大井川本線は、1976年に全国で初めてSLの動態保存を始めた路線。SL以外にも往年の有名車両を集めて運行する観光鉄道である。
 2020.11 C11-190:大井川第四橋梁
戦前
 大井川鉄道の開業時は、2両のSLが客車と貨車の混合列車を牽引していた。1930年にはガソリンカーが導入されている。SLは電化後まもなく消滅、キハニ101は電化後も客車として使用されたが、1959年に廃車となった。
 種類 番号 両数  前歴 登場 消滅  備考
SL 5-6 2 伊賀5-6 1926 1953
15-16 2 新造 1929 1950
C121 1 新造 1935 1950
DC キハ51-55 5 新造 1930 1956
キハニ101 1 新造 1936 1959
PC ホハフ1-2 2 不明 1927? 1959
電気機関車
 E10形
 1949年の電化後、最初に導入されたのは、電車ではなくE10形のEL3両。今もSL列車の補機や入換などに使用されている。1両は1970年に岳南鉄道へ譲渡されたが、1986年に復帰している。なお、E105は全くの別形式で、活躍期間も短かった。
2016.8 E101:千頭駅付近 2016.8 E102:千頭駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
E10形 101-103 3 新造 1949.12
105 1 国鉄ED382 1960.9 1967 →秩父鉄道
 ED500形
 E10形の一部を置き換える目的で、住友大阪から譲り受けたもの。2両のうち1両はすぐに三岐鉄道に譲渡、もう1両も3年間貸し出されていたが、今は大井川鐵道に戻っている。
 2016.8 E501:新金谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
ED500形 501-502 2 住友大阪500形 2000.2-4
 E31形
 西武の貨物輸送廃止によって余剰となったE31形を譲り受けたもの。西武時代の塗装のままとなっている。
 2020.11 新金谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
E31形 32-34 3 西武E32-34 2017.7-18.3
電車
 300形
 大井川鉄道の最初の電車は、ほとんどがモハ300形、クハ500形にまとめられている。しかし出自は、三信鉄道、富士身延鉄道などの買収国電から名鉄3300・3800形など、さまざまであった。最後まで残ったのは、西武351形を譲り受けたモハ313・クハ513で、休車状態のまま千頭駅で留置されていたが、2016年に解体された。
2003.11 モハ313:千頭駅
 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ201-202 2 国鉄モハ12-13 1951.8 1967
モハ301-302 2 三信デ307-308 1953 1972
モハ303 1 国鉄モハ1611 1956 1972
クハ501 1 西武クハ1209 1954 1974.3
クハ502 1 国鉄モハ2310 1953 1972
モハ305-306 2 国鉄モハ1208・05 1957 1978.2
クハ503・506 2 国鉄クハ5803・06 1959 1978.2
クハ505 1 国鉄クハニ7203 1957 1984.10
モハ304、クハ504 2 西武モハ231・234 1962 1972
モハ307、クハ507 2 西武クモハ159-160 1964.8 1980.12
モハ308 1 国鉄クモハ2002 1966.11 1972
クハ508 1 モハ201 1967.7 1980.12
モハ309 1 名鉄モ3302 1969.12 1986.7
モハ310、クハ510 2 名鉄モ3805・ク2805 1970.10 1993.3
モハ311、クハ511 2 西武クモハ374・371 1976.8 1998.12
モハ312-313
クハ512-513
4 西武クモハ361・62・64・66 1977.3-80.8 2002.2
サハ1426 1 西武サハ1426 1977.10 1986.1
クハ861 1 クハ510 1986.7 1999.3 遊覧客車
 70・80年代の譲受車
 大井川鉄道は、観光客向けに、他社の代表形式を入線させていた。特筆すべきは3000形で、小田急の初代ロマンスカーであるSE車。5連接車は使い勝手が悪く、ほとんど活躍できなかったようである。また、6000・6010形は北陸鉄道加南線の新性能車「くたに」「しらさぎ」で、廃車後に6010形の2両が山中温泉で保存されている。
 
2010.8 6010形:山中温泉道の駅  左:1105、右:3829
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ6000形
クハ6050形
6001・6051 2 北陸モハ6000形 1971.7 1996.3
モハ6010形
クハ6060形
6011
6061
2 北陸モハ6010形 1971.11 2002.10
モハ3800形
クハ2800形
3822・3829
2822・2829
4 名鉄モ3800形 1972 1998.12
モハ1900形 1906 1 小田急1900形 1976.12 1996.3
モハ1100形 1105 1 岳南1100形 1981.7 1996.3
モハ3000形
サハ3000形
3001-05 5 小田急3000形 1983.4 1992.3
 1000形・420形
 大井川鐵道最後の吊掛駆動車。420形のルーツは近鉄名古屋線の狭軌時代の特急車6421系で、最後は養老線で使用されていたものである。1000形は事故で破損し、復旧することなく廃車となった。420形は2009年5月の営業運転終了後も長く休車状態だったが、2016年に解体されてしまった。
1000形
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ1000形
クハ2000形
1001
2001
2 伊豆箱根1000形 1991.12 1999.6
モハ420形
クハ570形
421
571
2 近鉄421系 1994.12 2009.5
 21000系
 南海高野線でズームカーと呼ばれた21000系を譲り受けたもの。2編成あり、16000形とともに使用頻度は高い。
 
2003.11 金谷駅 2020.11 新金谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ21000形 21001-04 4 南海21000系 1994.4-97.8
 3000系
 京阪テレビカーとして活躍した3000系を譲り受けたもので、ワンマン化されてテレビは撤去されている。2014年2月に営業を終え、新金谷駅で留置されていたが、2018年頃解体されたようである。
 
