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◆[第380回]暦の会12月例会      
                                   平成24年12月15日(土)2時~4時
                                   会場=五反田文化会館 出席者=23名

 今月は、恒例により、今年の締め括りとして、2013年版のカレンダーの傾 向や業界の話題等について、「暦文協」の松原事務局長に代わって、小澤 潤氏にお話しいただいた。お持ち下さった見本の各種カレンダーのうち、皇室カレンダーは出席者全員に贈呈された。また、「暦文協」及び「暦の会」の2012年
の活動内容について、小川から報告があった。そして例会の締めくくりには、今年も㈱ドーダンさん御提供の各種カレンダーの中から、会員それぞれの好みに合ったものをいろいろといただいて散会となった。

〈テーマ〉①〝2013年版カレンダーの傾向と業界の話題等について〟
         講師……大日本ピーアール㈱社長・小澤 潤氏

■書店、インターネットなどの傾向
一般の方が書店、インターネットで自分好みのカレンダーを購入されるものでは、以下のものに人気があるようです。
<アイドル・タレントカレンダー> 嵐、Kis-My-Ft2、Sexy Zone(ジャニーズ事務所のタレント)、AKB48、ももいろクローバーZ、氷川きよしなど
<漫画・アニメ> よつばと、黒子のバスケ、ONE PIECE、漫画ではありませんが初音ミクなど
<動物> 犬、猫などの定番商品
<その他> 数字だけのメモが書き込めるカレンダー、卓上カレンダーはその種類も随分と増えているようです。

今年ならではというと、暦文協でも注目していた金環日食、金星食、金星日面経過などの天体ショー、映画「天地明察」などの話題があった年で、旧暦や月齢を掲載したカレンダーもこれまでに加え注目されたように思います。また、「家族カレンダー」があげられます。
「家族カレンダー」:日付が縦に並び、予定記入欄が横に並んで、家族一人に予定記入欄を一列ずつ割り当てて予定を書き込めるというものです。東日本大震災以降、家族の絆が見直され、家族の都合が一目で分かりやすく、災害時にも安否確認しやすいと評判です。子育て中の女性に人気があるようです。
■名入れカレンダー業界の傾向と話題
全国カレンダー出版共同組合連合会(全カ連)ではその年の優秀作品を選んでおり、以下にご説明します。
<特別賞> 「我が家の安全と防災」:万が一の災害時の対処法や、その時に備えて日頃から意識して準備しておくべきことを、イラストと分かりやすい解説でアドバイスしてくれるカレンダーです。震災以降、災害に対する意識が高まっており、需要にもあっていると評価されました。「災害時の集合場所を決める」「火事になったらまず、する事」「自分で守る地震対策」「停電に備えて」など各月毎に掲載されています。
<デザイン賞> 「卓上カレンダーキャンソンシリーズ」:フランスの製紙メーカー「キャンソン社」の紙を使用した卓上カレンダーで、キャンソン社は1557年創業、ピカソ、ミロ、シャガールも愛用したとされています。独特な肌触りと質感が特徴で、カラフルな色とヨーロッパ風のカリグラフィー書体のデザインが評価されました。
<トレンド賞> 「武井咲写真集」:TV、映画でここ1、2年人気が急上昇した女優、武井咲のカレンダーで、1年前から制作しているとして将来の流行をうまく捕らえたことが評価につながっています。2014年版については分かりませんがギャラの方も2013年版よりも急上昇しているかもしれません・・・。
<アイデア賞> 「めっせー字」:杉浦誠司さんという作家さんの作品集です。「ひらがな」による希望のメッセージと漢字が融合された作品が掲載されています。例えば表紙に「夢」と書かれていますが、これがひらがなの「ありがとう」が合わさって作られていることが分かります。他にも「明るい」という漢字がひらがなの「みらい」、「福」という漢字がひらがなの「えがお」という字で作られています。このメッセージによって皆が元気になり幸せになって欲しいという願いが込められているそうで、ひらがなと漢字の絶妙なコラボレーション、震災、不況など暗い世相の中で明るい前向きなそのメッセージが評価されました。
<実用賞> 「みんなのスケジュール」:家族カレンダーの一つでもあり、家族の予定や、職場のシフト表などにも使えるカレンダーです。さらに加えて、スマートフォンで「ショットノート」というアプリをインストールすれば、手書きのメモなどもデータに取り込める機能が付いています。カレンダーの日付部分の四隅に印が付いていて、そこに合わせてスマホのカメラで撮影して、データを取り込むようになっています。家族カレンダーとしてだけでなく、アナログとデジタルの融合という意味でも評価されました。
<企画賞> 「天気のことば」:七十二項に加え、季節に合わせた天気にちなんだ言葉、を毎日紹介しています。豊かな四季と、日本人ならではの鋭い感性に裏打ちされた言葉に触れるにつれて、日本の美しさを再確認していただけるというカレンダーです。また、「かさね」と呼ばれる装束の表地と裏地で季節を表す平安朝の配色を取り入れて、見た目にもきれいなカレンダーとなっており、その点も評価につながっています。
<技術賞> 「ハンディーダイアリー」:ダイアリーなのですが、右側部分が斜めにカットされており、めくりやすくなっています。前からめくる時は下側に右手を添えて、後ろからめくる時は上側に左手を添えて使うとめくりやすさが実感できます。紙を断裁する時に折り曲げて固定し、まっすぐ切ったあと元に戻すと、斜めにカットできるそうです。従来にない技術ということで評価されました。
<最優秀賞>「フィルム山浦芳明作品集」:震災、その後の復興と注目される東北に限定し、彩り豊かな東北の四季を高品質のフィルムで美しく表現したカレンダーです。写真家の山浦芳明さんは福島県会津高田町出身・在住で、会津の山々を登山する内に自然の荘厳さ、美しさに魅了され、花鳥風月の日本的詩情を表現したいと自然写真家になったそうです。

