初期のイスラム勢力は、正統カリフと呼ばれる選ばれた指導者が率いていたが、661年に世襲によるイスラム王朝、ウマイヤ朝が成立する。都はダマスカスに置かれ、中央アジアから北アフリカ、イベリア半島までを領有する大帝国となった。750年にウマイヤ朝が滅びアッバース朝が成立すると、都はバクダードに移る。アッバース朝も10世紀頃には弱体化して形式だけの存在となり、1258年のモンゴル軍侵攻により滅亡した。

 661年 ウマイヤ朝成立、ダマスカスが首都となる
 685〜705年 アブドゥルマリクの時代、ウマイヤ朝全盛期
 750年 ウマイヤ朝滅亡、アッバース朝成立
 762年 新都バクダード建設
 1258年 モンゴル軍バクダート占領、アッバース朝滅亡

シリア
 ダマスカス(世界遺産)
 ダマスカスは、紀元前8000〜10000年頃すでに人が定住しており、世界最古の都市の1つといわれる。紀元前10世紀にはアラム王国の首都として栄え、ローマ時代もデカポリスと呼ばれる主要都市の1つとなるなど、長い歴史の中で常に重要な地位であり続けた。636年イスラム帝国が占領し、初のイスラム王朝であるウマイヤ朝の首都でもある。
 旧市街を囲む城壁は、ローマ時代以後何度も改修されていて、現在残るものは13世紀頃十字軍やモンゴル軍から街を守るためのものである。東門から中に入ると、なぜか最初に教会がある。小さいが、地下の礼拝堂が美しかった。
1998.9 東門 1998.9 アナニア教会
 サラディーンは、十字軍からエルサレムを奪還したアラブの英雄。霊廟は1196年に建てられたもので、明るい雰囲気だった。 
1998.9 サラディーン廟 1998.9 アゼム宮殿
 いよいよ、ダマスカスで最も有名なウマイヤド・モスク。715年に完成した、世界最古、最大級のモスクと言われる。もとはビザンチンの教会を改造しているので、モスクらしくない姿をしていた。内部もざわついていて、聖なる場所という雰囲気ではなかった。 
1998.9 ウマイヤド・モスク 1998.9 ウマイヤド・モスク内部
 ☆世界遺産「古代都市ダマスカス」 1979年登録
レバノン
 アンジャル(世界遺産)  
 ウマイヤ朝第6代カリフ、ワリド1世の保養地として8世紀はじめに建設された。レバノンでは唯一のウマイヤ時代の遺跡である。規模は小さいが、美しいアーチが青空に映えていて印象的な遺跡であった。
1998.9 王宮 1998.9
1998.9
 ☆世界遺産「アンジャル」  1984年登録
イスラエル
 エルサレム(世界遺産)  
 エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教だけでなく、イスラム教の聖地でもある。この神殿の丘から、預言者ムハンマドが天使を従え天馬に乗って昇天したと言われているのである。ユダヤ人とアラブ人の祖は同じで、アブラハムの長男イシュマエルがアラブ人、二男イサクがユダヤ人につながっていくとされているので、拠り所も同じになるのであろうか。岩のドームは、ウマイヤ朝全盛期の691年に建てられ、増改築が繰り返されてきた建物である。
 岩のドームがある神殿の丘に入る際にはきびしい荷物検査があるので、時間がかかる。本来は翌朝大行列に並ぶ予定だったが、14時頃に前を通りかかると列が短かったので、予定を変更して列に並んだ。青い壁と金色のドームは美しいが、ドームの内部はイスラム教徒でないと入れず、外も観光客しかいなかったので、聖地という雰囲気は感じられなかった。
2014.4 オリーブ山より 神殿の丘全景
2014.4 岩のドーム 2014.4 アル・アクサー寺院
 ☆世界遺産「エルサレム旧市街と城壁」  1981年登録

イスラム帝国 -ウマイヤ朝・アッバース朝