古くからの港町、下津井への足として1914年に全通。軌間762mmのナローゲージながら、1928年にガソリンカー導入、1949年には電化と近代化が進められた。1972年には路線の大半が廃止されてしまうが、児島〜下津井間だけは生き残り、全国でも珍しいナローゲージ、そして他のどの鉄道とも接続しない異色の路線となった。1988年の瀬戸大橋開通により、観光路線としても期待されたが、バス事業の経営悪化もあって僅か2年後には残存区間も廃止となっている。

  1913.11.11 下津井軽便鉄道茶屋町〜味野(のちの児島)間開業(14.3.15味野〜下津井間延伸)
  1922.11.28 下津井鉄道と改称
  1949.8.20  下津井電鉄と改称
  1972.4.1   茶屋町〜児島間廃止
  1991.1.1   全線廃止 
   1941 1949 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990
 輸送人員(千人/日) 4.2 4.2 6.9 7.5 7.6 5.1 1.8 1.2 0.8 0.6
 輸送密度(千人/日) 1.7 1.6 2.4 2.6 2.3 1.5 1.2 0.8 0.5 0.4
 貨物輸送量(万t/年) 3.6 1.2 0.8 0.4 0.3
営業係数 61 89 92 94 94 135 98 111 125 218
廃線跡
 児島-下津井 6.3km
 最後に廃止された児島〜下津井間は、ほぼ全区間が歩道として整備されており、ハイキングを兼ねた路線探訪にちょうどいい。とくに琴海〜鷲羽山の山越え区間は景色もよく、今にも電車が走ってきそうな雰囲気のよさはこれまで訪れた廃線跡の中でも一・二を争う。
2004.12 児島駅跡D 2004.12 備前赤崎駅跡E
2004.12 阿津駅跡F 2004.12 琴海駅跡G
2004.12 琴海-鷲羽山間H 2004.12 鷲羽山-東下津井間I
 終点の下津井駅跡だけは立ち入り禁止で、荒れるままになっていた。車庫にはナローの特徴的な車両が残っているのだが、望遠で眺めることしかできず、もっと近づけたらいいのにと思う。
2004.12 下津井駅跡J 2004.12 下津井駅跡J
 下津井駅跡の車両群が見やすくなったという情報があったので、再訪。車両に近づくことこそできないが、周囲からほとんどの車両を確認できた。ただ、下津井駅舎は消滅していた。
2016.12 下津井駅跡J 2016.12 下津井駅付近J
 茶屋町-児島 14.5km
 先に廃止された区間も、ほとんどがサイクリングロードに転用されている。いかにも鉄道跡という感じが残る。倉敷川をわたる橋梁は、鉄道時代の橋脚ではないかもしれない。このあたりは車道が細く入り組んでいて、かなり遠回りを強いられた。
2009.11 茶屋町〜天城間@ 2009.11 天城〜藤戸間A
 藤戸駅は、ほとんど読めないが、駅名票とホームが残る。数少ない現役時代そのままの遺構である。
2009.11 藤戸駅跡B 2009.11 福田〜稗田間C
  
車両
 戦前は、4両のSLと14両のガソリンカーが使用された。1949年の電化時に登場した10両のECは、すべてガソリンカーを改造したもの。その後は新造車や車体更新車が増備されていった。
種類 番号 両数 特徴  登場 消滅 備考
SL 1 1 Bタンク 1913 1951
11-13 3 Cタンク 1913、24 1951
15 1 Cタンク 1946 1951 もと釜石製鉄所
GC カハ1-4 4 単車 1928-29 1952
カハ5-8 4 ボギー車 1931-33 1949
カハ50-55 6 ボギー車 1934-37 1949
EC モハ50-55
クハ5-8
10 12900-13200mm 1949 1972 カハ50-55等改造
モハ101、クハ21 2 12424mm 1951 1972
モハ102、クハ22-23 3 13200mm 1954 1990
クハ9 1 11262mm 1954 1972 カハ1等車体流用
サハ1-3 3 10300-11450mm 1956 1990 もと栗原モハ1401-03
モハ103、クハ24 2 13200mm 1961 1990
モハ104-105、110
クハ25-26
5 13200mm 1964 1977 モハ50・51・54、クハ7・8車体更新
モハ1001 1 13200mm 1972 1990 クハ23改造
モハ2001、クハ2101、
サハ2201
3 13200mm 1988 1990
PC ホハ1-8等 17 1913-52 1961
 モハ50形、クハ5形
 1949年の電化時に導入された、戦前のガソリンカー改造車。どこから見ても電車ではなく気動車に見える。1972年の部分廃止時に消滅したが、下津井駅跡とおさふねサービスエリアで1両ずつ保存されている。
2016.12 クハ6:おさふねサービスエリア
 モハ100形、クハ20形、モハ1000形
 1951年に導入が始まった、新造電車群。モハ1001は第2編成のクハを電動車化したもの、クハ24は第3編成のクハで、1編成ごとに姿が異なっている。
2016.12 モハ1001:下津井駅跡 2016.12 クハ24:下津井駅跡(左の車両)
 モハ2000形
 1988年の瀬戸大橋開業に合わせて導入した3両編成の観光電車で、愛称は「メリー・ベル」。しかし利用者は少なく、僅か3年後に路線廃止に追い込まれている。
2016.12 モハ2001・サハ2201・クハ2101:下津井駅跡
 ホハフ1形
 客車は大きく分けて4つのタイプがあったが、保存されているホハフ2は開業時に導入されたもので、シングルルーフの屋根が特徴。登場から100年を超えているが、保存状態は極めて良い。
2016.12 ホハフ2:おさぶねサービスエリア

下津井電鉄