シルクロードと聞くと、何か郷愁や憧れのようなものを感じるのはなぜだろう。ユーラシア大陸を横断する壮大な交易路は、少なくとも紀元前2世紀の秦とローマの間では確立していたようである。その後、時代によって盛衰やルートの変更はあるが、7〜9世紀の唐の時代に全盛期を迎えたといわれている。

甘粛省・敦煌
 敦煌の歴史は紀元前11年、漢の武帝の時代に始まり、シルクロードの要衝として栄えた。玉門関は、シルクロードの北の関所である。敦煌を代表する莫高窟は4世紀の東晋時代から建造されたもので、美しい壁画などが描かれた窟が1000以上あり、中国の至宝ともいえる。莫高窟も確かに見事だったが、それ以上に砂漠に残るシルクロードの遺跡が印象に残った。万里の長城も、北京郊外にある14世紀の明代のものが有名であるが、ここにははるかに古い漢代のものが残っていて興味深かった。
 なお、2014年に西安からカザフスタン・キルギスタンにかけてのシルクロードが世界遺産となった。玉門関やトルファンの交河故城、高昌故城などが登録物件に含まれている。交河故城は、かつて単独で世界遺産に申請して落選したことがあるので、悲願達成という感じだろうか。
 莫高窟(世界遺産)  河倉城
2001.10 莫高窟外観 2001.10
 ☆世界遺産「莫高窟」 1987年登録
 万里の長城  玉門関(世界遺産)
2001.10 漢代の長城 2001.10
 ☆世界遺産「シルクロード、その始まりの区間と天山回廊の交易網」 2014年登録
ウイグル自治区
 交河故城(世界遺産)
 トルファンの郊外で、漢代に城郭都市として建造され、一時衰えたが7世紀の唐代に再び栄えている。ウルムチからバスで2時間ほど、夕方トルファンに到着して、最初に訪れた。
 ここは河に挟まれた天然の城塞のようになっていて、そのロケーションが印象的だったが写真ではその雰囲気が出せなかった。内部はメインストリートが1本通っているが、両側の住居遺跡は入り組んでいて原型がよくわからない。しかし往時の気分に浸るにはよく、お気に入りの遺跡の1つである。
2001.9 2001.9
 高昌故城(世界遺産)
 現在のトルファン郊外に、498年に成立した高昌国の王城。627年に唐僧の玄奘三蔵がインドに向かう際ここで仏教の講義をしたが、インドから戻るときには唐によって滅ぼされていたという。トルファンで1泊して、翌朝訪れた。
 遺跡はとても広く、岩とも遺跡ともつかないものが見渡す限り点在している。見所は奥の方にある玄奘三蔵の講堂とその周辺で、そこまで馬車で一気に進んでいった。馬車道の周りの雰囲気もかなりよく、帰りは中をゆっくり歩きたかったが、また馬車で通りぬけてしまった。ここの観光が1時間というのはあまりにも短すぎた。
 
 2001.9
2001.9 2001.9 玄奘三蔵の講堂
 ベゼクリク千仏洞
 高昌故城の次は、アスターナ古墳で45分、ベゼクリク千仏洞でも45分と、駆け足で観光が続く。ベゼクリク千仏洞は、南北朝から元代にかけての6〜14世紀にかけて掘られた石窟群だが、壁画は壊されたものが多かった。
 2001.9
 タシクルガン
 タシクルガンは中国・パキスタン・タジキスタンの国境にあたる辺境の地だが、それだけに古くからシルクロードの中継地として栄えた。玄奘三蔵が通ったともいわれるが、通ったルートから外れているようでもありはっきりしない。
 パキスタンから標高4730mのクンジュラブ峠を越え、そのままパミール高原をひた走ると、最初に到着した街がタシクルダンである。石頭城は街のはずれにあり、規模こそ小さいが、かつての姿が比較的よく残っていた。ここもまだ標高3000m以上なので、息があがらないよう慎重に見て回った。
2009.5 石頭城 2009.5 石頭城

シルクロード