1 |
Love Supreme |
詩に“Dream it up, Dream it up”とあるそのままに、夢見心地になれる曲。
さらに詩を読むと、“unfold”と“future”が離れて配置されている。Dream
Theaterのように前作からの流れはあるのか?(前作は聴き込んでいないので、誰か助けて。。^^;)
ボーカリストのハッセは、表情が豊かでとにかくうまい。ソルタンのドラムスはマイク・ポートノイのように、プログレバンドとは思えないくらいにダイナミックでパワフルだ。
コーラスワークが分厚くて、フラキンサウンドに温かさを与えている。
20分弱の大作だが、ロイネのジャジーあり、ブルースあり、フュージョンあり、もちろんハード・ロックありのギターが飽きさせない。スライドギターを効果的に使っている。そして全体ではカラフルなプログレになっている。
こんなにいろんなことをやっていても、ひとつの形にまとめられるのは、フラキンくらいのものだろう。実に安定感がある。
エンディングの、きらびやかで余韻があり、しかもほっとした感じがいかにもフラキンである。大曲の大団円にふさわしい。 |
2 |
Cosmic Circus |
懐かしさを含んだ曲。特にサビの♪Cosmic Circus
Now〜 Ha〜〜 の余韻があるのが最高に素敵。胸を掻きむしられるようにせつなくなる。
古き良き時代の感触がある。Styxの「Pieces
Of Eight」にあるトミー・ショウ作“Sing
For
The Day”のような。。Cosmic Circusはそれをよりプログレ風に進化させている。ヴァイオリンがさりげなく使われている部分がいい。 |
3 |
Babylon |
短いインストナンバー。
けれどここでのロイネは、自由奔放、リラックスしてギターを奏でている。
トマスのキャメル風のキーボード&泣きのギターで、至上の美しさ!!コンパクトにまとめられている。 |
4 |
A Vampires View |
暗い沈みこむようなインストから始まって、甘く危険なダニエルの囁き。感情たっぷりに表現している。
鐘の音やオーケストレーションによって、中世時代に迷い込んだような錯覚を与える。
格調高いピアノと、突然掻き鳴らすギターは、聴く者をどこへ連れて行ってくれるのか予測をつけさせないだろう。
効果音を入れて臨場感を出す箇所で、FlowerPowerを思い出した。 |
5 |
Days Gone By |
A Vampires Viewから続くピアノだけによる作品。
エピローグのように、儚げに優しく、疲れを癒すように静かに奏でているが、不安感、絶望感は拭いきれないといった印象を持つ。幽艶である。 |
6 |
Adam&Eve |
反論されるのを承知で書くと、最初の部分はコード進行にクリムゾンの“レッド”を感じた。単に不協和音が似てるってことだが。。あとインプロを取り入れたところも似ている。
曲はヘヴィーである。ロイネはここで低音を生かしたリフを弾く。
うねりのあるリズムは、原始太古のようなパワーを生み出す。
曲調はさまざま、静と動が当たり前のように使われている。構築してきた様式美を壊すかのように、ここでは暴力的、攻撃的、前衛的、自虐的である。
美しいフレーズも弾くが、長くは続かない。何よりも、最初に書いたようにインプロの自由気ままさがあり、いい意味でごった煮的である。 |
7 |
Starlight Man |
Adam&Eveの中では比較的仕掛けの少ない作りとなっている。
その前の曲がやたらと凝縮されていたので、こういうPOPセンスのある力を抜いたシンプルな曲もいいね。
ウェストコーストの風に吹かれているような気分だ。 |
8 |
Timelines |
ギターとキーボードの華やかな洪水から一転、ロイネのアコギによる、これまたシンプルな曲。
哀愁さえ漂うメロディには、ロイネの声がよく似合う。
1:55からのサビは、1曲目のLove Supremeの13分後半くらいのサビとよく似ている。ちょっとゴスペルがかっていて、ピンク・フロイドの『狂気』のようだ。もしかしたら、この2曲は裏表一体となっているのかも知れない。
詩も、Love Supremeは、これから起こり得る未来への期待や希望があるが、Timelinesには人生へは過剰期待しないとか、あきらめ感があって、反対の内容が記されている。
曲は、私がフラキンの好きなところ。。。静と動の対比、メロディ展開の多さ、エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターの両方を使って、これでもかとギターの音色の美しさを味わい尽くさせてくれるところ、変リズムの多用、叙情性などを、この曲1曲で表現してしまった感がある。
地味かもしれないが、大好きな曲になった。 |
9 |
Drivers Seat |
イントロの広がり感が、彼らの“やる気”と“本気”を感じさせる。
曲はコンパクトでなく、同じメロディの反復がある。かといってダラダラしているのでなく、聴き易さを求めているものと思われる。ロイネのギターならずっとやってほしい。
途中で切れるので、前半部分と後半部分があるようだ。
前半は歌メロ主体。POPな部分とシンプルなRock部分も顔を出し、幸せな気分になれる。
後半初めの方では、まるでLED ZEPPELINのようなメロディのあるリフが聴ける。ホントにロイネは何でもやってしまう。
アルバム全体を通して、中身凝縮な曲があれば、それほどでもない曲もある。Drivers
Seatは後者のタイプだ。その分ゆったりと腰を据えて聴くことができる。
な、なんと17分35秒あたりで、ルネッサンスさえ感じてしまった。わずか10秒くらいだが、コーラスとヨナス・ラインゴールドのベースが“オーシャン・ジプシー”を思わせる。フラキンを聴いてルネを感じたのは初めてだ。 |
10 |
The Blade Of Cain |
直訳すれば、アダムとイヴの長男である「『カイン』の剣」ってことになる。
神に愛されたくても愛されず、その神が愛した弟のアベルを殺したカイン。凶器がBladeだったのか?
兄弟殺しの罪で楽園を追放され、異国の地で子孫を増やし続けた。そういった背景の、生きていくことの無常さを訴えているかのような哀愁たっぷりのギターが美しい。
しかし、人間はどんなに絶望感と挫折感があろうとも、したたかに生き抜くことができるとも捉えられる。
曲は、5曲目のDays Gone Byがピアノによる癒しだったのと良い対比をなし、ギターでゆったりとあらゆるものを覆いつくしているようだ。すべてを受け入れてくれる容量の大きさがある。
ロイネのギターは派手さを抑え目にして、ひたすら心地良さを追求しているようだ。よく泣いている。
最後に「♪Love Supreme」と歌っているのが聴き取れる。1曲目に戻ってしまうのか?人々は綿々と同じことを繰り返すと、一種のアイロニーや自戒の念を込めて表現しているのだろうか?
詩がブックレットに書かれていないのが残念である。 |