紀元前3世紀、ローマと覇権を争ったカルタゴは、イベリア半島に進出し、ここからハンニバルがイタリア本土へ侵攻した。しかしこの戦いの中で、ローマがイベリア半島のカルタゴ軍を破り、属州としている。そしてアウグストゥスの時代にヒスパニア・タラコネンシス、ヒスパニア・バエティカ、ルシタニアの3つの属州に再編され、5世紀までローマの重要な領土であり続けることになる。

スペイン・アンダルシア地方
 コルドバ(世界遺産)
 コルドバは、ローマ属州の1つ、ヒスパニア・バエティカの州都がおかれた所である。しかし後のイスラム時代にも首都として栄えたため、ローマ時代のものは少ない。ローマ時代の橋があったが、かなり改修されて面影は少なかった。
 1994.2 ローマ橋
 ☆世界遺産「コルドバ歴史地区」 1984年登録
スペイン・カスティーリャ地方
 セゴビア(世界遺産) 
  セゴビアはローマ以前からケルト人の城があったところで、紀元前1世紀にローマが占領した後、都市として整備が進んだ。紀元1世紀のローマ時代の水道橋、13世紀のアルカサル、16世紀のカテドラルと、いろいろな時代の見所が集まっている。94年のスペイン初訪問の際は、最後まで迷って結局行かなかったので、18年ぶりのスペインでは真っ先にセゴビアへ向かった。
 2007年に開業した新幹線でマドリッドから僅か30分。バスに乗り換えると、水道橋の真下に到着する。全長728m、高さ29mの水道橋は、想像以上の迫力だった。水道橋の両側ともに登って行かれるので、いろいろな角度から楽しむことができる。 
 
  2012.9 アソゲホ広場より 旧市街方向
  2012.9 旧市街側より見下ろす 2012.9 上流側より見下ろす
 旧市街の反対側へ進んで行くと、だんだん水道橋が低くなってくる。そして最後はアーチがなくなり、水を浄化する施設が築かれている。ここで初めて水の通路が見えたが、水道橋の規模とは対照的に、信じられないくらい小さなものだった。
  2012.9 上流側 2012.9 水を浄化する施設
左奥から水道橋が始まる
 旧市街を一周して水道橋に戻ってくると、ちょうど夕暮れ時で、幻想的な風景が広がっていた。水道橋が見えるホテルに泊まったので、夕食後にはライトアップされた水道橋と、さまざまな姿を堪能した。マドリッド近郊であるが、1泊する価値がある街だと思う。
  2012.9 東側より 夕暮れの水道橋 2012.9 アソゲホ広場の夜景
 ☆世界遺産「セゴビア旧市街と水道橋」 1985年登録 
スペイン・カタルーニャ地方
 タラゴナ(世界遺産) 
 ローマ時代、属州ヒスパニア・タラコネンシスの州都として栄えた街で、8世紀にイスラム支配下に入ってから衰えたが、今もローマ時代の遺跡が多く残る。バルセロナから郊外電車で1時間なので、行きやすいと思ったが、実際にはかなり大変なことになった。
 ラス・ファレス水道橋へ行くバスが出るタラコ広場は、タラゴナ駅から1km以上離れているが、バスも無いようなのでひたすら歩く。しかし広場に面したバスターミナルに、乗るべきバスがない。周辺を歩き回ってようやくバス停をみつけたが、今度はカタルーニャの祝日なので本数が極端に少ないということが判明。結局この広場周辺で1時間以上無駄に過ごした。バスに乗っている時間は8分ほどで、ついに水道橋が目の前に現れた。別名ポンテ・デル・ディアブロ(悪魔の橋)と呼ばれる水道橋は、赤茶色の石が夕陽に映えてとても美しい。セゴビアと違って自然の中にある雰囲気が気持ちいい所だった。
  2012.9 ラス・ファレス水道橋 2012.9 水道橋を下から見上げる
 ラス・ファレス水道橋は、全長217m、高さ26mと少し小ぶりだが、ここを選んだ理由の1つは水道橋の上を歩いて渡れることである。しかし実際に上を歩いてみると、水道橋が見えないのであまり面白くなかった。橋を渡った先には高速道路があり、その脇の休憩所からも水道橋の全景を見ることができた。
  2012.9 水道橋の上、歩く通路 2012.9 高速道路の休憩所より
 ☆世界遺産「タッラコの考古遺産群」 2000年登録 

古代ローマ -ヒスパニア