商品の売れ筋では、企業向け名入れカレンダーは毎年同じ商品が好まれる傾向が強いこと、昨今の不況もあり、単価が比較的安い、ということもあり、数字だけが表記されメモスペースも十分に取れる「文字月表」(カレンダー業界でそう呼びます)というカレンダーが根強い人気があります。中でも縦に3ヶ月が並んだカレンダーも人気で、上から1月、2月、3月と順番に並んだタイプのものや、下から1月、2月、3月と並びその月が終わるとミシン目でその月だけを切り取り、先の月に書いたメモも活かせる特長を持ったタイプがあります。トーダンさんではこの両方をうまく取り入れたカレンダーも制作されています。
業界の話題といえば価格改定の話があります。2011年10月に各製紙メーカーが用紙の値上げを行ったこと、また不況の影響なども受け、商品一点毎の販売数量も減少し小ロット化が進んでいること等により製造コストが上がっております。これにより価格改定、卸売り価格の値上げがあり、カレンダーの販売へ大きく影響した一年でした。
市況は9月上旬までは低調でしたが、10月には一気に注文が押し寄せるといった動きがあり、納期集中により各カレンダー会社では11月中の製造工程は相当混雑しました。全体としてはここ数年、数量が減少している中で、その減り方は緩やかになったというのが今年の状況だといえます。                                                (以上、レポート執筆=小澤 潤氏)

〈テーマ〉②〝「日本カレンダー暦文化振興協会」2012年活動報告、
                        および「暦の会」2012年活動報告〟
        講師……暦文協監事、暦の会理事・小川 益男


