戻る


◆[第387回]暦の会例会レポート      


                                    平成25年9月21日(土)2時~4時
                                    会場=五反田文化会館 出席者=16名

異常なほど高温だった夏が、ようやく朝夕ともに秋めいてきたお彼岸の一日、今月は、ベーリ・ドゥエル先生と古川麒一郎先生のお二人に、それぞれ興味深いお話をしていただきました。

〈テーマ〉①〝「朏暦」(みかづきごよみ)と新月初見〟……講師:べーリ・ドゥエル 先生
 「月の初見 14 古くからあった初月望見への興味」の文中に、〈仙台藩の高橋淵黙という人が作った安政七年(万延元年、1860) の朏暦(はいれき)というものが『宮城県史』十二に写真版で紹介されている。毎月三日の六ツ時、すなわち日が暮れ切った時の、月の形とその弦の傾斜方向とを図示した珍しいもので、…〉とあるその図、すなわち「安政七庚申歳朏暦 暮六ッ時見之圖」のコピーが資料として用意された。加えて関連する図版をパワーポイントで映写しながら、〈この暦は月頭暦とは違い、毎月三日の干支と暮六ツ時の三日月の様子が描かれている。この暦からも日没後西の空に見える三日月が、春分近い時は寝て高度が高く、秋分に近い時には立っていて低いのがわかる。三日月は新月の後に見られる初めての月なので、古い中国の暦法では二日遡って朔日〔ついたち〕〔「つきたち」の変化〕の月の位置を推定したとされている〉といったことを中心にお話いただいた。
  最後に、このように三日月の傾きは季節によって変わるのに、今もって名前が無いのは不思議なことである。そこで、季節ごとの三日月のネーミングコンテストを暦の会例会400回記念イベントとして実施してみてはいかがなものか、との提案がありました。

〈テーマ〉② 論文〝太陽系小天体名の発音調査〟について………講師:古川麒一郎 先生
 「Spacequard Research Vol.5,26-31 (2013)」という専門雑誌に掲載された佐藤勲氏の「太陽系小天体名の発音調査」という論文資料コピーが配布されました。例えば、〈Hally=「ハリー」は、日本だけでなく、中国でも「ハレー」と間違って表記されている最も代表的な彗星である。100年前の「天文月報」には「ハリー彗星」と記されていたのに、いつからか「ハレー彗星」と書かれることが多くなった。/これについては、何人ものイギリス人に聞いたが、英語版のウィキペディアによれば、一般に“Halley”には「ハリー」、「ヘイリー」、「ホーリー」の3通りの発音があって、「ハリー」が最も一般的である。(中略) これらのことから考えて、「ハリー」が正当な呼び方であると考えられる〉というように、小惑星や衛星名などの天体名の日本語発音表記について論じたもので、それらに対して、古川先生独特のユーモアを交えながらの考察や批評を加えていただいた。

■その他
◎石原幸男会員が「歴史研究」の〈特集=お伊勢参りの謎〉に執筆された「伊勢神宮式年遷宮と章法」のコピーが配布されました。
◎暦文協事務局の松原順事務局長より、12月3日のカレンダーの日イベントについて紹介があった。本年は、明治神宮にて「新暦奉告参拝」を執り行い、今年が「明治改暦140年」にあたることから、岡田芳朗先生による講演と、関連のパネル展示を予定しているとのことでした。
◎閉会後、恒例の有志による喫茶店での懇話会では、来年12月の暦の会例会400回記念イベント案について、400回分のレジメのまとめや、シンポジウムテーマ等、議論がなされました。
                                        (レポート=小川益男 暦の会理事)