名鉄では、戦前からモ850形や3400系などの流線形クロスシート車による特急が運行されていたが、何といっても名鉄特急のイメージをつくったのはパノラマカーである。その後もパノラマDX、パノラマSuperと受け継がれていたが、2005年の中部国際空港開港を機に「ミュースカイ」という新たな特急名称が生まれている。
 
2023.2 島氏永~国府宮間
戦前
 モ800形
 名古屋鉄道の成立と前後して登場した、西部線向けの2扉クロスシート車。名岐では最初の18m車で、自動進段式制御装置を装備した車両はAL車と呼ばれ、5000系新性能車の登場まで名鉄の標準仕様となった。戦前は600Vの押切町~新岐阜間の特急に使用され、昇圧後はほぼ全線で活躍していた。2両が名鉄スカーレット塗装で豊田市の鞍ヶ池公園に、またモ811が登場時のグリーン塗装で日本車輌豊川工場に保存されている。

 1935.4  名岐線特急として営業運転開始
 1948.5.16 豊橋~新岐阜間の直通運転開始
 1974-76 近代化改造
 1976頃? スカーレット塗装に変更
 1996.4  営業運転終了
   
2018.6 モ805+ク2313:鞍ヶ池公園 2017.7 モ811:日本車輌豊川工場
形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ800形
(ク2250形)
801-810、(811)
(2251-2252)
10 1935.4-36.3 1997.5
ク2300形
(モ830形)
2301-2302
(831-832)
2 1937.7 1980.3
サ2310形 2311-2315 5 1938.10 1988.3
ク2180形 2181-2182 2 1943 1978.10
 モ850形
 モ800形に次ぐ西部線特急向けの車両。流線形で前面にヒゲがあったため、「なまず」という愛称があった。1編成が南知多ビーチランドで保存されていたが、解体されてしまった。

 1937.3  名岐線特急として営業運転開始
 1948.5.16 豊橋~新岐阜間の直通運転開始
 1976頃? スカーレット塗装に変更
 1988.8  営業運転終了
 
モ850形
形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ850形
ク2350形
851-852(853-854)
2351-2352
4 1937.2 1988.8
 3400系
 モ850形とほぼ同時期に登場した、1500Vの東部線向け特急車。美しい流線形車体、名鉄初のオール転換クロスシートなど、戦前の名鉄における代表形式で、「いも虫」という愛称で親しまれた。1988年にほとんどの車両が廃車となったが、2両が動態保存を兼ねて2002年まで残り、今も舞木検査場で保存されている。

 1937.3.20 東部線特急として営業運転開始
 1950.12  3両編成化
 1953.8  4両編成化
 1961   特急運用終了
 1967-  大規模修繕工事
 1976   スカーレット塗装に変更
 1989.7.15 動態保存運用開始
 1993.4  登場時塗装に戻る
 1994.6  冷房化回送
 2001.9.30 定期運用終了
 2002.8.31 最後の営業運転
   
1980年頃 2018.10 モ3401:舞木検査場 
形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ3400形
ク2400形
3401-3403
2401-2403
6 1937.2-37.3 2002.9
モ3450形 3451-3453 3 1950.12 1988.10 3両化用中間車
サ2450形 2451-2453 3 1953.8 1988.10 4両化用中間車
 3600系
 3400系に続く東部線向けの特急車であるが、前面貫通型でやや大人しいスタイルに戻った。戦後は一部が複電圧車となって、1500Vと600Vを直通する観光列車などに使用されていた。引退後も1編成が愛知こどもの国で保存されていたが、すでに解体されている。

