小田急では、戦前の1935年から座席指定型の週末温泉特急が運行されていた。戦時中の休止を経て1948年に再開されるが、好評だったため翌年には特急仕様の1910系が登場、さらに1951年に初代「ロマンスカー」1700系が登場した。1957年には、狭軌として世界最速となる3000系が登場し、小田急ロマンスカーの名は不動のものとなっている。

   
2021.4 開成〜栢山間
1950年代
 1700形
 1951年に登場した、小田急初の本格的な特急専用車。3両編成の2扉転換クロスシートで、喫茶カウンターを設置していた。吊り掛け駆動で、第1・2編成は貫通型だったが、第3編成だけは非貫通2枚窓で外観が大きく変わっている。3000形の登場によって特急としての役割を終え、中間車を増備して4両編成の3扉ロングシートに改造されている。
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ1700形
サハ1750形
1701-1706
1751-1756
12 1951.7-57.11 1974.11
 2300・2320形
 2300形は特急向け1700形の増備車であるが、すでにSE車3000形の開発が進んでいたため、それまでの「つなぎ」として導入されたもの。車体は17.5m級で、先頭車のみの1扉。前面は非貫通2枚窓である。駆動は直角カルダン、制御はABFM、制動は電磁直通(HSC-D)である。3000形登場後は準特急向け2扉に改造され、さらに貫通型の2320形が増備されている。1963年以降は3扉の通勤車になり、2300形も貫通型に改造されている。
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ2300形 2301-2304 4 1955.3 1982.7
デハ2320形 2321-2328 8 1959.2 1984.6
 キハ5000・5100形
 御殿場線直通の特別準急向け車両。当時御殿場線は非電化だったため、小田急唯一のディーゼルカーとなった。増備車であるキハ5100形は、窓配置が少し違う。御殿場線電化により役割を終え、全車関東鉄道に譲渡された。
   
キハ5000形
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
キハ5000形 5001-5002 2 1955.8 1968.12
キハ5100形 5101-5102 2 1956.6-59.6 1968.12
<譲渡>
 関東鉄道(1968.12-88.9、4両)
 3000形
 超軽量高速特急車として、国鉄と共同開発されたもので、愛称はSE(Super Express)車。当時における狭軌の世界最高速度となる145km/hを記録し、その技術は新幹線に活かされた。8両連接という構造も画期的だった。車体は張殻構造で、全長は先頭車15950mm、中間車12700mm。シールドビームは日本初採用である。駆動は中空軸平行カルダン、制御は電動カム軸式(MM)、制動は電磁直通(HSC-D)である。座席は回転クロスシートで、喫茶カウンターも設置された。
 1968年には、5両編成6本に組み替えられ、SSE(Short Super Express)と呼ばれるようになる。その後は「あさぎり」を中心に運用され、1991年3月に定期運用終了、1年後の1992年3月にさよなら運転を行って引退した。また、1983年に廃車となった編成は大井川鉄道に譲渡されたが、活躍の機会は少ないまま、同じ1992年に廃車となっている。
  3021編成5両は、新宿方先頭車を原型に復元のうえ、海老名車両基地で保存された。2021年からは、そのうち3両がロマンスカーミュージアムで保存されている。

 1957.7.6  箱根特急として営業運転開始
 1968.7.1  5両編成に改造、御殿場線直通「あさぎり」運用開始
 1989.7.15 「あさぎり」以外の運用終了
 1991.3.15 「あさぎり」定期運用終了
 1992.3.8  最後の営業運転
    
