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◎[第379回]暦の会11月例会      
                                  平成24年11月17日(土)2時~4時
                                  会場=五反田文化会館 出席者=15名

〈テーマ〉〝新出の「天明3年田山暦」(たばこと塩の博物館所蔵)について〟
                                           ……解説・岡田 芳朗会長
 10月の第378回例会の前に、たばこと塩の博物館「江戸の判じ絵」展において、新出の「天明3年田山暦」を観覧しましたが、今回はそのコピーを基に、同じ「天明3年版」の岩手県立博物館蔵品と比較検討した結果を、岡田芳朗会長に解説していただきました。
                    
 同じ「天明3年(1783)田山暦」としてすでに知られている岩手県立博物館蔵品(A)と今回のたばこと塩の博物館蔵品(B)とを比べてみると、以下の点で大きく相違する点が指摘できる。
① Aにはない「味噌つくりよし」を示すみそ玉の図柄がBには8カ所にわたってあること。
② 「地火」(井戸掘りや埋葬、栽種、土や石を動かすと災いが起こる日) がAの2カ所のみに対して、Bは17カ所あること。
③ Aには「春分」「秋分」が欠落していること。
④ Bには「節分」が欠落していること。
また、Bと伊勢暦とを比較してみると、以下のような違いが判る
◎ みそ玉は、Bでは11月22日のみ欠落しているが、あとの8カ所は伊勢暦と同じである。
◎ 伊勢暦の正月、2月、12月にある「地火」がBにないのは、積雪のためであろうか。
◎ 伊勢暦の12月にもある「種まき吉」がBにないのは、やはり積雪のためであろうか。
                   * 
いずれにしても、今から230年も前に、文字の読めない人々に向けて絵と記号のみで暦の要素を表現するというアイデアは驚くべきものであり、また、それを実践した田山善八という人物に興味をかき立てられた会員も多いのではないでしょうか。

◎江戸博の《特集展示・渋川春海と江戸時代の暦》(9月4日~11月11日)について
 会場は、江戸東京博物館常設展示室5階にある江戸ゾーンの「出版情報」コーナーの一部を利用したもので、探しながらたどり着くまでかなり時間がかかってしまいました。そして、偶然にもそこで岡田会長とばったり。おかげで先生の解説付きで観覧できた?のは幸いでした。
 資料所蔵先は、①京都大学理学研究科数学図書室、②京都大学山本天文台資料室、③松竹宣伝部、無表示は江戸東京博物館蔵品。(*以下、カッコ内のマル数字は所蔵先)
展示物は、貞享暦に関連したものが中心ですが、変わったところでは松竹から映画「天地明察」に使用した「渾天儀」(③) や「遠眼鏡」(③) が出品されていました。
●主な展示物は以下の通り。
  渋川昔伊(ひさただ 晴海の子)作「天文成象」巻物 元禄12年(1699)刊 (②)/長久保赤水著「天文成象」折本 近世後期 (①)/渋川春海作「天文分野之図」軸物(①)/「天文列次分野之図」軸物 洪武28年(1395) *春海が参考にした (①)/馬場信武(のぶたけ)述「初学天文指南」宝永3年(1706)刊/福田理軒著「測量集成」全十冊 安政3年(1856)/玉屋吉次郎作「天文測量器略目・地方測量器略目」江戸後期
【暦類】「貞享暦書」江戸期写本 (①)/正徳6年伊勢暦(1716)/宝暦6年江戸暦(1756)/明和2年江戸暦(1765)/天保4年京暦(名古屋版1833)/天保10年三嶋暦(1839)/元治2年奈良暦(1864)/大小暦「獅子舞」寛政9年(1644)/そのほか、絵暦、引札暦など         

                                  (レポート=小川益男 暦の会理事)