明石以東は1910年に兵庫電気軌道が開業させた600Vの軌道線、明石以西は神戸姫路電気鉄道が開業させた1500Vの鉄道線である。1927年に関西電力の前身である宇治川電気が両社を合併し、1933年に分社化されて現在の山陽電気鉄道が成立した。1968年に神戸高速鉄道との直通運転を開始し、同時に併用軌道だった兵庫〜西代間が廃止されている。
2022.5 尾上の松〜高砂間
戦前
 旧兵庫電軌、神戸姫路電鉄
 旧兵庫電軌の車両は木造の軌道線向けで、段階的に増備され合併時には40両となっていた。一方の神戸姫路電鉄1形は、木造ではあるが鉄道線向けのハイスペックな車両で、15両のみであった。この神姫1形は合併後に51形に更新されるが、旧車体は76形と近江鉄道デハ1形に流用されている。
番号 両数  前歴 登場 消滅 備考
旧兵庫電軌 1-12 12 新造 1910 1948
13-21 9 新造 1912 1937
22-28 7 新造 1917 1936
29-35 7 新造 1920 1948
36-40 5 新造 1921 1937?
101-103
→301-305
5 新造 1917 1949 電動貨車
旧神戸姫路 1-15 15 新造 1923 1927
301-305
→351-357
→モワ1-6
7 新造 1923 1990 電動貨車
 合併後
 宇治川電気への合併後、旧兵電と神姫を直通できる車両がなかったため、神姫1形の機器を流用して旧兵電規格の半鋼製車体に更新した51形が登場した。新造車も加わって、戦前の山陽の代表形式となっている。続いて登場した200形は、流行していた流線形スタイルで、1970年まで残っていた。今も206が保存されている。
2016.10 206:東二見車両基地
旧番号 番号 両数  前歴 登場 消滅 備考
51-85 100-123
1000-1009
35 神姫1形・新造 1927 1961
201-212
111-135
200-233 34 兵電1形等 1936 1970
76-81(2代) 6 神姫1形車体 1941 1949
戦後の旧型車
 700形
 戦災等による車両不足を補うため導入された、国鉄63系と同型の割当車。山陽電鉄初の20m級大型車で、63系の仲間では唯一の標準軌車両でもある。ほとんどの車両は1969年までに消滅したが、2両のみが神戸高速乗り入れのために更新され、1977年まで残っていた。
700形
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
700形 800-819
→700-719
20 新造 1947.4-8 1977.3
 820・850形
 戦後わずか3年という時期に導入された、転換クロスシート車。戦後日本初のロマンスカーといわれる。車体は17m級の運輸省規格A型である。増備車である850形は、車体の軽量化等のマイナーチェンジが図られた。2000系・2700系の登場後は特急運用から離れ、ロングシート化されている。大きな改造を受けることなく、1983年にさよなら運転を行って引退している。保存車はない。
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
820形 820-831 12 新造 1948.12-49.8 1981.3
850形 850-855 6 新造 1950.9 1983.11
 250・270・300形
 旧兵庫電気軌道の規格に合わせて幅が狭かった100・200形を、幅広の新造車体に更新して車両の大型化を図ったもの。全部で56両が製造された。300形の中間車が、なぜか湘南色に塗り替えられているが現存している。
2019.1 300形:伊保駅付近
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
250形 250-257 8 100形 1951.10-54.9 1980.3
270形 270-289 20 100形 1959.8-61.12 1986.9
300形 300-321
330-335
28 200形 1962.8-68.2 1986.8
 電動貨車
 電動貨車は、入れ替わりながら1990年まで使用されていた。現存するものは無い。
番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モワ10
クワ30-31
3 120・121・123 1961 1970
クモチ20-21 2 232-233 1970 1981
クト60-61 2 新造 1970.9 1990.11 長物車
クホ70-71
サホ80-81
4 新造 1966.1 1990.3 ホッパ車
クモワ10 1 320 1985.9 1990.11
2000系列
 820・850形に続く特急向け転換クロスシート車。山陽電鉄初のWNドライブ駆動の新性能車である2000系と、吊掛け駆動の2700系がある。また、2700系の一部は後に新性能化されて2300系となった。山陽電鉄の1500Vに対し、将来乗り入れを計画していた阪急・阪神はこの時まだ600Vだったため、複電圧車として設計されている。
 2000系
 デビューは鋼製の2扉車で、2010Fは2扉ステンレスカー、2012Fは3扉アルミカー、2014Fは3扉ステンレスカーと仕様が変わっていった。車体は19m級である。2012Fのアルミ車体は、日本の普通鉄道としては初の採用だったため、1990年の廃車後も東二見車両基地で保存されている。
2016.10 アルミカー:東二見車両基地
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ2000形
サハ2500形
2000-2015
2500、02-08
24 新造 1956.6-63.5 1990.6
 2700系・2300系
 2700系は、2000系と同様の鋼製車体と700形の機器を組み合わせた吊掛け駆動車。2700Fのみ2扉で、その後は3扉になった。後に6両が新性能化されて2300系となっている。2300系は2000系列の中では最後まで残ったが、1997〜98年に3000系の中間車に編入されて形式消滅した。
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ2700形
クハ2700形
2700-2709
2712、2714
12 700形 1957.7-68.2 1986.8
クモハ2300形
モハ2300形
クハ2600形
2300-2303
2600-2601
6 2700系 1976.10-77.2 1998.6
3000系列
 神戸高速乗り入れ開始を控え、阪急・阪神と車両規格を合わせたもの。19m級の3扉ロングシートで、阪急・阪神の1500V昇圧が決定していたため、複電圧ではなくなっている。2000系の主電動機を流用した3200系、新製冷房車の3050系、そして増結用の3100系などの派生形式がある。また、1500は2000系由来の3550を救援車化したもので、2010年に廃車となっている。
 3000系
 1次車は2000系で実績のあるオールアルミ車であったが、2次車からはコスト縮減のため鋼製となった。3両編成と4両編成があり、一部は2000・2300系から編入された中間車3550形を組み込んでいる。
1997.11 鋼製車:山陽網干駅
 
