会長挨拶 |
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明治5年(西暦1872年)11月9日、時の政府は太陽暦の採用を発表し、その年の12月3日をもって、翌6年1月1日とし、太陽暦を実施した。また、同時に1日を24時とする現行時刻法も施行された。 改暦は、日本の近代化にとって避けて通ることのできないことであったし、その恩恵は計り知れないものがある。 昭和48年は太陽暦実施からちょうど100周年に当たっていた。これを記念して、三重県伊勢市の神宮徴古館で暦の展覧会が開催された。この展覧会には、同館所蔵の古暦や貞享改暦(1684年)の功労者渋川春海関係の資料(のちに国指定重要文化財)などが展示された。 この展覧会を取材のために訪れた新人物往来社の吉成勇氏が、改暦100周年を記念する特集号の必要性を痛感し、小生に協力を求めた。 かくして、この当時暦に関係した各分野の権威の協力を得て『歴史読本』臨時増刊「万有こよみ百科」が同年12月に刊行されるに至った。「万有こよみ百科」は類書の全く無かったこともあって、大変好評で増刷を重ねた。 同誌刊行の準備中から、これを機に暦の関係者を網羅した会を作ったらという提案が吉成氏からあった。 つまり、暦や天文学の専門家、歴史や民俗・国文学の方面からの暦研究家、カレンダーなどのデザイナーやメーカー、さらに広く暦に興味や関心のある方などが自由に集まり、研究し、語り合う会。できれば資料を交換したり、その入手の斡旋(あっせん)をする会を作ろうというわけである。 その頃、小生は何かと忙しく、会を作ることにあまり乗り気ではなかったが、吉成氏の熱心さに負けてしまって、諸先生方のご賛同をいただいて「暦の会」が発足することになった。 会の名称も、あまり肩に力を入れずに、誰でも気軽に参加できる会という気持ちを込めて、ただ平凡に「暦の会」とした。 暦の会第1回例会は昭和49年1月26日に開催され、小生が「南部絵暦」について報告した。以後、例会は毎月1回、7月・8月を休みとして、年間10回開催し、すでに227回を数えるに至った。そして来年は25周年を迎えることになる。 例会では、まさに古今東西のあらゆる分野の暦の話がテーマになる。会場は都心の場合が多いが、各地の博物館や暦の展覧会の見学に遠出をすることもある。 現在会員は約150名、どなたでもご参加を歓迎している。 平成9年(1997)6月10日記 暦の会会長 岡田 芳朗 プロフィール: 岡田芳朗(おかだ・よしろう) 1930年東京都生まれ。1953年早稲田大学教育学部卒業。1956年早稲田大学大学院文学研究科日本史学専攻修士課程修了。 女子美術大学教授、文化女子大学教授を経て、現在女子美術大学名誉教授。 著書に『暦ものがたり』(83年、角川書店)、『現代こよみ読み解き事典』(93年、柏書房)、『明治改暦』(94年、大修館書店)、『日本の暦』(96年、新人物往来社)、『暮らしのこよみ歳時記』(01年、講談社)、『アジアの暦』(02年、大修館書店)、『南部絵暦を読む』(04年、大修館書店)、 『旧暦読本 現代に生きる「こよみ」の知恵』(06年、創元社)、『暦に見る日本人の知恵』(08年、日本放送出版協会)、『春夏秋冬暦のことば』(09年、大修館書店)等多数。 |