前身は、石材を運搬する目的で1910年に開業した札幌石材馬車鉄道。その後、札幌市街軌道と社名を変えるが、改軌して路面電車化されることになり、馬車鉄道時代の軌道は撤去された。1927年に市営化され、戦後になっても路線延長が続いたが、1972年の札幌冬季オリンピック開催に伴い地下鉄の建設が始まったこと、また渋滞が激しくなったこと等により、1971年に路線を大幅縮小。さらに1973年・74年にも縮小して一条・山鼻軌道線を残すのみとなった。21世紀に入ると路面電車は見直され、2015年に都心線が開業して循環できるようになっている。
戦前〜終戦直後
 開業時の10形は、名古屋電気1号形を譲り受けた木造単車。このうち22号(旧29号)は、1960年に復元整備されて1993年まで車籍を残していた。その後も札幌市交通資料館で保存されており、2013年からは明治村に貸し出されている。40形以降は新造の単車で、130形以降は鋼製であった。戦後になって多くの車両がボギー車に機器を譲っている。
2018.10 22号:明治村
種類 形式 両数 番号 登場 消滅 備考
木造単車 10形 24 11-37 1918 1936 名古屋電気1形譲受
40形 28 41-68 1921 1952
100形 9 101-109 1925 1954
110形 5 110-114 1927 1959 →210形
120形 8 120-127 1929 1959 →220形
鋼製単車 130形 9 130-138 1931 1959 →230形
150形 11 151-161 1936 1962 →200形
170形 5 171-175 1937 1958 →200形
戦後〜1960年代
 500-580・600形
 戦後まもなく登場した、札幌市電最初のボギー車。500形は250形に機器を譲ったが、その他の多くは1971年の市電大幅縮小まで活躍していた。このうち615が札幌市交通資料館で保存されているが、なぜか番号は601と書き換えられている。
2016.9 615号:札幌市交通資料館
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
500形 501-505 5 1948.9 1961.8 →250形
600形 601-620 20 1949.6-51.4 1971.12
550形 551-560 10 1952.5-7 1971.12
560形 561-570 10 1953.10-12 1971.10
570形 571-580 10 1954.6-55.6 1971.12  
580形 581-585 5 1956.5 1971.12
 320・330形
 330形は、札幌スタイルと呼ばれる、丸みをおびた正面1枚窓が初めて採用された車両で、全長は12500mm。2001年まで生き残り、3300形に機器を譲ったが、1両の車体が保存されている。また320形も1両が保存されている。
 
2016.9 321号:札幌市交通資料館 1990.8 330形 
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
320形 321-327 7 1957.5 1973.4
330形 331-335 5 1958.4 2001.11 →3300形
 200-250形
 200形は320形、210形以降は330形とほぼ同タイプの車体をもつ機器流用車。240・250形は登場時から間接非自動制御で、210・220形も1970〜71年のワンマン化の際に直接制御から間接非自動制御に変わった。210・220・240・250の4形式は50年以上使用されているが、1988年頃から車体改修が行われて外観が変わっている。
1989.7 240形(更新前)
   
2019.12 210形:西4丁目付近 2019.12 220形:西4丁目付近 
 
2016.2 240形:西4丁目付近
 
2019.12 250形:西4丁目 2017.9 250形:静修学園前付近
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
200形 201-208 8 1957.12-58.6 1971.10 150・170形機器流用
210形 211-216 6 1958.11-12 110形機器流用
220形 221-228 8 1959.2-4 120形機器流用
230形 231-238 8 1959.5-10 1974.5 130形機器流用
240形 241-.248 8 1960.2-4 150形機器流用
250形 251-255 5 1961.7 500形機器流用
 D1000-1040形・700-720形
 鉄北線を非電化のまま開業させることを目的とした、珍しい路面ディーゼルカーで、全長は13100mm。鉄北線電化により役割を終え、多くは電車に改造されて700-720形となった。D1040形が1両保存されている。
2016.9 D1041号:札幌市交通資料館
形式 番号 両数 登場 消滅 備考
D1000形 1001 1 1958.4 1967.10 →700形
D1010形 1011-1013 3 1959.6 1967.10 →700形
D1020形 1021-1023 3 1960.6 1968.10 →710形
D1030形 1031-1037 7 1963.9-10 1971.10 →720・A870形
D1040形 1041-1042 2 1964.11 1971.10
700形 701-704 4 1967.9-12 1987.7 D1000・1010形電車化
710形 711-713 3 1968.8-9 1987.7 D1020形電車化
720形 721 1 1970.8 1974.5 D1030形電車化
 M100形・Tc1形
 輸送力増強のために登場した連結車で、通称は親子電車。全長12000mmと、少し短い。分離可能な非貫通構造だったため、連接車に比べて効率が悪く、10年ほどでTc1は廃車となった。M101はその後も単行で使用されていたが、2021年に引退している。Tc1は、札幌市交通資料館で保存されており、M101も保存予定である。

  2021.10.31 M101の営業運転終了
 
2017.9 M101:市電車庫  2016.9 Tc1号:札幌市交通資料館
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
M100形 101 1 1961.7 2022.2
Tc1形 1 1 1961.7 1971.10
 A800-830形  
 札幌市初の連接車で、1編成を2両と数える。1977年までにすべて廃車または休車となったが、A830形のうち6両が名古屋鉄道に譲渡され、美濃町線の廃止まで使用されていた。美濃市駅跡にカットボディが残る。また、A801-802は札幌市交通資料館で保存されている。
 
