南海の優等列車のルーツは、1924年に登場した電7系。木造ながら喫茶室、1等室のある豪華編成だった。阪和電気鉄道との競争が激化すると、半鋼製の電9形も登場している。一方、高野線では戦前に観光特急が計画され、戦後の1952年にクハ1900形を連結した特急「こうや」の運行が始まった。特急専用の電車は1961年の20000系が最初であった。

  
2022.11 30000系:我孫子前〜浅香山間
旧型車
 電7・9系
 電7系は、全国唯一ともいえる木造の豪華電車。4両固定編成が10本で、編成ごとに「浪速」・「和歌」・「住吉」・「濱寺」・「大濱」・「淡輪」などの愛称があった。電9系は南海初の20m級半鋼車で、1936年には日本初の冷房車になっている。戦後も長く優等列車として活躍し、昇圧前の1970年に消滅している。
登場時 番号 1936改番後 両数 登場 消滅  備考
電7形
電附5・6形
181-200
227-236
211-220
モハ1001-20
クハ1801-15
モハ1081-83
40 1924.4-24.7 1963
電9形
電附12形
301-317
911-925
モハ2001-18
クハ2801-14、21-25
45 1929.7-50.4 1970.10
 クハ1900形
 高野線の観光特急向け試作車として製造されたもので、展望室構造。登場後まもなく戦時となったため、1両のみであったが、1952年からモハ1251形に連結されて特急「こうや」の座席指定車となっている。1960年の特急運用終了後は、モハ1201形に連結する一般車となった。
形式 番号 両数  登場  消滅  備考
クハ1900形 1900 1 1938.7 1972.5
 キハ5501形
 国鉄紀勢線への直通急行「きのくに」向けに製造されたもので、国鉄キハ55系と同一設計。国鉄には無い両運転台のキハ5551形も登場している。1985年3月に直通急行が廃止されたため廃車となっている。
  
キハ5501形
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
キハ5501形
キハ5551形
5501-05
5551-54
9 1959-62 1985.5
新性能車
 11001系・1000系
 11001系は、南海最初のカルダン駆動車。車体は全金の準張殻構造で、20m級2扉。最初の2両編成4本は前面貫通型だったが、1956年製造分から非貫通流線形となった。座席は転換クロスシート。駆動は中空軸平行カルダン、制御は電動カム軸(MMC)、制動は自動空気(AMAR-D)である。また、12001系は11001系の初期車と同じ車体の吊掛け駆動車だった。
 特急「四国号」などの四国連絡特急で活躍。座席指定車も登場した。昇圧の際に機器等の全面的な更新が必要だったため、6両編成4本のみを改造して1000系とし、その他は引退した。1000系も四国連絡特急等で運用され、1987年に引退している。

 1954.10  営業運転開始
 1963.12.1 有料座席指定車を設置
 1973-74 昇圧対応改造
 1985.11.1 特急運用終了
 1987.6.28 最後の営業運転
  
11001系
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
モハ11001形
モハ11100形
11001-022
11100-120
43 1954.8-57.5 1974.3
モハ12001形
クハ12801形
12001-002
12801-802
4 1954.7 1974.3
モハ1001形
モハ1101形
クハ1901形
サハ1801形
1001-04
1101-08
1901-04
1801-08
24 1973 1987.7 11001系昇圧化改造
<譲渡>
 京福電鉄(1974.6-2004.10、8両)
 20000系
 高野線の座席指定特急「こうや」のクハ1900形を置き換えるためのもので、4両編成1本のみの製造。ズームカー21001系の優等版ということで、デラックスズームカーという愛称がある。車体は鋼製の準張殻構造で、17m級。座席は回転リクライニングシート。駆動は中空軸平行カルダン、制御は電動カム軸式(ACD)、制動は電磁直通(HSC-D)である。
 30000系の登場により役割を終え、1984年9月にさよなら運転を行っている。引退後は、先頭車がみさき公園に展示されていたが、1994年にあっさりと解体されてしまった。

 1961    営業運転開始
 1973    昇圧対応改造
 1983.6.25 定期運用終了
 1984.9.16 最後の営業運転
20000系
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>20001形
<M>20100形
<T>20801形
20001-002
20100
20801
4 1961.6 1986.1
 30000系
 特急「こうや」の20000系を置き換えるために登場したもの。4両編成が2本のみ製造されている。車体は全金で、山岳区間直通のため17m級。座席は回転リクライニングシートで、サービスコーナーもある。駆動はWN、制御はMMC、制動は南海初の電気指令式である。