◆暦文協 2012年 活動報告(設立年も含む)
2011.02.06(日) 暦文協設立総会 講演会&シンポジウム 於・東京大学弥生講堂
    04.15(金) 会報「暦文協NEWS」第1号 発行
    09.17(土) 第1回定時総会・理事会 シンポジウム&講演会 於・台東複合施設ホール
    09.17(土) 2012年暦文協オリジナルカレンダー(図柄=江戸の大小暦)発表、配布
    10.31(月) 会報「暦文協NEWS」第2号 発行
    12.03(土) カレンダーの日イベント:平成24年のこよみ予報発表&解説
            [東京会場]=丸の内オアゾ丸善
            2012年のこよみ予報パネル展示、そして12月3日の「カレンダーの日」をアピール
            するために作製されたマスク1000枚を配布。
            [大阪会場]=ジュンク堂=中牧博允理事長が「暦文協」、ならびに「カレンダーの
            日」の紹介、そして2012年のこよみ予報の発表と解説。
            ―――――――――――――――――――――――
2012.04.15(日) 会報「暦文協NEWS」第3号 発行
    09.01(土) 第2回定時総会・理事会 シンポジウム&講演会 於・東京大学弥生講堂
            中牧理事長、古在由秀最高学術顧問、そして経済産業省クールジャパン海外戦
            略室岸本道弘室長の挨拶の後、【江戸から今に伝える暦と暮らし】のテーマそっ
            て、仙台からお越しいただいた郷土史・陰陽道史研究家の黒須潔氏には「渋川春
            海と仙台」と題した講演を、また暦の会会員でもある和文化研究家の高月美樹(た
            かつきみき)さんと俳人であり朝日俳壇選者の長谷川櫂氏には「暦と日本人の季
            節感」についてのインタビューというか、対談を、そして最後に暦文協最高学術顧
            問の暦の会岡田芳朗会長に「江戸の暮らしと天文」と題してお話しいただいた。
            ◎2013年暦文協オリジナルカレンダー(図柄=貧しいリチャードの暦)の発表、配布
            ベンジャミン・フランクリンは280年前の1733年に「貧しいリチャードの暦」を発行、
            以後約25年間にわたって発行し続けたという。その後も「貧しいリチャードの暦」の
            格言だけを集めた挿画入りの本が数多くつくられ、本カレンダーの挿画もそのうち
            の一つで、含蓄ある格言と版画は興味深いものばかりである。
            ◎会場ロビーでカレンダー展 外務省中南米局より寄贈された中南米やパキスタ
            ンのカレンダーの展示、および岡田会長ご所蔵の、明治期のチラシ広告に暦が
            付いた「引札暦」のパネル展示を行なった。
    12.03(月) 「カレンダーの日」特別イベント・奉暦祭を鳥越神社で開催
            天明2年(1782)、江戸幕府によってつくられた浅草天文台にゆかりのある鳥越神
            社において、陰陽頭(おんようのかみ 高田廣一副理事長)、天文博士(片山真人理
            事・国立天文台暦計算室長)、暦博士(岡田芳朗最高学術顧問)、そして采女(うね
            め庄司希江さん)と、それぞれ平安の衣服をまとい、古式豊かに「2013年暦原本」
            を奉納、そして関係者による玉串奉天が行なわれた。いっぽう、境内では映画「天
            地明察」に使用の渾天儀が展示され、片山理事が天文博士の衣装のままで解説。
            その後、大広間では片山理事が「江戸時代の天文観測」について、岡田最高学術
            顧問が「明治の改暦」と題しての講演、そして中牧理事長からは2013年の「暦予報」
            の解説が行なわれた。また、別室では「特別展・江戸コーナー」として、北斎の「鳥
            越の不二」(複写)、渾天儀や投影機(いずれも復元模型)のほか、授時暦、貞享暦、
            宣命暦(いずれも複製)、引札暦などの日本の暦が展示された。

