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暦の会[第360回]例会報告

平成22年12月20日(土)午後2時〜
五反田文化会館・出席者20名

[テーマと講師]

★@ T.社団法人「日本カレンダー暦文化振興協会」設立構想について
    U.全国カレンダー出版協同組合連合会主催 「新協会に関する講演会」 の報告
                                         ・・・以上、小川 益男先生
★ AT.2010年版カレンダーの傾向、および2011年版カレンダー優秀作品の紹介
    U.2011年版新作カレンダー展示会での来場者アンケート集計結果報告 
                                         ・・・ 以上、松原  順先生
                                                      
★@のT.一般社団法人「日本カレンダー暦文化振興協会」(略称:暦文協) 設立について
概要報告

[設立趣意]世界各地には、民族・文化により様々な暦の文化があります。とりわけ四季のある日本では季節とともに生き、年間習俗として、長く暦の文化が続いてきました。先人の知恵によって積み重ねられてきた日本の「暦」に関しては、今日もそれに関わる産業界と、多様な学術研究・文化分野が存在しています。しかし、これら各分野が交流する組織は国内にはまだありません。
私どもはカレンダー・暦をこの日本文化の核として捉え、その要となる「暦・カレンダー」の普及、啓蒙活動の推進を目的に、その価値を広く国民の方々に知っていただくための公平な文化交流団体として、有識者と専門業者や関連団体から成る一般社団法人「日本カレンダー暦文化振興協会(略称:暦文協)」の設立を提唱いたします。
[活動要綱]
▼現段階で考えられる会としての活動要綱は以下の通り。
 カレンダー・暦の歴史や文化の保護・継承と、社会発信、社会連携/カレンダー・暦の価値 の認識の向上/各カレンダー業者に、個別に内蔵されている史料や資料の収集とデータベ ース化/世界各地の多様な暦、カレンダーの収集/暦に関わる日本文化の保存・研究の  支援/暦学としての業界の周知啓蒙、社会的地位の向上、活性化/公益活動による、市  民への暦文化への認識の喚起や産業効果への貢献/世界的、対外的な出版、テレビ番組 制作によるマスコミへの対策/暦文化・カレンダー諸問題への具体的な対応策の協議と対 策の実施/文化・学術講演やシンポジウム開催事業/カレンダー・暦文化に関する一般向 け書物刊行/世界及び日本の暦・カレンダー史料や資料の発掘・収集とデータベース化/ カレンダーを通しての社会貢献/西暦2033年問題の学術情報収集と対応/暦原稿の評価 ・審査・認定/研究者・業界・行政(政府)の情報交換のための研究会開催
[関連団体]
 日本暦学会(会長 古川麒一郎)/暦の会(会長 岡田芳朗)/日本印刷産業連合会/全国カ レンダー出版協同組合連合会(会長 強口邦雄)/全国団扇扇子カレンダー協議会(会長 平 井孝治)
[設立発起人]
 〈最高学術顧問〉 元国立天文台長・文化功労者           古在 由秀
 〈最高学術顧問〉 文化女子大学名誉教授・暦の会会長      岡田 芳朗
 〈理事長〉      国立民族学博物館教授              中牧 弘允
 〈副理事長〉    元国立天文台・日本暦学会会長         古川麒一郎
 〈副理事長〉    全国団扇扇子カレンダー協議会会長      平井 孝治
 〈理事〉        国立天文台暦計算室長・研究技師        片山 真人
 〈理事〉       全国カレンダー出版協同組合連合会会長    強口 邦雄
 〈常務理事〉     関西学院大学社会学部教授・総合図書館長  奥野 卓司
 〈評議員〉      暦の会理事・元大修館書店取締役        小川 益男
 〈設立準備事務局〉全国団扇扇子カレンダー協議会 事務局長   松原  順 

