鉄道線の中核となるのは、滑川を起点に立山を目指して開業した立山軽便鉄道の路線。1931年の富山乗り入れにより本線と立山線が分かれ、さらに黒部鉄道や富山県営鉄道、富南鉄道などを合併して現在の路線網ができている。路線と前身の会社名が必ずしも一致しないのでわかりにくい。一方、軌道線は富山電気軌道として開業したもので、経営難により買収されて富山市営軌道となり、戦時中に合併している。
2021.6 14760形:越中三郷〜越中荏原間
戦前
 旧富山電気・黒部・富山県
 富山地方鉄道の車両は、戦後間もなく改番が行われ、電動機の出力などに応じた番号がふられた。このため、登場順と番号の大きさに関連性が無く、とてもわかりにくくなっている。戦前の車両は1981年に全て姿を消した。
種類 形式(戦前) 形式 両数  前歴 登場 消滅
EC 富山電気モハ100
    モハニ110
クハ120 6 新造 1931 1943
富山電気モハ200 モハ7520 5 新造 1931 1971.8
富山電気モハ300 モニ6570 3 光明電気 1935 1970.7
富山電気モハ500 モハ7540 3 新造 1936 1981.10
富山電気モハ210 モハ7530 3 機器流用 1941 1980.2
富山電気モハ520 モハ10040 1 モハ503 1943 1980.2
黒部デ1 1 新造 1922 1943?
黒部デ20 2 新造 1924 1943?
黒部デ30 モハ8040
モハ13140
2 新造 1926 1969.7
黒部デ50 モハ12510 2 新造 1937 1980.7
富山県デハ1 モハ8020
クハ110
3 新造 1927 1968.6
富山県デハニ4→7 モハ8060 1 新造 1927 1968.12
富山県デハニ5 モハ10050 2 新造 1937 1981.10
EL 富山県デキ1 デキ8000 1 新造 1927 1968.12
戦後〜1970年代
 電気機関車  
 合併後に登場した電気機関車のうち2両は有峰ダム建設用で、役目が終わると三岐鉄道に譲渡された。一方、デキ12021は50年以上にわたって現役である。
2017.4 デキ12021:稲荷町車庫
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
デキ8100 8103 1 庄川電気 1944 1971.8
デキ14730 14731 1 新造 1948.8 1999.12
デキ12020 12021 1 新造 1958.8
デキ19040 19041-02 2 新造 1957.6 1960.6
 終戦直後の電車
 モハ14750形とクハ160形は、運輸省規格A’型と呼ばれるもの。最後まで非冷房で、1995年まで残っていた。
 
モハ14750形
種類 形式 両数  前歴 登場 消滅 備考 
EC クハ145-146 2 新潟鉄工 1946 1969.7  
クハ151 1 富岩鉄道 1944 1980.2  
モハ7515 1 新造 1948 1969.6  
モハ14751-53、55 4 新造 1948 1995.10  
クハ161-162 2 新造 1948 1980.8
クハ91-92 2 機器流用 1962.3 1971.8  
 14770(14790)・14780形
 富山地方鉄道初のカルダン駆動で、全金製。急行用のクロスシート車であった。モハ14770形は3枚窓の両運で、14771+171のMc-Tcで登場したが、3年後にTcが電装された。モハ14780形は2枚窓の片運、非貫通でスタイルが大きく変わっている。モハ16010形の増備等により、1999年に消滅した。
 
モハ14770
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ14770形
  (14790形)
クハ170
14771-72
14791-92
171
2 新造 1955.10 1997.3
モハ14780形 14781-83 3 新造 1956.7-58.8 1999.12
クハ180 181-83 3 新造 1956.7-58.8 1999.12
 10020・14720形  
 カルダン駆動の増備車で、モハ10020形は富山地方鉄道初のユニット方式となった。T車のTc化、冷房化やシールドビーム2灯化などの改造が加えられ、50年以上生き残っている。2005年と06年にモハ10020形が1編成ずつ引退、そして2012年に火災によりモハ14721とクハ171が廃車、さらに2014年にクハ173・174も廃車となり、残るは4両となっている。
 
2017.4 モハ10020形:稲荷町車庫
 
2018.8 モハ14720形:稲荷町駅  2018.8 クハ170形:稲荷町駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ10020 10021-26 6 新造 1961.1
モハ14720 14721-22 2 新造 1962.11
サハ220
→クハ170
221-224
(171-174)
4 新造 1961.1
 14710形  
 カルダン駆動車の増備が続いている時期にもかかわらず、なぜか名鉄の旧性能車を譲り受けた。運輸省規格A’型なので、モハ14750形の親戚である。1993年までにすべて消滅した。
 
モハ14710形 立山特急塗装
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ14710形 14711-18 8 名鉄モ3800形 1968.5-69.5 1993.9
クハ10形 11-18 8 名鉄ク2800形 1968.5-69.5 1993.9
 モーターカー  
 いずれも除雪用で、モーターカーとしては珍しく車籍を有している。DL1形は北陸鉄道や南部縦貫鉄道、DL11形は津軽鉄道、DL13形は福井鉄道や神岡鉄道に同型車がある。
 