2016.10 アルミ車:東二見車両基地 2019.7 鋼製車:山陽姫路駅
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Mc>3000-
<M>3001-
<Tc>3600-
<T>3500-
3000-3036(偶) 67 1964.12-71.5
<T>3550- 15 1969.11-98.6 2004 2000・2300系改造編入
1500形 1500 1 1990.11 2010.6 3550改造
救援車
 3200系
 3000系と基本的には同一設計だが、2000系の一部をT車化した際に余剰となった主電動機を流用している。3両編成3本のみ製造されている。
2016.10 東二見駅
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Mc>3200-
<M>3201-
<Tc>3620-
3200-3204(偶) 9 1969.12-70.10 2019.3
 3050系
 1972年に登場した、山陽電鉄初の新製冷房車。3000系2次車以降と同じ鋼製が採用されていたが、1981年以降は新工法のアルミ車が開発されている。
 
2022.5 鋼製車:尾上の松〜高砂間 2017.11 アルミ車:手柄駅
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Mc>3050-
<M>3051-
<Tc>3630-
<T>3530-
3050-3078(偶) 57 1972.7-85.6
 3100系
 3000系の増結用で、2両のみ製造された。車体は3050系後期車と同じ新工法アルミ車である。
 
2016.10 東二見車両基地(右の車両)
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Mc>3100
<M>3101
3100-3101 2 1983.6
5000系
 当初は、普通列車向けながらセミクロスシートという珍しいコンセプトで登場したもの。現在では、特急運用の方が多くなっている。1998年にはVVVFインバータ制御を採用した5030系も登場している。
 5000系
 5000-5018Fは固定クロスシート、5020-22Fは転換クロスシートで、6両編成・4両編成それぞれ6本ずつ。界磁添加励磁制御が採用された。車体は新工法のアルミ車である。
2015.11 今津駅 2017.8 尼崎センタープール駅
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Mc>5000-
<Tc>5600-
<M>5001-、5200-
<T>5500-
5000-22編成(偶) 60 1986.6-95.6
 5030系
 山陽電鉄初のVVVFインバータ制御が採用されたもの。外見は5000系とほとんど同じである。6両編成2本で、山陽電鉄初の6両固定編成となった。また、ほかに中間車のみ8両製造され、5000系に組み込まれている。
 
2017.11 手柄駅
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Tc>5630-
<M>5230-、5250-
<T>5530-
5630-32編成(偶) 20 1997.3-2000.11
6000系
 6000系
 3000系を置き換えるために登場した、ロングシート車。3両編成と4両編成があり、3両編成2本で6両編成の運用もある。山陽電鉄としては16年ぶりの新造車で、2016年4月に営業運転を開始している。
 
2019.1 伊保駅
 形式 編成番号 両数 登場  消滅  備考
<Mc>6000-、6100-
<T>6300-、6510-
6000-17編成 59 2016.2-22.3
形式別車両数
種類 形式 1940 1954 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 1形等 14
100形 35 27
200形 12 34 18
300形等 6 28 56 48 29
700形 18 18 2
820形等 18 18 18 8
2000系 24 15 15 15 6
2700系 2 12 6 6
2300系 6 6 6 6
3000系 79 79 79 73 72 73 64 64 62 44
3200系 6 6 6 10 10 12 12 12 12
3050系 29 51 57 57 57 57 57 57 45
5000系 34 54 60 60 60 60 60
5030系 12 20 20 20 20
6000系 42
事業用 10 6 9 14 11 10 2 1 1 1 1
年表

  1910.3.15 兵庫電気軌道:兵庫〜須磨間5.6km開業
  1917.4.12 兵庫〜明石間18.3km全通
  1923.8.19 神戸姫路電気鉄道:明石〜姫路間39.3km開業
  1927.1.1  宇治川電気が兵庫電気軌道を合併
  1927.4.1  宇治川電気が神戸姫路電気鉄道を合併
  1933.6.6  宇治川電気から分社化し山陽電気鉄道設立
  1941.7.6  網干線飾磨〜山陽網干間8.5km全通
  1948.10.21 兵庫〜明石間1500V昇圧完成
  1968.4.7  兵庫〜西代間2.2km廃止
  1977.12.27 西代〜明石間を軌道から鉄道に変更

山陽電気鉄道