 1940.12  東部線特急として営業運転開始
 1955    8両が複電圧化、西尾線・蒲郡線等への直通運用開始
 1960-   重整備工事
 1965頃  ストロークリーム塗装に変更
 1976頃  スカーレット塗装に変更
 1988.1   営業運転終了
形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ3350→3600形
ク2050→2600形
3351-54→3601-04
2051-54→2601-04
8 1941.6 1987.1
モ3650形 3651-3652 2 1942 1988.1
OR車・SR車
 3850・3900系
 名鉄初の「ロマンスカー」として登場したもの。最後の吊掛け駆動の新造車でもある。3850系は固定クロスシート、3900系はセミクロスシートの主に優等向け車両で、OR車(オールド・ロマンス車)と呼ばれる。登場時はピンクとマルーンの塗り分けだった。1989年までに消滅し、他社への譲渡などは無かった。
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ3850形
ク2850形
3851-3860
2851-2860
20 1951.7 1989.9
モ3900形
ク2900形
モ3950形
サ2950形
3901-3903
2901-2905
3951-3955
2951-2953
16 1952.12-54.7 1987.3
 5000・5200系
 5000系は、名鉄初のカルダン駆動車で、全鋼製非貫通モノコック構造の車体をもつ最先端の車両。5200系はその増備車で、貫通型の前面となる。どちらも駆動は中空軸平行カルダン、制御は単位スイッチ式(ABFM)、制動は電磁直通(HSC-D)である。OR車に対して、SR車(スーパー・ロマンス車)と呼ばれる。どちらも冷房化は行われず、5300系に機器や台車を譲って消滅した。5200系の車体は、全車豊橋鉄道へ譲渡されている。

 1955.12  名古屋線特急として営業運転開始
 1957.6   5000系の6両編成化
 1964    4両編成化
 1967    ストロークリーム塗装に変更
 1968    スカーレットに白帯塗装に変更
 1970    スカーレット塗装に変更
 1987    消滅
 
 左:5000系、右:5200系
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ5000形
モ5050形
モ5150形
5001-5010
5051-5060
5151-5160
30 1955.11-57.6 1986.9
モ5200形 5201-5212 12 1957.9-57.10 1987.8
<譲渡>
 豊橋鉄道(5200系:1986.6-97.9、12両)
 5500系
 特急料金がかからない列車としては、国内初となる冷房車として登場したもの。5200系に続くSR車で、外観は5200系に似ている。駆動は中空軸平行カルダン、制御は電動カム軸式(MC)、制動は電磁直通(HSC-D)で、7000系パノラマカーと性能はほとんご変わらず、パノラマカーの代走として運用されたこともある。晩年はローカル線で運用され、2005年に引退。モ5517の運転台部分が舞木検査場で保存されている。

 1959.4.1  名古屋線特急として営業運転開始
 1967    ストロークリーム塗装に変更
 1968    スカーレットに白帯塗装に変更
 1970    スカーレット塗装に変更
 1980-83  特別整備
 2005.1.28 運用終了
  
2018.10 モ5517:舞木検査場
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ5500形
モ5550形
5501-5520
5551-5560
30 1959.4-59.12 2005.2
パノラマカー
 7000・7500系
 名鉄の代名詞ともなった、日本初の前面展望車「パノラマカー」。7500系は走行性能を改善したマイナーチェンジ車だが、7000系も同時並行で増備され、合わせて188両が製造されている。制御は7000系が電動カム軸式(MC)、7500系は界磁位相制御が採用された。駆動は中空軸平行カルダン、制動は電磁直通(HSC-D)である。
 1000系の登場後は特急運用が減少し、2009年8月にさよなら運転をおこなって引退している。トップナンバーの2両が舞木検査場で保存されているほか、3両が中京競馬場で保存されている。

 1961.6.1  名古屋線特急として営業運転開始
 1963.12  7500系の運用開始
 1982    7000系の白帯特急専用車両登場
 1983-   特別整備
 1999.5   白帯車の特急運用終了
 2005.8.7  7500系の運用終了
 2008.12.26 定期運用終了
 2009.8.30 最後の営業運転
   
1987.3 豊橋駅 2005.8 木曽川橋梁 
 
2018.10 モ7001+7002:舞木検査場
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ7000、7050
 、7150形
7001-7041F 116 1961.5-75.7 2010.2
モ7500、7550
 、7570、7650形
7501-7523F 72 1963.1-70.4 2005.9
 7700・7300系
 7000系の支線向けとして登場したもので、前面貫通型、2~4両の短編成という仕様になっている。車体は鋼製の19m級2扉。駆動は中空軸平行カルダン、制御は電動カム軸式(MC)、制動は電磁直通(HSC-D)である。また、7300系は3800系の機器を流用した吊掛け駆動車であった。7300系のほとんどは豊橋鉄道に譲渡され、廃車後もいくつかの保存車がある。

 1971   7300系が支線直通特急にて営業運転開始
 1973   7700系の運用開始
 1983.3  7700系の白帯特急専用車両登場
 1997.4.13 7300系の運用終了
 2010.2.26 定期運用終了
 2010.3.21 最後の営業運転
   