2017.10 DL1形:上市駅  2017.10 DL11形:上市駅
 2017.10 DL13形:上市駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
DL1形 1-3 3 新造 1963.1-65.3
DL11形 11-12 2 新造 1970.1-74.12
DL81→13形 13 1 新造 1981.12
1980年代以降
 14760形  
 17年ぶりの新造車で、富山地方鉄道初の冷房車。この形式を最後に、鉄道線の新車は登場していない。Mc2両のユニット方式で、増結用のTc車が1両だけ製造されている。
 
2017.4 稲荷町駅  2021.6 越中荏原駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ14760 14761-774 14 新造 1979.9-81.10
クハ175 175 1 新造 1981.10
 10030形  
 14710形を置き換えるために、京阪の「テレビカー」3000系を譲り受けたもの。電動機・機器のほとんどは、営団3000系のものに交換されている。2013年には京阪8000系のダブルデッカー車1両を譲り受け、中間に組み込んで2014年8月からダブルデッカーエクスプレスとして運行している。
 2021.6 越中三郷〜越中荏原間 2017.4 ダブルデッカーエクスプレス:稲荷町駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ10030 10031-46 16 京阪3000系 1991.3-93.7
サハ30 31 1 京阪8000系 2013.8
 16010形
 最後まで残っていた非冷房車を置き換えるため、西武レッドアローの5000系を譲り受けたもの。こちらも機器はJR485系や京急1000系などのものが流用されている。オールクロスシート車で、特急列車を中心に使用されている。当初はMc-M-Tcの3両固定編成であったが、Mc-T-Mcに改造され、中間車を抜いた2両編成で使用されることが多くなっている。
2016.11 宇奈月温泉駅 2017.4 稲荷町駅
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ16010 16011-14 4 西武5000系 1995.7
クハ110 111-112 2 西武5000系 1995.7
 17480形
 東急8590系を譲り受けたもの。2013年に2両編成が2本入線し、2019年になってさらに2本追加された。東急時代の塗装のままで使用されている。  
 
2021.6 越中荏原駅  2023.10 長屋〜新黒部間
 形式 番号 両数  前歴 登場  消滅  備考
モハ17480 17481-44 4 東急8590系 2013.9-11  
17485-88 4 2019.10-20.3
形式別車両数
種類 形式 1931 1954 1964 1972 1982 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
EC 富山電気 11 20 20 8
黒部 5 4 4 2
富山県 4 6 6 2
クハ140等 4 6 1
14750形 6 6 6 4 4 4
14770形 2 2 2 2 2 2
14780形 6 6 6 6 6 6
10020形 2 6 6 6 6 6 6 4 4 4
14720形 4 6 6 6 6 6 6 6 6 5
14710形 16 16 16 16
14760形 15 15 15 15 15 15 15 15 15
10030形 16 16 16 16 17 17
16010形 6 6 6 5 5
17480形 8
EL デキ1 1        
  8100形 1 1        
14730形 1 1 1 1 1 1 1
12020形 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
DL モーターカー 2 4 6 6 6 6 6 6 5 5 5
年表

 ○立山軽便〜富山電気
  1913.6.25 立山軽便鉄道:滑川〜五百石間14.0km開業(762mm・蒸気)
  1917.6.25 立山軽便鉄道を立山鉄道と改称
  1921.3.19 五百石〜立山(現・岩峅寺間7.2km延伸
  1931.3.20 富山電気鉄道が立山鉄道を合併
  1931.8.15 富山田地方〜上市、寺田〜五百石間開業し路線再編
  1931.11.6 上市〜滑川間ルート変更、1067mm改軌、電化
  1936.8.18 五百石〜岩峅寺間1067mm改軌、電化
  1936.10.1 電鉄富山〜西三日市(現・電鉄桜井)36.9km全通、黒部鉄道接続

 ○黒部
  1922.11.5 黒部鉄道:三日市〜下立間10.2km開業(1067mm・電気)
  1923.11.21 三日市〜桃原(現・宇奈月温泉)間17.2km全通

 ○富山県
  1921.4.25 富山県営鉄道南富山〜上滝間10.3km開業
  1927.6.10 電化
  1937.10.1 南富山〜粟巣野間25.3km全通

 ○富山軽便〜富南
  1914.12.6 富山軽便鉄道富山〜笹津間17.4km開業(1067mm・蒸気)
  1915.10.24 富山軽便鉄道を富山鉄道と改称
  1933.4.20 富山鉄道解散、富山〜堀川新(現・南富山)間5.0kmを富南鉄道に譲渡
  1941.12.1 富南鉄道の路線を富山電気鉄道に譲渡

 ○合併後
  1943.1.1  富山電気鉄道、黒部鉄道、富山県等が合併し富山地方鉄道成立
  1943.6.20 富南線電化
  1954.8.1  立山開発鉄道粟巣野〜千寿ヶ原(現・立山)間0.8km開業
  1962.4.1  立山開発鉄道の路線を富山地方鉄道に譲渡
  1983.6.1  貨物営業廃止

富山地方鉄道・鉄道線