建国当時の古代ローマ建国は現在のローマ周辺程度の広さしかなかったが、絶え間ない戦闘によって地中海全体に領土を広げていった。紀元前3世紀にはサビニ人、サムニウム人を破ってイタリア半島をほぼ制圧し、ポエニ戦争後の紀元前2世紀末にはガリア(フランス)南部とヒスパニア(スペイン)の大部分を領土としている。これらの地域は早くからローマ化が進み、後にローマ市民とほとんど変わらない権利を持つようになった。

ラツィオ州
 オスティア・アンティカ
 テヴェレ川の河口に位置し、ローマの海港として栄えた街。最盛期には5万人が住んでいたと言われるが、他の港の整備により衰退した。川が運んだ土砂に埋もれていたため、街全体がそのまま遺跡になっている。鉄道ローマ・リド線の駅から徒歩5分ほどとアクセスがよく、ローマ市内から1時間もかからない。
 遺跡の入口へ続く道はかつてのオスティエンセ街道で、石畳の道がよく残っている。門の手前は墓地のエリアで、中南米で見かけるような太陽のレリーフがあった。
  2019.9 オスティエンセ街道 2019.9 墓地
 街の入口、ローマ門はほとんど原形をとどめていない。少し進んだ所にあるネプトゥヌス浴場では、立派なモザイクを見下ろすことができる。
  2019.9 ローマ門 2019.9 ネプトゥヌス浴場のモザイク
 ネプトゥヌス浴場の先にある劇場は、規模は小さいがよく残っている。劇場の奥が同業者組合広場で、店ごとに関連する絵がモザイクで描かれていて面白い。
  2019.9 劇場 2019.9 劇場
  2019.9 同業者組合広場のモザイク 2019.9 同業者組合広場のモザイク
 劇場の先に進むと、お店や住宅が集まっている。テルモポリウムは暖かい食事を提供するお店で、バーカウンターのようになっていた。
  2019.9 粉挽き場 2019.9 テルモポリウム
 街の中心には、重要な三神を祀るカピトリウムや議場、フォロ浴場などが集まる。トイレはローマ遺跡ではおなじみの水洗式で、見ただけで使い方が想像できる。
  2019.9 カピトリウム 2019.9 フォロ浴場
  2019.9 トイレ 2019.9 共和制期の神殿
 カピトリウムの先にも多くの建物があり、モザイクも見ごたえがあってきりがない。結局、14時半に遺跡に着いていたのに、19時の営業時間終了まで遺跡を満喫して、最後は警備員さんに追い出された。
  2019.9 ミトラ浴場? 2019.9 ポルタマリーナ浴場のモザイク
 ヴィッラ・アドリアーナ(世界遺産)
 2世紀初めに建設された、皇帝ハドリアヌスの別荘。ティボリ郊外のかなり交通不便なところで、相当下調べをしたが、最後はグーグルの地図を頼りにようやく辿りついた。
 別荘とはいっても、面積120haという広大なもので、残っている建物だけでも30以上ある。入口を入ると最初に見えるのがポイキレ。かつてはこの池を柱廊で囲んでいたようだが、イメージが湧かない。池の奥に見えているのがヘリオカミヌスである。
  2019.9 ポイキレ 2019.9 ヘリオカミヌス
 ヘリオカミヌスの隣にあるのが、いちばん見たかった「海の劇場」。写真ではわかりにくいが、池は完全に円形で、中央に丸い島があるのでドーナツ型になっている。列柱が池に映って何とも言えず美しい。
  2019.9 海の劇場
 海の劇場から東側のエリアへ向かうと、2つの図書館や皇帝のトリクリニウム(食堂)などがある.。その脇にあるホスピタリア(客間)は、1つ1つの部屋にすべて違うモザイクがあって驚かされる。
  2019.9 図書館 2019.9 皇帝のトリクリニウム
  2019.9 ホスピタリアのモザイク 2019.9 ホスピタリアのモザイク
 中庭の先には、泉水堂、ドーリス式角柱の広間、消防士宿舎という3つの大きな建物が並ぶ。さらに奥に進むと黄金広場。ここまで来る観光客は少なかった。
  2019.9 ドーリス式角柱の広間 2019.9 黄金広場
 引き返して南側のエリアに向かうと、巨大な競技場型泉水堂がある。建物も立体的で威圧感がある。その隣にある3つのエクセドラのある建物は、一転して曲線が使われた優しい印象であった。
  2019.9 競技場型泉水堂 2019.9 3つのエクセドラのある建物
 南側のエリアには、大浴場、小浴場と呼ばれる2つの浴場がある。小浴場も十分に巨大で、なぜ1人の皇帝のためにこんなに浴場が必要なのかよくわからない。
  2019.9 大浴場 2019.9 小浴場
 この別荘は、ハドリアヌス帝が旅先で見た景色を再現したと言われるが、それがいちばんよくわかるのが、南端にあるカノープス。ナイル河をイメージしてワニの石像があったり、アテネのエレクティオン神殿そっくりの少女像があったりする。これでヴィッラ・アドリアーナ観光は終了。入場してから5時間経過していた。
  2019.9 カノープスとワニの石像 2019.9 カノープス、右がアテネ風石像
カンパニア州
 ポンペイ遺跡(世界遺産)
 ナポリの近郊、ローマ貴族の別荘地として栄えた都市で、79年のベスビオ山の噴火により、一瞬にして灰の中に埋もれた。掘り出されているのはごく一部だが、それでも広大な遺跡で、1つ1つの家やモザイクなどを見ていくと当時にタイムスリップしたような感覚になった。
  1994.2 背後はベスビオ山 1994.2 バジリカ
1994.2 浴場 1994.2 「猛犬注意」のモザイク 1994.2
 2019年に、25年ぶりの再訪。多くの建物が入場禁止になっていて、初回ほどの楽しさが無い。それでも広い遺跡を隅々まで見ていると5時間以上かかり、最後は日が暮れた。
  2019.9 アポロ神殿 2019.9 商店
  2019.9 秘儀荘 2019.9 スタビアーネ浴場の装飾
  2019.9 ファウヌスの家 2019.9 フォロとヴェスビオ山
 エルコラーノ遺跡(世界遺産)
 ポンペイと同じく、ベスビオ山の噴火で埋もれた街。ポンペイとともに世界遺産に登録されている。遺跡はこぢんまりとしているが、壁画やモザイクは見ごたえがある。そして、ポンペイと違ってほとんどの建物に入ることができるのがいい。
  2019.9 遺跡全景 2019.9 フォロの浴場のモザイク
  2019.9 ネプチューンとアンフィトリテの家 2019.9 鹿の家
エミリア・ロマーニャ州
 リミニ
 ローマ時代、エミリア街道の終点だった街。ティベリウス橋は傾いているようにも見えるが、今も現役で自動車が途切れることなく通行していた。
  2019.9 アウグストゥスの凱旋門 2019.9 ティベリウスの橋
ヴェネト州
 ヴェローナ(世界遺産)
 ヴェローナは「ロミオとジュリエット」の舞台として有名になったが、ローマ時代にまで歴史が遡る街で、アレーナ(円形闘技場)やローマ劇場が残る。ちょうど音楽イベントが開催されていて、アレーナの内部はコンサート会場に。そしてローマ劇場は入場もできなかった。
  2019.9 アレーナ 2019.9 ローマ劇場

古代ローマ -イタリア