近江鉄道

  19世紀末に開業し、これまで一度も社名が変わっていない、歴史ある鉄道。戦時中に八日市鉄道を合併している。西武鉄道との関係が深く、2016年には完全子会社となった。
戦前
 旧近江鉄道 
 2両のSLと13両の木造単車で開業し、蒸気動車も導入していた。1925年に電化されたため、間もなくSLは消滅している。最初の電車である電1形は、1928年の昇圧時に早くも電装解除され、デハ1形が戦前の主力となっていた。
種類 番号 両数  前歴 登場 消滅  備考
SL 1-2 2 新造 1897 1940
3-4 2 九州鉄道140-141 1901 1913
5-7 3 新造 1913 1939
8-9 2 新造 1923 1951
1060 1 北丹1060 1926 1939
PC (単車) 28 新造 1898 1937
  13 南海等 1923 1937
  (ボギー車) 8 単車等 1913 1965?
SC ぬ1-2 2 新造 1908 1926
EC 電1-5
(クハ21-25)
5 新造 1924 1953
デハ1-9 9 新造 1928 1966
デユワ101-102 2 新造 1928 1941
戦後〜1980年代
 木造車 
 戦後間もなく、西武の木造車を多く譲り受けた。そのほとんどは、名義のみを鋼体化車に譲って消滅している。
形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ131形 131-132 2 西武モハ131-132 1950.2 1961.5
モハ201形 201-202 2 西武モハ201-202 1951.11 1958.5
クハ1201形 1201-12 12 西武クハ1201形等 1950.6-56.7 1965.11
 1940-60年代前半の更新車等 
 近江鉄道では、旧型車の車籍だけを引き継いで、車体や機器は新造または流用という手法がとられたため、書類上だけは戦前生まれという車両が多く整理しにくい。最初の鋼体化車となったモハ51-52もその1つで、1978年に銚子電鉄に譲渡してデハ700形となった。今も2両とも保存されている。
 
2017.4 もとモハ51:いすみポッポの丘 2017.4 もとモハ52:いすみポッポの丘
番号 両数 車籍  車体 登場  消滅  備考
モハ51-52 2 デユワ101-102 新造 1941.5 1978.1 →銚子
クハ21-25 5 クハ21-25 新造 1947.10 1968.10 →上田等
モハ133-134
クハ1216-17
4 モハ201-202
クハ1201-02
西武モハ241等 1958.5 1969.4
モハ7-9
クハ1205-06、08
6 デハ1形
クハ1201形
西武モハ211形等 1960.2-63.11 1991.3
クハ1212 1 クハ1212 新造 1961.3 1973
モハ131-132
クハ1214-15
4 モハ131-132
クハ1214-15
新造 1961.5-62.2 1995.2
モハ1-6
クハ1213、18-22
12 デハ1形
クハ1201形
新造 1963.10-66.3 2002.3
モユニ10 1 西武モハ232 同左 1964.1 1983.5
 譲受車等 
 1960年代後半になると、京急400形や小田急1600形などの車体を譲り受けて、旧型車を更新するという手法がとられた。また、単行用として岳南鉄道のモハ100形も導入している。220形の増備とともに姿を消し、保存車は無い。
クハ1201形
番号 両数 車籍  車体 登場  消滅  備考
モハ135-137
クハ1210
4 モハ133等 京急400形 1966.9 1983.5
モハ201-202
サハ101
3 東急3150形 小田急1600形 1967.12 1992.8
クハ1201-02 2 新造 小田急1600形 1970.1 1990.12  
モハ204→モユニ11 1 クハ1212 京王デハ1707 1973 1990.12
モハ205 1 三岐モハ140 同左 1980.12 1991.10
モハ101-103 3 岳南モハ100形 同左 1984.1 1996.3
 500形 
 初期の鋼体化車を置き換える目的で登場したもので、名義と機器の一部は流用しているものの、17m級の車体は新造である。吊掛け駆動の非冷房車ながら、2011年まで残っていた。モハ501が近江鉄道ミュージアムで保存されている。
2016.6 モハ501:近江鉄道ミュージアム
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ500形
クハ1500形
501-506
1501-1506
12 モハ7形等 1969.6-83.5 2011.3
 機関車 
 近江鉄道は、貨物輸送のため国鉄払下げ等の機関車が多く在籍した。1988年の貨物営業廃止後も多くの機関車が残され、彦根駅の横にある車両基地内が近江鉄道ミュージアムとして整備された。もと阪和鉄道のロコ1101、もと伊那電気鉄道のED31、国鉄生え抜きのED14が保存されている。このうち4両は長い間車籍が残されていたが、2016年に廃車となった。また、当初はED4001も展示されていたが、2009年に東武博物館に移っている。
2016.6 ロコ1101(右の車両)
:近江鉄道ミュージアム
2016.6 ED31形:近江鉄道ミュージアム
2016.6 ED14形:近江鉄道ミュージアム 2016.6 ED14形:近江鉄道ミュージアム
2015.11 もとED4001:東武博物館
 種類 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
EL ED221 1 西武1 1950.2 1960.9 →一畑電鉄
ロコ1101 1 国鉄ロコ1101 1952.9 2004.7
ED281 1 国鉄ED281 1956.2 1963.10 →山形交通
ED141-144 4 国鉄ED141-144 1962.5-66.10 2016.4
ED311-315 5 西武1-2
国鉄ED313-315
1955.9-60.8 2016.4
ED4001 1 東武ED4001 1973.1 2004.7
DL D340 1 新日鉄八幡 1978.4 1990.12
DD451 1 福島臨海鉄道 1974.1 2004.7
DD13104 1 国鉄DD13104 1982.2 1990.12
 LE10形
 全線電化されている近江鉄道にあって、コスト削減のために導入された気動車。富士重工業の12m級LE-CarUである。輸送力が小さすぎて、単行ではラッシュ時に対応できなかったため、1996年に早くも運用を終えた。その後も2004年まで車籍が残り、さらに2012年まで留置されていたが、全車解体されたようである。
1988.12 貴生川駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
LE10形 11-15 5 新造 1986.3 2004.7
1990年代以降
 220形
 モハ200形等の更新名義で、一部の機器を流用しながら、車体は西武701系の切り継ぎ、駆動は吊り掛け、そして近江鉄道初の冷房車という何とも不思議な車両。17mにも満たない両運車であった。2015年3月に定期運用を終え、イベント等での運行のみとなっている。
2005.3 高宮駅? 2016.6 近江鉄道ミュージアム
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ220形 221-226 6 モハ200形等 1991.10-96.3
 800・820形
 西武401系を譲り受けたもので、近江鉄道初のカルダン駆動車。800形は220形に似た運転台に改造されているが、220形は貫通型であるのに対しこちらは非貫通である、また、820形は運転台の改造は行われず、西武時代の運転台が残っている。合わせて26両あり、1990年代以降の近江鉄道の主力である。822Fは、2016年に創立120周年を記念して西武赤電塗装となっている。
 