2016.9 A801号:札幌市交通資料館  2017.12 もとA830形:美濃市駅跡
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
A800形 801-806 6 1963.8 1976.6
A810形 811-814 4 1964.9 1976.6
A820形 821-824 4 1964.12 1976.6
A830形 831-842 12 1965.10 1984.12 →名鉄モ870形
 A850・870形  
 A850形は570・580形を、またA870形はD1030形を連結化改造したもの。台車は4つのままで、運転台を撤去している。いずれも1974年に廃車となったため、実働は10年未満である。
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
A850形 851-860 10 1965.6 1974.5 570・580形連接化
A870形 871-874 4 1969.10-12 1974.5 D1030形連接化
 排雪車  
 札幌市電の排雪車には、ササラ電車と呼ばれる、竹の箒で雪を掃くブルーム式のものと、国鉄のラッセル車と同じプラウ式のものがあった。
 雪1形はブルーム式の排雪車で、戦後間もない頃に40形を改造した木造車。1969年に雪1-4が鋼体化された。木造のまま廃車となった雪8は、札幌市交通資料館に残されている。鋼体化された4両はいずれも現役で、このうち雪4は油圧式に改造されて雪11(2代)となっている。
 
2017.9 雪1形:市電車庫  2016.9 雪8号:札幌市交通資料館
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
雪1形 1-8 8 1949 40形改造
雪10形(2代) 11 1 1999 雪4号改造
雪20形 21-22 2 2019.3-22.10
 雪10形はプラウ式の排雪車。1958年に改造されているが、その前から排雪車だったのか前歴がよくわからない。1984年に雪12が廃車となって消滅した。雪11が札幌市交通資料館で保存されている。
 
2016.9 雪11号:札幌市交通資料館
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
雪10形 11-13 3 1958? 1984 前歴不明
 DSB1形は、電化前の鉄北線向けに登場した、世界的にも珍しい非電化のブルーム式排雪車。電化によって役割を失ったため、活躍の期間は短かった。札幌市交通資料館で1号が保存されている。
2016.9 DSB1号:札幌市交通資料館
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
DSB1形 1-3 3 1961.2-64.12 1971.10
1980年代以降
 8500-8520形
 A830形以来、20年ぶりの新造車で、全長13000mm。札幌市電初の新性能車で、WNドライブ駆動、VVVFインバータ制御が採用されている。3形式が2両ずつ製造されているが、違いは僅かである。
 
2016.2 8500形:西4丁目付近 2019.12 8500形:西4丁目付近
 
2023.1 8510形:資生館小学校前付近 2017.9 8520形:静修学園前 
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
8500形 8501-8502 2 1985.3
8510形 8511-8512 2 1987.3
8520形 8521-8522 2 1988.2
 3300形
 330形の機器を流用し、全長13000mmの車体を新製したもの。平成の世に登場した吊掛け駆動の非冷房車で、5両のみという異端車である。
 
2019.12 西4丁目付近  2023.1 雪ミクラッピング:資生館小学校前
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
3300形 3301-3305 5 1998.3-01.11 330形機器流用
 A1200形
 札幌市初の超低床車で、愛称は「ポラリス」。リトルダンサータイプの3車体連接で、1編成を1両と数える。

  2013.5.5 営業運転開始
2017.9 静修学園前付近
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
A1200形 1201-1203 3 2013.3-14.5
 1100形
 連接ではなく単車の超低床車で、愛称は「シリウス」。リトルダンサーシリーズで、全長は13mである。

  2018.10.27 営業運転開始
2023.1 資生館小学校前付近
 形式 番号 両数 登場  消滅  備考
1100形 1101-1107 7 2018.9-21.9
形式別車両数
種類 形式 1940 1954 1964 1972 1981 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 単車 75 45
500-600形 45 55
320・330形 12 12 5 5 5 5 2
200-250形 43 34 20 20 18 18 18 18 18 18 18
700-720形 4 4 4
M100・Tc1形 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
A800-830形 6 26 6
A850・870形 14
8500-8520形 2 6 6 6 6 6 6 6
3300形 3 5 5 5 5
A1200形 3 3
1100形 3
事業用 9 8 11 5 5 4 4 4 4 4 4 4 5
DC D1000-1040形 14
  事業用 3                
年表

  1910.5.1 札幌石材軌道の馬車鉄道開業
  1912.7  札幌市街軌道と改称
  1916.10 札幌電気軌道と改称
  1918.4  馬車鉄道の軌道を撤去
  1918.8.12 東2丁目〜西15丁目間開業
  1922.12  苗穂線:道庁前〜苗穂駅前間全通
  1925.1   一条線:一条橋〜円山公園間全通
  1927.6  北5条線:札幌駅前〜中央市場通間開業
  1927.12.1 札幌市営となる
  1929.10.20 豊平線:すすきの〜豊平駅前間全通
  1929.11.10 西20丁目線:中央市場通〜長生園前間開業
  1931.11.21 山鼻線・山鼻西線:すすきの〜西15丁目間全通
  1964.12.1 鉄北線:札幌駅前〜新琴似駅前間全通
  1967.11.1 鉄北線電化完成
  1971.10.1 豊平線、苗穂線、北5条線、西20丁目線など廃止
  1973.4.1  一条線:一条橋〜西4丁目、医大病院前〜円山公園間廃止
  1974.5.1  鉄北線廃止(西4丁目〜すすきの間8.5kmのみとなる)
  2015.12.20 都心線:西4丁目〜すすきの間0.4km開業

札幌市電