2019.5 3021(原型):海老名車両基地 2019.5 3025(SSE改造後):海老名車両基地 
   
2022.4 3021(原型):ロマンスカーミュージアム
形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ3000形 3001-3008
3011-3018
3021-3028
3031-3038
32 1957.8-59.3 1992.3
<譲渡>
 大井川鉄道(1983.4-92.3、5両)
1960〜80年代
 3100形
 運転席を2階とし、1Fに展望室を設けたロマンスカーで、愛称はNSE(New Super Express)。11両編成となって、優等の輸送力が大幅に増加した。車体の全長は先頭車が16465mm、中間車が12400mm。駆動は中空軸平行カルダン、制御は電動カム軸式(MM)、制動は電磁直通(HSC-D)である。
 愛称板は当初はホームベース型だったが、1984年に始まった更新時に長方形の電動式に変わっている。1999年7月に定期運用がなくなり、イベント向けに残されていた1編成も2000年に廃車となった。3221編成のうち6両は海老名車両基地で保存され、2021年からは3両に短縮の上ロマンスカーミュージアムで展示された。新宿方先頭車は、ホームベース形の愛称表示器が復元されている。また、開成駅前でも先頭車が保存されている。

 1963.3.16  箱根特急として営業運転開始
 1997    イベント車「ゆめ70」登場
 1999.7.16  定期運用終了
 2000.4.23  最後の営業運転
  
1991.8 片瀬江ノ島駅
   
2022.4 3221:ロマンスカーミュージアム  2017.2 3181:開成駅前
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ3100形 3101-3111
3121-3131
3141-3151
3161-3171
3181-3191
3201-3211
3221-3231
77 1963.1-67.3 2000.4
 7000形
 3100形から17年ぶりとなる新たなロマンスカーで、愛称はLSE(Luxury Super Express)。11両編成で、前面に展望室があるところは3100系と変わっていない。駆動は小田急初採用のTDカルダン、制動も小田急初採用の電気指令式(MBS-D)で、制御は電動カム軸式(MM)である。また、座席は回転リクライニングシートとなった。
 塗装は3000系以来のオレンジバーミリオン、白、グレーだったが、1996年に始まった更新時に10000系と同じ濃淡ワインレッドに変更されている。2010年から廃車が始まり、最後は旧塗装に復元された2編成が残っていたが、2018年7月に定期運用を終えた。ロマンスカーミュージアムで先頭車1両が展示されている。

 1980.12.27  営業運転開始
 1996-98   リニューアル工事、塗装変更
 2007.7    旧塗装復元車登場
 2018.7.10  定期運用終了
 2018.10.13  最後の営業運転
   
2017.4 旧塗装復元車:狛江駅 2017.12  旧塗装復元車:海老名駅
  
2022.4 7003:ロマンスカーミュージアム
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ7000形
サハ7050形
7001-7004F 44 1980.12-83.12 2018.12
 10000形
 客席からの展望をよくするため、先頭部以外をハイデッカー構造としたもので、愛称は「HiSE」。それまでのロマンスカーと異なり、ワインレッド濃淡の塗装となった。駆動はTDカルダン、制御は電動カム軸式(MM)、制動は電気指令式(MBS-D)である。
 バリアフリーに対応できなかったため、2005年には早くも2編成が引退、残る2編成も2012年3月までに運用を終えている。2005年に2編成が4両に短縮のうえ長野電鉄に譲渡され、小田急時代と同じ塗装で活躍している。また、喜多見車両基地で3両保存されていたが、2両は解体され、10001のみロマンスカーミュージアムで展示された。

 1987.12.23  営業運転開始
 2012.3.16  定期運用終了
   
2022.4 10001:ロマンスカーミュージアム 2016.1 長野電鉄:信濃竹原駅〜夜間瀬間 
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ10000形
サハ10000形
10001-10011
10021-10031
10041-10051
10061-10071
44 1987.12-89.7 2012.6
<譲渡>
 長野電鉄(2006.12-、8両)
1990年代以降
 20000形
 御殿場線に直通する特急「あさぎり」向けに開発されたもので、愛称はRSE(Resort Super Express)。JRの371系と仕様を合わせるため20m車体となり、連接構造や展望室が採用されない代わりに、2階建て車両が連結されている。駆動はTDカルダン、制御は電動カム軸式(MM)、制動は電気指令式(MBS-D)である。
 2012年3月に営業を終え、1編成が富士急行に譲渡されて2代目「フジサン特急」になっている。また、先頭車と2階建て車両が1両ずつ、ロマンスカーミュージアムで展示されている。