◆「暦の会」2012年 活動報告
2012.01.07(土) 第371回 新年会 於・目黒雅叙園・旬遊紀 会費5千円 出席者16名
             岡田会長より年頭の挨拶ならびに「サモアが日付変更線の移動によって西側の時
             間帯に変わり、日付が〈最も遅く変わる国〉から〈最も早く変わる国〉となったことに
             ついて」のお話。また岡田会長が用意下さった自著の既刊本を、テーブルごとにじ
             ゃんけんで獲得者を決めるという、賑やかなイベントも行われた。
    02.18(土) 第372回「暦と初歩の天文学のお話」………講師・石原 幸男 会員
            [1]二十四節気について、そして[2]冲方丁著『天地明察』の科学的誤りについて本
             年1月に新著『暦はエレガントな科学――二十四節気と日本人』(PHP刊) を出版さ
             れた石原幸男会員が講演。
             *古川麒一郎先生より、恒例となった国立天文台作成の「平成25年(2013)暦要項」
             のコピーが配布された。
             *例会後に一息入れた、駅前のおなじみのビクトリア2階の喫茶店が1月末で閉店
             !
    03.17(土) 第373回「回帰年と春分年」………講師・須賀 隆 会員
            このテーマは、第367回(9/24)例会資料の別表〈二十四節気〉をみて、これを使って
             「回帰年と春分年」の話題をわかりやすく説明できるのではと思ったことがきっかけ
             です、とのことでした。
             *大津の近江神宮で開かれた第61回日本暦学会総会[3月22日(木) ]の報告。会場
             では岡田会長による新聞報道をもとに福岡市の元岡古墳群で発見された『「庚寅年
             正月庚寅日』銘鉄剣について」と題しての講演などが行なわれた。
    04.28(土) 第374回「沖縄の暦――近年の研究動向」………講師・岡田芳朗会長
    05.20(日) 第375回 月光天文台見学と三嶋暦師の館開館7周年記念イベントに参加
             出席者12名
             翌日に金環日食の観測を控えてその準備で多忙の中を、例年通りに天体望遠鏡
             が設置された観測室、および「世界のカレンダー展」会場などで丁寧な解説をして
             いただいた。三嶋暦師の館では開館7周年を記念して岡田会長の講演「江戸時代
             の暦と時刻」を拝聴。3年ぶりに元気な顔を見せて下さった田村さん、そして最年少
             記録?となる藤田さんのご子息啓一君(小学五年生)が参加してくれたのは、嬉しい
             限りでした。
    06.23(土) 第376回「『明治16年癸未年吉凶方位表』について―伊那谷の暮らしの中で」
                          ………講師・山東 崇宏会員
            横浜市の古文書を読む会で解読作業中の資料のうちの、長野県下伊那郡阿南町
            の塩澤家文書の一つである『明治16年癸未年吉凶方位表』が、実は明治政府が禁
            じた旧暦の要素を付録の方位表の名のもとにまとめた未公認の暦、いわゆる「おば
            け暦」であったという興味深い話が披露された。
    09.15(土) 第377回 時計資料館・セイコーミュージアム(墨田区東向島)見学会
    10.27(土) 第378回〝「天地明察」について自由に語り合おう〟
           ………進行と解説・岡田芳朗会長
            *午前中は、たばこと塩の博物館の「江戸の判じ絵展」で新発見の「田山暦」を観覧
    11.17(土) 第379回〝新出の「天明3年田山暦」(たばこと塩の博物館蔵)について〟
           ………講師・岡田芳朗会長
    12.15(土) 第380回 ①「2013年版カレンダーの傾向と業界の話題等について」
           ………講師・小澤 潤氏(暦文協所属、大日本ピーアール㈱社長)
                ②「日本カレンダー暦文化振興会(暦文協)2012年活動報告、及び暦の会
                 2012年活動報告」     ………講師・小川 益男
         *㈱ドーダンさんのご協力による、来年の各種カレンダーの抽選頒布会

◎来年、平成25年12月で暦の会例会は390回、再来年12月には400回を迎えます!
みなさん、頑張りましょう!

                                  (レポート=小川益男 暦の会理事)