1980年頃 7300系 1980年頃:7700系 
   
1998.2 もと7300系:豊橋鉄道譲渡後 2018.6 ク7202:豊橋市大山町
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ7700、7750形 7701-7716F 24 1973.4 2010.4
モ7300、7450形
ク7200形
サ7400形
7301-7312F 30 1971.10-71.12 1997.5
<譲渡>
 豊橋鉄道(7300系:1997.3-2004.3、28両)
北アルプス
 キハ8000系
 国鉄高山本線への直通列車向けに登場したもの。当初は準急「たかやま」だったが、1970年から急行「北アルプス」、さらに1976年から特急「北アルプス」と、2度も格上げがあった。塗装も、国鉄急行色風のものから特急色風のものに変わっている。8800系に置き換えられて1991年に引退した。

 1965.8  準急「たかやま」にて営業運転開始
 1966.3  「たかやま」が急行となる
 1976.10 特急「北アルプス」に格上げ
 1991.3  営業運転終了
 
1989.8 特急色:打保駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
キハ8000、8050
 、8100、8200形
8001-03、51-52
8101、51
8201-05
12 1965.7-69.9 1991.3
 キハ8500系
 JR高山線直通特急のキハ8000系を置き換えるために登場したもの。JR東海のキハ85系が設計のベースとなっている。特急「北アルプス」の廃止によって役割を失い、会津鉄道に譲渡された。引退後は2両が那珂川清流鉄道保存会で保存されている。

 1991.3.16 特急「北アルプス」にて営業運転開始
 2001.9.30 「北アルプス」廃止により営業運転終了
 
2018.5 もとキハ8500系:那珂川清流鉄道保存会
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
キハ8500、8550形 8501-04、8555 5 1991.1 2001.12
<譲渡>
 会津鉄道(2001.12-10.5、5両)
パノラマDX
 8800系
 2両編成の観光列車として登場したもので、愛称は「パノラマDX」。運転台の上の展望室やサロン室の設置など、独創的なアイデアが盛り込まれていた。車体は全鋼製で、全長19880mm。電装品は7000系の流用で、駆動は中空軸平行カルダン、制御は電動カム軸式(MC)、制動は電磁直通(HSC-D)である。後に中間車を増備して3両編成になった。カットボディが、舞木検査場で保存されている。

 1984.12.15 営業運転開始
 1989.7   3両編成化
 2005.1.29 運用終了
 
2018.10 舞木検査場
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ8800形
サ8850形
8801-08F 12 1984.12-89.7 2005.3
パノラマSuper
 1000・1200系
 1000系は、7000系の後継として開発された展望席を持つ特急車で、愛称は「パノラマSuper」。駆動は中空軸平行カルダン、制御は界磁チョッパ、制動は電磁直通(HSC-R)である。4両編成の全席指定席特急として登場した。1991年には、一部指定席の特急を新設するため、1000系6本を2両×12本に分け、1200系一般席車両4両×12本を新造して6両編成とした。全席指定の1000系は2008年12月に運用を終えたが、1000・1200系併結車は今も活躍しており、更新車は塗装が変更されている。

 1988.7.8  営業運転開始
 1991    1200系の運用開始
 2008.12.26 1000系全車特別車の運用終了
 2015-18  リニューアル工事
 
1988.12 金山駅?  2005.3 1000系:中部国際空港駅(右の車両)
   
2019.3 1000系更新車:神宮前駅 2021.7 木曽川堤駅
   
2019.4 1200系更新車:呼続駅 2022.8 岡崎公園前~矢作橋間
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
ク1000、1100形
モ1050、1150形
1001-21、1051-71
1101-21、1151-71
84 1988.6-97.4
モ1250、1350
 、1400、1450形
サ1200形
1211-16、1261-66
1311-16、1361-66
1411-16、1461-66
1511-16、1561-66
48 1991.8-92.10
 1030・1230系
 1000・1200系と同じ指定席2両+一般席4両の編成を、7500系の機器を流用して新造したもの。外観は1000・1200系とほぼ同じだが、4M2Tに対しこちらは全車電動車である。1230系は7500系と同じ界磁位相制御で、1030系は界磁チョッパ制御になった。
 1000・1200系のようなリニューアルは実施されず、2019年に消滅している。
   
