Flower Kings

FlowerPower(1998)



フラワー・キングスは素晴らしい。そうとしか表現できない。。。

フラキンの中心人物は、ギターのロイネ・ストルト。彼のギターはかなり派手だ。明るめのメロディラインをゆったりと弾くからだろう。傾向としては、ジョン・ペトルーシがSix Degrees Of Inner Turbulanceの2枚目で見せた、メローでゆったりとしたギターが近い。けれどあれほど力強くない。もうちょっとだけ控えめで、もっと洒落たひねりがあって、癒しのような爽やかさと広がりがあって温かい。それでいて、場面に応じて主張もちゃんとしている。
そればかりじゃない。デビッド・ギルモアのような緊張感のあるやや攻撃的なフレーズだって弾く。それが明るめのフレーズとの対比でそれぞれが際立ち、心地良さを増幅させている。

アコギになると、とにかく自然の持つぬくもりというか、ざっくりとした手作り感覚というか、混じりけのないピュアな温かみでサウンドを周りから守ってくれる。包み込んでくれる。たとえはヘンなのだが、エレキギターが繊細なデコレーションを施した都市的なフランスケーキだとしたら、アコギは、焼きっぱなしだけど、実質本位でしかもどことなく懐かしさを感じさせる温かい田舎風のドイツ菓子だ。素朴さがたまらなくいい!
この美しさと若干の攻撃性と温かみのさじかげんがなんとも絶妙なのだ。それぞれの面をたっぷり聴かせてくれるから、心に膨らみが持てて満足する。何回聴いても飽きないし、次に何が飛び出すんだろうというワクワク感もある。
早弾きはしない。けれど、もしも早弾きでテクニカルで印象的なギターを弾くギタリストとロイネ・ストルトを比較して、どちらが好きかと尋ねられたら、私はロイネ・ストルトと即座に答えるだろう。
それほどまでに、ロイネのギターはエモーショナルで、琴線に触れまくる。いったい何度トリ肌が立ったことだろう。
早弾きは、すぐれた要素のひとつだが、決定的な要素にはならないということだ。

彼のギターの何がこんなに感動の世界に導くのだろうか?
私は彼のクラシックから大きな影響を受けたと思われる格調の高さだと思う。それとストレートでは押さない洒落たひねりのセンスだ。
何気なく弾いているようなのだが、そのメロディラインは巧みで、主題となるメロディが繰り返されるが、それが少しずつアレンジされていて、もっともっと聴きたくなる。
それが一番わかりやすいのが、TransatlanticのDuel With Devilsだ。終盤に何回も同じフレーズを弾くのだが、あまりの心地良さにうっとりする。そしてそのメロディを引っ張ってさらに高い段階に引き上げ、余韻たっぷりのクライマックスに持っていく!この時には既にロイネの術中にはまってしるので、これを覚えるともはや逃れることはできない!
人によってはそれを「クサい」と表現するかも知れない。装飾が付き過ぎで大仰だと言うかも知れない。でも、私は大好きなのだ!
さらに、穏やかに流れていくメロディラインと泣きっぱなしのギターフレーズ!私がリッチーのギターで特に気に入っているマイルドな指使い。。。レインボーのファーストに「Temple Of The King」という叙情的な曲があるのだが、そのギターソロのようないや、それをさらに高めたかのようなギターソロが素晴らしい。曲によっては、キャメルのアンディ・ラティマーも顔を出す。
この余韻たっぷり感動ギターに出会うと「出てくれた」と幸せな気分になれる。
結論・・・きっと幸せな気分になりたくて、ロイネのギターが聴きたくなるんだと思う。幸せな気分が生れる瞬間が感動的なのだ。

北欧には、クラシックを重んじ、メロディを重視する風潮があると思う。スウェーデン出身のこのフラキンだって例外じゃない。イングウェイ、ストラトヴァリウス、ソナタ・アークティカのメロディック・メタル/ハード勢だって、パワーで押しまくるだけじゃなく、きちんとメロディラインの美しさを守っている。
これは国土のせいなのだろうか?北欧の景色の美しさと比例している気がどうしてもしてしまう。豊富な森林の持つ木材のイメージがする。対するイギリスは、鉄鉱石が採れるので鉄鋼のイメージも併せ持つ。
それとも福祉が充実し安定した国家のおかげか?
さらに言えば、北欧系のボーカルにはデス声がいない。美声でさえある。何か関係あるのだろうか?


