◎[第376回]暦の会6月例会 平成24年6月23日(土)2時~4時 会場=五反田文化会館/出席者=15名 今回は、〈「明治年癸未年吉凶方位表」について― 伊那谷の暮らしの中で〉と題し、山東 崇宏 先生にお話しいただいた。また、会員諸氏から興味深い報告等がなされた。 * ◎「明治16年癸未年吉凶方位表について―伊那谷の暮らしの中で」………山東 崇宏 先生 この方位表は長野県下伊那郡阿南町の塩澤家文書に収録されていたもので、現在、横浜市の古文書を読む会で解読作業を進めている中の1点である。明治改暦後、官暦(本暦および略本暦)の製造頒布の委託は、明治16年暦よりそれまでの頒暦商社から伊勢神宮へと移る。専売権を失った頒暦商社は組織変更をし、林立守を長とした「頒暦林組」を設立して、新たに頒暦製造御用を委託されたものの、結局は明治17年暦を最後に契約は解除されてしまう。 この方位表の末尾に「明治十六年略本暦附録 頒暦林組長 林 立守」とあるいっぽうで、「此表はすべて太陽暦月日にあらず 太陰暦の月日としるべし」との表示もあることから、政府が禁じた旧暦の要素を付録の「方位表」の名のもとにまとめた未公認の暦、いわゆる「おばけ暦」の一種であることがわかる。官暦は暦面からそれまでの迷信暦註を一掃してしまったため、人々にとっては魅力が乏しく、また、本資料が見つかった塩澤家の地域は「南信地区」という地理的条件から、近世以降も比較的他地域からの習俗混入が少なく、現存する祭事や年中行事は旧暦で実施されることが多かったようであり、こうしたお化け暦は重宝したものと考えられる。 《当日配布された会員諸氏からの資料・報告等》 ◎岡田芳朗著・連載=暦のはなし―③「入梅」と「出梅」/暦のはなし―④ 七夕 「NHK俳句」5月号 コピー配布……岡田会長より ◎岡田会長が最近入手された大經師暦(名古屋弘所暦)3点の現物展示とコピー配布 文政2年(1819)から嘉永5年(1852)までの34年間のうち、文政5年、天保6年、同7年の3年分を欠いてはいるものの、31年分まとまった巻き暦であり、「京都 大經師降屋内匠」と並んで「尾張 弘所名古屋書林」との二行の表示や、欄外に「弘所 尾張名古屋 書林中」の表記などがあり、大変珍しい暦とのこと。いずれ詳細をご報告戴けるのが楽しみです。 ◎「御堂関白日記の日の出・日の入り」「御堂関白日記の辰刻」「平気法時代の辰刻」 コピー配布と解説……須賀会員より ◎「平成25年癸巳年神社本暦」……今年も会員の神聖社・太田社長が郵送下さり、出席会員に配布致しました。ありがとうございました。 *岡田先生がNHK第一放送(NHK-FM放送も同じ)に出演 6月10日(日)及び11日(月)の各午前4時~4時40分放送の〈ラジオ深夜便・明日のことば「暦に知る 日本人の情感」〉という番組で、時の記念日にちなみ、暦と時刻に関してのお話をなさいます。是非お聞きください。 (レポート=小川益男 暦の会理事) |