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◆[第367回]暦の会9月例会      

                                    平成23年9月24日(土)出席者18名
                                       会場=五反田文化会館

★ 1.暦文協のイベントについて……………報告=暦の会会長・岡田芳朗
 9月17日(土) 午後1時から、台東区一丁目区民会館において「暦文協」の講演会・シンポ
ジウム及び定時総会が開催された。中牧弘充理事長の開会挨拶、経済産業省クールジャパン海
外戦略室長・渡辺哲也氏の来賓挨拶に続いて、二つの講演が用意されていた。一つは国立天文
台情報センター暦計算室長・片山真人氏による「暦の中の天文学」で、日常、よく使っている
「年・月・日・曜日」などについての天文学的な観点からのわかりやすいお話。もう一つの国
立科学博物館科学技術室グループ長・鈴木和幸氏による「暦の科学技術史―過去から現在まで」
は、日本人が作った最初の暦である「貞享暦」の観測技術が、江戸時代のからくり人形の職人
技にあったことなど、それぞれ画像を駆使しながらの興味深い講演であった。そして、この講
演を受けた形で、「天文科学と暦文化」と題し、奥野卓司・関西学院大学社会学部教授(コーデ
ィネーター)、中牧弘充・国立民俗博物館教授、岡田芳朗・暦の会会長に、上記の片山、鈴木の
講師お二人を加えてのシンポジウムが続いた。
その他には、出来上がったばかりの「暦文協オリジナルカレンダー」の紹介や「12月3日=カレンダーの日」の紹介、そして角川映画「天地明察」の撮影進行状況、前進座で公演する「明治お化け暦」などが紹介された。この後に会員による暦文協の定時総会が開催された。

★ 2.「庚寅」の文字が刻まれた大刀出土の新聞記事をもとに
                  ………………………報告=暦の会会長・岡田芳朗
「[庚寅]銘入り鉄製大刀 福岡・元岡古墳群から出土」「日本最古 暦使用例か 西暦570年示す[庚寅]銘文の大刀出土」などと、9月21日(木)から22日(金)にかけての各紙に上記の如き見出しが躍った。『日本書紀』の欽明天皇の条には、
   欽明天皇14年(553)〈…「醫博士・易博士・暦博士等、番(つがひ)に依りて上(まうで)き下(まかれ)。   ……又卜書・暦本・種種の薬物、付送(たてまつ)れ」とのたまふ。〉
   欽明天皇15年(554)〈……別(こと)に勅を奉りて、易博士・施徳王道良・暦博士固徳王保孫・醫博    士奈率王有掕陀…を貢(たてまつ)る。皆請(まう)すに依りて代ふるなり。〉
とあり、この度の「庚寅」の銘文入り大刀の出土は、欽明天皇13年(552)の仏教伝来後、暦書とともに暦博士を招聘したことと、後の暦の使用の実例などが裏付けられたといえよう。
但し、この大刀が和製なのか、大陸製なのかは不明である。

★ 3.気象協会による「日本版二十四節気」について(2頁資料)
              …………………………報告=暦の会会長・岡田芳朗

 〈寒いのに立春、暑いのに立秋――。中国伝来の二十四節気は、季節の移り変わりに彩りを添える言葉だが、ちょっと違和感を感じませんか? 日本気象協会は、新しい季節のことば作りを始める。言語学者や文化人、気象関係者らからなる専門員会を設け、一般からも意見を募って検討する。2012年秋までに「日本版二十四節気」を提案する予定だ。……同協会は「現代の日本の季節感になじみ、親しみを感じる言葉を選びたい」とする。〉(asahi.comより/なお、古川麒一郎先生から朝日新聞5月10日夕刊の同内容記事コピー資料の配布があった)。
ところで二十四節気は、天保暦以前は「常気(恒記)」といって、冬至の日時に365.2422/24=15日5時間14分を累加して決めた。いっぽう、天保暦以後は「定気」といって、春分(黄経0度)から太陽が黄経15度移動するごとに一節気進める(地球の公転が楕円軌道によることに対応する)。常気による二十四節気は冬季には定気より遅れ、夏季には進む(別表参照)。これにより、立春が2日遅くなるため、八十八夜や二百十日は2日後になる。また、四立(立春・立夏・立秋・立冬)の日付が違うと土用の入りも違ってくる。
二十四節気は暦日の決定には直接関係ないが、閏月の決定に影響することが考えられる。

◆別表〈二十四節気〉
 

★「中秋の名月」に関する新聞記事……………………………………小川益男会員
  旧暦の8月15日にあたる9月12日は、6年ぶりに中秋の名月と満月が重なった。前日の11日から13日までの朝日・読売・毎日・日経・産経・東京の6紙をチェックしたところ、中秋の名月についての記事は本紙やコラム、漫画や投稿欄などで14件が確認できた(資料)。被災地の様子と組み合わせた記事や写真、スカイツリーと名月との競演や女子サッカーなでしこジャパンをもじったお月見の様子(投稿)など、2011年ならではものが目についた。

★「八月十五日、九月十三日は婁宿なり。この宿、清明なるが故に月を翫ぶに良夜とす
(『徒然草』二百三十九段)について………………………………………石原幸男会員

  ⇒ 石原幸男氏ホームページをご覧ください。 
    http://www.asahi-net.or.jp/~jc1y-ishr/Kyuureki/Sekki_28shuku.html

                                 (以上、レポート=暦の会 理事 小川益男)