 1983.6.26 営業運転開始
 2015.3-16.2 「赤こうや」「紫こうや」ラッピング
2017.5 新今宮駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>30001-
<M>30100-
30001・30003F 8 1983.5
 10000系
 南海線の特急車1000系を置換えるためのもの。1000系には座席指定車と一般車があったが、10000系は座席指定車のみとし、一般車は7000・7100系を併結している。車体は全鋼製の20m級で、先頭車2扉、中間車は1扉。座席は回転リクライニングシート。機器は1000系のものを流用しており、駆動はWN、制御はバーニア、制動は電磁直通(VMC)である。1985年に特急「サザン」として運行を開始した。当初は2両固定編成であったが、増備と編成組み替えにより4両編成7本という体制になった。

 1985.11.1 特急「サザン」にて営業運転開始
 1992    4両編成化
 1992.3-7 新塗装に変更
   
2015.11 旧塗装(復刻):新今宮駅
    
 2017.5 新塗装:新今宮駅 2024.9 新塗装:春木駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>10001-
<Tc>10901-
10004-010F 28 1985.10-89.5
<M>10107-
<T>10807-
1992.3
 11000系
 高野線の平坦区間に新たに設定された、特急「りんかん」向けの車両。車体は全鋼製の20m級。駆動はWN、制御はバーニア(VMC)、制動は電気指令式である。登場時は10000系新塗装と同じ塗装だったが、31000系登場後は赤帯に変わった。また、2015年から泉北ライナー運用が始まり、金色のラッピングが施されている。

 1992.8  特急「りんかん」にて営業運転開始
 1999   31000系に合わせた塗装に変更
 2015.12 泉北ライナー運用開始、泉北ライナーラッピング登場
 2022.11  泉北ライナーラッピング終了
 
2016.10 泉北ライナーラッピング:堺東駅  2023.12 赤帯:天下茶屋駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>11001、11201
<M>11101、11301
11001F 4 1992.8
 31000系
 「りんかん」の8両化と30000系「こうや」の予備車という2つの目的を兼ねて製造されたもの。山岳区間に乗入れるため17m級となった。デザインは11000系に似ているが、31000系は頭の部分に前照灯がある。駆動はWN、制御は21001系のものを流用して電動カム軸式(MMC)、制動は電気指令式である。

 1999.3.1 営業運転開始
 2015.3-16.2 「黒こうや」ラッピング
 
2022.3 我孫子前〜浅香山間  2015.11 「黒こうやラッピング」:新今宮駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>31001、31102
<M>31100、31101
31001F 4 1999.3
VVVFインバータ制御
 50000系
 関西空港の開港にともなって新設された空港アクセス特急「ラピート」向けの車両。潜水艦のような斬新なデザインが話題となった。6両編成が6本製造されている。車体は全鋼製の20m級。駆動はTDカルダン、制御はVVVFインバータ(GTO素子)、制動は電気指令式である。リニューアル工事の際に、制御器がIGBT素子のものに変更されている。

 1994.9.4 特急「ラピート」にて営業運転開始
 2015-18 リニューアル工事
 
2017.5 新今宮駅 2017.5 新今宮駅 
 
2015.11 スターウォーズラッピング 2024.9 大阪万博ラッピング:堺駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Tc>50501-、50701-
<M>50001-、50101-、
  50201-
<T>50601-
50501-506F 36 1994.9
 12000系
 南海線の特急「サザン」の後継で、「サザン・プレミアム」という愛称がある。車体はステンレス製の20m級で、前面はFRP。駆動はWN、制御はVVVFインバータ(IGBT素子)、制動は電気指令式である。4両編成が2本で、8000系や9000系と併結して運転する。泉北高速鉄道にも同型車がある。

 2011.9.1 営業運転開始
  
2015.11 新今宮駅
 形式 編成番号 両数  登場  消滅  備考
<Mc>12001-、12101-
<T>12801-、12851-
12001-002F 8 2011.7
形式別車両数
種類 形式 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 20000系 4 4 4 4
30000系 8 8 8 8 8 8 8 8
10000系 20 28 28 28 28 20 20
11000系 4 4 4 4 4 4
31000系 4 4 4 4 4
50000系 36 36 36 36 36 36
12000系 8 8
DC キハ5501系 9 9 8 8

南海電気鉄道・特急車