山を利用して建てられており、上の段の方が時代が古い。下の段は底辺が120mもあるので、前に立って見上げると迫力があった。上に登ると周辺に360度のジャングルの海が広がり、隣で建造物Tがこちらを向いていた。
 
2017.9 建造物U
  2017.9 建造物Uの上部  2017.9 建造物Uから見た建造物T
 ジャングルの中を少し歩いて建造物Tへ。カラクムルという名は現代に付けられたものだが、その意味は「2つの丘」。つまり建造物TとUのことである。ここも上に登ると360度の眺めで、密林に埋もれた建造物Zがとても小さく見えた。
2017.9 建造物T 2017.9 建造物Tから見た建造物Z
 ☆世界遺産「カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林 」 2002年登録
 バラムク遺跡
 バラムク遺跡は、カラクムル遺跡の入口近くにある小さな遺跡。ここを有名にしたのは、1990年に発見された漆喰彫刻である。マヤの神殿は、しばしば古い神殿を覆い隠すように新しい神殿を建てたので、内部に古い時代の神殿が残されている。この漆喰彫刻も、古い時代の神殿の装飾なのである。観光客はほとんどいないので、我々のグループのために鍵を開けてもらった。
2017.9 建造物T 2017.9 建造物T内部の漆喰彫刻
2017.9 中央グループの入口 2017.9 建造物D5-5
 チカンナ遺跡
 チカンナ遺跡は、この地方独特のリオ・ベック様式やチェネス様式が見られる遺跡。なんと宿泊したホテルの目の前にあった。リオ・ベック様式の特徴と言われるのが見せかけだけの塔で、建造物]]やTはその典型と言える。鼻が突きだしたチャークの像は、ウシュマル遺跡で見られるプウク様式と区別がつかない。建造物Wは、塔の代わりに飾り屋根があるが、これもリオ・ベック様式のようである。
2017.9 建造物]] 2017.9 建造物]]のチャーク像
2017.9 建造物T 2017.9 建造物W
 一方、チェネス様式の典型が建造物U。影があって少しわかりにくいが、入口が怪物の口のように見える装飾である。ご丁寧に、入口の上と手前下には牙まで装飾してある。この怪物は、大地の神カウアックだと言われている。
2017.9 建造物U

マヤ文明 -カンペチェ