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●暦の会[第361回]例会報告
平成23年1月9日(土)午後2時〜
五反田文化会館・出席者11名

[テーマと講師]
「2011年の年頭に当たって」……………………………………… 岡田芳朗会長

★山形テレビ  昨年8月1日放送〈「さんりんぼう」のヒミツ!?― 奇習 年間三隣亡を解き明かす〉…………岡田会長が出演なさった放送番組の紹介
 「さんりんぼう」とは、公刊の暦にはそれも含めて迷信の類はいっさい記載されていないが、大雑書や民間に流布したおばけ暦などには記された暦註の一つである。一般にはこの日に建築のための柱立てや棟上げなどは凶日とされ、無視して行なうと火災などの災禍が起きてそれが近隣にまで及ぶ、といわれている。旧暦では、以下の日に当たる。
     1月 4月 7月 10月の 亥の日
     2月 5月 8月 11月の 寅の日
     3月 6月 9月 12月の 午の日 
ところが、山形県の庄内地方には、「年間さんりんぼう」という風習がある。亥・寅・午に該当する年、それも年間を通して建築を忌み、もし家を建てると近隣にまで及ぶ災禍が起こるとされている。実際、2002年(午)、2007年(亥)、2010年(寅)のさんりんぼうの年は、建築数が減少。また、どうしてもその年に建てたい場合は、前年のうちに仮柱を一本立てておくと、既に工事が始まっていることになり、年間さんりんぼうの災禍を免れることができるという。
これは昔からの風習ということであるが、実際にはこのさんりんぼう災禍は生じてはいないし、迷信であるのだが、どういうわけか、この十年くらいで特に広まってきたともいわれる。
  暦の発行元・神宮館の木村秀明氏は、「さんりんぼう」は本来、建築には凶日として記載してきているが、「年間さんりんぼう」は初めて聞く言葉だという。
岡田芳朗会長も、かつては数多くあった建築上の凶日を集約して「さんりんぼう」としたのだが、「年間さんりんぼう」は初耳である。旧暦では、「この年は△△の方角に○○してはいけない」という、方角を忌む習慣はあったが、一年間○○してはいけないというのは暦ではありえないことだとおっしゃる。
山形のあるお寺の住職は、これは陰陽道に関係がある、本来は「三輪宝」は、人間生活に重要な太陽と月と星のことで、光と火、つまり火は火災に関係することから、火を重んじる、尊ぶということが、一生に一度の大事な仕事である「家を建てる」ということと結びついて、逆に火を恐れることになり、マイナス思考の「三隣亡」となったのではと説明する。 
  土地の民俗研究家は、「さんりんぼう」は元来、月々に決まった日であったが、亥、寅、午の年は年間を通じて家は建ててはいけないという拡大解釈がされるようになり、マイナス思考でやめておこうとなったのではないか。これは隣近所を大事にするという、庄内地方の人々の気持ちの表れではなかったかと結ぶ。
 *山形放送局から岡田会長に送られてきたという番組収録のDVDが紹介され、希望者に貸与くださることとなった。
★そのほか、以下のような暦にまつわる新聞記事を中心にお話しされた。
▼西友の1頁全面広告「KY(カカクヤスク)365」――365日すべての日の下に「大安」と表記された今年一年分のカレンダーである。ぎょっとするが、紙面下部に「大安と書いて、Oh!ヤスと読みます。」とあり、苦笑してしまう。一年中安いというアッピールなのであろう。 (本年1月6日の新聞各紙)より)
▼昔から初夢に見ると縁起がよいといわれる「一富士、二鷹、三茄子」――この三つは実は江戸駒込の名物だという。理由は一つに駒込富士神社の富士塚、そして都立駒込病院がもとは鷹匠屋敷であり、駒込自体が将軍の鷹場であったこと、さらに駒込はナスの産地であったことなどを挙げている。
(讀賣新聞 本年1月7日夕刊 わぐりたかし「語源ハンター」より)
▼〈ひのえうま「迷信の追放」に挑んだ村〉――1966年は「ひのえうま」。「この年生まれの女性は気が強く夫を食い殺す」との迷信に前橋市粕川町では正面から立ち向かった。前回(明治6年)の丙午とその前後に出生した女性1,400人を調査した結果、風説は根拠がないことをPRするなど、「迷信追放の村」として大きな反響を呼んだ。しかし、この年の出生数は4割も減少し、翌67年は逆に7割も増加するなど、落ち込みも反動も大きかった、と伝える。
(朝日新聞 2010年12月18日 夕刊〈昭和史探訪〉より)
▼敬老の日はここで生まれた」――「ここ」とは兵庫県多可町のこと。つまり、1947年9月15日、旧野間谷村では55歳以上の村民を集めて敬老会を開き、農村歌舞伎が披露された。その頃の平均寿命男50歳、女54歳で、「55歳以上」はまさに立派な「年寄り」。翌年、政府が国民の祝日を定めたが、老人の日はなくて村長はがっかり。しかしながら、村の敬老会を継続しつつ県や国への働きを続けた結果、その思いが実り、18年後の1966年に9月15日が「敬老の日」として祝日に加わることになった。めでたし、めでたし。
                                (朝日新聞 2010年9月20日より)

★岡田会長が暦についてラジオ・テレビでお話しなさった番組
  @2010年8月1日(日)山形放送テレビ
   「さんりんぼうのヒ・ミ・ツ?! − 奇習 年間三隣亡を解き明かす」
A2010年12月12日 (日) 昼12時15分〜2時  NHK-FM
「トーキングウイズ松尾堂」〈季節の変わり目を暦に学ぶ〉
  B2010年12月21日(火)朝9時〜9時30分 TBSラジオ
   「みみがく」テーマ〈暦〉
*@は岡田会長がご持参のDVDのほかに、ABについては大森みな子会員が録音したカセットテープがありますので、視聴ご希望の方は例会時にお申し出下さい。
                               ◆レポート=暦の会理事:小川益男