それでは、曲ごとに思いついた点を書き並べて行こう。
今回は、Flower Powerの1枚目の大作である、18曲もの小曲から成っている「Garden Of Dreams」に絞る。
1時間にも及ぶが、ちっとも飽きないどころかもっとやってほしいと思う。
70年代のプログレの華やかさや情緒を吸い上げながら現代に昇華した名盤である。



Garden Of Dreams
 1 Dawn 物語の幕開け。オペラを意識した格調の高さ。不自然な異様さもある。
 2 Simple Song やさしさが溢れ、本格的に物語が始まる。アコギ主体のスローな曲で、自然にフラキンの世界に入り込んで行く。ここで早くもフラキンの感動的なフレーズが飛び出している。
 3 Bussiness Vamp シンプルながらにカッコいいメロディ。それに感動的なサビがきて言うことナシ。
 4 All You Can Save これぞ、フラキン節炸裂!ふわふわと漂っている楽園にいるかのような至福の喜びを与えてくれる。
ストルトのボーカルの丁寧に歌い上げるやさしさにうっとり。そのイメージを膨らましてくれるギターにさらにうっとり。哀愁が漂いながらも絶対的に幸福を感じる。
この組曲「Garden Of Dreams」の中でも一番癒される曲であり、一番好きな曲だ。
 5 Attack Of The Monster Briefcace ジョン・ペトルーシに共通するギターフレーズ。緊迫感がある。ドリシアだとこれが持続するのだが、フラキンだとこれがメジャーコードにチェンジしてあっという間に明るくなってしまう。でも、それがイヤなんじゃなくて、実に心地いいのだ。曲の展開はこうしてほしいという私の漠然とした願いのひとつの回答とも言える。
 6 Mr.Hope Foes To Wall Street マイクが入ってきたり、キャメルが入ってきたり、いろんな要素が組み合わさる。まさに内容盛りだくさんで目まぐるしく動く。ギターが縦横無尽に走っている。
 7 Did I Tell You Garden Of Dreamの陰の部分みたいな暗めの曲。他の部分と裏と表のような好対照になっている。5〜7曲目は途切れがない。
 8 Garden Of Dreams 組曲のタイトルナンバー。ワルツのようななだらかなリズムに乗ってあくまでもシンフォニックに感動的に奏でられる。まるで束の間の夢のように、幻想的にはかなげに美しく時間が過ぎていく。。
 9 Don't Let The d'Evil In 陽気でヘヴィーなナンバー。彼らにしては珍しい。
 10 Love Is The Words これも5曲目と同じような展開で、さまざまに変化する。途中ラテンっぽいリズムやギターまで加わるのが注目!サンタナにも影響を受けたというが、これを聴くと納得する。
 11 There's No Such Night 天国のような美しさとまばゆさで、つくづく至福の時の訪れだなぁ〜。ロイネは歌まで感動的です。フラキンの魅力が集結しています。
 12 The Mean Machine これはまるでフロイド。フラキンはサウンド的にはYESかと思っていましたが、フロイドもありました。
 13 Dungeon Of The Deep この曲は、はっきり言って、怖い。不気味な静寂とそれをつんざく雷と波の音。
それに女性の幽玄な声が入る。不安定で落ち着かない。
ベースに流れている男性の声が、まるで仏教の読経だ。後に賛美歌のようなグレゴリオ聖歌のような歌まで入る。祟りが、あるいは天罰が下されるような不安でいっぱい。自分がいったいどの世界にいるかわからなくなる。
 14 Indian Summer 深刻な曲。低めにテンションを抑えたメロディが効果的。
 15 Sunny Lane この曲も、暗めでいくのかと思いきや、途中で希望たっぷりの明るさが顔を出した。
こういう曲の展開に救われる思いがする。
 16 Garden Revisited ここでのロイネのギターは凄まじい。ボーディンとのキーボードと絡んで緊張感あるプレイをしている。
 17 Shadowland 16曲目からの流れで途切れていないが、ゆったりと幸せモードに突入!
緊張感がありながら幸福に浸れる。
 18 the Final Deal これも途切れなく続く。14曲目から続いているのかも知れない。組曲のフィナーレだ。
ロイネの声を振り絞るボーカルに、魂を感じる。
人生の終わりの部分で、求めていた太陽のもと、愛ある夢の故郷に辿り着いたとする詩に、安定と安心と安らぎを覚える。
さりげなく、心地よい終わり方に満足する。


詩は、楽園のような庭園で少年時代を送っいた一人の男の人生を綴ったものである。
仕事に熱心になるあまり、心に余裕がなく、楽園のことも忘れ去ってしまうのかとの葛藤がある。
随所に散りばめられた、頭の中に登場する王国を舞台にした物語はファンタジーである。
でも、詩はとってもむずかしくて、よく理解できない。^^;