★@のU.全国カレンダー出版協同組合連合会主催 「新協会に関する講演会」 概要報告
 12月17日(金)午後1時から上野・不忍池に面したホテルパークサイドにおいて、全国カ  レンダー出版協同組合連合会主催の「カレンダー暦文化振興協会に関する講演会」が催され、理事長予定の中牧弘允氏(国立民族博物館教授)がパワーポイントでの映像を用いながら、「カレンダー、暦文化の意義について」というテーマでお話をされた。
参会者は主に主催団体、ならびに協力団体である全国団扇扇子カレンダー協議会と東京団扇扇子カレンダー製造卸協同組合の関係者で、会場は満席であった。その講演概要は以下の通りである。
[講演要旨]「カレンダー、暦文化の意義について」中牧弘允 国立民族博物館教授
▼カレンダーとは……日にちや曜日を知るためだけではなく、吉凶や祝祭日を知ったり、 写真や絵画を楽しんだり、あるいは日々の教訓を学んだり、外国のものであればその国の文化を学んだり、古いものであればその時代のことを知ることなども出来る。
*カレンダー文化の研究――教授はこれを「考暦学」と命名し、蒐集と聞きとり調査を実施している。2000年段階で、約70カ国、約1,200点であったが、その後の10年間で同量のカレンダーが集まっているという。その「考暦学」の立場から「カレンダー」について考えてみると以下のことがいえよう。
*「カレンダー」は生活必需品である/使い捨てられる運命にある/交換価値はないが再利用の価値はある(裏面の白多様紙の利用、あるいは包装紙代わり等)/国によって時間の区切り方や時間の始まり方は多様であり、多彩な文化も表現されている、ことなどがわかる。
*最近、スーパーのカレンダー売り場をのぞいてみると、現在は日付のみのカレンダーが幅を利かせているほか、ペットカレンダー、運勢暦カレンダー、タレントのカレンダー、曜日の入っていない万年カレンダーなどが目に付く。
▼「カレンダーから世界を見る」――青少年読書感想文全国コンクールで高等学校の部最優秀作品・内閣総理大臣賞の受賞作品の紹介があった。対象図書は中牧教授の著書『カレンダーから世界を見る』(白水社刊)である。〈私の部屋には、紙のカレンダーがない。(略) 電池さえ交換してやればいつまでも時を刻み続けるデジタルカレンダーと、網目状のカバーをずらすだけで永遠に「新しい月」を迎えることが出来るアルミ製の万年カレンダーが、机上に置いてあるだけ〉で、〈不便だったことは一度もなかった〉筆者が、この本を読んで、カレンダーから、〈暦の違いは文明の違い。他の暦に接することは、他の文明を知ることに繋がるということを〉教わったと語っている。 
▼各国のカレンダーの紹介――中牧教授個人および民族博物館での収集品から、前述の多彩で多様な文化がよく表現されているカレンダーの実例を、映像を駆使しながら解説をされた。インドネシアやアンデスの暦、あるいはアステカの暦石、在日ブラジル人向けのもの、外務省外国に頒布する生花の写真のカレンダー、ボスニアヘルツェゴビナやセルビア正教、ユダヤ教暦、ヒジュラ暦、中国の1956年の農暦、文化大革命頃の1968年の農暦、毛語録の日めくり、批林・批孔を乗り越えての2010年の暦、北朝鮮、イランの暦などなど。
▼今後の見通しについて――起業カレンダー体質からの脱却/もらうものから買うものへ/女性が好み、買うカレンダーを/デザイン・アイデア・人気ランキングなどのカレンダーコンテスト/カレンダーの楽しみ方などの作文コンテスト/12月3日の「カレンダーの日」の活用、などいろいろ考えられると締めくくられた。

★AのT.2010年版カレンダーの傾向 概要報告
2010年版カレンダーの実績概数と傾向は以下の通りである。
*当組合加入36社による製造冊数は、約1億500万冊であった。
*傾向としては、卓上カレンダーや数字がメインの月めくりカレンダーが、依然として長らく人気を維持しているほか、日めくりカレンダーについては、高齢者介護施設などで日付の認識に役立つなどの評価をいただいているなど、新たな需要も芽生えつつあるようだ。
また、官公庁、学校の年度に合わせた「4月始まり(〜翌年3月まで)カレンダー」も、種類は少ないものの、増えてきており、新たな切り口の商品として期待されている。
*このあとに、2011年版カレンダーの優秀作品、受賞作品が松原氏より紹介された。

★AのU.新作展示会での来場者アンケート集計結果について 概要報告
*アンケート回答者の男女比の構成割合……2010年3月18日〜19日の二日間での回答者数は352名で、男性70%、女性28%、不明2%であった。
*回答者の年代別構成割合……10代=1.7% 20代=13.3% 30代=26.2% 40代=18.7% 50代=24.1% 60代=10.2% 70〜80代=3.4% 20代〜40代が58%と、50代以上の38%を大きく上回り、比較的若い世代人が関心を寄せているといえる。
*「昨年末もらったカレンダー数」……5冊が18.6%(18%)で、最も多く、次いで10〜19冊が17.3%(16.7)、3冊13.2%(14.6)、2冊9.8%(10.2%)の順であった。ちなみに0冊は5.1%(6.8)と若干減り、20〜100冊は6.5%(6.5)で昨年と同じであった。カッコ内は昨年。
*「実際に使用したカレンダー数」……2冊が20.1%で最も多く、次いで3冊が18%、1冊が16%、5冊が14.6%であった。また、0冊は6.5%、10〜15冊が5.8%であった。
*「使用したカレンダーの選択基準」……「書き込み欄が大きい」が41.8%、「卓上用」が
38.4%、「風景」が35.7%、「数字のみ」が20.4%、「情報や機能の豊富さ」が10.9%、その他(その内の大多数は「デザイン重視」)は13.9%、という結果であった。(複数回答)
*「自分で買い求めるカレンダー数」……1冊が28.8%、2冊が14..4%、3冊が3%、4冊が0.4%、5冊が3.8%、10冊以上が0.8%であり、0冊、すなわち買わないという人は半数近い48.7%であった。
*「自分で買い求めるカレンダーの価格」……501〜1,000円が37.1%、1,001〜1,500円が31.5%、1,501〜2,000円が9.1%、2,001円以上が6.3%、逆に301〜500円が4..2%で、300円未満が11.9%であった。

                  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
▼今年も、潟hーダン強口邦雄社長のご好意で、平成23年のカレンダーを会場宛にお届け下さいました。例会終了後、会員は机上に並べられたカレンダ ーを味わいながら、また、どれにしようかと迷いながら、それぞれがお好みのカレンダーをお土産にして帰途につきました。
▼例会後、五反田駅前ビクトリアビル2階にて、有志11人で忘年会を開催。大栗大僧正のカンパイのあと、2010年をふり返りながらの和やかな懇談会となった。 

                                 ◆レポート=小川益男(暦の会理事)