現在のクロアチア・ダルマチア地方は、10世紀の最初の独立国家、クロアチア王国に含まれている。しかし、アドリア海に面した重要性からヴェネツィア共和国の進出を受け、内陸部とは異なる歴史を歩むことになるのである。

 1202年 ザダール、ヴェネツィア共和国に占領される
 1412年 シベニク、ヴェネツィア共和国に占領され、ダルマチア地方の大部分がヴェネツィア領となる
 1797年 ナポレオン侵攻、ヴェネツィア共和国滅亡
 1809年 ダルマチア地方がフランス領イリリア諸州となる
 1815年 ウィーン会議、ダルマチア地方がハプスブルグ帝国下のダルマチア王国となる
 1918年 ハプスブルグ帝国滅亡、セルビア人・クロアチア人・スロベニア人王国樹立

 ナポレオン戦争後のウィーン会議において、ダルマチア地方はクロアチア内陸部と同じハプスブルグ帝国に組み込まれる。そして第1次世界大戦後に、完全にクロアチアの一部に戻った。

クロアチア・ダルマチア地方
 ザダール(世界遺産)  
 ザダールはローマ以前に起源をもつ街で、ローマ時代もダルマチア地方の主要都市の1つとして栄えたところである。アドリア海に面した重要性から、クロアチア王国としての期間は短く、1202年に第4回十字軍を率いるヴェネツィア共和国に占領される。そして、ナポレオン戦争まで600年間にわたりヴェネツィア共和国の支配をうけることになった。
 ランチャラ門から旧市街に入り、まずフランシスコ会修道院を見る。1283年に建てられ、1358年のザダル条約の舞台となった場所でもある。続いて街の中心に行くと、ローマ時代のフォーラム、9世紀の聖ドナト教会、12世紀の聖ストシャ大聖堂と、さまざまな時代の建物が並んでいる。統一感のなさが、ほかの中世都市とは異なる雰囲気を感じさせていた。
 なお、ザダ−ルは世界遺産候補として申請されながら不登録となっていたが、「15-17世紀のベネチアの防衛施設」の6つの構成要素の1つとして、ついに世界遺産に登録された。
2010.5 フランシスコ会修道院 2010.5 ローマ時代のフォーラム
2010.5 聖ドナト教会 2010.5 聖ストシャ教会
 ☆世界遺産「15-17世紀におけるベネチアの防衛施設:スタート・ダ・テラ−西スタート・ダ・マル」 2017年登録
 シベニク(世界遺産)  
 クルカ川河口の街で、11世紀のクロアチア王国時代に建設された。ヴェネツィア共和国の進出に1412年まで抵抗したが、その後はナポレオン戦争までの400年間ヴェネツィア支配下に入っている。
 旧市街の入り口に立つと、最初に目につくのは丘の上のミカエル要塞である。ヴェネツィア時代の要塞で、景色がよさそうだが行く時間はなかった。旧市街の中は迷路のような細道で、いくつもの歴史ある教会が点在するが、1つ1つの説明は覚えきれなかった。
2010.5 シベニク旧市街とミカエル要塞 2010.5 聖イヴァン教会
2010.5 レプブリカ広場 2010.5 聖バルバラ教会
 シベニク最大の見所は聖ヤコブ大聖堂で、世界遺産も旧市街全体ではなくこの大聖堂が単独で登録されている。1431年から1535年まで100年以上にわたって建設されたもので、途中でゴシック様式からルネサンス様式に変更されたという。最大の特徴は、市民の力で建設されたことを示すように有力者の頭部が彫刻されていることで、知ってはいても見ると異様な光景だった。
2010.5 聖ヤコブ大聖堂 2010.5 聖ヤコブ大聖堂
 ☆世界遺産「シベニクの聖ヤコブ大聖堂」 2000年登録
 トロギール(世界遺産)  
 トロギールもローマ以前に起源をもつ街で、クロアチア王国、ハンガリー王国、ヴェネツィア共和国という変遷は他のアドリア海沿岸の街と同じである。城壁に囲まれた狭い島の中の旧市街が世界遺産に登録されている。残念ながらツアーにい組み込まれていなかったが、シベニクからスプリットに向かう途中で、建ち並ぶ塔を遠望することができた。
2010.5 トロギール旧市街
 ☆世界遺産「古都トロギール」 1997年登録

ヴェネツィア共和国 -ダルマチア