 1991.3.16  「あさぎり」にて営業運転開始
 2012.3.16  定期運用終了
 
2022.4 20001:ロマンスカーミュージアム 2022.4 20151:ロマンスカーミュージアム
 
2019.11 富士急行フジサン特急:十日市場駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ20000形
サハ20050形
20001-20002F 14 1990.12-91.1 2013.11
<譲渡>
 富士急行(2014.7-、3両)
 30000形
 3100形の置き換えと、観光だけでなく日常の交通もターゲットにして開発されたもので、愛称はEXE。車体は20m級で、展望室は設置されず、6両と4両に分割できる構造となった。制御は特急車で初めてVVVFインバータ(IGBT素子)。駆動はTDカルダン、制動は電気指令式(MBSA-R)である。
 2017年からリニューアルが始まり、愛称がEXEαとなっている。

 1996.3.23  営業運転開始
 2017     「EXEα」へのリニューアル始まる
 
2015.11 小田原駅付近 2019.2 中間先頭車:生田駅 
 
2019.2 EXEα:生田駅
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ30000形
クハ30050形
30051-30057F 70 1996.1-99.6
 50000形
 10000形以来となる、展望室を備えた観光向けロマンスカーとして開発されたもので、愛称はVSE(Vault Super Express)。アルミニウム合金製の10両連接で、2本のみ製造されている。駆動はWN、制御はVVVFインバータ(IGBT素子)、制動は電気指令式で、列車情報管理装置TIOSを導入している。小田急初の車体傾斜制御も導入されている。
 複雑な機構が災いして、更新工事を行うことが難しかったため、2022年に定期運用を終了。その後はイベント等での運行となっている。

 2005.3.19  営業運転開始
 2022.3.11  定期運用終了
 
2015.11 小田原駅付近
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ50000-50090形 50001-50002F 20 2004.12-05.2
 60000形
 地下鉄千代田線に直通するロマンスカーとして開発されたもので、愛称はMSE(Multi Super Express)。地下区間に対応するため、両端の先頭車に非常用扉がある。また、EXEと同様に分割できる構造で、6両5本と4両3本が製造されている。車体はアルミニウム合金製で、20m級。駆動はWN、制御はVVVFインバータ(IGBT素子)、制動は電気指令式で、列車情報管理装置TIOSを導入している。

 2008.3.15  営業運転開始
 
2021.4 開成〜栢山間 2019.4 中間先頭車:読売ランド
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ60000形
クハ60050形
60051-60053F 42 2007.12-15.12
 70000形
 7000形を置き換えるために開発された、展望室つきのロマンスカーで、愛称はGSE(Granceful Super Express)。連接は採用されず、20m級の7両編成となった。車体はアルミニウム合金製で、塗装はローズバーミリオン。制御はVVVFインバータ(フルSiC)、制動は電気指令式で、列車情報管理装置TIOSを導入している。

 2018.3.17  営業運転開始
   
2019.4 読売ランド駅  2021.4 新松田〜開成間
 形式 番号 両数  登場  消滅  備考
デハ70000形
クハ70050形
サハ70150形
70051-52F 14 2018.1-18.6
形式別車両数
種類 形式 1954 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 1700形 9 12 12
2300・2320形 12 12 12
3000形 32 30 30 25 20
3100形 44 77 77 77 77 77 11
7000形 11 44 44 44 44 44 33 22
10000形 44 44 44 44 22
20000形 14 14 14 14
30000形 70 70 70 70 70
  50000形 20 20 20 20
  60000形 22 32 42
70000形 14
DC キハ5100形 4

小田急電鉄・特急車