2018.10 1030系:東枇杷島駅  2018.10 1230系:東枇杷島駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モ1130、1180形 1131-34、1181-84 8 1992.10-93.8 2019.3
モ1230、1380
 、1430、1480形
1331-34、1381-84
1531-34、1581-84
16 1992.10-93.8 2019.3
 1800・1850系
 1000・1200系の増結用として製造されたもので、2両編成。車体は1200系とほぼ同じ仕様である。1800系は完全な新造で、駆動は中空軸平行カルダン、制御は界磁添加励磁、制動は電磁直通(HSC-R)。1850系は7500系の機器を流用していて、界磁位相制御である。1800系は更新が始まり、塗装も新しいものになっている。1850系は更新の対象とならず消滅した。
   
2017.7 1800系更新車:国府駅 2017.7 1850系:国府駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
ク1800形
モ1900形
1801-09、1901-09 18 1991.9-96.4
モ1850、1950形 1851-53、1951-53 6 1992.7 2019.3
 1600・1700系
 1600系は、支線区での運行を考慮した、3両編成貫通型の特急車。展望車はないが、これも「パノラマSuper」と呼ばれる。駆動はTDカルダン、制御はVVVFインバータ(IGBT素子)、制動は電気指令式(MBSA)で、いずれも名鉄特急初採用である。全車特別車だったが、2008年に一般車の2300系と編成を組むことになり、この時に1601-04が廃車となったため1700系と呼ばれるようになった。

 1999.5.10 営業運転開始
 2008.7.13 1600系としての運用終了
 2008.12.26 1700系・2300系併結運用開始
 2021.2.10 最後の営業運転
2017.7 国府駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
ク1600形
サ1650形
モ1700形
1601-04 4 1999.4 2008.8
1651-54
1701-04
8 1999.4 2021.2
ミュースカイ
 2000系
 中部国際空港「セントレア」へのアクセス特急として登場したもので、愛称は「ミュースカイ」。車体は全鋼製で、登場時は3両編成だったが、すぐに増結され4両編成12本となっている。駆動はWN、制御はVVVFインバータ(IGBT素子)、制動は電気指令式(MBSA)である。

 2005.1.29 営業運転開始
 2006    4両編成化
2018.10 東枇杷島駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
ク2000形
モ2050、2100、2150形
2001-12F 48 2004.5-06.4
 2200・2300系
 2000系が全車特別車なのに対し、特別車2両、一般車4両の6両編成となったもの。特別車が2200系、一般車が2300系を名乗る。30番台は、一般車のみを新造し特別車は1700系を組み替えたもので、こちらのみを2300系、2200系と併結する一般車はすべて2200系と分類する場合もある。2000系とほぼ同じ設計だが、「ミュースカイ」のような愛称は付けられていない。1-2次車は窓下の赤帯がなかったが、後に追加された。2019年からは、1700系を置換えるため特別車のみが製造されている。

 2005.1.29 営業運転開始
 2008.12.26 1700系・2300系併結運用開始
2016.3 1-2次車:神宮前駅 2018.10 1-2次車新塗装:東枇杷島駅
 
2020.10 3-5次車:呼続駅 2023.2 6次車:島氏永~国府宮間
 
2017.7 30番台:国府駅 
 分類 番号 両数  登場  消滅  備考
モ2200、2300
 、2450形
サ2250、2350
 、2400形
2201-09F 54 2004.12-07.6 1-2次
2210-13F 24 2015.4-19.2 3-5次
2231-34、2281-84 8 2019.12-20.11 6次
2331-34、2381-84
2431-34、2481-84
16 2008.10-08.11 30番台
形式別車両数
種類 形式 1940 1954 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 800形 17 19 19 13 13 10 2 2
  850形 4 4 4 4 2 2
  3400系 6 12 12 12 12 12 2 2 2
3600系 10 10 10 10 4
3850・3900系 36 36 36 36 36
5000系 30 30 30 30
  5200系 12 12 12 12    
  5500系 30 30 30 30 30 30 30    
7000・7500系 70 164 188 184 180 150 128 102
7700・7300系 30 54 54 54 54 24 24 6
8800系 4 12 12 12
1000・1200系 48 148 156 154 94 94 72
1800・1850系 16 24 24 24 24 18
  1600・1700系 12 12 8 8 4
2000系 30 48 48 48
2200・2300系 24 70 70 98
DC キハ8000系 12 12 12 5
  キハ8500系 5 5  

名古屋鉄道・特急車