2005.4 金谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ3000形
クハ3500形
3008
3507
2 京阪3000系 1995.4 2014.2
 16000系
 近鉄吉野線の特急車16000系を譲り受けたもので、3編成導入された。クロスシート車であるが、普通列車で使用されている。
 
2020.11 大井川第四橋梁
 
2005.4 家山駅付近 2016.8 金谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ16000形
モハ16100形
16001-003
16101-103
6 近鉄16000系 1998.6-04.3
 7200系
 もと東急7200系で、十和田観光電鉄の廃線後に保管されていたものを譲り受けた。
 
2016.8 金谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ7200形
モハ7300形
7204
7305
2 十和田観光7200系 2015.2
 6000系
 もと南海6000系で、番号は変わっていない。2両編成1本のみである。
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ6000形
クハ6900形
6016
6905
2 南海6000系 2022.3
SL列車
 C10形
 国鉄では1962年に廃車となったが、宮古市のラサ工業で1979年まで活躍、さらに宮古市へ譲渡されて、1987年から90年まで「SLしおかぜ号」として保存運転が行われていた。1994年に大井川鉄道が譲り受け、整備のうえ1997年10月に営業運転を開始している。C10形は、この1両を除いて全て解体されているため、貴重な存在である。
 
2017.11 C10-8:新金谷駅付近
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
C10形 8 1 宮古市 1997.10
 C11形
 C11-227は、大井川鉄道最初の復活SLで、1976年7月に営業運転を開始した。1988年7月にC11-312、2003年7月にC11-190も運行を開始し、3両体制となるが、C11-312は2007年にさよなら運転を行って廃車となった。C11-227は、2014年から夏期に「きかんしゃトーマス号」として運転されている。
 
 2016.8 C11-190:千頭駅
2020.11 C11-227:大井川第四橋梁 2016.8 C11-227トーマス仕様:千頭駅付近
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
C11形 190・227・312 3 国鉄C11形 1976.4・88.7・03.6
 C12形
 客車3両とともに、日本ナショナルトラストが所有する機関車。1973年から千頭駅で展示されていたもので、1987年に日本ナショナルトラストが復元整備し、7月から「トラストトレイン」として運行を開始した。なお、資料では1987年11月に竣工となっており、矛盾の原因はよくわからない。2005年から休車となり、新金谷駅で展示されているが、再び復元する計画があるようである。
 
  2016.8 C12-164::新金谷駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
C12形 164 1 国鉄C12形 1987.11
 C56形
 戦時中に陸軍に供出されてタイへ行き、戦後はタイ国鉄で使用されていたものである。1979年に日本へ戻り、1980年1月に営業運転を開始している。2015年から、夏期に「きかんしゃジェームス号」として運転されている。
 
2016.8 C56-44ジェームス仕様::千頭駅付近
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
C56形 44 1 タイ国鉄735 1979.12
 客車
 展望車のスイテ82と、お座敷車両のナロ80は、電車から改造されている。塗装は、ぶどう色が基本であるが、トーマス号向けは明るい茶色になっている。
 
  2016.8 オハフ33:新金谷駅 2016.8 スハフ42:新金谷駅
  2016.8 スイテ82:新金谷駅 2016.8 ナロ80:新金谷駅

 オハニ36形とスハフ43形の計3両は、C12-164とともに日本ナショナルトラストが所有し、1987年からトラストトレインとして運行されている。
 
2017.11 スハフ43形:新金谷駅
 形式 両数  前歴 登場  消滅  備考
オハ35形
オハフ33形
8 国鉄オハ35形等 1976.11-90.3
オハ47形
スハフ42形
8 国鉄オハ47形等 1984.9-93
ナロ80形
スイテ82形
3 国鉄サハ14・15形 1977.4-82.10
ナハフ500形 1 国鉄クハニ72形 1977 1984.10
オハニ36形 1 国鉄オハニ36形 1987.11 日本ナショナルトラスト所有
スハフ43形 2 国鉄スハフ43形 1987.11
形式別車両数
種類 形式 1940 1954 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 300形 6 14 18 11 10 8 7 4
3800形 4 4 4 4
6000・6010形 4 4 4 4 4 2
1900形 1 1 1 1
1100形 1 1 1
3000形 5 5
1000形 2
420形 2 2 2
21000系 2 4 4 4 4 4
3000系 2 2 2
16000系 4 6 6 4 4
7200系 2 2
DC キハ50形等 6 6      
SL 5等 5                  
C10形 1 1 1 1 1
C11形 1 1 2 2 2 3 2 2 2
C12形 1 1 1 1 1 1 1
C56形 1 1 1 1 1 1 1 1 1
EL E10形 3 4 2 2 2 3 3 3 3 3 3 2
ED500形 1 1 1 1 1
E31形 3
PC ホハフ1等 2
50形 1
80形 2 3 3 3 3 3 3 3 3
35系 6 6 9 9 9 9 9 9 8
43系 3 8 10 10 10 10 10 10
年表

  1927.6.10 大井川鉄道:金谷〜横岡間6.4km開業(1067mm・蒸気)
  1931.12.1 金谷〜千頭間39.6km全通(現在は39.5km)
  1949.11.18 金谷〜千頭間電化
  1976.7.9  SL列車運転復活
  1983.10.1 貨物営業廃止
  2000.10.2 大井川鐵道と改称

大井川鐵道大井川本線