2017.3 800形:米原駅付近  2019.3 800形:高宮駅
 
 2016.6 820形赤電塗装:彦根駅  2016.6 820形:彦根電車区
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ800形
モハ1800形
801-811
1801-1811
22 西武401系 1993.6-09.3
モハ820形
モハ1820形
821-822
1821-1822
4 西武401系 1997.3
 700形
 こちらも西武401系を種車とするが、展望室が設置された特徴ある車体で、愛称は「あかね号」。2両編成が1本のみ登場している。2019年5月にさよなら運転を行って廃車となった。
2019.3 彦根駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ700形
モハ1700形
701
1701
2 西武401系 1998.5 2019.5
 900形・100形
 西武新101系を譲り受けたもので、900形と100形の差はブレーキや側面の行き先表示機など。塗装は、900形がダークブルー、100形はオリエントブルーをベースとしている。どちらも西武時代から2両編成だったため、改造は小規模である。
 
2017.7 900形:米原駅  2017.6 100形:貴生川駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ900形
モハ1900形
901
1901
2 西武新101系 2013.6
モハ100形
モハ1100形
101-105
1101-1105
10 西武新101系 2013.12-18.10
 300形
 西武3000系を譲り受けたもの。2両編成で、近江鉄道初の界磁チョッパ制御車となった。100形と同様のオリエントブルーで、白帯は省略されている。

  2020.8.1 営業運転開始
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ300形
モハ1930形
301-302
1301-1302
4 西武3000系 2020.7-21.7
形式別車両数
種類 形式 1935 1954 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 木造車 16 17
  半鋼製車 5 26 32 28 28 27 14 3
500形 4 10 12 12 12 12 4 2
220形 5 6 6 6 3 1
800・820形 2 16 24 26 26 24
700形 2 2 2 2
900形 2 2
100形 6 10
DC LE10形 5 5 5
SL 9
EL 2 8 10 11 11 11 10 10 4 4 4
DL 2 3 .3 1 1
年表
 
 ○本線、多賀線
  1896.6.16 近江鉄道設立
  1898.6.11 彦根〜愛知川間12.1km開業
  1900.12.28 彦根〜貴生川間41.5km全通
  1914.3.8  多賀線:高宮〜多賀大社前間2.5km開業
  1925.3.12 彦根〜高宮〜多賀大社間電化(600V)
  1928.4.18 全線電化、1500V昇圧
  1931.3.15 米原延長線:米原〜彦根間5.8km開業
  1988.3.12 貨物営業廃止

 ○八日市線
  1912.4  湖南鉄道設立
  1913.12.29 新八幡(近江八幡)〜八日市口(新八日市)間8.7km開業
  1927.5.15 琵琶湖汽船に合併される
  1929.4.1 琵琶湖汽船の鉄道事業を八日市鉄道に譲渡
  1930.10.1 新八日市〜飛行場(御園)間2.9km開業
  1944.3.1 近江鉄道に合併される
  1946.1.1 電化、新八日市〜八日市間0.6km開業
  1948.8.1 新八日市〜御園間休止(64.9.25廃止)